another world story
〜pop’n&smash〜
第9話






 ムラサキが旅館の前で待っていたメンバーと合流してから、店の並ぶ大通りへと繰り出した。
 そこは、ニャミが先程見た時と同じように人でごった返している。

ロイ「で、まずはどこに行くんだ?」
スマイル「服屋さん?アウトドア用品店?おもちゃ屋さん?」
ニャミ「いや、おもちゃって…」
マルス「おもちゃは後からじっくり選んだ方がいいと思う」
ニャミ「いやいや、そうでもなく!」

 歩いている間ずっとこの調子の会話をしているが、ムラサキはそれらを全く聞かずレシートを見ていた。
 そして今ようやく見終えて、顔を上げる。

ムラサキ「アウトドア用品は、もう買う必要がなさそうよ。あとは各々の服と個人的に必要なものを揃えるだけ」
スマイル「え?そうなの?」
マルス「なら、服屋かな?」

ニャミ「あ、待って。私、ロイを連れて行きたい所があるの」
ロイ「俺を?」
ニャミ「剣、欠けちゃったでしょ。この町には刀鍛冶さんがいるから」
ムラサキ「刀鍛冶…」

 ムラサキは、刀と聞いて弟の六を思い出した。
 そういえば、刀と筆の質には煩い六が、いつの日だったか良い鍛冶屋を見つけたと言っていた気がする。

スマイル「珍しいね、鍛冶屋さんなんて」
ニャミ「数年前の戦いを陰ながら支えてた、知る人ぞ知る所よ。何とあの六も通ってるんだから!」
 細い道に入りながら、ニャミは得意気に話す。
 それにムラサキがやっぱり、と小さく零して、その後ろで話を聞くともなしに聞いていたロイが、ふと疑問を口にした。

ロイ「なぁ、何年か前に戦ってた時ニャミはあちこちを飛び回ってたんだよな。けどそれって長くても数年の間だろ?何でこんなに細かい所まで地理に詳しいんだ?」
ニャミ「あぁ、それはね。その戦いの結構前からポップンパーティーっていう……音楽のお祭り?みたいなのに色んな人を誘う為にそれはもう様々な所を巡っていたからよ。他にも…まぁ、神のお使いとか企画とか」

 道を右に曲がり、更に細い道へと入る。
 周囲に木が多くなってきた。

スマイル「ヒヒヒ、珍しく的を射た質問だったねー」
ロイ「おい、それどういう意味だよ」
ムラサキ「いい質問だったって事。それにしても随分奥まった所にいるのね」
ニャミ「うん。でも気さくな良い人だよ。ほら、着いた」

 民家が少なくなって、それに比例するように木が増え、このまま進めば森に入ってしまうのではないかと思っていた矢先に現れた一軒の家。
 普通の日本家屋に工房のようなものがついている。

ニャミ「おっじゃましまーす。シュウさん居ますー?」
 工房のような所――恐らく作業場なのだろう――へとずかずか入ってゆくニャミ。
 そんな風に入って良いのか、と心配になったのはこの場ではマルスだけで、他の者には既に目に慣れた光景だった。

 残されたメンバーが、ニャミの後を追うように作業場らしき建物へと近付いた…その時。


ニャミ「にぎゃあぁっ!」


 ニャミの叫び声。
 思わず駆け足で中に入ると…そこには、男に頭を撫で回されて髪をぐしゃぐしゃに乱したニャミが居た。

 男は白髪交じりで少し歳をとってはいるが体格が良く、快活な笑みを浮かべている。
 ニャミは乱れた髪を手櫛で直して男に文句を言った。
ニャミ「ちょっとシュウさん、ぐちゃぐちゃになっちゃったじゃん!」
男「ははは、まぁ気にすんな!久しぶりに会ったんだからよ」
ニャミ「もー。あ、それでね?今回は剣を研いでほしいの」
男「剣を?」
ニャミ「そう。ロイ、剣持ってきてー」

 入り口付近に居た一同へ振り返って手招きをする。
 ロイは「おう」と返事をして二人へと歩み寄った。
 入り口で止まっているのもおかしいので、マルスとムラサキとスマイルもそれに続く。

ニャミ「この人が例の刀鍛冶さんで、修三さん。私はシュウさんって呼んでるよ」
修三「よろしくな。どれ、見せてみろ」
ロイ「これだけど」
 剣を鞘から抜いて差し出す。
 修三はそれを受け取り、刃の角度を変えながらじっと眺める。

修三「…こいつは…中々の代物だな。これほどの物をこんなにするたぁ、どういう使い方したんだ?」
ニャミ「ま、色々とね」

 モンスターと戦った、とは言えなかった。
 わざわざ不安を煽りたくはないし、その必要もなかった。
 修三は、数年前の戦いで妻を亡くしているのだから。

ニャミ「明日までに何とかならない?」
修三「ああ、いいぞ。他ならぬお前さんの頼みだしな」
マルス「仲がいいんだね」
ニャミ「まーね」
修三「それにしても…何かえらく綺麗な奴らを連れてるな。また何かの企画か?」
スマイル「ヒヒッ、ある意味当たりかもねー」

 修三が全員を見回して…「ん?」と視線を止めた。
修三「あんたみたいな奴、どこかで見たような…」
ムラサキ「私?あぁ、それならきっと弟ね。ここには良く来るんでしょう?」
ニャミ「この人は六のお姉さんで、ムラサキっていうの」
修三「おっ、そうか!なるほど、道理で雰囲気が似ていると…」
 嬉しそうに目を細め、修三は青髪の男と目の前のムラサキを重ね合わせた。

ニャミ「あ、ところで今回の御代なんだけど…」
修三「いや、いい。剣を研ぐだけだしな。奴の姉とお前さんに会えただけでも充分だ」
ムラサキ「気前がいいのね」
修三「ま、こんな良い剣に会えたからってのもある。久々に腕が鳴るぜぇ」
ニャミ「まぁ、シュウさんがいいって言うならいいけど…よろしくね」
修三「おうよ!」

 ニカッと笑う修三に、つられてムラサキも笑みを零した。
 そして…頭の隅で、考える。
 本来、刀鍛冶なら刀と異なった造りである剣は専門外のはずだが…やはり、あの戦いで活躍したというニャミの言葉に関係があるのだろう。
 必要に迫られて剣の扱いを覚えたと言われても、おかしくはない。

マルス「じゃ、行こうか」
ニャミ「じゃーね、シュウさん。また明日!」
 剣の鞘を渡してから手を振り、別れる。
 修三は、どこまでも晴れた綺麗な笑顔をしていた。


 ***


ロイ「あー、剣がないと変な感じだ」
 店の建ち並ぶ大通りに戻ってきてから、ロイがぼやいた。

ニャミ「そうなの?」
ロイ「だって風呂とか寝る時以外は大体持ってたんだぜ?」
ニャミ「へぇ・・・色々大変なんだ。」

殆んど剣を手放せない生活を想像して、意外と苦労している様だとニャミはロイを見る。
しかし、その事に気付いたマルスが苦笑しながら軽く手を振る。

マルス「違うよ。・・・確かに大変な時期もあったけど、ロイがいつも剣を持っているのは・・・趣味、かな。」
ニャミ「趣味ぃ!?」
マルス「そう、暇さえあれば剣の稽古をしようとするんだから。剣を使える人はあんまりいないから、僕等もよく付き合わされたよ。」
ロイ「何だよそれー!マルスだって結構やる気だったじゃねぇか。」
すかさず反論するロイに笑いながらも、ニャミはマルスに質問をする。

ニャミ「ねぇ『僕等』ってマルスとリンクの事でしょ?剣士は3人だけなの?」
マルス「そうだね。一応使おうと思えば全員使えたけど、主力として剣を使えるのは3人・・・。」
そう言い掛けて、一度何かを考えるように顎に手をあてる。

マルス「うーん・・・厳密に言えば・・・4人、かな。」
ニャミ「え?」
3人だけど、厳密に言えば4人?

意味が分からず、どういう事か質問しようとしたが、スマイルの「早く行こーよー!」という声に、その話題は消えてしまった。
そしてニャミは本当に最近思考を中断する事が多いなぁ、と思うのだった。





スマイル「はーい、服屋に到着ー!」
ロイ「すっげー!色んな服があんな!」
店の扉を勢いよく開けて、スマイルとロイの2人は即行で店内を見始める。

スマイル「服だけじゃなくて色々アクセサリーもあるよー。」
ロイ「お!サングラス発見!似合う?」
スマイル「ヒヒヒ、全然似合ってないね。」
ムラサキ「少しは落ち着きなさい。」
子供の様にハシャギまくる2人に、ムラサキは頭を押さえながら言う。
・・・正直あまり効果はなかったが。

ニャミ「とりあえず、これいい!っていうのがあったら試着してみるといいよ。」
ロイ「了解!」
言うやいなや、ロイとスマイルは走って行ってしまった。

ニャミ「全く・・・どこからあんな元気が沸いてくるんだろ?」
ニャミの言葉に同感と言った感じで、マルスとムラサキは頷いた。



ロイ「これいい!・・・は、いいけど色々ありすぎて難しいな。」
鏡の前に立って、様々な服を体にあてながらロイがぼやく。
その隣でスマイルは笑いながら一着の服を差し出す。

スマイル「これなんてどう?」
ロイ「何だそれ・・・動きにくそうだな。」
スマイル「着物だよー。」
ロイ「あぁ!ムラサキが着てるやつな!でも微妙に違うな。」
その言葉に、まぁこれは男物だから、と言ってスマイルはロイにそれを手渡した。

スマイル「買わなくてもいいからサ、一回着てみてよ。多分面白い事になるから。」
ロイ「別に着るだけならいいけどさ・・・。」
よく分からない、と言った感じでロイは着物に袖を通す。

ムラサキ「あなた達、服は決まったの・・・。」
丁度着替え終わった時に、ムラサキがやって来て、その姿に目を丸くする。

ロイ「お、やっほ!」
ムラサキ「・・・その恰好。」
ロイ「え?これ?・・・変かな?」
小首を傾げて聞いてくるロイに、ムラサキはすぐには答えなかった。

姿や性格、仕草さえも似ていないが、それでもどこか弟の事を思い出させる。
そんな事を考えていたが、ロイが不思議そうな顔をしているのに気付き、口を開く。
ムラサキ「似合わなくはないけど・・・剣を使うのには不便だと思うわ。」

ロイ「だよなぁ…」

スマイル「でも似合ってるって言われたんだし、記念に一応買っとけば?」
ムラサキ「何の記念よ」
 ロイと一緒に試着室に入っているスマイル――恐らく彼が着付けをしたのだろう――にツッコミを入れるが、しかしロイは気にする風でもなく言ってのけた。
ロイ「似合ってるって言われた記念!」
ムラサキ(この人達にとっての「似合わなくはない」は「似合う」に直結するのね…)

 少々呆れつつ、ムラサキは着物の購入を止めようとはしなかった。
 別段懐が痛むわけでもなかったのが大きな理由だ。
 …それ以外に小さな理由もあったが、本人は意識していないつもりらしかった。

ロイ「じゃ、これは買うとして、次は実用的なの選ぶか」
スマイル「そだね」
 二人が頷き合うと、ムラサキの後ろからニャミがひょいと顔を出した。

ニャミ「何してるの?早くしないと日が暮れ……わぁ、ロイ、そんなのよく見つけたねぇ」
スマイル「見つけたのは僕だけどねー」
ニャミ「あ、そうなの?けどさ、その姿でムラサキと並んで歩いたら、そこだけタイムスリップしたみたいになるよね」
ロイ「え?」
ムラサキ「着物は少し古風な服だから」
ロイ「へぇ、そうなのか」

 ロイは、今自分が着ているものを今更ながらまじまじと見下ろす。
 そういえば、町でこの服装の者は見かけなかった気がする。

ニャミ「あ、そうそう。早く服選ばないと、まだ買うものあるなら遅くなっちゃうよ」
ムラサキ「私はこのままで充分よ。予備は出発の時点で荷物に入れたし」
スマイル「僕も多少城から持ってきてるし、足りない分はもう選んであるし」
ロイ「早っ!…てことは、あとは俺と、」
マルス「ねぇ、皆こんな所に集まって何してるの?」

 ニャミの後ろからひょいっと顔を覗かせてそう言ったのは、ロイが今まさに言おうとした名前の人物本人――マルスだった。
 そして、マルスを正面から見たスマイルとロイは思わず「えっ…」と目を見開く。
 訝しんで背後に居るはずのマルスを振り返ったムラサキとニャミも、絶句。
 そこには確かにマルスが居た。居たのだが……

ニャミ「…何その店員さんの群れと服の山。」
 ニャミがそう表するのも無理はない。
 マルスの周囲には、店の殆どの女性店員がわらわらと寄り、ちょっとした人だかりが出来ている。
 更にその店員達は、マルスに服を当てては、これは似合うだとかそうでないだとか言ってはしゃいでいた。
 似合うと判断された服が、次から次にマルスの横に居る店員に手渡されている。
 どうやら買う服候補を店員が自ら挙げにかかっているようだ。
 しかも随分熱心に。

マルス「え、僕が服を選んでたらいつの間にかこんな事に……普通じゃないんだ?」
ニャミ&スマイル「「いやいやいや」」
 ぶんぶんと手を左右に振って思い切り否定。
 こんなものが普通だとしたら、一般客は店に入る度に自分の身分に疑念を抱かなくてはならなくなる。
 …マルスを放っておきすぎたか、とムラサキは額を右手で押さえた。

ムラサキ「…とにかく、その中から気に入ったのを選んで。ロイも早く」
ニャミ「マルスは私が手伝うよ」
マルス「分かった」
ロイ「了解」
 そして、マルスとニャミは服の山から服を選びに、ロイは着物から一度着替えて選びに行った。


 一行が去る直前に、騒ぎに気付いた店長が店員を叱りつけていたというのは……とりあえず、帰っても宿に居るメンバーには報告しなくて良いだろう。


 ***


 服屋から出ていくつかの店(約3名により、小物屋やおもちゃ屋にも引っ張り回された)に寄り、一行が宿に帰る頃には日が落ちようとしていた。
 部屋に入ってユーリに魔法で荷物を仕舞ってもらった後、する事もなくだらけていると、

ニャミ「…お腹減ったぁ」
 ニャミがそう呟いた事によって、数名が気付く。
フォックス「…そういえば昼は何も食べてなかったな…」
スマイル「夕食は6時だってここに来た時聞いたし、そろそろかな?」

ニャミ「そうなの?ここの料理はとっても美味しいんだって!」
楽しみだね、と言うニャミに全員が頷く。

ロイ「どんな料理なんだろうな?」
ニャミ「私もよく知らないけど、新鮮な魚介類が沢山・・・。」

ゴトン。

突然鈍い音がしてニャミとロイが音の方へ顔を向ける。
リンク「あ・・・・・・。」
そこにはリンクがいて、音の原因はその手から湯飲みが落ちた音だった。
幸い湯飲みの中は空っぽだったらしくお茶が零れる事はなかったが。

ユーリ「どうかしたのか?」
リンク「い、いいえ、別に・・・。」
ユーリのその問いに、リンクは慌てて湯飲みを拾う。
その時横でフォックスが「あー・・・。」といった顔をしていたのに気付いた者はいなかっただろう。

丁度その時、部屋の扉を叩く音がした。
アッシュ「あ、来たみたいっスね。」
たまたま扉の近くにいたアッシュが、その音に扉を開けた。





・・・・・・確かに噂に嘘はなかった。
フォックス「うわぁ・・・多・・・。」
目の前には新鮮な海鮮料理の山。
どう考えてもこの人数で食べきれる量ではなかった。

ムラサキ「流石はこの町一番の宿って所かしら?」
スマイル「そーだねー。ま、せっかくの料理なんだから新鮮なうちに食べよーよ!」
スマイルのその言葉に、全員それもそうだと食べ始める。
・・・が。

ロイ「うっわ・・・使いにくいな。」
マルス「そうだね。」
ロイとマルスの2人は箸を使いにくそうに動かしている。

ニャミ「2人共、普段箸は?」
ニャミの問いに、マルスは苦笑しながら箸で刺身を摘む。

マルス「あんまり使わないんだ。故郷には箸っていうものはなかったから。」
ロイ「そーそー。初めて箸で蕎麦食べた時、スパゲッティー食べるみたいに巻いて大爆笑だったよなー。」
それはかなりのマナー違反ね、等と思いながらムラサキは残る2人に視線を移す。
フォックスとリンクは若干ぎこちないながらも、慣れているらしく普通に使っていた。
しかし、そこでムラサキはふと首を傾げる。

ムラサキ「・・・どうしたの?あまり食べていない様だけど・・・。」
リンク「えっ?」
突然声を掛けられて、リンクは一瞬ポカンとした顔をした。
しかし、すぐにムラサキの言葉を理解すると、焦った様に笑う。

リンク「そ、そんな事ないですよ!すごく・・・美味しいです!」
スマイル「でも言われてみれば、あんま食べてないね。これ食べるー?」
そう言ってスマイルが差し出したのは、イカの踊り食い。

リンクは笑顔のまま固まった。
そして再び時が動き出したのは数秒後。


リンク「うっわぁー!!!」
アッシュ「わわわーっ!!!」
突然のリンクの悲鳴に、隣にいたアッシュもまた驚いて・・・。


ボンッ!


何かが爆発した様な音がしたかと思うと、そこにいるはずのアッシュの姿がなくなっていた。
その代わりに・・・。


ロイ「うわっ、犬!?」
犬?「キャンッ!!」
 茶色のふさふさした毛を持つ動物が、驚いたようにひっくり返っていた。

リンク「イカがっ、イカが!!」
 まだ混乱したままのリンクが、匍匐前進をするようにしてその場から逃げだす。
 その拍子に料理を載せてある大きな座卓の脚にぶつかって卓上が揺れた。

 するとそれによってニャミの前にあった湯呑みがごろんと転げ落ちる。
 熱い緑茶がニャミの膝にダイブ。
 ニャミはあまりの熱さに正座していた脚を思い切り伸ばして立ち上がった。

 そして立ち上がる際にどこかをぶつけて、連動するように再び座卓が跳ね上がり、今度は卓上の醤油瓶が転がって黒い液体を撒き散らす。
 ついでに揺れた挙句いくつもの湯呑みが転落した。
 その被害にあったのは、ひっくり返っていた犬と混乱しかかったフォックス。

ニャミ「にぎゃー!!熱い熱い熱いっ!!」
アッシュ「ギャワンッ!!
フォックス「うぁっちゃああぁ!!!」

 沸かしたてだったのが災いして、どの茶も熱い。
 ほぼ熱湯状態のそれをかぶった約数名は、熱さに床を転げ回った。
 犬に至っては辺りを駆け回った挙句座卓を飛び越えてしまった。
 その真正面に居たマルスは、その犬と真っ向から衝突して後ろへ倒れた。
マルス「うわぁっ」
 床は畳なので、背を打ちつけても痛くは無かったが、これは幸いと言えるのかどうか。


スマイル「わぁー、凄い事になってるねぇ。…あ、これおいしい」
 騒ぎを他所に、ちゃっかり自分の食べ物を避難させて食べているスマイル。
 ユーリはそれを一瞥してから声を張り上げた。
ユーリ「お前ら少しは静かにっ…」

 しかし、その言葉は最後まで続かなかった。
 この騒動で皿から落っこちたイカが卓上で蠢き、ユーリの右手の甲を這ったのだ。
 流石は踊り食い用のイカとでも言うべきか、活きが良いが故によく動いている。
 ユーリは声無き叫びを上げた。
ユーリ「〜〜〜〜〜っ!!!」

 咄嗟に手を大きく振ってイカを払うが、そのせいでイカが宙を舞った。
 べちゃっ、と音を立てて、イカはムラサキの頭に着地。
 ムラサキは無言で頭からイカを剥がして皿に戻した。
 そして、てんやわんや状態の皆を見回して一つ溜息。

ムラサキ「あのね、そろそろ静かにしないと……」
 …言いかけるが、

『ガラッ』
宿の女将「お客様、他のお客様に迷惑がかかりますので、もう少し静かにして頂けますか?」
 戸を開いて部屋に入った宿の女将が、少し強めの口調で言った。
 混乱状態にあった室内は、水を打ったように静まった。
 女将は、そこまで来てようやくこの惨状に気付いた。

宿の女将「……あの、片付けの方、お手伝いしましょうか…?」
ムラサキ「いいえ、こっちで何とかするわ。ありがとう」
宿の女将「はぁ……失礼します」

 来た時とは丸きり態度を変えて、呆れたような珍しいものを見たような、はたまた頭痛の素を見たような、微妙な表情をして部屋から出て行った。

ムラサキ「…とりあえず、お茶を被った人は冷やして。片付けるわよ」






〜To be continued〜




<幻作の呟き。>

うっはぁ、今回も懐かしい…!!
しかし今回は書きたかった事がメチャクチャ書けていた所だったので、大好きです。
…しかし実は、シュウさんはオリキャラ。(!)
あんなオッチャン好きです。闇星殿も結構気に入ってくれているみたいでドッキドキv(何)
服屋でのマルスの件とか、宿に帰ってからのイカ事件とかメッチャ楽しかったです。
…ギャグ入れすぎですか、そうですか。いやしかし、書きたかったんです…!
うーん、満足満足。

UPした日:2006.10.11



それでは、ここから先はいつもの様にリアルタイムのアトガキを。
ちなみにネタバレになるような部分等は例によって消しておきますゆえ。


<リアルタイムなアトガキ。>

幻:今回長々と書いてしまいましたゲンサクですー。…長さ新記録?;
  修三さんなんていうオリキャラが出ました故、途中で交代するのもなーとか。キャラ掴めるか心配ですし。
  ギャグが書けずに撃沈。うわーん!
  そしてマルスの口調が分かりませーん。とりあえずフツーの青年な感じにしてみましたよ。(は?)
  リンクより難しい…!
  今回の話は外せなかったんですよー。…忘れそうになってたけど(ぇ)
  剣欠けてましたもんね。これからは気をつけるように!いいかねロイ君!(何様)
  さーて、今まで短かった分長く書いたので満足しつつ、パスです!!
  マントがほつれだしたのをいい事に、更にスピード出して引き離した!  2005.11.16


闇:私にしては長いんじゃない?な闇星でっす。
  今回は書きたい事書けて満足ですヨvv
  マルス王子様の口調はあんな感じで良いのではないでしょーか?……多分(お前も分からんのか!!
  修三さんの雰囲気が個人的に好きです!これからも出て欲しいネ!!
  あ、出て欲しいと言えば…両世界の神…全然出番無いよね(爆
  マントほつれたら飛べんやん!てなわけで落下!(待


幻:随分お待たせして申し訳ねぇです。幻作です。
  闇どんの書いた、ムラサキがロイと六を重ねて見るシーン、さらりとロイをかわす所がイメージピッタシで素敵でしたvv(思わぬ所でときめく奴)
  実は今回、書き始めてから長い事煮詰まってました。なぜだ…?
  にしても、あの一行は美形が多くて町の人の反応が毎度勢い良いですよ。
  そういや修三さんって、この小説内に初めて出たオッサンですNe☆
  書いてて楽しくなるキャラは年齢関係なく好きなのでシュウさん好き。
  上のアトガキ見てて気付きましたが、確かに神出ないなー!!(渇笑)
  落下する闇様をスーパーマンの如くキャッチ!ミュウツーから逃げてる途中だったのだと思い出して急浮上!スピードを上げたっ!   2005.12.13


闇:すっっごい微妙な所で回しました闇星です。
  いやー出すかどうか最後まで悩みましたが…出しましたv
  まぁ続きは幻ちゃんパゥワーで頑張ってネ!(爆)
  それにしても明日で冬休みなんて…この話も大分長くやってますよね♪
  闇星は高所恐怖症だった事に気がついた!助ケテ―――!!!