another world story
〜pop’n&smash〜
第8話






 町には、人が溢れ返っていた。
 昼を過ぎているので、買い物目当ての者達だろう。
 その中に、一行は紛れ込んで歩く。…のは、いいのだが。

ムラサキ「怪しさ全開ね…」
ニャミ「しょうがないよ、この辺りだとまだこの人達有名なんだから」

 一行の内の、怪しい3名――ユーリ、スマイル、アッシュを一瞥して、苦笑を浮かべる。
 この3人は、変装をしていた。
 一つ前の町でも注目を浴びていたパーティーだが、今回は別の意味で目立っている気がする。

スマイル「うーん、やっぱサングラスにニット帽がいけないのカナ?僕消えとく?」
マルス「消える?」
アッシュ「スマは透明人間ッス。文字通り姿を消す事が可能なんスよ」
ムラサキ「でも、こうなったら変装者が一人減ろうが同じだと思うわ。寧ろ紛らわしいからこのままでいて。…それで、まずどこに行くの?」
 大きな通りを歩きながら、左右に延々と並ぶ店を見やる。

ロイ「疲れてる奴を休ませるか?」
リンク「それなら宿探しでしょうか」
フォックス「けど、買い物をするんだったら本人は必要だよな」

アッシュ「それなら・・・2グループに分けて片方が買い物をしている間に宿を決めて休んでもらったらどうっスか?後で交代したら全員買い物を出来るっスよ。」
ユーリ「悪くない案だな。」

特に反対する者はいなかった為、疲れているマルスとムラサキ、それにロイとスマイルが宿を探す事になった。

リンク「じゃあ、よろしくお願いしますね。」
スマイル「任せといて〜。超高級な所探しとくからね!」
フォックス「え?いや別に普通の所で・・・。」
スマイル「大丈夫だって。どーせ料金はMZD持ちだし!」
恐ろしい程純粋な笑顔でそう言うと、スマイル達は行ってしまった。
フォックスは心の中でMZDに合掌する。

ニャミ「まぁ、その通りだよね!私達も行こう!」
ユーリ「そうだな。」
ニャミ「よーっし!買いまくろー!」


 ***


それから数十分後。
ニャミの言葉に二言はなかったらしく、大量の買い物袋を仕舞っているユーリの姿がある。
やっぱり女の子は買い物が好きなんだなぁ、と思いながらアッシュは視線をリンクへと移す。

リンクは大きな木の側で気持ち良さそうに瞳を閉じている。
邪魔しない方がいいかと一瞬迷ったが、アッシュはそちらに近づいた。
すると気配を感じたのか、リンクはゆっくりと瞳を開く。

リンク「あ、アッシュさん。」
アッシュ「こんな所で何してるんスか?」
リンク「少し休んでたんです。・・・木の下は落ち着きますから。」

MZDがくれたカードは1枚だった為、ニャミが買い物をしている間他のメンバーは特にする事がないのだ。

リンク「そういうアッシュさんこそ、何してたんです?」
アッシュ「え?あ、忘れる所だったっス。」
そう言うと、アッシュは何かをリンクに差し出す。
受け取るとそこには
『ここでしか食べられない!サボテン味アイス』
と、書いてあるカップ系のアイスがあった。

アッシュ「ニャミさんが見つけたそうっスよ。皆に配るように頼まれたんっス。」
リンク「・・・・・・これ・・・食べられるんですか?」
アッシュ「さっきフォックスさんに渡して来たんスけど、意外にいけるそうっス。」
かなり不安そうにアイスを見ていたリンクだったが、アッシュにそう言われて一口食べる。

リンク「!・・・美味しい。」
アッシュ「本当っスか?」
リンク「はい!・・・うわぁ・・・。」

驚いた様に、けれど嬉しそうに笑うリンクにアッシュはポカン、と口を開く。
そして思わず口を開いた。
アッシュ「・・・リンクさんって・・・。」
リンク「はい?」
アッシュ「大人っぽいって思ってたっスけど、意外に子供っぽい所もあるんスね。」
リンク「!」
アッシュがそう口にした途端、リンクの顔が強張る。

最初は『子供っぽい』と言われた事に怒ったのかと思った。
しかし、すぐにリンクの表情はそういった類のものとは違っている事に気付いた。
が、それは一瞬の事。

リンク「そうですか?まぁ、まだ未成年ですし。」
アッシュ「そ・・・そうっスね。」


ニャミ「2人共〜!私の買い物は終わったよー。」

その時丁度いいのか悪いのか声が掛かり、2人は立ち上がるとニャミの方へ向かう。


リンク「・・・気をつけてたんだけどな・・・。」
アッシュの後を追うように歩いていたリンクが小さく呟く。
その呟きは、風に流されてアッシュの耳には届かなかった。



 ***


ユーリ「残りを仕舞うぞ」

 必要なものを小さなカバンに入れた後、アッシュとリンクは大きな袋をユーリに渡して、魔法で仕舞う事を頼んでいた。
リンク「ええ、お願いします」
 リンクが頷くと、ユーリは短く呪文を唱えて袋をその場から消した。

フォックス「…にしても……そっちを先に買うか?普通」
 袋のあった場所を見つつ、一つ溜息。

アッシュ「いや…あの値段を見たらつい…」
リンク「しかもタイムサービスでしたしね」
アッシュ「もう、本能的に」
フォックス「………」

 フォックスは、思わず閉口した。
 何に、と言われると、二人の主夫っぷりに、としか言いようがない。

 そう、先程まで買い漁っていたのは食料だった。
 バナナの叩き売りから始まり、安い安いと店を移しながら、いつの間にか大量の食べ物を買ってしまっていた。
 調理器具も加えると、短時間でどれだけ買ったのかもう思い出せない。
 ユーリから「魔法で仕舞ったものは出すまで時を止めたままだから、生ものでも大丈夫だ」と聞いたのが拍車をかけたのかもしれない。

ユーリ「…それで、次は何を買うんだ?早くしなければ、ニャミが怒り出す」
リンク「広場に待たせてありますもんね」
 待たせた、というか、本人が「疲れたから待ってるね」と言い出したのだが。

アッシュ「じゃ、服を買いに行きましょうか。リンクさんやフォックスさんのもそうッスけど、俺達も色々揃えた方がいいッス」
ユーリ「そうだな」
フォックス「なら、そこに行くか」
 丁度右側にあった店を指し、一同は頷いて店に入っていった。





リンク「やっぱり服のデザインが違いますね…」
 店内に並ぶ服を見ながら感心したように言うリンク。
アッシュ「まぁ、世界が違えばそんなもんッスよ」

 店はわりと広く、どこから見ようか少し迷いながら自分好みのものがないか探してゆく。
 すると、近くにいた女性店員がリンクに寄ってきた。

店員「何かお探しですか?」

リンク「え?あ、動きやすい服を・・・。」
店員「あら、でしたらあちらにある服はいかかでしょう?」
そう言うと、女性店員はリンクを店の奥の方へ案内する。



それから数分後。

フォックス「あれ?」
アッシュ「どうしたっスか?」
あたりをキョロキョロとしているフォックスに、アッシュが話し掛ける。

フォックス「いや、リンクの姿が見えないなと思って。」
アッシュ「本当っスね。・・・ユーリもいないっス。」
いくら大きめとはいえ店で迷子か?と、考えていたフォックスの肩を誰かが叩く。

リンク「どうかしたんですか?」
フォックス「あ、何だいたのか・・・・・・・・・・・・。」
その声を聞いてリンクだと判断しながらフォックスは振り返って・・・固まった。

確かにそこにいたのはリンクだった。
しかしその姿は半そでのTシャツに・・・ジースカ。

リンク「動きやすい服を探していると言ったら、これを勧められて・・・。」
変ですか?と続けるリンクに、固まっているフォックスの代わりにアッシュが口を開く。

アッシュ「変というか・・・あの・・・それ・・・女物っス。」
リンク「・・・・・・え?」


たっぷり10秒の間があった。
そしてその沈黙に耐えかねてアッシュが再び口を開こうとしたその時。

『私にこんな服を着ろというのかっ!私は男だっっ!!』
と、店の奥の方から声が聞こえてきた。
それがユーリの声だった気がしなくもなかったが、彼の名誉の為あえて誰もそれを口にはしなかった・・・。



 ***


ニャミ「おっそーいぃ!!」
アッシュ「す、すまねぇッス。色々とハプニングが…」

 あれから紆余曲折を経て、やっとニャミの待つ広場まで戻ってきた一同。
 予想通り、ニャミは待たされた事に怒っているようだ。

ユーリ「こちらは4人だったのだ、大目に見てくれ」
 疲れた声で言うユーリ。どうやら色々あったらしい。
 リンクはリンクで何か考えているようだ。

ニャミ「ま、しょうがないけど…。服、一から選んだみたいだし」
 最後に会った時と殆ど服装の違う男性メンバーを見て、似合っているな、と心中で呟く。

ニャミ「そういえば、さっきからリンクが何か考え込んでるみたいだけど…何かあったの?」
 ニャミの問いに、ぴくりと反応するリンク。

リンク「……いえ…、こちらの世界との服装感覚の違いを…」
ニャミ「は?」
フォックス「…色々あったんだ、聞かないでやってくれ」
ニャミ「はぁ」
 曖昧に頷き、ニャミは何があったのかと考えるが、考える為の材料も無いのでやめる事にした。
 …最近こういった思考を中断する事が多い気もしたが。

アッシュ「じゃ、そろそろ宿に行きましょうかね。買い物グループ交代ッス。少しでも体力回復してるといいんスけど…」
ユーリ「それより宿の場所はどうなんだ?何も聞かされていないじゃないか」
ニャミ「その点なら心配いらないよ。一番高い所とるって言ってたから、この辺りで一番高級な宿に行ってみればいいんだよ。私知ってるから、行こう」
 言って、先頭に立つ。
 一同はその後に続いて歩き出した。
 ただ、リンクはその場で足を止めたまま、あごに手を当てて呟いていた。

リンク「…あの格好が女性のものだとしたら今までの私の服装は…もしや今まで私は皆に女装してると思われていた…?」
 ぶつぶつと、黒雲でも背景に背負っていそうな雰囲気だ。

 それに気付いたフォックスとアッシュが、そっとリンクの元へ歩いて戻り、宥めていたとかいないとか。





ニャミ「到着ー!」
ユーリ「ここか…」
アッシュ「うわ……」

 目の前には、造りからするとムラサキの家に似ている、しかしそれより大き目の建物。
 いかにも、といった上品な高級感漂う和風の旅館だ。

 それに圧巻されつつ入り、代表でユーリが受付のカウンターに行き、すぐ戻ってくる。
ユーリ「スマイル達が既に私達の分も部屋をとっていたようだ。そこへ向かおう」
ニャミ「はーい」
フォックス「何部屋とってあるんだ?」
ユーリ「4部屋だ」

 廊下を歩いていると、カコン、と鹿威しの音が聞こえてくる。

 やがて目的の部屋が見えてきて、ユーリは4つの部屋の中で唯一騒がしい部屋…スマイル達が居るであろう部屋を開けた。


スマイル「あ、遅かったねー。」
ロイ「待ちくたびれたぜ。」
ユーリ「すまない。色々あったのだ。」
2人の言葉を軽く流すとユーリは中へと入る。
後から他のメンバーも中へと入ったが・・・。

フォックス「広っ・・・。」
4部屋とったと聞いていた為、割と小さいものを想像していたのだが、実際はこの部屋1つで全員がくつろげそうな程だった。
男女で分けるとしても2部屋でよかったのでは?

しかし、その事をスマイルに告げると
スマイル「本当は1人ずつ部屋とってもよかったんだけど、それじゃあ寂しいかなって思って。」
と、的外れな事を素で言われてしまった。


アッシュ「あ、2人共大丈夫なんスか?」
ムラサキ「ええ、大分よくなったわ。」
部屋の奥の方で座っているムラサキとマルスにアッシュが気付いて声を掛ける。
まだ多少疲れているようだったが、とりあえず元気になった様だ。
その証拠に、手にはトランプ。

ニャミ「な〜に?ババぬきしてたの?」
スマイル「うん、暇だったから。」
ロイ「本当は枕投げしようって言ったんだけどな。」
マルス「こんな早い時間からしたら迷惑だよ。それに、枕投げは夜に行う聖なるイベントなんだから。」
悪戯っ子の様に笑いながら言うロイに、マルスが軽く諭す。
その内容がおかしいと思ったのは、きっと気のせいではないだろう・・・。


ユーリ「…それはともかく、だ。無理でないのなら残りのメンバーも買い物に行っておけ」
スマイル「そだね。行こうか」
フォックス「なら、荷物収納係のユーリと案内係のニャミも行った方がいいんじゃないのか?」
ニャミ「おっけー!!」
ユーリ「・・・・・・・」
 元気に親指を立てたニャミとは反対に、あからさまにげんなりとした顔をするユーリ。

アッシュ「…何スかその顔」
ユーリ「…多人数での買い物が存外に疲れるものなのだという事をつい先刻知ったものでな」
 ユーリが言って、その背後にいるリンクが無言で一度頷いた。
 その言葉の細かい意味を汲み取った約数名は、そっと微笑んだ。


ロイ「なら、どうする?買ったものをここまで運ぶか?」
ユーリ「そうして貰えると嬉しい」
 座卓の前にある座布団に座り、ユーリは息をつく。

ニャミ「じゃ、行こうか!」
 ニャミがアッシュから神のカードを受け取って、次の買い物メンバーであるスマイル、ムラサキ、マルス、ロイが立ち上がった。

ニャミ「行ってきまーす」
ムラサキ「随分元気なのね」
ニャミ「お買い物大好きですから!」
 両手を腰に当てて胸を張るナビゲーター。

マルス「最初は何を買おうか」
 部屋を出ながら、わいわいと話を広げる一行。
 最後にムラサキが部屋を出ようとして…止まった。

フォックス「どうした?」
ムラサキ「あのカードでレシートが出たなら、見せて。買う物が被るといけないし」
アッシュ「あるッスよ」
 アッシュは、さっきまでカードを入れていた上着のポケットに手を突っ込んだ。

 ムラサキはレシートを受け取る為に部屋の中まで引き返し、やがてアッシュが取り出したそれを見て少しばかり目を見張った。
ムラサキ「……ユーリが疲れるわけだわ」

 最早メモ帳と言っても通じるような枚数になっているレシートや、それにプラスしてこれだけのレシートを全て綺麗に残しているアッシュの几帳面さに、驚きを通り越して呆れを禁じ得ない。

アッシュ「…まぁ…色々買ったッスから……」
ムラサキ「…色々ねぇ。えーと、キュウリ、トマト、アスパラ、もやし、りんご、フライパン、鍋セット、フライ返し……、ちょっと待って、何コレ」
アッシュ「あ、あはは…後の方からはちゃんとテントとかシュラフとか買ったッスから」
ムラサキ「お金が尽きないからいいけど。じゃ、一応持って行くわね」

 ぱらぱらとめくって食品名の書いてあるレシートを返却してから、残りを持って今度こそムラサキは部屋を出た。





〜To be continued〜




<幻作の呟き。>

毎度ながら、懐かしい…!!これ書いたのいつだ!
ギャグ色が濃くなってて楽しかったです。スカート穿くリンクとか素敵過ぎる…!!
そしてアッシュとリンクは主夫ズ。いいなぁ…(にやにや)
ギャグパートはこの町を出るまで続くので、よろしくお願いします。

UPした日:2006.8.31



それでは、ここから先はいつもの様にリアルタイムのアトガキを。
ちなみにネタバレになるような部分等は例によって消しておきますゆえ。


<リアルタイムなアトガキ。>

闇:今回はアッシュとリンクをメインに書いたYAMIBOSHIです!勝手に2グループに分けちゃったケド大丈夫かな?
  この町では色々なイベントがある(はず)なので楽しみっス。シリアスパートからギャグパートですよ奥様っ!
  てかサボテンアイスは本当にあるんですよーっ!○△公園で!(内輪ネター)
  ミュウツーはサイコキネシスを繰り出した!逃げろっ!(何


幻:書けねー所はパスユーな幻です。(最悪)
  最初に買ったブツが食い物な主夫っぷり。うはー。でも安いんだから仕方ない。(何)
  本文短いのでここも短く行きマス!(こういうシーンって1人が書くとアレなんで細切れにしたという説も)
  サボアイスは私はまだ食ってませんねー。どんなだろう。
  幻作は空へ逃げた!シュワッチ!!   2005.10.11


闇:遂に変な方向に走ったdark-starでした(英語!?しかも過去形!!?)
  主夫2人いいねー♪きっと余計な物も沢山買った事でしょう(駄目やん)
  サボテンアイス…私も食べた事はなかったり。だって不味かったら嫌ですしネ!
  ところでジースカってのは全国共通語なんですか。(今更
  闇星はアンパンマンのマントを奪って追いかけた!(酷


幻:リンクをどよーんな感じにしちまいました、幻作ですー。
  旅館にて今度はメンバータッチ交代ですな。旅館は純日本にしてみましたー。
  ジースカは、読んだら大体想像がつくかとー。大丈夫!
  では、今回も短めに終わりマスv
  アンパンマンな闇様と空の追いかけっこ!!2005.10.31


闇:ちょっぴり風邪気味vな闇星です。
  スマイルとロイを一緒にすると、どうしてもボケる傾向があるようです(爆
  今回リンクさん出番無かったですが…きっとまだどよーんな感じなのですネ!
  しっかし…メンバー9人がくつろげる広さって…どん位やねん(知るか
  アンパンマンのマントがほつれだした…ピンチッ!!