another world story
〜pop’n&smash〜
第7話
クリスタルに閉じ込められた青年…マルスは誰が見ても分かるほどグッタリとしていた。
3人は怒気を含んだ表情で男を睨み付けている。
その手には各々の武器。
まさに一触即発といった状況だ。
その状況に真っ先に危険を感じたユーリがロイの腕を掴む。
同様にアッシュはリンク、スマイルはフォックスを押さえる。
ロイ「何すんだ!」
ユーリ「落ち着け。そんな状態で振るう剣の軌道など、簡単に読まれるぞ。」
ロイ「俺は落ち着いてる!」
ムラサキ「それが落ち着いてないって言ってるのよ。」
ピシャリ、と言われて流石のロイも口篭る。
リンク「でもマルスさんが!」
アッシュ「リンクさんも落ち着くっス!いつもの貴方らしくないっスよ!」
リンク「落ち着いて…いられるわけないでしょう!」
フォックス「仲間がやられて黙っていられるか!」
スマイル「ぉわったったっ」
スマイルはインラインスケートを履いているので、ちゃんと押さえきれずフォックスに引きずられている。
男がそれを見て、ニヤリと笑み、短く呪文を唱える。
続いて、注意の散漫になった者達へと右手を掲げ、小さな火球を幾つも放った―――その時。
ニャミ「バカー!!」
『バコッ!ドキャッ!』
素晴らしく良い音がして、リンクとフォックスが背中から殴られ、押さえている二人ごとよろめく。
この光景に男は、思わず次の魔法の詠唱を忘れてしまう。
火球がニャミ達に当たる前にムラサキが魔法で相殺したが、ニャミは何やらまだぶすけている。
リンク「びっくりした…」
ニャミ「数年前のあの時も、そうやってケガした人がいたんだからっ」
フォックス「!」
ニャミ「ロイも!仲間が大切なら、急がば回れっ」
…用法が若干ずれているような、と何人かが思ったが、誰も言わなかった。
男「数年前…とは、もしや3年前の事か?」
ユーリ「…終わりはそのくらいだったが…何だ?」
ユーリが警戒しながら応じて、男は「やはりか」と軽く頷いた。
アッシュ「それが何だって言うんスか」
男「あの時この世界に来た怪物は…俺が送り込んだ。勿論先刻のものもな」
ムラサキ「…え……?」
男「とは言っても、昔のは手違いで送っただけなのだがな。現在のこの世界に送るのが本来の目的だ」
スマイル「どういう事?それって少なくとも、数年前の…戦争に近かったあの状況は、君が作ったって事だよね?…しかも手違いで」
凄惨なあの時は……
うっかり、とか、つい、では済まされないはずで。
アッシュ「何人も大怪我を負ったり…時には亡くなったッス。それなのに何でそんなに平気そうに…!」
ニャミ「何であんなの送ってきたのよ!」
男「それは言えないな。…ただ、俺はお前らが邪魔だ」
アッシュ「なっ……」
男に、理由は違えど全員分の怨みの篭った視線が集まる。
ロイ「…なぁ。よく分かんねぇけど、つまりこいつは許しちゃいけねぇって事だよな?」
ムラサキ「そうね」
ムラサキが頷いて、直後にユーリが指示を出す。
ユーリ「接近戦に行ける者は全員そちらへ。男に攻撃する者と、マルス…だったか…?を救出する者に分かれろ。遠・中距離メンバーはサポート」
ロイ「待ってましたっ!俺は攻撃に回る!」
ロイが剣を構えて走り出す。
その後を慌ててアッシュが追い、リンクとフォックスは隙を見てマルスの元へ向かおうと距離を置きつつ様子を窺う。
ユーリは呪文を唱え、ムラサキはすぐに対応できるよう、無呪文の魔法を構える。
スマイル「…ムラサキ、大丈夫なの?」
ムラサキ「ええ。…それで貴方は何を?」
相手の方に向かわず、ムラサキの側に立っているスマイル。
スマイル「ヒヒヒ。…すぐ終わっちゃうからね」
ムラサキ「……、?」
訝しげにスマイルを見るが、彼はそれきり黙った。
アッシュが低姿勢になって男の足を蹴ろうとして、男が飛び退く。
瞬間、ロイがアッシュを飛び越えて剣を振り上げた。
男は、剣に対して十字になるように右腕を自分の前へと出した。
ロイ「…!」
剣が男の右腕に食い込み、思ったより簡単に骨の向こうへと達した。
男は剣を引き抜いて後ろへ下がり、ニヤリと笑う。
皮しか繋がっていないはずの腕は…見る間に繋がってゆく。
男「そんなに焦るな。今回は挨拶だ」
言って、何かの魔法を展開させる。
恐らく、気付かれないように呪文を唱えていたのだろう。
男「俺の名はビトレイ。…次に会う時は、少しくらい相手をしてやろう。美味い生気も戴けた事だしな」
フォックス「待て!」
男は、フォックスの制止も聞かずに、展開させた魔法の光に包まれ…光が収まった時には姿を消していた。
ユーリ「…くそ…」
ユーリが呟き、ムラサキはそれを一瞥してからスマイルに向き直る。
ムラサキ「…あの魔法…ワープを使う事を、貴方は分かっていたの?」
スマイル「ヒヒヒッ。魔力の流れを掴むのは得意だからサ。…止めても止まらなかったでしょ、今の戦いは。」
ムラサキ「…」
ユーリの後ろに居たニャミが、マルス救出グループに加わった。
間もなく、
『パキッ』
自然にクリスタルにヒビが入り、粉々に割れた。
欠片は虚空に溶けて消え、中に居たマルスが落ちてくる。
下に居たフォックスは両腕を伸ばしてマルスを受け止めた。
リンク「マルスさんっ!」
ロイ「おいっ、大丈夫か!?」
少し乱暴にロイが肩を掴んで揺すると、マルスは小さく呻き声を漏らす。
ユーリ「ダメージは大きそうだが…命に関わる程ではないようだな。」
その言葉を肯定する様に、マルスはゆっくりと瞳を開く。
フォックス「気付いたか!?」
マルス「…ここ……は?」
そう呟いて辺りを見回す。
その途中でユーリ達の顔を見て首を傾げる。
マルス「この人達は…?」
スマイル「また一から説明だねー。」
ロイ「実はな…。」
今の状況を説明しようとロイが口を開く。
ロイ「寝てる間にこの世界に飛ばされて、宝石の欠片を探してるんだ。」
・・・ハショり過ぎだろ。
この場に居た全員が心の中で突っ込んだ。
否、ロイ本人ともう一人を除いて。
マルスは2、3度頷き、「そんな事が…。」と呟いている。
…分かったのかよ。
ロイとマルスを除いた全員は、再び心の中で突っ込みを入れる事になった。
ムラサキ「…とにかく、早くこの洞窟を出ない?詳しい事はそれからでもいいじゃない。」
アッシュ「そうッスね。」
なら急ごう、と全員出口に向かって歩き出した。
歩けそうにないマルスは、ロイが背負っている。
そのついでなのか、ユーリ達の事をマルスに話している様だったが、「この世界にはMDっていう神が居て…」と聞こえていた辺り、かなり信頼性は低い、と一人溜息をつくフォックスだった。
ニャミ「流石に雨も止んでるね。」
洞窟を抜けたニャミは嬉しそうにそう言うと、相変わらず押していたスマイルの背中を強く叩いた。
スマイル「うわぁっ!ひっどいなー。」
バランスを崩して倒れたスマイルは頬を膨らます。
アッシュ「本当に長かったッスねぇ。」
ムラサキ「それで、町はどこにあるのかしら?」
ニャミ「こっちだよ!さー皆、もう少しガンバロー!」
マルス「あ、僕もここからは歩くよ。」
ロイ「わー!無理すんなって!俺全然疲れてねぇし!」
自分で歩こうとするマルスを慌ててロイが背負い直す。
スマイル「そうだよー!それにロイは怪り」
ロイ「だから力強い位にしとけってば!」
マルス「うわぁ!?」
スマイルの言葉を遮ると、ロイは町に向かって走り出した。
ニャミ「ちょっと!先に行ってどうするのよ!」
スマイル「ヒヒヒ。やっぱり怪力だね。」
楽しそうに笑うと二人も走り出す。
リンク「元気ですねぇ。」
フォックス「本当にな…。」
苦笑して、道標が走り去ってしまわない内に残りのメンバーも走り出した。
***
ニャミ「とうちゃーく!」
洞窟から徒歩20分のその距離を走りきることは(約数名が)無理だったので、途中から歩いて今に至る。
走る前から疲れていたムラサキと、ムラサキに歩調を合わせたアッシュも遅れて辿り着いた。
ニャミ「ディゼの町。お店の多さでは有名だよ。ここを過ぎたら本当に何の町も村もないから、しっかりショッピングして行こうね!」
フォックス「しかしこれ以上荷物を増やすと大変じゃないか?」
ニャミ「……うーん………、ま、どうにかなるって、多分!」
スマイル「元気に不安要素放置しないで下さいなー」
ニャミ「あははー…。だよね、さすがにこれ以上増えると旅に支障が出るかも…」
でも人数も増えたから買い足さないわけにはいかないし、と腕を組む。
アッシュ「…今思ったんスけど、ユーリって魔法で亜空間に物を仕舞えたんじゃ…?」
アッシュがぽつりと呟き、一同は少し固まる。
リンク「え、それはつまり…?」
アッシュ「わざわざ持ち運ばなくても、魔法でいくらでも楽に運べたって事ッスよ」
ロイ「マジかよ!今まで荷物持ちやってきた意味は!?」
マルス「う…、あまり耳元で騒がないで……」
ロイの背で思わず呻くマルス。
顎をロイの肩に乗せていたので、余計に頭に響いたらしい。
ロイ「あ、わりぃ、つい。…で、さっきの話は本当なのか?ユーリ」
ユーリ「ああ。…すっかり忘れていた。長い間使っていなかったからな」
言うと、荷物を持っているアッシュとフォックス(本当はフォックスでなくロイが持っていたが、マルスを背負ってさっさと行ってしまった為フォックスが引き継いだ)に歩み寄って、荷物を降ろすように指示した。
そして短く呪文を唱えると、大きなリュック二つに手をかざす。
すると、瞬きをする間もなく綺麗さっぱりとリュックは消えた。
まるで初めからリュックの存在などなかったかのようだ。
スマイル「お見事ー」
スマイルがパチパチと拍手をした。
ユーリ「動物や大きすぎるものは運べないが、量と重さは無制限だ。出したい時は私に言ってくれ」
リンク「でも、よく出し入れする物は私やニャミさんのようにナップサックに入れて持ち歩いた方が良さそうですね」
フォックス「ナップサック自体が足りない事だし、行くか」
そして一同は、ディゼの町の入り口をくぐる。
〜To be continued〜
<幻作の呟き。>
うわああぁ!!懐かしすぎて顔から火が!!これ書いたの、去年(2005年)なのですよ!
何だか「数年前の戦い」の事が妙に出張ってますね。オリジナル設定妙に濃くてすいませんですハイ。
今回短めですが、シリアスパートは一旦終了です。こっからはギャグパラダイスに!!
お楽しみに。
UPした日:2006.6.10
それでは、ここから先はいつもの様にリアルタイムのアトガキを。
ちなみにネタバレになるような部分等は例によって消しておきますゆえ。
<リアルタイムなアトガキ。>
幻:うあー、ようやくマルスさん外気に触れましたよー。
ニャミさんがお母さんでしたねー。うひひー。
男の名も出ました。ビトレイ。うーむ、あの腕は一体どうなって…?
…そして、数年前の戦いに繋がる。あの戦いはどうやら思ったより悲惨だったようです。
さーて、次でマルスは地面に真っ逆さまか、誰かが受け止めるのか!?
マスターボールに入った幻作は、のんびり持ち主に揺られつつ眠りますよ。 2005.9.26
闇:フォックスが受け止めてマルスは無事でした!おめでとう!ありがとう!(何
やっと洞窟抜けたねー。いよいよ心躍る町での一夜v(笑)
しっかし男の再生能力はスゴイね〜、ヘビ並み!!
野生のミュウツーを見つけた!行けっ幻作サマ!君に決めた!(爆)
(てか後書き短―!いや、最初の頃はこの位だったカナ?)
幻:あー、久々に短い。なぜかネタが出ねぇ。うー? さぁ、ビミョーなシーンでパスユー!
さーて、今回は町に着きましたねー。どんな町なのかはお任せ!(コラ)
普通にエスカレーターとかあるのか、それともRPG風なのか。
そしてお疲れズ(ムラサキ&マルス)はどうなる。…次のノートに行きたかったなぁ……
幻作は、ボールの外に出た直後にミュウツーをオトモダチにしようと奮闘し始めた! 2005.10.4