another world story
〜pop’n&smash〜
第6話
ムラサキ「!」
ニャミ「どうしたの?」
突然立ち止まったムラサキに不思議そうにニャミが問いかける。
ムラサキ「静かに。…何か聞こえるわ。」
そう言われて耳を澄ましてみると…確かにカサカサ、という音が聞こえた。
しかも、その音は徐々に大きくなっている。
と、いう事は。
ニャミ「ひょっとして…」
ムラサキ「まさか、こんなに早く来るとは思わなかったわ。…絶対に私から離れないで。」
音が止まった。
恐怖からムラサキにニャミがしがみつこうと一歩近付いた瞬間、それが戦闘開始の合図となった。
ニャミ「きゃあぁー!!」
ムラサキ「!」
一斉にサソリ達が姿を現した。
恐らくユーリ達との戦いに参加せずに、こちらに来たのだろう。
ムラサキ「(数は…6匹ね)」
数はそんなに多くない……いや、現在は多いと見るべきか。
ムラサキ「それにしても…」
ムラサキは右手を前に突き出し、瞬間的に魔力を込めながら呟く。
ムラサキ「数年前の、あの生き物とそっくりのようだけど…これは今回の件と何か関係があるのかしら?」
ムラサキの手のひらから透明な球体がいくつも作り出されて、サソリへと飛んでいった。
魔力を圧縮して作られたそれは、2匹のサソリを、まるで強い力で殴打したかのように吹き飛ばした。
間をあけず同じ球体を作り、それを矢の形に変えてサソリの急所を射った。
ムラサキ「まずは2匹。…まさか実戦でブランクを取り戻す形になるとはね」
ニャミ「す、凄い・・・」
素早くムラサキの後ろへ逃げながら、ニャミは感嘆する。
しかし落ち着く暇を与えず、残りの巨大サソリ達は襲いかかってきた。
ニャミ「きゃーっ!?」
思わずムラサキの背にしがみついて喚くニャミ。
ムラサキは気にせず、尾を振り上げているサソリから順に先程の魔法を撃ち込んでいった。
ムラサキ「…さすがにこれだけの数を一人で相手するのは少し無理があったかしら」
先刻から使っているこの魔法は、『無』の属性。
呪文の詠唱は要らないが、自分の魔力を具現化してぶつける、言わば魔力の物理攻撃のようなものなので、攻撃力は他の属性に比べて低い。
勿論威力の高いものもあるが、それでは同じ無属性でも呪文の詠唱は必要となってくる。
呪文が要らないのは無属性の初級のみだ。
が、呪文の要らない初級魔法だとサソリの弱点である腹を一回の魔法で仕留める事は難しい。
先の2匹のように、最低でも吹き飛ばすか何かしてからでなくては。
ムラサキ「まるでモグラ叩きだわ」
1匹を吹き飛ばせば、残りが攻撃を仕掛ける。
そちらを撃てば、さっき吹き飛ばした方がその間に体勢を立て直す。
最初の2匹はうまくいったが、残りの4匹がどうにもならない。
ニャミ「あの……もしかして苦戦、してる?」
ムラサキ「死んだら神を怨みなさい」
ニャミ「うそぉ!?いやーっ」
ニャミが叫ぶ中、ムラサキは魔法を撃ち続ける。
その時、1匹のサソリがその間をかいくぐって間合いを詰めてきた。
速度は緩まない。体当たりをするらしい。
ところがムラサキは魔法を撃たない。
ニャミ「ちょ、ム、ムラサキっ!?」
焦ったニャミが声をかけるが、ムラサキは何かをぶつぶつと呟くのみ。
そしてサソリは、もう目前に。
ニャミはぎゅっと目を閉じて、一層強くムラサキの背にしがみついた。
刹那、
『ザゴッ、ドスッ、ゴォッ!!』
凄まじい音と、続いて奇声。
ゆっくりと目を開けば、そこには縦から綺麗に真っ二つに切れたサソリ達。…ちなみに全滅。
ニャミ「…えっと、今何が…?」
何も見ていなかったので状況が掴めない。
助かったという事は分かるのだが。
ムラサキ「風魔法よ。私だって何も考えずに戦ってたわけじゃないわ」
ニャミ「いつの間に…」
ムラサキ「無属性魔法を連射している間に唱えたの」
ニャミ「…え、いくら呪文の要らない魔法を使ってる時だったとはいえ、一度に2つの魔法を同時進行させるなんて早々できる事じゃ…」
しかもこの威力は中級に相当する。
ムラサキはそんなに実力のあるものだったのだろうか?
それにしては数年前の戦いの時にムラサキの話を聞かなかった。
それだけ強いなら噂だけでも耳に届くはず。
じっとムラサキを見上げると、ムラサキは「何?」と振り返った。
ニャミ「あ、何でもない…」
言ってから、どうして尋ねなかったのかと後悔する。
別に困るような事はないからいいだろうと思えばそれまでだが、この時は少し気になった。
が、尋ねようと口を開く前にムラサキが言った。
ムラサキ「そろそろ放して貰えると嬉しいんだけど」
ニャミ「あっ、ごめん!」
ムラサキの背にしがみついていたのを忘れていた。
着物がシワになっているどころか、少し着崩れている。
ニャミが着物を放すと、ムラサキは手早く崩れを直して歩き出す。
ムラサキ「こっちに6匹も来たって事は、向こうも戦ってるだろうし、早く行きましょう」
ニャミ「うん」
早足で洞窟を進み始める二人。
ニャミは、何度も見たはずなのに見慣れない怪物の屍骸達を見ないようにして。
アッシュ「こいつで…最後っス!」
その声と同時に何かが割れたような嫌な音が響き、一匹だけ残っていたサソリは息絶えた。
ユーリ「……終わったようだな。」
自分達以外に動くものがない事を確認して、ユーリは詠唱を止める。
辺りは先程までの戦いが嘘のように静まり返っていた。
フォックス「皆、ケガはないか?」
スマイル「大丈夫だよー。」
ロイ「俺も…大丈夫だけど……。」
歯切れ悪くそう言うと、ロイは顔を伏せる。
心配したリンクが傍に寄ろうとするが…。
ロイ「剣が刃こぼれしちまった…。」
『・・・・・・・。』
顔を真っ青にしてそう言うロイに、全員どこから突っ込めばいいのか分からずに固まった。
ロイ「やっべー!手入れしてなかったから…。」
リンク「あ、あのロイさん?」
ロイ「やっぱりサソリの尻尾斬ろうとした時だろうな。すっげー硬かったし。」
リンクの言葉を無視しているのか、本気で聞こえていないのか…恐らく後者だろうが、ロイはぶつぶつと呟いている。
ロイ「…でもまぁ、剣は斬ってなんぼのもんだし…これ位いいか!」
自分なりに結論を出したらしく、ロイは剣を鞘に仕舞った。
そして全員の顔を見て首を傾げる。
ロイ「何固まってんだよお前ら。」
クレイジー「………?」
男「どうした?」
突然立ち上がったクレイジーに、男は瞳を閉じたまま話し掛ける。
クレイジー「あいつら倒されちゃったよ?」
そう言うとクレイジーは男を見る。
クレイジー「まさか、あれだけしかいないとか言わないよね?」
男「…まさか。あいつらはほんの一部だ。」
男は瞳を開いてそう言う。
その言葉にクレイジーはにんまりと笑った。
クレイジー「そっかー。…じゃあさ、一匹俺に頂戴?無駄にはしないからさ。」
男「別に構わない。」
クレイジー「本当?…これでもっと楽しくなるね。」
まるで新しい玩具を与えられた子供の様に、クレイジーは楽しげに笑った。
……その瞳は狂気に満ちていたが。
ニャミ「あっ、見て!奥から光が見えてきたよ!」
やっと追いついたね、と付け加えて、ムラサキの着物の袖をツンと引っ張るニャミ。
しかし、返事がない。
訝しく思って見上げてみれば、ムラサキはかなり疲れた顔をしていた。
ニャミ「疲れた?休む?」
ムラサキ「いいえ…少し魔力を使いすぎただけだから」
ニャミ「そりゃ、あれだけ無茶な事をすればね…。やってることが上級者だったもん」
初級魔法を連射しながら中級魔法を唱えるなど、滅茶苦茶だ。
ムラサキ「やっぱり全然自分の魔力の限界が分からなくなってるわ。実戦で試すのは無謀だったかしら…」
ニャミ「数年もブランクあったんだしね」
ムラサキ「………ええ」
ニャミ「?」
ムラサキの返答までに何秒か間が開いた事に、ニャミは首を傾げた。
しかしムラサキはその事についてそれから何も言いそうになかったので、諦めて前を向く。
ニャミ「…でも、本当につらかったら言ってよ?じゃないと旅なんて続かないし」
ムラサキ「分かったわ…」
前方からの光が強まる。
…同時に、死臭も。
それは恐らく、ユーリ達の方を襲ったサソリのもの。
ムラサキ(これくらいで限界なんて言ったら…私は魔力を持った意味を、今度こそ失う事になる)
思いながら、ムラサキは数年前の戦いの場での記憶を蘇らせていた。
アッシュ「とりあえず皆無事でよかったっス」
リンク「あとはムラサキさんとニャミさんですね…」
ユーリ「…おい、今向こうから声がしたぞ」
ユーリが、サソリの死骸の向こう側の道に目を遣って言う。
全員がそちらへ視線と耳を集中させ、じっと待ってみた。
…わずかに話し声と足音が聞こえる。
やがて、こちらに近付いてくるムラサキとニャミの姿が見えた。
ロイ「おっ、迎えに行くまでもなく来たな」
フォックス「明かりを持っていたのか?」
ユーリ「…明かりというよりは……」
オレンジ色の光を見ながら片眉を上げるユーリ。
ユーリ「…攻撃魔法か?」
スマイル「わぁー、危険物同時歩行中だー」
リンク「歩いてはいないと思いますけどね、魔法は」
リンクがさり気にツッコミを入れ、次にこちらへ歩いてきているムラサキの顔を見て少し驚く。
リンク「どうしたんですか?そんなに疲れた顔をして」
ニャミ「さっきちょっと怪物と戦ったんだけど、その時に魔法を沢山使ったから疲れたみたい」
ロイ「大丈夫なのか?」
ムラサキ「ええ。これくらいは」
アッシュ「そっちにまで敵が回っていたんスね…。一応休んだ方がいいっスよ」
ムラサキ「なら、早く町へ行ってそこで休みましょう。その方がゆっくりできるわ」
先程まで浮かせていた明かり代わりの火魔法を発動させずに消滅させ、一つ溜息をついた。
その場の明かりは、ユーリが出した二つになる。
片方は迎え用だったので、ユーリは二つの内一つを消した。
ニャミ「そっちは無事だったの?」
ニャミが尋ねると、フォックスが一度こくりと頷いた。
フォックス「特にケガはない。…それより、ここから先にまだ奴らがいるかどうかが心配だ」
スマイル「うーん、でもそれならここで止まってるのも危ないし、早いとこ抜けた方が無難かもね?」
ニャミ「なら、さっさと行っちゃおう!3分の2は来てるはずだから、もうすぐ出られるよ」
そして、インラインスケートを履いているスマイルを押して先頭に立たせ、スマイルの背を押しながらパーティーの前方を歩き始めるニャミ。
スマイル「ちょっと待って、何で僕?」
ニャミ「押しやすいから!んでもって、私が一番前にいるのは恐くて嫌だから!」
スマイル「えーっ」
納得のいかない声を出すが、ニャミはそのままスマイルを押していく。
少しして、呆気に取られていた残りのメンバーもついていった。
男「コイツの生気は上質だな…」
クリスタルに閉じ込めた青年から生気を吸い上げながら、満足気に笑む男。
サソリ達も少しずつ吸った後なのだが、どうやらこの青年は一般の人間ではないようだ。
かなり憔悴しているものの、まだ死にそうにない。
その上、この青年の生気はかなり上等だ。
もっと吸っておきたい所だが……
男「もう来てしまったか」
ニャミ「あれ?何かこっち明るいね?出口はもう少し先なのに…」
ユーリ「…待て!」
不思議そうに明るい方へ向かおうとするニャミを、ユーリの鋭い声が止めた。
その声に驚いて足を止めたニャミの目の前に、炎が飛んできた。
もしそのまま進んでいたら……。
体の力が抜けて座り込んでしまったニャミの傍に全員が駆け寄る。
フォックス「おい!大丈夫か!?」
ニャミ「あ…う、うん。」
リンク「……残念ですけど、ゆっくり話している場合じゃなさそうですよ。」
そう言ってリンクは剣を抜いてニャミの前に立つ。
目の前には…見知らぬ男の姿。
男「食事の途中に邪魔をするとは…中々無礼だな。」
スマイル「食事〜?」
何の事やら、といった風なスマイルに男はニヤリと笑うと自分の後ろにあるクリスタルを見せる。
その中に閉じ込められている人物を見た瞬間、フォックス、リンク、ロイの3人の表情が驚きに変わった。
リンク「な……。」
アッシュ「どうしたっスか!?」
明らかに動揺している3人にアッシュが話し掛ける。
リンク「…あそこに閉じ込められている人が…最後の1人です。」
アッシュ「えっ!?」
ロイ「そういう事だよ…。」
腰にさげていた剣を構えると、ロイは男を睨み付けた。
その表情は普段のロイからは考えられない程厳しいものだった。
ロイ「てめぇ…、マルスに何をした!!」
〜To be continued〜
<幻作の呟き。>
あー、真面目シーンが続きますね。
ムラサキ姐さんの謎は深まるばかり。書いていて楽しいです。
てか、実は既にこれより随分先の方まで書いてあるのですが、読み返すと色々楽しいですねー。
…そういえば言い忘れていたのですが、サソリを放った敵男さんはカジカではないですよ。
洞窟に居て、しかも男で、クリスタルなんてモンを扱ってますが。
オリジナルさんです。じゃないとファンに殺されr(省略)
では、戦闘を過ぎたらギャグに入るのでお楽しみに!!
UPした日:2006.2.11
それでは、ここから先はいつもの様にリアルタイムのアトガキを。
ちなみにネタバレになるような部分等は例によって消しておきますゆえ。
<リアルタイムなアトガキ。>
幻:長期間持っててスマヌな幻作どす。
戦闘シーンしか書いてねェ気がします。楽しかったけどね!
ムラサキの謎がどんどん深まりますねー。ウヒヒ。今回は比較的短く仕上がった…つもり!(ェ)
さーて次回は合流か!?どうなるポプ&スマデラキャラ達っ!!
…返事が出来なくなった。どうやら幻作はただの死体のようだ。 2005.9.8
闇:ロイの事ばっか書いてて、合流させそびれた闇星です(逝
謎が謎呼ぶムラサキ姐さん!いいねぇ〜、そういうキャラ個人的に好きです。
元々の原因(?)のMZDとマスターの神様ズは中々出番ないねー。
まぁ、そーでないと話が進まないから仕方ないか。ではこの辺で。
闇星はモンスターボールで幻作サマをゲットしてポケモンセンターへ向かった!←(!?)
幻:球体の中に閉じ込められてて空気が呼気で生ぬるくてダウン中な幻作です。
合流しましたよパーティー!!更にあの人も出てきそうですよオクサマ!(誰)
ロイが愛しくて仕方がありませぬ。アフォ純粋好きすぎます。ぐは。
さーて、町は恐らく近い!(?)頑張れ皆!(何) 2005.9.16
闇:よーやくマルスさんが出せました闇星香夜です。(何故フルネーム!?)
今回はかなりスマデラメンバー寄りになっちゃいましたっ!……ま、いっか(逝けよ)
私もアホ純粋好きですよ♪だって書きやすいし。
何だかまた戦闘シーン入りそうですが頑張れや(誰!?)
幻作サマを捕まえたボールがマスターボールだった事に気付いた!(ぇ