another world story
〜pop’n&smash〜
第5話
スマイル「雨降ってる中でのインラインスケートはちょっと無謀だったかな……。」
荷物の無事を確認するロイの後ろで、髪をぎゅっと絞るスマイル。
コートの裾には所々泥が跳ねてついていた。
アッシュ「この洞窟、随分奥まで続いてるみたいっスね」
ニャミ「うん。ちなみにこの洞窟を抜けて20分くらい行ったら小さな町があるよ。買い忘れとかがあったらそこで買えるけど、行く?」
リンク「買い忘れ…は、無いと思いますが…」
ニャミ「そっから先は町や村自体が全くないからね。南西だし。1週間は歩かなきゃなんないから、そのつもりでしっかり心の準備まで整えておくように!」
ロイ「マジで!?」
フォックス「念の為に行っておくか」
ユーリ「洞窟を抜ける頃には雨も止んでいるだろう。行くぞ」
しゃがんでいたメンバーは立ち上がる。
ロイもアッシュも、荷物の無事を確かめ終えたようですぐに立った。
……が。
リンク「あれ?ムラサキさんは?」
ニャミ「お化粧が雨でぐちゃぐちゃになったから、どうせなら全部落としてくるって洞窟の外で雨に打たれてるよ。私がここに残ってムラサキを待つから、皆先に行ってて」
アッシュ「分かったっス。じゃ、これを渡しといて下さい」
アッシュは荷物の中からタオルを1枚取り出し、ニャミに手渡した。
ニャミ「OK。すぐに追いつくからねー」
手を振り合って、一行はニャミを置いて奥へと進んでいった。
ニャミ「…あー、それにしてもよく降ること」
洞窟の外へと振り返ったニャミは、晴天の中で光る雨粒を見て、そう呟いた。
?『……ここは…。』
ピーコックブルーの髪を持つ青年は、ぼんやりと瞳を開いた。
そしてすぐに、自分が水晶の中に閉じ込められている事に気付いた。
?『僕は…どうしてこんな所に…?』
状況が全く理解できず、青年は何故かうまく働かない頭で昨日の事を必死に思い出した。
?『昨日はいつも通り…ロイとリンクと剣の手合わせをして…それから…。』
しかし、いくら思い出しても、今自分が置かれている状況と全く話が繋がらない。
?『……何だろう、凄く…眠い…。』
体中に力が入らず、青年はそれを最後に眠りについた。
誰かの視線を感じながら…。
男「眠ったか…。」
男は水晶の中の青年が瞳を閉じたのを見て、くるりと後ろを向いた。
そして岩陰に向かって口を開く。
男「ところでお前はいつまでそこにいるつもりだ?」
少しの間があり岩陰から誰かが姿を現した。
?「さすがだねぇ。気配は消してたんだけど。」
その人物の腕には、白い髪の青年…マスターが抱えられていた。
そしてその人物の容姿は、マスターと酷似していた。
男「…連れてきたのか。」
?「いけない?あんたに迷惑はかけないと思うけど。」
そう言って、その人物はクスクスと笑う。
男「責任を持てるのなら、問題はないな。」
?「でしょう?俺はあんたのする事に文句は言わない。だから、俺もオモチャで勝手に遊ばせてもらうから。」
男「好きにすればいい。」
?「ありがとう。」
男「…そういえば、お前の名前を聞いていなかったな。」
男の言葉にその人物は、そうだっけ?と首を傾げた。
?「んー、まぁいっか。俺はクレイジー。こう見えても『神サマ』だっていうのは話したよね?」
男「あぁ。…世界の理を外れた狂神というわけか。面白い。」
クレイジー「どーも。」
自分が狂神だと呼ばれた事が気に入ったのか、子供の様に笑って周りを見回した。
クレイジー「さっきから気になってたんだけど、サソリの怪物みたいな奴らはどこに行ったの?」
男「食事にでも行ったんだろう。…まだ少し早いが、本能のままに動くあいつらを止めておく事は難しいからな。」
暗闇の中に、狂った者の笑い声が木霊した。
ロイ「ほ…本当に長い洞窟だな。」
額に浮かぶ汗を拭きながら、ウンザリした様にロイが呟いた。
リンク「一本道なだけまだましですけどね」
洞窟の中は真っ暗なので、ユーリが軽い光魔法を使った。
平べったい円形の光の塊が頭上にふよふよと浮いて、かなりの範囲を照らし出している。
スマイル「ニャミちゃんがいたら現在地点も分かったのかなぁー。どこまで来たんだろ」
フォックス「半分は来てる…と、思いたいな」
こんなに進んでしまって、大丈夫だろうか。
ニャミ達はもうこちらに向かってきているだろうか。
…いや、一本道だしニャミはいるし、心配する点は何もないのだろうが、何だか子供を置いてきたような感じがしてならない。
メンバーの中で数少ない女性だから、というのもあるかもしれない…が、
そういえば、彼女達は明かりとなる物を持っていただろうか?
フォックス「誰かもう一人くらいニャミとムラサキの方についた方が良かったんじゃないか?」
アッシュ「心配性っスね、フォックスさんは」
フォックス「いや…向こうが明かりを持っているのか疑問に思ってな」
一同『・・・・・・・・・』
フォックスの一言でピタリと動きを止める一同。
ロイ「そういやニャミは魔法使えないし、ムラサキはどんな魔法使えるか知らないし…」
アッシュ「懐中電灯とかも当然持ってないっスよね…」
スマイル「今頃入り口付近で立ち往生してたりして」
そして再び沈黙が流れる。
ムラサキはともかく、ニャミが恐がって先に進もうとしない様はありありと想像できた。
ユーリ「…引き返すか?」
ロイ「ここまで来てか!?」
リンク「でも、ムラサキさん達を置いていくわけにもいきませんし…」
スマイル「じゃ、ユーリにもう1個明かりを作って貰って、誰かがムラサキとニャミちゃんに届けに行く?」
アッシュ「そっスね」
その意見には皆同意した。…が、
ユーリ「…では、誰が行く?」
一同『・・・・・・』
ユーリの問いには返答できなかった。
ムラサキ「どっちにしたって来るまでに雨で濡れていたとはいえ、気持ち悪いわ」
すっかり肌に貼り付いた着物を、手で絞るムラサキ。
その肩には、ニャミから受け取ったアッシュのタオル。
ニャミ「しょうがないよ。それより風邪引かないように後で着替えなきゃ」
隣を歩くムラサキを見ながら、そう返すニャミ。
…正直に言うと、ムラサキは化粧を落としてもべらぼうに美しい為、ニャミは思わず見惚れていたのだった。
ついでに、男の子だったらリンクとかユーリが色々な面で好みだなぁ、等と勝手な事を考える。
しかしニャミには恋人がいるので、実際にはそうやって考えるのみだ。
ニャミ「…残してきちゃったもんなぁ…。しばらくは遠恋かも。いつもの事だけど」
ムラサキ「何?彼の事?」
言葉から察したらしい。
ニャミ「うん。ま、遠恋くらいじゃ終わらないって分かってるからいいけど。…ところで、ムラサキが使える魔法の属性って火だったんだ?」
少々暗いが、洞窟内はムラサキの出した火球によって照らされている。
二人の前に浮いているその火球は、何だか触れれば「熱い」だけでは済まされないような気もする。
ムラサキ「気をつけてね。それ、爆発させてないだけでただの攻撃魔法だから」
ニャミ「!!!」
ムラサキ「火属性に明かり専用魔法なんてないの。体が冷えないし丁度いいわ」
ニャミ(恐い…)
自分達の少し前を行く、頭の大きさくらいの火球に、腰が引けてしまうニャミ。
ムラサキ「ちなみに私が使える魔法属性は、火と風と無よ」
ニャミ「…え、無って…、自分の魔力を刃にして身に纏ったり、塊にして相手にぶつけたりする?」
ムラサキ「そうよ。無属性は小技なら呪文の詠唱を必要としない所が魅力的ね」
そんな会話をしながら、ニャミはムラサキの後ろへ隠れて歩き出す。
どうやら相当火球が恐いらしい。
ニャミ「ところで、さっきの雨で通信鏡は壊れてない?」
ムラサキ「大丈夫、あれは魔力で動くものだから水に濡れても何ともないわ」
ニャミ「そっか」
納得して頷き、しかしその数秒後に首を傾げる。
なぜムラサキは通信鏡が魔力を動力源にしていると知っているのだろう。
調べている様子など見ていないというのに。
鏡周辺の魔力を感じでもしたのだろうか。
…ニャミは自分が魔力等に疎い為、その辺の事はよく分からなかった。
ムラサキ「何してるの、早く行かないといつまで経っても追いつけないわよ」
ムラサキに言われて、自分の歩みが遅くなっていた事に気付く。
ニャミ「あ、はーい!」
足を速めて、ムラサキの背に慌ててついていくのだった。
ロイ「じゃーんけーん…ぽんっ!!」
掛け声と共に、ロイとアッシュの二人が右手を突き出す。
結果、ロイがチョキで…アッシュがパー。
ロイ「ぅおっしゃ!じゃ、後はよろしくなアッシュ♪」
アッシュ「うああぁぁぁ…!!!」
明らかな負けに、思わず悶えるアッシュ。
さっきから繰り広げていたジャンケンで、誰が洞窟の入口に明かりを持って行くかを決めていたのだ。
そして今、最後まで負け続けたアッシュにその役が決定した。
ユーリ「決まったならさっさと行け」
アッシュ「うぅ…。遠いなぁ…。」
盛大に溜息をつき、リュックを地面に降ろして「これ、よろしくっス」と言って踵を返す。
2つ目の明かりを引き連れ、入口目指して歩きだそうとした…その時。
リンク「待って下さい、何かいます!」
リンクが示したその先…本来の進行方向には、何かがこちらに向かって来ていた。
しかもそれは一体ではなく、明かりで照らせない奥の方までぎっしりと続いている。
ユーリ「…これは…」
フォックス「何か知ってるのか?」
サソリのようなその生き物達から後ずさりしながらユーリに振り向く。
ユーリ「数年前に突然来てこの世界を襲った奴らとそっくり…というか同じだ」
スマイル「MZDが全滅を確認したから、生き残りではないと思うけど…」
じりじりと近寄ってくるサソリモンスター。
リンク「何にせよ、この数ではこちらが不利です!逃げましょう」
一行はサソリに背を向け走り出す。…が、
『ザザザッ!』
あっという間にその先へと回り込み、サソリモンスター達は彼らを取り囲んでしまった。
ロイ「…戦うしかなさそうだな」
フォックス「あぁ」
スマイル「気を付けてね、口から発射される光線に当たったら生気を吸われて骨と皮になっちゃうから」
アッシュ「ちなみに尻尾の針には毒があるんで注意して下さい」
サソリモンスターは、アッシュが言い終わらない内に襲い掛かってきた。
ロイ「はっ!」
『ギャリギャリギャリッ』
サソリの尾を剣で受け止め、その勢いで横薙ぎに断とうとする。
が、存外にそれが硬くて出来なかった。
剣の刃とサソリの尾が擦れ合って嫌な音が響く。
ロイ「硬ぇっ!」
ユーリ「硬いのは尾だけだ。…接近戦及び臨機応変組は円になって戦え!何が何でもバラバラにはなるな!」
接近戦及び臨機応変組――この場合はユーリ以外の全員になる――は、頷いて戦いだした。
ユーリはその輪の中央で呪文を唱え、魔法を繰り出してゆく。
スマイル「うわっ、わわっ!!」
スマイルはどこからか出してきた短剣で応戦していたが、こんなに大きな怪物が相手だとかなり無理がある。
防戦…というより逃げに回りかけて、遂に別のサソリから毒針がスマイルの背めがけて伸ばされる。
―――瞬間、
『ガンッ!』
サソリの尾は軌道を逸らされた。
スマイル「えっ?」
突然の事に何事かと思ったスマイルは、自分の足元に矢が落ちている事に気付いた。
リンク「大丈夫ですか!?」
そう言って駆け寄ってくるリンクの手には弓が握られていた。
スマイル「ひょっとして…矢でサソリの尾の軌道を逸らしてくれたとか?」
リンク「え?えぇ、そうですよ。」
スマイルの質問に、リンクは当たり前のように頷く。
そしてスマイルの無事を確かめると、すぐに元の場所へと戻っていった。
スマイル「……すごっ…。」
思わず口から漏れた感想。
ふとフォックスの方を見ると、サソリの目を銃で撃とうとしている所だった。
それは見事に直撃し、サソリは奇声を上げて仰け反る。
その瞬間ロイがサソリの腹めがけて剣を突き立てた。
全身で一番柔らかい腹を刺されたサソリは、そのまま絶命する。
スマイル「凄いコンビネーション…」
さすがに戦い慣れしている者は違うなぁ、とスマイルは感心する。
スマイル「でも…僕達も負けてないよ!」
コートの中に手を伸ばし、ヒヒヒ、と笑うとスマイルは数匹のサソリの中を通り抜けた。
…抜け終えた時にはスマイルは短剣を握っていて、サソリ達の足の腱を的確に斬っていた。
立てなくなったサソリに、アッシュは拳を叩き込み、次々と倒していく。
アッシュ「スマ、ナイスっス。」
スマイル「まぁね〜。」
ユーリ「皆、私から離れろ!」
詠唱を終えてそう叫ぶユーリに、全員その場を離れる。
瞬時にユーリを中心に激しい風が起こり、サソリを見えない刃で切り裂いた。
ロイ「すっげぇー!俺の知り合いにも風魔法を使える奴がいたけど、ここまで強力なのは初めて見た。」
アッシュ「さすがユーリっス!」
ユーリ「話している暇は無いぞ。次が来る!」
そう言うとユーリは再び呪文を唱えだした。
〜To be continued〜
<幻作の呟き。>
妙に長い文章を書きまくっています幻作ですー。
戦闘シーンは書くの好きですが、あまりに人数が多くて全員出せるか微妙です(コラ)
戦闘設定をポップン組につけ過ぎて、闇様が戸惑ったりしないかも心配です。
適当で大丈夫ですよ・・・!!どうせ幻作もそんなに考えてないですから!(貴様)
…いえ、魔法が発動する原理とか発動方法の相違とか、魔力の最大値の違いによる威力の高低の理由とかは考えてありますけどね。(嫌な所で細かいな)
使わないと思うので大丈夫です!
実はこれ、かなり前に書いた部分なので読み返すと矛盾点が既に見つかったりとか…(滝汗)
うあー、どうやって解消しよう。
…や、闇様に任せたー!!(コラ!!)
UPした日:2005.12.19
それでは、ここから先はいつもの様にリアルタイムのアトガキを。
(自分の番を書き終える度にルーズリーフに書いたアトガキの事です。どれがこのページ内のどの部分のアトガキかは推理して下さいまし)
ちなみにネタバレになるような部分等は例によって消しておきますゆえ。
<リアルタイムなアトガキ。>
闇:飛んできたフリスビーをジャンプして取ろうとして失敗し、更にそのまま頭から落ちた闇星です(無駄に長ぇ)
今回は敵側メインで行ってみましたー!!男は一体誰なんでしょうね!ドキドキワクワクの(表現古)展開デス。
それと某青髪王子様。今回も名前出せずっ!「ロイとリンク」で大体の正体は分かる様にした…つもり…なのです(爆!)
てか今更ですが「男≠クレイジー」ですよねっ。「男=クレイジー」じゃないっすよね!
シリアス好きデス♪勿論ギャグも(どっちや)
幻ちゃんの書く部分もとっても楽しみにございますv
フリスビー消失の為、矢文でパッシング!(危
幻:課外授業が終わって夏休み中ノート持っていることになった幻作です。
危惧していた事態が起こりました…! 長さ新記録!!(うわぁ)
これより長いのは出ない(出さない)ので…。うぅ、すまぬ…。
ちなみに、あの続きはご自由にお考え下さいませ。助けたのは誰でもOKです。勘でどーぞっ!
あー、ついに戦闘か…。楽しい。(ぇ)
あ、そうそう。ニャミの彼氏ってのはタイマーです。公式カップリング。
てなことで、アトガキくらいは長くならない内に終わります。
矢文を額で受け止めて幻作は倒れた! 2005.8.7
闇:新学期になりましたね〜、な闇星デス。
シリアスな戦闘シーンを書いたのはどれ位ぶりかしらと考えて、思い出せない程前だった事に気付く。
戦闘シーン難しいんだよ〜〜(涙)
あ、彼氏ってタイマーなんだ!何となくミミ(でいいんだっけ?)の彼氏だというイメージがありました。
ムラサキさん&ニャミ大ピンチですが…まぁ頑張って下さい(待
闇星は今夜の晩御飯をゲットした!(ぇー?