another world story
〜pop’n&smash〜
第3話
リンク「こちらに飛ばされた残り2名の内の1人はロイさんだったんですね!」
フォックス「ああ、間違いない!」
今、6人は走りながらムラサキの家に向かっている。
先程のニャミの話で、空から降ってきたのは、自分達の仲間であるロイだと確信したフォックスは、剣を持って戻ってきたリンクとスマイルに事情を話した。
そして、状況が全く掴めていないニャミに、今回の事を簡単に説明するとロイとムラサキの元へ向かう事にした。
そして現在に至っている。
ニャミ「あ!見えてきたよ!」
京都を思わせる静かな通りを走って見えてきたのは、大きな日本家屋。
…よく見ると、屋根に1つ大きな穴が開いている。
アッシュ「これはまた盛大に…」
スマイル「落ちたヒト無事なの?」
ニャミ「気絶してたけど、目立った外傷はなかったよ」
玄関前まで来ると、ニャミは入り口横の呼び鈴のボタンを押した。
『ビ―――』
低めの音が、ボタンの下のスピーカーと、少し離れた家の中から響く。
5〜6秒間を置いて、
ムラサキ『どなた?』
スピーカーから女性の声が聞こえた。ムラサキだ。
ニャミ「あ、私だよー。神は見つからなかったけど、さっきそっちに落ちてきた人の知り合いを連れてきたよ」
あとDeuilも。と付け足すニャミに、一同は(オマケかい)と心の中でツッコミを入れる。
ムラサキ『わかった』
スピーカーの電源がプツリと切れた。
それを確認して、ニャミは目の前の引き戸をガラガラと開く。
リンク「え、勝手に開いていいんですか?」
ニャミ「いーのいーの。どうせ玄関はまだ向こうなんだし、いつもこうだし」
戸の向こうには、小さな石の敷かれた庭。
人が通る所だけ平らで大きな石が道のように並べられている。
覗き込んで左を見れば小さな池、右には松の木。
ユーリの城とはまた違った荘厳さを感じさせる家だった。
ニャミ「行くよー」
さっさととも内に入って歩き出す彼女やスマイルやユーリに、慌ててついていくアッシュとスマデラメンバー2名。
ニャミはともかく、来慣れていないはずのスマイルとユーリが堂々としているのはなぜなのか。
『ガラッ』
表の戸から5〜6m行った所にある玄関戸が開いて、黒髪の女性が姿を現す。
ムラサキ「随分大人数なのね。さ、入って」
先に入って歩き出したムラサキを追う様に、一同は「お邪魔します」と中へ入っていく。
***
影「MZD…」
広いベッドルーム。
ベッドの上に横たわっているのは、神であるMZD。
MZD「だーいじょうぶだって。ちっと他人任せになっちまったが、奴らなら何とかできる」
細い声でそう言うと、MZDは深く息をついた。
そういう意味で言ったのではないけれど、と心の中で言い返しながら、しかし影は敢えて何も言葉に出さなかった。
代わりにMZDの身体を抱えるようにしてそっとそっと起こし、救急箱から取り出した包帯を巻きつけてゆく。
…彼の腹部には、大きな穴が開いていた。
―――世界と世界を繋ぐ宝石。それが壊れたのは決して事故等ではなかった。
向こうの世界の神…マスターハンドと今回の企画の打ち合わせをして、世界と世界の間の空間からこちらへ帰ってきた直後。
MZDは何者かの膨大な“力”によって腹部ごと宝石を打ち抜かれた。
それにより宝石は砕け、この世界のどこかへと散った。
欠片を追う為に回復を図ったものの、内臓が何とか機能を維持できる程度でストップ。
…宝石を砕いた者によって、神としての力を殆ど抜かれた為だった。
その力は、言ってみれば精神力のようなもので、休んでいればいずれ回復する。
が、相当な量をとられたので回復にかかる時間もそれに比例して長い。
何の目的があって宝石を砕いたかは知らないが、力が回復するまでその人物を放置するのは無謀だ。
残った力で出血を防ぎ続ける事や短距離ワープはできたので、彼なりの事後処理もとい事件委託をしたのだが…体力の方はそこで底をついた。
MZD「あぁ…やっべェ。宝石砕いた奴がいる事伝えるの忘れてた」
顔どころか姿もまともに見てはいないが、存在する事くらいは……
影「ソレナラ、『通信鏡』ヲ渡シテアリマス。…少シ休ンデ下サイ」
傷が擦れないという事だけしか意味を為さない、気休めの包帯を巻き終える。
痛みも、傷による熱もあるはずだ。
MZD「……あーもー…神だってのに情けねー…」
影「神ダカラ、ソンナニ元気ナンデショウ」
MZD「…まーな」
影が手伝って再びベッドへと横たわり、MZDは瞳を閉じた。
邪魔そうなサングラスをそっとはずし、影はベッドサイドの低い棚の上へとそれを置いた。
音を立てないように窓を開いて、風邪を受け入れる。
今、この世界とあちらの世界では何が起こっているのだろうか。
そんな疑問が、頭の中へと浮かんで渦を巻いた。
***
ムラサキ「実はさっきまでMZDはここにいたのよ」
スマイル「え?ってことはあの後すぐこっちに来たんだ」
木の廊下を渡って、穴の開いた部屋へと向かう一同。
家の中は、しんと静まっている。…自分達と問題の人物以外誰もいないのだろう。
ムラサキ「大体の事情は聞いたわ。それに、影がこれを渡してきた」
右手に握られていたそれを、くるりと振り返って見せるムラサキ。
フォックス「何だ?それ」
ムラサキ「『通信鏡』。MZDと連絡が取れるみたい。…コールは向こうから一方的で、こっちからは出来ないらしいけど」
アッシュ「それってかなり無意味なんじゃ…」
ムラサキ「省エネなんだそうよ」
リンク「はぁ…」
コンパクト状の青い鏡の載ったその手を引っ込め、ムラサキは再び前へと歩き出す。
そしてふすまの前まで来ると、軽くノックをした。
ムラサキ「ロイ、入るわよ。」
そう言ってリンクとフォックスに入る様に促す。
2人は顔を見合わせてから、勢い良くふすまを開けた。
リンク「ロイさん!!」
フォックス「ロイ、大丈夫か!?」
ロイ「んあ?」
2人の様子とは反対に、ロイは間の抜けた声で振り返る。
その口には…カマボコ。
フォックス「な・・・何してんだよ・・・。」
ロイ「何って…朝食をご馳走になってんだけど?」
フォックス「それは見れば分かる。」
全く状況が掴めずに固まってしまった3人。
ニャミ「あれ?目を覚ましたんだ。」
ムラサキ「えぇ。MZDが無理矢理ね。」
その言葉に『あぁ…あいつらしい(っス)』と、アッシュとユーリが頭を抑えて溜息をつく。
ロイ「あぁ、俺もそのMDとか言うのに俺も今回の事聞いたぜ。」
スマイル「MZDだよー。」
ありそうでない名前間違いをしているロイに、スマイルがすかさず突っ込む。
ロイは大して気にした様子もなく、お茶を飲む。
ムラサキ「まだ食べる?」
ロイ「あ、もういいよ。すっげぇ美味かったぜ!ありがとう。」
ニカッと笑ってみせるロイに、ムラサキも小さく笑う。
事情を知らない人から見れば、中の良い姉弟の様だ。
リンク「ところで…ロイさん、こちらに来ているはずのもう1人…誰だか分かりますか?」
ロイ「そういえば4人飛ばされたって言ってたな。…悪い、俺も気がついたらここにいたから…。」
リンク「そうですか…。」
スマイル「まぁ、そう気を落とさないで!もう3人も揃ったって考えなよ。」
沈みかけたムードをスマイルが盛り上げる。
そんな姿を横目に、ムラサキはそっとユーリに近付く。
ムラサキ「ねぇユーリ。今日、MZDの様子が少し変じゃなかった?」
ユーリ「…あぁ、何となくだがな。…しかし何も言わなかったから、私も敢えて何も聞かなかった。」
ムラサキ「そう…。」
アッシュ「2人共、どうかしたっスか?」
小声で話している2人にアッシュが問いかける。
ユーリ「いや、何でもない。」
アッシュ「?そうっスか。」
ムラサキ「そんな事より、気になる事があるんだけれど。」
口元に手を当て、考える様な仕草をしながらムラサキが言う。
ムラサキ「宝石は5つに散らばったそうだけど…見つけるヒントになる様な物はあるの?この広い世界で、小さな5つの欠片を情報も無しに探すのはあまり利口とは言えないわ。」
そういえば…と、その場に居た一同は考え込む。
宝石の存在は聞かされども、位置までは全く情報のない状態。
それはつまり……
スマイル「何だか特徴もよく掴めてないものを、張り切って全世界捜索してみようー!って感じ?」
ロイ「おー、何か絶望的なことになってんな!」
ユーリ「他人事ではない。お前も探すのだぞ」
ロイ「 え っ 」
フォックス(状況ちゃんと把握できてんのかコイツ…)
…それはそうとしても、スマイルの言った事は本当だ。
せめて何か特徴くらい分からなければ……
―――と、その時。
『トゥルルルルル…』
室内に響く音。
リンク「電話?」
ロイ「そんなはずねぇよー、この部屋には電話ないし」
ユーリ&アッシュ((そんなに細かく見たのか・・・?))
そしてよくよく聞いてみると。
アッシュ「………あの、失礼っスけど…ムラサキさんから聞こえてません?」
スマイル「腹時計?」
ムラサキ「それでも良いんだけど、どうやら違うみたいね」
スマイルの冗談をさらりとスルーして、ふところに手を差し込むムラサキ。
そこから取り出されたのは……例の『通信鏡』。
・・・・・・・。
ふところ。【懐】1.来た着物と胸との間。 2.包容力……
…等と辞書に載っているようなことを考える数名。
ニャミ「ムラサキ、そんな所に仕舞ったら胸の温もりが移ってるんじゃない?ある意味ヤバいよそれ」
男性一同(言っちゃった・・・!!)
あっぱれ女同士。男性陣にはとても言えやしない。
ムラサキ「着物にポケットなんてついてないの。それより開くわよ」
先刻から鳴り続けているコンパクト状のそれを、ムラサキはパカリと開く。
と。
MZD『おっせぇよお前ら』
フォックス「すまん。ちょっとあってな」
コンパクトの上蓋の、普通は鏡が入るであろう部分に、MZDの姿がテレビ画像のように映り込む。
下部にはスピーカー。そこから音声が出ていた。
MZD『どうせ電話か何かと間違ったんだろ。音変えとくべきだったな…』
・・・40%くらい当たりである。
MZD『で、本題に入るが』
ユーリ「急いでいるな」
MZD『世話係が部屋を出てる内に、と思ってな。見つかったらうるせーんだ』
アッシュ「また仕事サボって暇作ってるっスか?」
MZD『そんな所だ。で、今回の件の事だが…宝石は砕けたんじゃねぇ。砕いた奴がいるんだ。姿は確認できなかったが…存在する事くらい知っておけ』
言って、画面から外れる。
……短い沈黙。
ロイ「……おいMD?」
MZD『…MZDだ。俺は音楽記録用ディスクか』
画面下から再び現れるMZD。大きな溜息を零した。
MZD『…わり、寝不足。』
盛大な欠伸をしてから、MZDは『あー』と唸る。
ニャミ「あ、そうそう。神、宝石の特徴とか在り処とか分かんないの?探しようがないよ」
MZD『お?ニャミも手伝うのか』
ニャミ「えっ」
途端、ポンと肩に置かれるスマイルの手。
スマイル「まさかここまで来て手伝わないなんて言わないよね♪」
ニャミ「・・・・・」
…笑顔の圧力。ニャミは200の精神ダメージを受けた。
ムラサキ「それなら私も探すことになるのね。弟も当分帰らないだろうし別にいいけど」
MZD『で、在り処だが。今使ってるその「通信鏡」、実はさっき画面から外れた時に神の力で探知機を内蔵しておいた。裏にあるスイッチをオンにすれば光が出て方向が示される』
早速ムラサキが通信鏡を裏に返してスイッチを入れた。
通信鏡の先から赤い光が一筋伸びる。
ユーリ「この方角は…南西か」
MZD『欠片は水色だ。…んじゃ、後は頼んだ。元気でな♪』
スピーカーから声が聞こえた後、プツリという音が続く。
表に返せば、画像も音声も向こうから切られた後だった。
フォックス「切られたか…」
アッシュ「全く、他人任せな神っスね」
呆れ返るアッシュと、
スマイル「元気で…ねェ?」
すっ、と目を細めるスマイル。
スマイル(……そんな、死に掛けたヒトが言う事じゃないと思うんだケド?)
誰より魔力に敏感なスマイルは、MZDが城に来た時点で、彼の魔力が普段より随分と希薄なのを感じ取っていた。
ムラサキが通信鏡のスイッチを切り、光を断ってからまたふところにそれを仕舞う。
私のポケットに入れようか、とニャミが申し出たが、「あなたには大変だから」と断られた。
ニャミは子ども扱いされたと思い少しむくれるが、そんなにムキになる程でもなかった為素直に引き下がった。
ムラサキ「それじゃあ準備をするから、少し待っていて」
そう言うとムラサキは部屋から出て行った。
〜To be continued〜
<幻作の呟き。>
本当に、幻作って微妙な表現入れたがりますねー。
幻作が腐っているからなのでしょうが。(コラ)
そして長編ばかり書いていた癖が効いていてかなりの長文に。
うわーん!!本当に申し訳ないです!!幻作ばっかり長い!
もうちょっとブレーキ利かせないと…とかは思うんですけど…。くっ…。
UPした日:2005.8.9
それでは、ここから先は前回同様にリアルタイムのアトガキを。
(自分の番を書き終える度にルーズリーフに書いたアトガキの事です。どれがこのページ内のどの部分のアトガキかは推理して下さいまし)
ちなみにネタバレになるような部分等は消しておきますゆえ。
<リアルタイムなアトガキ。>
幻:今回、神の裏事情をでっち上げました幻作でゲス。これでラスボスがいることになったんですねー。こじつけるのは私の得意技。(コラ)
ムラサキ姐さんの性格は…いつも何か一歩先を知っているような感じ。で、ユーリよりクール。(幻作の妄想だけど)
…長いことノート持っててすまぬっ!!パスユー!! 2005.6.29
闇:神の裏事情に心ときめきまくりました闇っちでございます(笑)
ラスボスと聞いてスマデラのクレイジーハンドを思い浮かべた私は終わってます。
私はどうもロイをアホ役に回したいみたいです。気がつくといつでもバカやってますよー。
てなわけで愛のバケツリレー(は?)
幻:うあー、うあー、何だか下世話な事ばっか書いてる気のする幻作です。
この小説中のスマは恐ろしいヒトです。子供なフリしてクールで強。
それにしても、鏡改造の事といい、MZD…ますます命削ってる気がしてならない。
闇さんに続いてロイがアフォですが、すいませ…!; 楽しかったです(貴様)
あ…私、ページ数重ねないと話が進みませんで…;
受け取った時大体のイメージをして「このシーンまで書くv」とか決めて書くんですが、そうすっとページ数だけが増〜える〜。
神の裏事情はひっじょーに楽しみつつ書いてた!!あーいうの書くの好き。
そういやこのメンバー達、話の路線上戦うことになるんだろーか・・・?
では、愛のバケツリレー続行中!パスユー! 2005.7.6