another world story
〜pop’n&smash〜
第25話
あれから―MZDとの対話から2日が経った。
MZDから聞かされた隠されていた真実。
世界の消滅という途方もない規模の話に対話の後は誰もが沈黙を保っていた。
取り敢えず目下の目的そのものは変わらないものの、それに世界の命運までも加わったのだから当然だろう。
本来なら今すぐにでも次の欠片へと発たなければならない。
けれど状況が状況だった。
命に別条はないとは言え、床に伏せっている仲間が2人いる事に加え全員の体力もとうに限界を超えているのだから。
とにかく休息が必要だった。
* * *
ニャミ「ムラサキ、具合はどう?」
ムラサキ「ええ、お陰様で大分いいわ。」
ベッドから半身を起していたムラサキはノックと共に室内へと入ってきたニャミに微かに笑みを浮かべる。
未だ本調子ではないものの、確かに赤みのさす顔にニャミは一つ頷くとベッドサイドのイスへと腰を掛けた。
ニャミ「リンゴをむいてきたんだけど…食べられる?」
ムラサキ「有難う。」
ニャミ「ううん、早く元気になってね。」
ムラサキにリンゴを並べた皿を手渡すとそこからひとかけら手に取って一口齧る。
しゃり、という小気味良い音と共に甘い香りが広がった。
モンスターの襲撃に遭い街は半壊したと言ってもいい状態だったが元々大きな街だった事もあり食糧等の不足には陥っていなかった。
これが小さな村だったなら立ち直れない程の打撃を負っていたかもしれないと思うと不幸中の幸いだったのかもしれない。
…否、死者が出ているという状況下でそんな事は言えないだろう。
ムサラキ「どうかした?」
ニャミ「あ、ううん。なんでもないよ!」
ムラサキに問い掛けられいつの間にか俯いていたニャミは慌てて顔を上げる。
その様子にムラサキは一瞬瞳を細めたがそれ以上は何も追及する事はせず、代わりに全く別の話題を持ち出した。
ムラサキ「皆はどうしているの?」
ニャミ「色々かな。休んでる人もいれば外に出てる人もいるよ。」
ムラサキ「そう…。」
ニャミの言葉通り久々の自由時間という事で仲間達は各々の時間を過ごしていた。
今までの疲れがどっと出たらしくロイは泥の様に眠り込んでいるしスマイルは街の復興作業の手伝いに赴いている。
そんな中ニャミはこうしてムラサキの看病に当たっていた。
ムラサキからは「大丈夫だから貴方も休みなさい」と言われているが正直な所、こうしている方が気がまぎれるのだ。
やはり女同士という事もあるし、何よりムラサキの傍にいると安心出来るから。
ムラサキ「…通信鏡の事。」
ニャミ「え?」
ムラサキ「黙っていてごめんなさいね。」
ニャミ「あ…うん。」
ムラサキの言葉に一瞬何の事を言われているのか分からずに小首を傾げたニャミだったがその意味を理解すると緩く首を横に振った。
確かに何故言ってくれなかったのかという想いはある。
だがMZDの話を聞いている内にそれは自ずと理解出来た。
恐らく自分が最も適任者である事をムラサキ自身が一番理解していたはずだ。
そして通信鏡を持つ事による魔力の吸収という代償を身を持って知っていたからこそ、誰にもいう事が出来なかったのだろう。
ムラサキ「今、通信鏡は?」
ニャミ「魔力がある人達が交代制で持ってるよ。流石に一人が持ち続ける訳にはいかないから。」
取り敢えず山は越えたとは言え、未だ通信鏡は魔力を吸い続けているのだ。
自分は魔力等持ち合わせていないから手伝えない事が悔やまれる。
このパーティの中でムラサキを除いた魔法を使う者はスマイルとユーリの2人だ。
まさか病みあがりのムラサキをその中に入れるわけにはいかず負担は掛るが2人が交互に持つという話になっていたのだが、そこにおずおずとリンクが自分も受け持つと加わった。
そう言えば微かだがリンクも魔法を使う事が出来ると言っていた気がする。
尤も実力に関しては補助道具を使う事で何とか行使出来る程度のものらしいが。
魔力も多くないという事から他の者程長く持つ事は出来ないが本人が頑として譲らない事もあり「無理はしない」という絶対条件の元交代要員に加わる事になった。
その一方でスマイルが何かを思案する様にロイの方を見ていたがその真意はニャミには分からなかった。
ニャミ「ねぇムラサキ。」
ムラサキ「何?」
ニャミ「元気になったら…やっぱり通信鏡、自分が持つつもりでいる?」
ムラサキ「…そうね、その方がいいと私は思ってる。」
ニャミ「……そっか。」
それを「駄目だ」と言う事は簡単だ。
けれどかと言って他の打開策を示す事もできずニャミは静かに頷くしかなかった。
ニャミ「でも、とにかく今は元気になる事に専念してね。」
ムラサキ「分かってるわ。貴方は本当に心配症ね。」
ニャミ「誰かさんのおかげでね。」
そう溜め息をついて見せ、顔を合わせると二人は笑みを浮かべた。
* * *
リタ「…あれ?マルスお兄ちゃん?」
街に出て怪我人の治療に当たっているサイドから頼まれた品を持って行く為に家へと戻ったリタはドアから出てきたマルスに駆け寄る。
その際マルスはほんの一瞬だけ顔を強張らせたものの、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。
マルス「やぁリタ。サイドさんのお手伝い?」
リタ「うん!マルスお兄ちゃんは?」
マルス「ちょっと約束があってね。」
リタ「約束?」
首を傾げるリタに頷くとマルスはしゃがんで視線を合わせるとリタの頭を撫でる。
マルス「そう、大切な約束なんだ。」
リタ「へぇ〜。」
マルス「さ、リタも早くサイドさんの所へ行かないと。きっと待ってるよ。」
リタ「うん!じゃあまた後でね!マルスお兄ちゃん。」
手を振りながらドアの向こうへと消えたリタにマルスは小さく息をつくと外へと出る。
丁度その時に花を抱えたアッシュが曲がり角からこちらへと走ってきた。
アッシュ「マルスさん、待たせたっス。」
マルス「ううん全然。」
アッシュ「一応探してきたんスけど、やっぱりあんまりなかったっス。」
マルス「十分だよ、有難う。」
いくら危機は去ったとは言え復興真っ只中のこの街で花を手に入れるのは難しい。
むしろ見つけられただけでも運がいいと言えるだろう。
ただでさえ、砂漠の中にある街なのだから。
マルス「じゃあ行ってくるよ。」
アッシュ「あ、俺も行くっスよ。」
マルス「え、でも。」
アッシュ「…届けるんでしょう?一緒に行かせてほしいっス。」
マルス「……うん、分かった。一緒に行こう。」
花を受け取ろうとしたマルスはアッシュの言葉に面食らった様な顔をしたがアッシュの様子に頷く。
そのまま花を半分持つと2人は静かに街外れに歩き出した。
街外れ、モンスターによる傷痕のないその場所には真新しい墓標がいくつか鎮座していた。
その一つ一つに持ってきた花を添えるとマルスは瞑目する。
マルス「こんな簡略的で申し訳ないけど…約束を果たしにきたよ。」
ぽつり、と呟いて顔を上げマルスは微かに微笑む。
その後ろではアッシュが静かに手を合わせていた。
自由行動の際にマルスが始めに行ったのはモンスターの襲撃に遭い命を落とした人々の弔いだった。
リタと共にサイドを探している途中に偶然目撃した“彼等”。
本来ならば今生きている人々への援助を優先すべきなのかもしれない。
けれどマルスはどうしても彼等を放ってはおけなかった。
かつて、スマブラ界に召喚されるよりもっと前。
マルスは国の王として軍を率いて戦に身を投じていた。
その際に何度も同じ様な光景を目にしてきた。
それが彼等とダブって見えた気がしたのだ。
アッシュ「マルスさん?」
マルス「…なんでもないよ。」
いつの間にか強く拳を握っていたマルスは心配するアッシュの声に我に返ると笑ってみせた。
いつもの様に、でもいつもより陰りの見える笑顔だった。
マルス「さ、戻ろう。僕等も復旧作業を手伝わないと。」
約束は、果たした。
だから僕は、僕に出来る次の一歩を踏み出すんだ。
踵を返したマルスの背中にアッシュは何かを言い掛け―黙ってその後を追う。
墓標に添えられた花が風に小さく揺れていた。
* * *
眠りから目を覚ましたユーリは寝起き特有のぼんやりする頭を押さえながら体を起こす。
ふと隣のベッドを見るとロイが小さく寝息を立てていた。
恐らく深い眠りに落ちているだろう姿にほんの微かに口元を緩めるとユーリはベッドから体を起こした。
砂漠の中を進むという種族柄半ば自殺行為の様にすら感じる偉業(少なくともユーリはそう思っている)を成し遂げた後にはやはりというか何というか凄まじい疲労感が待っていた。
それでもこうしてゆっくりと睡眠を取る事でその疲労感も大分身を潜めていた。
ユーリは時計を確認するとフォックスの眠っている部屋へと足を運ぶ。
ドアを開けば音に振り返ったリンクが小さく笑みを浮かべてユーリを迎え入れた。
リンク「ユーリさん、おはようございます。」
ユーリ「おはようという時間でもないがな。」
リンク「それでも起きたらおはよう、ですよ。」
リンクの言葉にそうか、と呟くとユーリはリンクの傍へと歩みよる。
ユーリ「交代の時間だ。」
リンク「あ、はい。」
ユーリに言われ頷くと差し出された手の上に通信鏡を手渡す。
途端にそれまで体の中から魔力を吸収される感覚が止まり、小さく息をはく。
元々魔法を主力としているわけではないから魔力がなくなっても問題ないだろうと思っていたがやはり体調には不調を来たすらしい。
だから言われた通り、通信鏡を持つ間は復旧作業の手伝いには赴かず室内でフォックスの看病をしていた。
看病とは言っても今のフォックスはただ眠っている様な状態なため、実質自分の休憩時間の様なものだが。
通信鏡を受け持ったユーリにイスに座る様勧めると自身もまた近くのイスに腰を下ろす。
そのままなんとなくお互い言葉を発さず、室内は静寂に包まれていた。
やがてそれを破ったのは意外にもユーリの方だった。
ユーリ「何を考えている?」
リンク「え?」
ユーリ「…どこか思いつめた表情をしている。もうフォックスは心配ないのだろう。」
リンク「あ…はい。…別にこれと言って何も考えてませんでしたけど。」
ユーリ「そうか。」
それきりユーリは再び口を閉ざす。
再び空間を静寂が支配する。
いや、静寂というにはどこか重たい空気の様だった。
腕を組み瞳を閉じるユーリを微かに窺うと、リンクはため息をついた。
リンク「世界の事を考えていたんです。」
ユーリ「世界、か。」
リンク「ええ、まさかまた世界の危機なんて大層なものに立ち会うとは思ってなくて…。」
ユーリ「また?」
ぽつりと漏れた言葉にユーリは瞳を開く。
リンクも別に隠すつもりはないらしく素直に頷いた。
リンク「私の世界でもそういう事があったんですよ。まぁ、状況は全く違いますが。」
ユーリ「……。」
リンク「今回は…仲間がいますから。」
暗に「前は一人だった」と示すリンクにユーリはもう一度「そうか」と頷くと再び瞳を閉ざす。
仲間がいる…その言葉とは裏腹に不安に満たされた様な表情には気付かないフリをする事にした。
* * *
――昼時――いうのは分か―が、今――時だ?
――1―少し前――すよ。
―――うか。
所々ふわふわと途切れる会話は、聞き覚えのある声で織り成されていた。
耳が正確に音を拾わない。
けれど、不思議と不安は感じなかった。
それどころか、若干の安心すら抱いている。
――お腹、――ってませ―― ?
――時間的―ブランチ――な。
知っている声の元へ戻ってきた。
…戻ってきた?
そう疑問に思って、そういえば自分は長い夢を見ていたのだとぼんやり思い出す。
前に一度理解したはずなのだ、――これは夢だ、と。
――さっきアッシュさんが作って―――オムライスが――りますよ。
――では食べてくるとしよ―― 。
会話の途切れ方が少しずつ直ってきた。
それに従って誰が何の会話をしているのかが徐々に分かってくる。
この声は……、
* * *
フォックス「リンク……、ユーリ」
不意に聞こえたかすれ声に、はじかれたようにリンクが振り向いた。
ユーリも驚いて目を見開く。
ベッドの上で、フォックスがうっすらと目を開いていた。
リンク「フォックスさんっ」
フォックス「……、リンク」
ユーリ「ようやく…目を覚ましたか」
フォックス「…? ……何がどうなって…?」
ぼんやりとした様子のフォックスは、目だけで少し辺りを見回した。
どうやら状況を把握できていないらしい。
…遺跡からずっと意識を飛ばしていたのだから無理もないが。
フォックス「ここ、は……げほっ」
唐突に咳き込んで、自分自身が少し驚く。
喉が張り付くように乾いていた。
リンク「待ってて下さい、今水を持ってきます!」
急いで椅子から立ち上がり、リンクはぱたぱたと部屋を出て行った。
ユーリはその様子を見届けてから、フォックスへ視線を戻す。
ユーリ「ここは砂漠を越えた場所にある町の、医者の家だ。お前は遺跡での戦いで毒に倒れて、今まで意識を失っていた」
フォックス「…どれ、くら、い?」
上手く出ない声で尋ねると、ユーリは「無理に喋るな」と柳眉を寄せて一つ言い置いてから、一旦視線を外して何かを数え始めた。
そして彼はさほど時間をかけずに返答した。
ユーリ「5日ほど、だな」
フォックス「……いつ、か……」
その言葉に呆然とする。
夢を見ていた自覚があったとはいえ、ここまで長い時間だったとは。
軽くタイムスリップをしたような感覚に陥る。
フォックス「…みんなは…?」
ユーリ「さてな。今はお前が回復するのを待つのと、各々の休息のために、ここに滞在して自由に過ごしている。夕方には全員帰ってくるだろうが、今は知らん」
どうやら近くには居るらしい、と判断してフォックスは安心した。
ユーリの説明に「そうか」と返そうとして、あまりに声がかすれて音にならなかった。
それを見てユーリは眉を寄せ目を細めた。
…短い付き合いだが、それが表情に乏しいユーリの「心配している顔」なのだとフォックスには何となく分かって苦笑する。
リンク「水、持ってきました!」
水の注がれたガラスのコップを持って、リンクが駆け込んでくる。
フォックスは声を出すのを諦めて動作だけで感謝の意を伝え、それを受け取った。
一気に飲むとむせそうなのは分かっていたので、ゆっくりと飲み干す。
リンク「もう一杯いりますか?」
フォックス「…いや、いいよ。ありがとう」
水のお陰か、まだ少し声に違和感があるものの会話は普通に出来そうだった。
リンクはコップを受け取ってベッドサイドのチェストへ置いた。
リンク「フォックスさん、本当にもう大丈夫ですか?苦しかったり痛かったりしませんか?」
フォックス「大丈夫。しばらく寝てたせいでちょっと動きづらいけど…その程度だ」
リンク「…よかった…」
フォックスの口からそう聞いて、リンクはようやく肩の力を抜いた。
治療に成功したとはいえ、実際に本人が元気になったのを確認しなければ落ち着かなかったのだろう。
尤も、5日も意識を失っていたせいで完全復活とまではいかないが。
――と、場が少しばかり落ち着いたところで部屋の外から軽い足音がとたとたと近づいてきた。
リタ「どうかしたの?」
かちゃりとドアを開けて部屋へ入ってきたのは、リタだった。
どうやら再びサイドに頼まれた物を取りに戻ってきたようだが、この部屋の中で何かが起こっている事を察して様子を窺いに来たらしい。(というより、リンクが駆け足で水を汲んでいた事を不思議に思ったのかもしれないが)
ちなみに頼まれた物(包帯や消毒薬、何種類かの薬など)の置き場所はフォックスのいるこの部屋(戸棚に並べてある)か、この家の少し奥まった場所にある『薬の調合部屋』だ。
既に薬の入った袋を持っている所からすると、調合部屋から薬を取ってきた後、わざわざこちらの部屋へ立ち寄ったようだ。
リタは部屋の中を見回して、あ、と声を上げる。
リタ「フォックスさん、目、覚ましたんだ!」
ぱぁっと表情を輝かせて、リタはベッドの方へ駆け寄った。
フォックスはリタに「よかったね」と笑顔で言われて思わず「ありがとう」と答えるが、面識がないせいで少々戸惑っていた。
その様子にリンクがそっと耳打ちする。
リンク「(フォックスさんを治療してくれたお医者さんの孫で、リタさんです)」
フォックスは、なるほど、と頷いてから彼女に微笑んだ。
フォックス「世話になったみたいだな」
リタ「ううん、みんなで交代しながらだったし、治したのはおじいちゃんだから。それに、わたしは目を覚ましてくれただけでうれしいの!」
その底抜けの笑顔は眩しいほどで、この場の誰もが思わず胸を温かくした。
リタ「あ、今はムリだと思うけど、フォックスさんがもっと元気になったら町の人たちに会いに行こうね。みんなそろったらお祝いしたいみたいだから」
フォックス「お祝い?」
リタ「そう!町がヘイワになったお祝いなの!」
フォックス「……??」
今まで起こった事を何も知らないフォックスは、ただ首を傾げるしかない。
町が救われるきっかけを作ったとして、一行は町に歓迎されているのだが、それも今は知らないことだった。
リタ「じゃ、わたしはおじいちゃんにこれを持っていかなきゃ」
リタは抱えている袋を示してから、踵を返した。
部屋を出る前に「おだいじに!」と告げて、ぱたぱたと去ってゆく。
フォックス「(…平和?お祝い?)」
フォックスは疑問の残る部分への説明を求めて、視線をユーリとリンクに向けた。
が、丁度その時玄関の扉が開いて誰かが入ってきた音がした。
この家を起点としている人間が多いせいか、自然と出入りの多い家になっていた。
家に入ってきた人物は、途中廊下でリタとすれ違ったのか、一言二言何かを話すのが聞こえた。
その後足音はこちらへ向かってくる。
そして部屋のドアを開いたのは、スマイルだった。
スマイル「やー、土木関係以外にも復興作業って結構あるもんだねぇー。ちょっと休憩しにきたよ」
部屋へ入ると共にいつもの独特な喋り方でそう言った彼は、続けて「フォックスの調子は…」と尋ねかけて、止まった。
何せその彼と目が合ったのだから。
――数秒の間。
スマイルは珍しく驚いたように静止していた。
そして、静かに語りかける。
スマイル「フォックス、目…覚めたんだ?」
フォックスが起きていて驚いた、とか、嬉しい、などの感情も籠っている気はしたが、なぜかそれよりもぎこちない何かがそこにあった。
フォックス「ああ、ついさっきな」
スマイル「ちょっと声枯れてる…ね?」
フォックス「まぁ…。でもすぐ良くなると思う。それよりスマイルは何してたんだ?」
スマイル「…僕、は……、」
何も語らずただ横になっていたのが嘘のように穏やかな顔で尋ねてくるフォックスに、スマイルは不意に普段の顔を保てなくなった。
喉を酷く圧迫するようなその感情が何なのか、彼には分からない。
言葉を失いそうになって、しかしスマイルは無理矢理「ヒヒヒ」と笑顔を張りつけた。
スマイル「えっとねー、まずこの町、モンスターに襲われたんだけどさ。今はどうにかなって、復興作業してるよ。大きな被害状況は昨日集めて出したから、今日は細かいものを集めてた感じ?」
言いながら、無意識なのか、彼が一度だけちらりと見た先に居たのは…リンク。
フォックスはとりあえずの返事として「そうか」と応じたものの、正体の見えない疑問が湧き出て戸惑う。
そしてそれを尋ねる前に、スマイルは「顔色もよさそうだし、すぐ元気になりそうだねぇ」と間延びした言葉で何か問われそうな空気を遮った。
スマイル「さてと。僕はちょっと部屋でごろごろしてくるから、もし通信鏡の交代時間になったら教えてー」
満面の笑みを浮かべて言って、返事を待たずに部屋を出た。
ぱたんとドアのしまる音が部屋に響いて、スマイルの姿は廊下へ消える。
部屋の中では誰も何も言わず、しんと静まり返っていた。
やはりリンクも何か関係しているのか、思案しているような顔だ。(フォックスの視線に気づくと普段の表情に戻ったが)
ユーリはユーリで溜息をつくばかり。
………。
フォックス「(訊かなきゃならないことは、山ほどありそうだ…。)」
たった5日間、されど5日間。
ブランクは思った以上に長かったらしい。
* * *
この家に辿り着いた時から借りている部屋のベッドで、スマイルはごろりと横になった。
真昼の光が窓から差し込んでいる。
スマイル「(僕は……)」
フォックスが目を覚まして、嬉しかった。それは事実だ。
そしてそれと同時に、――怖かった。
看病は自分から進んでやった。
勿論それは早く良くなってほしかったからで、そこに嘘偽りはない。
…けれどそれは同時に、罪悪感を消すためのものだったのかもしれない。
その証拠に、さほど看病が必要とされなくなった今は。
…嬉しいと思う反面、もうここには必要がないのだと言われたようで、その場に居るのが怖くなった。
傍にリンクも居るのだし、
何より自分は、
スマイル「(君を……殺していたかも、しれないんだ)」
他の方法で助けるつもりだった、というのはきっと意味を持たない。
事実、リンクの判断でフォックスは助かったのだから。
スマイル「僕は、ここに…居てもいいのかなぁ……」
ぽつり、呟いた言葉は、彼の本音だった。
〜To be continued〜
<幻作の呟き。>
病床の姐さんと町のその後、それから一大イベント・眠り姫のお目覚め(何
ついでにスマの何か。(ぇ
ぎっしり詰め込みましたねー。
物語的には止まってごたごたしている状態ですが、彼らの事情的には色々進んでる感じです。
それにしてもこうやって見てみると、ここに辿り着くまでにどれだけ皆がボロボロになっていたかが窺えますね。
色んなところに修復が必要になってるとかそりゃもう。(内側も外側も)
回復傾向にあるので頑張ってもらいましょうかね。
次の話も一気にUPします!
UPした日:2010.1.19
それでは、ここから先はいつもの様にリアルタイムのアトガキを。
ちなみにネタバレになるような部分等は例によって消しておきますゆえ。
<リアルタイムなアトガキ。>
闇:私にしては頑張ったー!!うぃっす、闇星です。
たまには私だってやるのよ!といいたい所ですが何か短編集を組み合わせた様な雰囲気に(爆
長文書きになるにはまだまだ修行が足りない様です。
えー、前回幻やんが伏線広い頑張ってくれたから私はいっきに日にちを飛ばしてみたよ!
そろそろフォックスもお目覚めかな?もう殆ど眠り姫状態だもんね、彼(笑
取り敢えずマルス&アッシュにユーリ&リンクの普段あんまり絡みのないコンビを組み合わせてみました。
ニャミとムラサキはまぁご愛敬という事で(何
幻やんが書いてたマルスの「必ず弔う」を勝手にやっちゃったけどよかったかな?…ま、いっか☆←
金とか銀とか換金するのメンドイから現金で下さい。とか夢のない事言いながらパスユー!!
幻:もうマジで orz な感じ。(何
いつもギリギリだから早期投球を!と思って結構早めに書き始めたのに…いつの間にかギリギリorz(まぁ普段に比べたら30分前とかじゃなく1日前なんですけどね。え、微妙?)
つ、次こそやってやるんだからねっ!!!私頑張るんだからね!!(何
きっとやればできる子な幻作です。(ぇ
やっとフォックスが目覚めたぜー!!!…とはいえ、打ち合わせしてた部分まで到底届かず…(遠い目
「短くスッキリまとめる…短くスッキリまとめる…」と念じた結果ですが、結果は何とも!(乾笑
…微妙すぎる部分ですまぬ…; 前回闇やんは凄く頑張ってくれたのにね!
ちなみに「約束」って見た瞬間「おおお、これは…っ!?」と目を輝かせました。
やってくれましたね闇やん。話を拾ってくれてありがとう。
てゆか、起き抜けに仕事の多いフォックスです。ごめんよ、でもキーパーソン且つオカン且つ苦労症だからね君!(ええぇ
ちょっと頑張ってもらおうか!
というわけで、お願い通り現金を降らせてみた! 子 供 用 の ! (※一億円とか書いてあるおもちゃのアレ)
さぁ受け取るがいい!と叫びつつパスユー!!! 2009.8.3