another world story
〜pop’n&smash〜
第18話






 真昼の太陽が肌を突き刺す頃、いくら急を要するとはいえ、この時間帯に移動をするのは危険だと判断して一同はテントを張り休んでいた。
 昼食を兼ねたこの休憩は、砂漠という難所を歩いてきてかなり消耗してきた全員を心持ち休めてくれたが、この気温のせいで根本的な疲労の回復は望めそうもない。

 せめてまともに長時間(欲を言えば丸一日くらい)休む事ができれば…とは思うものの、実際は無理なのだから何も言えない。毒は着実にフォックスの体を蝕んでいるのだ。
 しかし夜の代わりに昼の休憩は長くとってあるので、眠る時間くらいはある。(昼夜逆転を直すという配慮は、もうこの際切り捨てた。それよりも人命救助を優先させるべきだと判断した)

 ニャミの言った『一日半』は一定の休憩時間を含めて計算されたものなので、休憩をしてもその分遅れるという事はない。
 その点では焦る必要は無さそうだった。(ただし、それでも多少の焦りを感じる者は少なからず居た)

 この休憩の間、驚くべき事にロイが暑さに対して弱音を吐かなかった。
 それどころか、自分の体温がどうやら他の者に比べて低いと分かって、熱の上がってゆくフォックスの額に氷嚢代わりに手を当てていた。
 他のメンバーも精一杯看病した。…しかしそれでも体温の上昇を緩やかにする程度。下げるには至らない。

 ムラサキも力の入らないままで、どうやら本人も困っているようだった。
 フォックスもそうだが、二人とも昼食すら摂れずにいたのだ。
 食欲云々以前の問題、らしい。何とか水分は摂らせたが、これはこれで問題になりそうだ。

 ひとまず、看病をしながらも自らが休む事を忘れず、各々消耗を防ぐことに専念した。



 そして、日が傾いた所で移動を再開した。
 昼間のような痛い日差しはゆるゆると攻撃力を失う。

 フォックスとムラサキを交代で背負いつつ、ニャミの導くままにひたすら足を進める。

ニャミ「…なんか、無言で歩いてると妙に怖いよね」
 今まで一言も発さなかった一同の中で、ニャミがふと呟いた。
 最早歩くことに必死で誰も気付かなかった事だった。
 遺跡を出る前までは少しでも談笑の声が、出た直後でもちょっとの会話くらいならばあったというのに。

マルス「こういう状況って、体力が尽きるより早く精神的にもたなくなるんだよね」
ユーリ「登山家の中でよく言われることだな……」
アッシュ「体力温存の為に喋らないのはいいっスけど、無心になりすぎて逆に歩いてる意味すら分からなくなるとか聞いたっス」
ロイ「ええぇ…」

 体力がもたなくて死ぬのは嫌だが、無言のせいでおかしくなるのも嫌だ。

スマイル「要するに誰かが何か言ってればいいんだよね?」
リンク「そうですが…」
スマイル「じゃあ歌えばいいんだよ。はいどうぞアッス君
アッシュ「…ちょっと待つっス。どんな経緯を辿れば俺が歌う事になるんスか」
スマイル「仮にも音楽に携わる人なんだからいいでしょー?ほら、某有名な豪華客船が沈没する話でも、お客さん以外で最後まで健気に頑張ってたのって音楽家だしー」
アッシュ「だからって…」
ユーリ「アッシュ、やれ。
アッシュ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 うだる様な暑さの中、命令した側もされた側もどうやら少なからず投げやりになっていたらしい。
 数秒の沈黙の後、ライブさながらの独唱がわりと長く続いた。

 …ひとまず気が紛れたのは確かだが、結果的に分かった事はアッシュとユーリの権力関係と、疲れがピークに達した時、人は気を紛らわせる為に何をするのも厭わなくなるらしいという事だけだった。(否、この場合『させる』だろうか)

 とにかく沈黙による混乱は避けられた…ような気がする。



 ***



 日が落ちて夜になり、夕食の為に数時間休んでからまた夜通し歩いて、朝が来た。
 遺跡から出発して丸1日と少し経った事になる。
 あと半日ほどで町に辿り着ける所まで来ている。一行に希望が見えてきた。

 しかし、ただ早く町に辿り着けばいいというわけではないこの状況下、徐々に侵食していた異変が、遂に表へ顔を出した。

フォックス「―――、」
リンク「?」
 スマイルに背負われているフォックスが何事か呟いたのを、隣を歩いていたリンクが気付いて視線を向ける。
 何を言っていたのかは声が小さすぎて聞き取れなかったが、今まで喋らなかった事を考えると何かあったのだろうか。

リンク「フォックスさん、どうしたんですか?」
 訊ねるも、フォックスからは反応が返らない。

リンク「…フォックスさん?」
フォックス「―――…」
 やっと返事をしたのかと思いきや、視線がリンクの方へ向いていない。
 それどころか、フォックスの手が無意味に虚空を彷徨って、再び元の位置にぱたりと墜落した。

 リンクの頭によぎった、苦しいほどの胸騒ぎ。

マルス「フォックスがどうかした?」
 振り向けば、マルスが傍に来て真剣な顔をしていた。
 マルスの背に乗っているムラサキも、無言ではあるがじっと様子を伺っている。

リンク「それが…ちょっとおかしいんです。こっちの呼びかけにも応じないし、それに…。」
 それ以上どう言えばいいのか迷って、リンクは言葉を濁す。

 マルスはそこから何かを感じ取り、それまで渦中に居たはずだというのに全く無言で歩き続けていたスマイルを呼び止めた。
 続いて他のメンバーにも足を止めさせ、一心不乱に歩いていた全員の視線を集める。

ユーリ「どうした?何かあったのか?」
マルス「フォックスの様子がおかしいみたいなんだ」
ユーリ「…どういう事だ?」
 探るように訊ねるが、リンクがそれに答える前に……スマイルはまるで何でもなかったかのように再び歩き出した。それはフォックスを背負ったまま連れ去ろうとしているようにも見えた。
 全員、数秒間何が起こっているのか分からず唖然としてその様子を見ていた。

 そしてようやく我に返ったマルスが「待って!」と彼の背に叫ぶ。
 するとかすれた声で「ヒヒヒ」と笑い声が返ってきて、それから彼は足を止め振り返った。

スマイル「…本当に、止まっていいの?」

 その顔には、形容しがたいような暗い笑みが貼り付けられていた。

ロイ「…何だよそれ?こういう時ってきちんと現状把握しとかなきゃ大変な事になるだろ?」
スマイル「さてね?この場合はどうだろう。手遅れになってもいいなら構わないけど。――君達はフォックスを助けたいのか、そうでないのか、一体どっちなんだい?」
 それはまるで、脅迫のような。
 投げ捨てられた言葉はあまりに意味不明で、温か味の無いものだった。

 彼のあまりの変貌振りに、ぎょっとする。
 ――誰だ、これは。

 奇妙な空気の中、アッシュだけが呆れたように息をついた。

アッシュ「…あんた馬鹿じゃねぇか?そんな突き放すような言い方して。こっちは何も理解出来てないってのに」
スマイル「……」

 いつにないアッシュのぶっきらぼうな物言いに数名が振り向く。
 しかしアッシュはスマイルを見据えたまま微動だにしない。
 …それがアッシュの『本気で叱る』様子である事に気付いたのは、残念ながら普段から行動を共にしているユーリとスマイルだけだった。


 数秒間の、沈黙。
 やがてスマイルは大きく大きく息を吐いて、俯いた。
 そして唐突に顔を上げる。


スマイル「…ヒヒヒ、ごめんごめん。僕ちょっと疲れてた」
 悪戯が見つかって照れ笑いするような顔。
 一瞬、どちらのスマイルが本物なのか疑ってしまう。

ユーリ「…それで、どういう状況だ」
スマイル「んー。さっきはうわごとを言ってたみたいだし、手が意味もなく動いてたから幻覚症状も出てるかも。普通の病気でも熱が40度くらいまで上がるとこんな風になる事があるんだけど、フォックスの場合はあの毒が原因だから40度じゃ止まらないんだ。どんどん上がってく」
 熱が上がっていくという症状は既に全員聞いていたが、その話をわざわざここで再び持ち出してきたという事にロイは僅かな引っ掛かりを感じた。
 それに、スマイルが立ち止まりたがらなかった事を追加で考えると…?

ロイ「…もしかして、間に合わない…かもしれないのか?」
リンク「…!」
スマイル「……。」

 ロイの呟きで、思案するように黙ったスマイルに視線が集中する。
 沈黙は状況を雄弁に物語った。

 そういえば、話をそこに繋げるとスマイルの行動にも言動にも説明がつく。
 仲間を無視してでも、理解させずに突き進もうとしてでも、フォックスを助けようと彼なりに必死になっていたのではないだろうか。
 背中に伝わってくる体温が無言で彼を急かしていたのではないだろうか。

スマイル「完全にそうと決まったわけじゃないよ。でも、熱の上がり具合が思ったより早いんだ。今の時点で40度を越してたら、体温の限界も町につく前に越すかもしれない。砂漠の気候のせいなのか、疲労の問題なのか、毒が強力だったのかは分からない。…2日っていう見積もりは、甘かったんだ」
マルス「体温の限界…って、どのくらい?」
スマイル「一般には42度、って言われてるね。それを越したら個人差なんて関係ない。体中のたんぱく質が凝固して、生命活動が維持できなくなる」
ニャミ「…う、そ…」

 まだ1日しか経っていないというのに、実際は見積もりの半分でこの状態だ。
 フォックスの荒い息が、命すら削っていっているように聞こえる。

リンク「町までもつ可能性もあるんですよね?決まったわけじゃないって、言いましたよね?」
スマイル「うん。…全速力で進めば、助かるかも。休憩時間を含めた計算であと半日だったよね?」
ニャミ「あ、うん」
スマイル「…休憩時間を削れば、いけるかもしれない。僕が言うのはそういう意味での『全速力』。」
アッシュ「けど…」

 明らかに全員が疲労している上、休憩時間を削れば動けなくなりそうな者も多い。
 そんな強攻策に耐えられる可能性は、限りなく薄い。

マルス「…こうなったら、手段は選べないね。体力の残ってる人だけでフォックスを先に町まで送ろう」
ロイ「でもそんな、疲れてる奴を置き去りにしていくような事…!」
マルス「じゃないと助からないかもしれない。…置いてくわけじゃないよ、皆絶対に追いつく」
ロイ「………」
 ロイが視線を巡らせると、ニャミが笑みを浮かべながら背中をぱしんと叩いてきた。

ニャミ「なに弱気になってんの!ちょっと遅れたって、ちゃんと追いつくよ。それとも私達がそんな簡単に干からびるとでも思ってる?」
ユーリ「そんな事より、運ぶ者の心配をしろ。ろくに休めなくなるのだからな」
 明るく言い聞かせる二人。
 他の皆も、空元気であっても笑んでいる。

 全員へとへとになっているくせに、なぜこういう時は笑顔になれるのだろう。
 …くすぐったいような思いが、ロイの顔に微笑を浮かべさせた。

アッシュ「じゃ、俺行くっス」
スマイル「行ってらっしゃーい」
アッシュ「スマも来るっス!!フォックスさんの症状が分かるのはスマだけなんスから」
スマイル「分かってるよ、冗談冗談。僕も行くよ」
アッシュ「こんな時によくそんな冗談が言えるっスね…」
リンク「私も行きます。まだ大丈夫ですから」
マルス「僕も」
ロイ「じゃあ、俺も!」

 軽く挙手をして立候補したロイを、ユーリが肩を掴み制止する。
 ロイの体は意思に反して軽くよろけた。

ユーリ「馬鹿を言うな、暑さで最も参っているのはお前だろう」
ロイ「………」
ユーリ「単純な体力で言えば歩き続けられるだろうが、強攻班が歩くのは昼間だ。自重しろ」
ロイ「……分かった」

 ユーリに言われ、ロイはかなり悔しそうに頷いて、しぼむ様に項垂れた。


マルス「…まぁ、何はともあれ。じゃあ早速行こうか、時間もないし。…ムラサキもこのまま連れてくよ」
リンク「そうですね」
 ムラサキを背負い直して、マルスはリンクと頷き合う。

「待って」

 別行動を開始しようとした矢先に、制止がかかった。
 弱々しいその声は…今まで一言も喋らなかったムラサキのものだった。

ムラサキ「私は…残るわ」
 マルスは、自分の背中から聞こえてくるその言葉に振り返る。
マルス「君も何か治療を受けた方がいいと思うよ」
ムラサキ「いいえ。人一人多いかどうかは大きいわ。速さが重要なんでしょ。…私の事は急を要するわけじゃないから、大丈夫よ。ゆっくりなら歩けるから」
マルス「でも」
ムラサキ「お願いよ」
マルス「……信じていいんだね?」
ムラサキ「ええ」

 そっと地面に降りたムラサキは、少し危うげだがきちんとその両脚で立って笑った。

リンク「そういえば、行くにしてもどの方角を目指せばいいんですか?」
ニャミ「あぁ、えーっとね。右見て。ずーっと向こうの方に長い灰色の物が見えるでしょ?」

 言われて見てみれば、遥か向こうに何か長いものが見える。
 延々と続くそれは、目を凝らしても先端が見えそうも無かった。

ニャミ「あれが、遺跡から引かれた水路の一つ。大部分は地下にあるんだけど、あれは大昔の名残で地表に引かれてるの」
マルス「なるほど、あの水路を辿れば町にたどり着けるって事だね」
ニャミ「うん。もうあれが見える位置まで来てるから、迷う事はないよね。じゃ、行ってらっしゃい。救護班」
アッシュ「了解っス」

 ユーリが魔法で取り出した食料や水の入った袋をアッシュが受け取り、救護班…フォックス、リンク、マルス、アッシュ、スマイルは、歩き出した。

 しかし数秒して、スマイルがフォックスをリンクに引き渡すと、何を思ったのかニャミ達の元へ駆け戻ってきた。

ユーリ「どうした、忘れ物か?」
スマイル「まぁ、そんなとこ?って言っても忘れ物は『言い忘れ』なんだけどね」
 そう言ってスマイルが視線を向ける。その先に居るのは…ムラサキ。

スマイル「…正直、僕はムラサキも一緒に行くことをすすめるよ」
ロイ「え…、やっぱムラサキもヤバいのか?」
ムラサキ「いいえ、大丈夫よ」
スマイル「……」

 しばらく、視線と沈黙でのやりとりが続いた。


(――大丈夫なんて、嘘つき。どうやったらそんなに大量の魔力を消費し続けられるんだい?)

(きっとこの人は、全部知ってるのね…)


 …やがて、やれやれ、と呆れたように肩を竦め、スマイルは苦笑した。

スマイル「まぁ、大丈夫ならいいや」
 「んじゃね」と踵を返し、去ってゆくスマイル。
 『知って』いながら何も言わず去ってくれた事に、ムラサキは心の中で感謝した。

ユーリ「…本当に、行かなくていいのか?」
ムラサキ「ええ。実際、ただの疲れだもの」
ニャミ「嘘言ったら針千本だよ?」
ムラサキ「嘘じゃないから飲まないわよ」

 ニャミ命名・救護班を見送りながら、居残り班であるユーリ、ムラサキ、ロイ、ニャミは誰からともなしに砂の上へ座り込んだ。

ニャミ「…ほんと、疲れたね…」
ユーリ「しばらく休んでいくか…。ムラサキの言う事が本当ならば、急ぐ理由もあるまい」
ムラサキ「疑り深いのね。…それよりロイは大丈夫なの?」
ロイ「………」
ニャミ「…ロイ?」

 呼びかけに応答しないロイを訝しんで、ニャミは顔を覗き込む。

ロイ「…本当に大丈夫だったら、また急に倒れる、なんて事はよしてくれよな」
ムラサキ「……ええ」
ロイ「絶対だからな!…こんなに心配になるのは、もう嫌だ」

 ムラサキは、「そうね」と軽く頷きながら、心の隅で謝っていた。
 自分の症状は本当に疲れからだが、その『疲れ』がいつ襲ってくるかは正に“神のみぞ知る”所なのだ。
 …しかしもう、弱みは見せられない。

 ムラサキは、ふと彼方の地に居るであろうこの世界の神の事を、思った。




 ***



MZD「・・・・・・。」
影「ドウシマシタ?」

上体を起こし、じっと一点を見つめるMZDに影が声を掛ける。
しかし返事はなくMZDは瞳は相変わらずそれを見ていた。
視線と同じ高さに上げた手。
その指が摘まんでいる青い欠片を。
影はその様子を黙って見ていたが、やがてもう一度声を掛けようと身を乗り出す。
が、影が口を開くと同時にMZDの口がぽつり、と言葉を紡いだ。

MZD「思えば、これが始まりだったんだよなぁ・・・。」
影「MZD?」
MZD「ん?あぁ、いたのか。」
影「・・・イマシタヨ、サッキカラ。」

やはり聞こえていなかったのか、と影は内心溜息をつく。
もしかしたら魔力が足りなくなり、いよいよ自分の声が音とならなくなったのかと思ったが、どうやら取り越し苦労だったようだ。
そんな影の心情を知ってか知らずか、MZDは微かに口の端を上げた。

MZD「本っ当、俺がやる事ってろくな事ないよな。」
影「自覚ガアルナラ自重シタラドウデスカ。」
MZD「あー、そりゃ無理だ。神サマは常に新しい事に挑戦するのがセオリーだからな。」

けらけら、と笑うMZDに影はやれやれといった様子でその手から欠片を取り上げる。

影「ソンナ事言ッテナイデ、チャント休ンデ下サイ。」
MZD「そう言うなよ。寝てばっかりっての体には悪いんだぞ。」
影「ソレハ健康ナ人ニ当テハマル話デショウ。」

問答無用、しかし穏やかな手つきで上体をベッドへと戻されMZDは髪を掻きあげる。

MZD「ったく・・・お前アッシュの事笑ってらんねーぞ。」
影「ソレハドウモ。」

MZDの軽口をそのまま流すと影は欠片はサイドテーブルの上へと置く。
そして部屋から出ようとした所で呼びとめられた。

MZD「なぁ。」
影「何デスカ?」
MZD「・・・いや、やっぱ何でもねぇわ。」
影「・・・・・・ソウデスカ。」

呼び止めて悪かった、と手を振るMZDに影は一瞬口を開きかけ・・・そして部屋を出て行った。
MZDはそれを見送ると天井を睨むように見つめる。

MZD「・・・・・・。」

あいつは・・・マスターの奴はどうしてんだろうな。
先程口にしかけた言葉を一人反芻する。
会ったのは世界を繋いだ一度きり。
試しに、と送った4人がいつまで経っても戻って来ず、心配しているのだろうか。
そう考えて、しかしすぐに否定する。
欠片が割れた事で世界の行き来ができなくなった。
マスターは異常を察しこちらの世界へ来ようとするがそれは叶わず、ひたすら自分の世界の者達の帰りを待つ。
そんなものは「そうあってほしい」という己の願いだ。
もしこちら側へ来てしまっているのなら・・・。

MZD「・・・本当、ろくな事しない。」

弱っていても感じ続ける、世界の悲鳴。



* * * * *



暑い・・・と、マルスは額に滲む汗を拭いながら後ろを振り返る。
今まで一番暑いとされるこの時間帯を避け続けていただけに、慣れない暑さに流石のマルスも具合が悪くなりそうだった。

マルス「(・・・本当に、来なくて正解だったよ。)」

遥か遠く、今は姿の見えない仲間に心の中で話し掛ける。
今頃はテントの中で休んでいる事だろう。
・・・いや、性格上「早く行きたい」と駄々をこねているかもしれないが。
想像に難しくないその図に、マルスは微かに笑うと顔を前へと向ける。
その途中、横を歩いているスマイルと目が合った。

スマイル「・・・・・・。」

黙々と歩き続けると、いつの間にか頭がおかしくなる。
そんな話もあったが、この条件の下では喋って歩く方がよっぽど危ない。
その為2人の間に言葉はなかったがスマイルはマルスの顔を見るとにこり、と笑い掛けてきた。
リンクやアッシュなら「こんな時に笑うなんて」と呆れ混じりに怒ってくるだろうが、マルスは何も言わずにスマイルを見る。

最悪の状況だからこそ、僕等は笑顔を忘れずにいないとね。

何だかそう言っている気がして、マルスもスマイルに笑みを返す。
そして今度こそ顔を前に向け・・・目を見開く。
見間違いかと思い一度目を擦るが、それはやはり見間違いなどではなく。
マルスは顔をほころばせる。

マルス「(ほら、笑顔は大切なんだ。)」

砂漠の終わりが、見えた。






〜To be continued〜




<幻作の呟き。>

サイト用にwebページに起こす時、手直ししなきゃどうにもヤヴァい文章だとか、もうその時点でアウトなんじゃなかろうか私の部分。
まぁ、それはそれとして、深刻な体調不良とかピンチとかって書くのものっそい好きです。
だからして、まさかの1ターンずつのみで1話埋め尽くされちゃいました…(滝汗) 好きすぎて困っちゃーう(をい

闇やんの書いたMZDとマルスがめっちゃ好きな件について。
シリアスMZDぐっじょぶ!!色々悟ってる感じなマルス王子に鼻血こまんたれぶー!!(汚
今回でマルス好きになりました、さんくす闇やん。

そしてこの頃から筆者の間で「リンクとスマイルって相性悪い?」「マルスとスマイルって結構波長合うのかもね」などと囁かれ始めた。
それが、今後に多大なる影響を及ぼすとも知らずに・・・・・・(何

とまぁ、ここのコメントがいつもより長くなるくらい楽しかったわけです。
次回もお楽しみに。

UPした日:2008.3.27



それでは、ここから先はいつもの様にリアルタイムのアトガキを。
ちなみにネタバレになるような部分等は例によって消しておきますゆえ。


<リアルタイムなアトガキ。>

幻:正直もう駄目かと思った幻作です。実際締め切り30分前だしね、現在。
  実は1ヶ月ルールの日にちが20日だと勘違いしてて、2日前に気付いて猛スピードで書いた罠。
  いつにも増して内容が理屈っぽくてごめんよorz
  てゆか、ストライクシーンってどこよ!気になるじゃない!(笑)
  今回はフォックスの症状をでろんでろんに悪くしてみました。お陰で予定に無かった別行動に。
  いいじゃないか予定外!と無責任に叫んでみる!!(をい)
  ツンデレラブリーvvと叩き返された手で再びなでなでしつつ、パスユー!! 2007.12.14


闇:今回もう殆ど諦めてた闇星です。だってネタがなかったんだもん・・・っ!(殴
  そのせいか(?)ストーリーも不思議な方向へぶっ飛んで行きましたよ姐さん。・・・ま、まぁ最近MZDさん出番なかったし!!
  何とかギリで街に到着vな気配も出せたし一応目標は達成かな?そんな訳で続きは任せたぜ!
  次に回ってくるのは多分春休みだぜヒャッホウ!!
  んもう、しつこい人ね!と付け爪装備で引っ掻いた!流血!!