another world story
〜pop’n&smash〜
第14話






 オアシスで思い思いに休み、やがて夜になった。
 一行は移動の準備を整える。

ロイ「…っあー、オアシスも砂漠の中にしては結構快適だったんだけどなー…。出発かぁ」
リンク「ここを出ないと、ずっと砂漠の中ですよ。さ、行きましょう」
 少年の姿になったリンクはスマイルから剣の代用品である短剣を借りながら、ロイを促した。
 ロイは渋々腰を上げる。

ニャミ「この方角だと…、町に着く前に遺跡に辿り着きそう」
 ムラサキが懐から出した通信鏡で進行方向を確かめて、ニャミは言った。
マルス「遺跡?」
ニャミ「うん。レイロスト遺跡っていう、広ーい建物。砂漠なのに凄い勢いで水が湧いてる場所だよ。これから向かう町にも、その遺跡から水を引いてるみたい。だから豊作のお祭りが毎年その遺跡で催されるんだ。凄く盛大な事で有名なんだよ、そのお祭り」

フォックス「へぇ。…それで、そのレイロスト?に行くのか?」
ムラサキ「そうね、通信鏡の光が向いているから」
ニャミ「明日の昼には着けるだろうね」

ロイ「本当か!?よしっじゃあ早速行こうぜ!」

 急にテンションが上がったロイに、他のメンバーは思わず苦笑する。
 『水が湧いてる=涼しい所』と考えているのが目に見えたからだ。

 呑気な事考えてるなぁ、と笑っていたニャミは、しかし気付く。
 目の前にもう1人、何やら変な事を考えている気配のある人物…マルスに。

マルス「遺跡…か。」
ニャミ「ど、どうかしたの?」
 何となく「訊きたくないなぁ」と思いつつ訊いてみる。

マルス「いや…その遺跡には、どんなトラップがあるのかと思ってね。」
 そしてやっぱり訊くんじゃなかった、と少し後悔。

ニャミ「ト…トラップ?」
マルス「うん。やっぱり鉄球が転がってくるのは基本だよね?」
ロイ「そっか。そっちの心配をしないといけなかったな。」
リンク「後は松明に火をつけたら扉が開く、とかですかね。」
フォックス「それがダミーって可能性もあるな。」

『・・・・・・。』

 いつもは必ず突っ込むはずのフォックスまでもが会話に参加している事にニャミは、いや、ポップンメンバーは閉口してしまう。
 つまりこれはボケではなく、あの4人にとってはマジだという事を感じながら、一体この4人の故郷はどの様な所だったのだろう…とは誰も口には出来なかった。

 そんな中、溜息を一つついてムラサキが口を開く。
ムラサキ「あのね、『お祭りが毎年催される』遺跡なのよ。そんなトラップはないと思うのだけど…?」

 その言葉に4人は顔を見合わせる。

フォックス「い、言われてみれば…。」
ロイ「じゃあ最奥に宝が!…なんて事もないのか。」
アッシュ「何でそんなに残念そうなんスか…。」
スマイル「あ、でも遺跡の奥の方なんて誰も入ってないだろうから、案外凄いお宝が眠ってたりしてねー。」
 茶化す様にそう言うスマイルにユーリは呆れたように首を横に振っていた。






 そして、ニャミが言った通り翌日の昼間に辿り着いた「レイロスト遺跡」。
 遺跡があるのは遠目にも分かった。
 何しろ、砂漠の途中から突然草木が生い茂っているのだから。

 広範囲にわたって緑が広がるその場所に向かって歩けば、その中心に大きな石の建造物があった。
 建物の中から引かれた水路が、外を通ってどこか遠くまで水を運んでいる。
 おそらく水を必要とする町がここから水を引いているのだろう。
 間違いない、ここがレイロスト遺跡だ。

ニャミ「ついたついたー!」
 ニャミが飛び上がってはしゃいだのをきっかけに、他の一同も安堵の表情を浮かべたり、諸手を挙げて喜んだり。
 今までの要領で行くと、そろそろ休憩タイムに入らなければつらい時間帯に差し掛かる頃だったのだ。
 ここならば休憩をするにも丁度良いだろう。

スマイル「体感温度が下がっていいねぇ、水はー」
フォックス「町に引いてるだけあって水路も随分大きいみたいだからな」
 遺跡の内部から流れ出ている水流に圧巻されながら、これから行くであろうまだ見ぬ町のことを考える。

 砂漠の町がそれほど大きくなる事は普通余りない例だが、水がこれだけ湧いているのならばそれもあり得るのかもしれない。
 一体どこからどういう訳でこんな大量の水が湧いているのか。
 砂漠だというのに。

 …いや、考えるだけ無駄である。
 生物が空から降ってきたり、場所によって気温が春の温度から砂漠の温度に急激に変化する世界だ。
 きっと砂漠から水が大量に湧くのも然程不思議ではないのだろう。

ムラサキ「ところで…」
ニャミ「ん?」
マルス「どうしたの?」
 話を切り出してきたムラサキに、一行は自然と視線を向ける。
 ムラサキはその手に通信鏡を持っていた。

 通信鏡は、一筋の光を遺跡に向けていた。

ムラサキ「この通信鏡、どうやら『遺跡を越えたどこか』じゃなくて『この遺跡』を示してるみたいなのよね」
アッシュ「えぇっ」
リンク「それならこの遺跡の中に1つ目の“欠片”が?」
ムラサキ「そうかもしれないわ」

 その返答に、ロイは「暑い中砂漠を通ってきた甲斐があったなぁ」と涙しそうな勢いで感動していた。
 …彼にとって砂漠は相当過酷な場所だったのだろう。

 一行は遺跡を見上げる。
 石造りの相当古い建物で、それもかなり大きい。
 正面にある扉でさえ、一人で開く事ができるかどうか怪しい程だ。
 この中に、世界を結ぶ五つの欠片の内一つが……。
 ………。

ユーリ「何というか…」
アッシュ「どっかのファンタジーもののゲームみたいな展開っス…」

 ぼんやりと呟く妖怪二人組みに対して、ロイやスマイルは「やっぱり遺跡に宝はあるものなんだ」と目を輝かせていたとかいないとか。

リンク「…さて、ここでじっとしていても仕方ないですし、そろそろ中に入りましょうか」
ニャミ「そだねー」

 リンクが一歩前に出て、両開きの扉に手をかけた。
 ぐぐっ、と全身の力を込めて押す。

 そして完全に開いたと見るや、素早く扉の横の壁にへばり付くリンク。
 その後用心深く遺跡の中に視線をやる。…まるでどこかのスパイだ。
 ロイやマルスはいつでも剣が抜けるように構えていたりする。
 フォックスまで緊張気味だ。
 ポップンメンバーはその様子に唖然とする。

ニャミ「…あのー?」
 スマデラメンバーの妙な行動にニャミはたじろぎながら、この状況について尋ねようかどうか迷った。
 すると4人はその視線に気付いて少し考え、はっとする。

リンク「…あぁ、しまった、いつもの癖で…!」
ロイ「遺跡を目の当たりにすると、つい…なぁ」
マルス「扉を開けると罠が発動して矢が飛ぶ、なんてわりとありがちだったからね」
フォックス「突然敵が飛び出す、なんて事も…」

 ……一体どんな世界に居たのか……。
 とりあえず危険な世界だったのだろうと予想してみたが、ポップンメンバーは罠が常備された遺跡が当然である世界を考えようとして想像しきれなかった。

ムラサキ「でも敵が飛び出す、っていうのは現状ではあながち無きにしも非ず、じゃない?」
ユーリ「確かに、モンスターがどこから出てくるかは分からないからな」
スマイル「じゃ、気をつけながら入ろうねー」

 にこにこと笑いながら、言葉に反してずかずかと遺跡に入り込むスマイル。
 大丈夫なのだろうか、と思いつつそれに続いて全員でぞろぞろと中に入り、内部をぐるりと見回す。

 日が差し込まない所為か、ひんやりとした空気が充満している。
 ごうごうという音が途切れる事なく静かに響いていた。どこかで水の流れる音だ。
 内部のどこかから遺跡の外へ水を引いている為、その音が遺跡全体に反響しているのだろう。

 ユーリとムラサキが壁にかけてある燭台に魔法で点々と火を灯して、明るくしながら歩き始めた。
 通信鏡が光で指し示す方向へ進む。

 途中、祭りに使うらしき祭壇に辿り着き、一行はそこで一息つくことにした。
 時刻は真昼。いつもならば夜の為にと睡眠をとる時間なので、全員が眠気を感じていた。
 …完璧に昼夜逆転している気がする。

アッシュ「ひとまず昼飯とってから休憩っス。そろそろ昼夜逆転も直さないと駄目っスから、休憩は短めにするっスよ…」
フォックス「そうだな、砂漠もそろそろ抜ける予定だし…」

 そうして、料理担当者(当番制なので今日はムラサキとロイだ)が昼食を準備し始め、一同は休憩タイムに入った。

 ニャミはふと何かに気付いたように立ち上がって、祭壇の端に腰掛けてくつろぐスマイルに近付いた。

ニャミ「ねぇスマイル」
スマイル「んー?」
ニャミ「私、道案内役とはいえ丸腰は危険だと思うの。だからスマイルのナイフ一本貸してくれないかな?いざっていう時の為にさ」
スマイル「いいよー」

 スマイルはコートの中を漁って、一本のナイフをニャミに手渡した。
 ニャミは満足そうに笑って、元の位置に戻って座った。

 ……ニャミが何を考えてその行動に至ったのか、スマイルは現在の時点で何も知らなかった。




***



ロイ「っあー・・・眠ぃ。」

くあ、と欠伸を1つしてロイは眠気覚ましにと水路の水を顔にかける。
しかしそれでも眠気は飛ばず今度は瞳を何度か擦る。
そして傍で昼食の準備を進めているムラサキに声を掛けた。

ロイ「なぁ、ムラサキ。」
ムラサキ「何?」
ロイ「昼食、何作るんだ?」
ムラサキ「そうね・・・丁度新鮮な水もある事だし、素麺にしようと思っているわ。」

遺跡の中とはいえ、砂漠の中で素麺・・・。
普通なら苦笑でも浮かべそうな所だが、生憎ロイにはそんな神経も元気もなかった。

ロイ「そっか!冷たくていいなー。」
ムラサキ「流石にこの暑さだもの。すこしは体力回復できそうな物の方がいいと思って。」
一番回復が必要そうなのは貴方だけれど、とは心の中でだけ付け加えておいた。

ロイ「えっと、俺は何をすればいいんだ?」
ムラサキ「それ程大変な準備でもないから、休んでいてもいいわ。」
ロイ「えー手伝うって!何かしてないと寝そうなんだよー。」
頼むよー、と手を合わせてくるロイにムラサキは軽く息をつくと傍にあったトマトを手に取った。

ムラサキ「じゃあ、これを切ってくれる?私は麺の方をするから。」
ロイ「分かった!」
トマトを受け取るとロイは早速包丁・・・ではなく何故かマジックを手に取る。
そしてトマトに向かって何かを書き始めた。

ムラサキ「ちょ、ちょっとロイ?」
ロイ「へへ、元気になるおまじないなんだ。」
きゅ、とマジックのキャップをしめるとロイは書いたものがムラサキに見えるように向けた。

ムラサキ「おまじない・・・ねぇ。」
どういったリアクションを浮かべていいのか分からず、とりあえずそれを見る。

ロイ「これで絶対元気になるって!」
ムラサキ「・・・なら、いいのだけれど。」
『M』と書かれたトマトを見ながらムラサキは小さく溜め息をつくのだった。


リンク「それにしても、どうも気になるんですよね。」
アッシュ「何がっスか?」
弓の弦を張り直しながらポツリと言われた言葉にアッシュが首を傾げる。

リンク「いえ、確かMZDさんは欠片は砕かれたと言ってましたよね?」
アッシュ「そうっス。」
リンク「じゃあ、おかしくないですか?砕かれてバラバラになった欠片が、こんな閉ざされた空間に落ちるなんて・・・。」

砕けて散らばったのなら、砂漠の砂の中にでも落ちるのが普通のはず。
それが、閉ざされた空間であるはずの遺跡の中に落ちているという事は・・・。

アッシュ「・・・つまり。」
ユーリ「誰かが故意的にここへ運んだ、と言いたいわけだな。」
リンク「ユーリさん。」
瞳を閉じたまま、静かに告げるユーリにリンクは一瞬ドキリとしつつも頷く。

ユーリ「確かにその可能性もあるが・・・ただでさえおかしな事ばかり起こっている現状だ。いちいち気にし過ぎると体が持たなくなるぞ。」
リンク「え・・・?」
アッシュ「そ、そうっスよ!警戒はした方がいいっスけど、少し位気を抜いても大丈夫っス!皆いるんスから。」
場の空気を明るくする様にそう言われ、リンクは少しポカンとした顔を浮かべた後、可笑しそうに笑った。

アッシュ「リンクさん?」
リンク「それもそうですね。スイマセン、不安を煽るような事を言ってしまって。」
そう言うと張りかけの弓を地面に置き、コテンと横になる。

アッシュ「どうしたっス?」
リンク「少し休みます。しっかり休まないと・・・後で頑張れない・・・か、ら。」
張りつめていた糸が切れたのだろうか、リンクはすぐに眠ってしまった。

アッシュ「疲れてたんスねー。・・・ユーリもたまにはいい事言・・・。」
笑いながら振り向いてアッシュは止まる。

・・・ユーリは完全に眠っていた。
そして気付いた。

アッシュ「・・・はぁさっきのは、寝言っスか。」

どうりで気の利いた言葉だったはずだ。
何気に失礼な事を思いながらアッシュは瞳を閉じた。






〜To be continued〜




<幻作の呟き。>

交換日記な感じにノートを回すのが不可能になってしまったので(学校を卒業してしまいましたから)、こっそり借りたBBSにて続きを書いております。
BBSだと文の長さがよく把握できません=制御できません(おいコラ)
その代わりノートを見ながらワードに写すというわりと重労働な事が省かれます。いぇあ。

それにしてもようやく欠片出現の気配が漂ってきましたねぇ。
そして私は例によって例の如く、まーた伏線張っちゃってます orz
ニャミの事です。彼女はそんなに単純明快な性格をしてはいないと思って…(もご)

これって結構最近の文章なんですが、この時点で次に辿り着く町の設定とかまで考えているなんて、どれだけこの小説にワクワクドキドキしてるんだって話。
リレー小説万歳。
そしてロイ達の今回のアフォ度に万歳(をい)

…遺跡の中で素麺って涼しそうでいいですねぇ。

UPした日:2007.8.5



それでは、ここから先はいつもの様にリアルタイムのアトガキを。
ちなみにネタバレになるような部分等は例によって消しておきますゆえ。


<リアルタイムなアトガキ。>

幻:テストやら何やら挟んで超長いことノート持ってました幻作でゲス。破壊神とか凄い事になってますねー。
  しかし実はサイトによっては2PカラーのMZDが破壊神で普通カラーが創造神とかいうのもありマス。私のサイトでは今の所やってないけどNE!
  今回、ニャミが悩み始め。悩まないほど図太くないから…あー大丈夫かなー。
  お祭りってどんなだろ、私行ってみたい。いーってーみたいーなーよそのーくーにー♪(何)
  きっと遺跡内の水路に灯篭みたいの流すんだ(妄想)いいなー。
  さて、次は遺跡編か!? ミドルキックかわされた次は両手広げて駆け寄る!  2006.12.7

闇:「テメェふざけんな!」って位長く持っててゴメンなさい。闇星です。
  2Pカラーは破壊神設定かぁ…もしそうだったらMZD(2P)+クレイジーでとってもステキな事が始まりそうね☆(終焉だよ、んなもん始まったら!)
  ってか私今回ストーリー全っ然進めてなくね?え、いつもの事?
  えへv そういう訳で次よろしくデース(最悪だぁー!!) 闇星は分身の術を使った!(ぇ


幻:BBSだからなのか、異様に長く見える文章書いちゃった幻作ですの。
  いやっほう、遂に1個目が見つかりそうな気配がしてきたじぇ!
  遺跡だ遺跡!RPGに欠かせない分子だじぇ!
  そしてスマデラチームにアフォやらせちまいました。いや凄くあり得そうだったから…つい(をい)
  遺跡内部ではどんなイベントが待ち構えているのか!ワクワクが止まらねぇ!(どっかで聞いたなその台詞)
  …っていうか料理当番…v どんな料理ができるんだろう…
  さて、ニャミの動向を気にしつつ、パスユー!!
  分身の術に対抗して影分身の術で対応!! 2007.3.21


闇:あれ?もしかしていつもより長くない?な闇星です。
  BBSで書くと色々と感覚が違いますねー!早く慣れよう・・・・。
  スマデラメンバーの警戒っぷりが最高でしたv
  まぁ彼等実際あんな世界で生きてますもんね(笑
  所でトマトの『M』・・・分かる?(不安
  影とな!?影踏み鬼やり放題ー!(待)
  入学式まであと少し!毎日に不安を抱えながらもパスユーです。(ぇ