『パンッ』

 俺の両手で伸ばされた服は、湿り気を帯びている。
 先刻洗濯して、今干し終わった所だ。

 城の庭。
 日が差していて、空気はからりと乾いている。
 これならこの洗濯物は今日中に乾くだろう。

 本来ならこれはアッシュの仕事なんだけど、居候してる上に何もしないんじゃ本気で悪いから、家事を手伝う事にしたのである。
 …洗濯を引き受けた理由は、まぁ他にもあるんだけども。


 洗濯籠に残ったものを見下ろし、少し考える。勿論、それらはまだ乾いてはいない。
 干し終わったのは、『ここに干すべきもの』だ。残ったこれらは……。

 数秒してから、干した洗濯物の内タオルを1枚取って籠の中身を隠すように被せ…ようとして、城の中に今誰も居ない事を思い出す。
 タオルを再び干し直して籠を持ち上げ、俺は城内の自室へと駆けていった。






自鳴琴・06
〜方向音痴に幸あれ〜






 何度も通ってようやく覚えた自分の部屋に、とりあえず辿り着いて。
 俺はドアを開けて入った。

 実質的に二部屋分あるこの部屋の奥の方に行ってから、俺は持ってきた洗濯籠を置く。
 あらかじめ持ってきておいたハンガーに洗濯物をかけて、そのハンガーをイスの背もたれにかける。
 洗濯物はごく少量なので、イスで十分だ。

 何で他の洗濯物と同じように庭で干さなかったか。
 …干せるわけがない。

 ここに持ってきた洗濯物は…俺の下着なのである。

 下着類は女物であるがゆえ、干してるのを見られるのはNG。
 それで自室に持ってきて干したのだ。
 庭に干しても皆が帰ってくるまでに乾くだろうけど、用心に越した事は無い。

 部屋の奥に干せば、ドア等の直接的な遮りはないものの、構造的に入り口からは死角になっているので簡単には見つからないはず。
 要は大きな部屋の中央にドア部分だけくり抜いた壁があると思ってもらっていい。
 俺が今洗濯物を干しているのはその壁を隔てて入り口から遠い方なのだ。
 自分の部屋は自分で掃除するから!と言ってあるので、掃除をしには来ないだろう。

 鍵がかかる構造の部屋にはなっているようだが、なにしろこの城の部屋数の多さ。
 この部屋の鍵1つを探すだけでも丸2日くらい簡単に浪費できてしまうので鍵を探す事は諦めてしまい、結局外からはかけられないままだ。
 内側からならかけられるんだけど。

 そこら辺の心配はあるものの、まぁ俺が気をつければいい話だ。
 俺は念の為カーテンを閉めて、入り口に近い方へと戻った。

「さーてっと」
 入り口に近い方の部屋にはベッドが置いてあって、そのすぐ側には俺の身長より大きな窓がある。その窓には日光で少し黄ばんだカーテンがついていた。
 俺はそのカーテンと窓を全開にし、空気を入れ替える。
 吹き込むのは、まだ少々冷たいが暖かくなり始めた風。


 今日はDeuilは仕事に行っていて、城内にいるのは俺1人。
 従って胸にさらしは巻いてません!
 あぁー、すんごい開放感。最近ぎゅうぎゅうに巻きっぱなしだったからなぁ。

 皆夜まで帰らないって言ってたから、夕方くらいまでさらしは必要ないだろ。
 胸には新調した下着。買っておいてよかった。

「んー…昼食にはちょっと早いし、どうするか…」

 やることが何もない。
 洗濯は終わったし、食器洗いはアッシュがやっていってしまったし、あとは…

 …そうだ。


「掃除があったか」


 3人共朝早くに仕事へ行ったんだから時間なくて、さすがのアッシュも掃除は出来なかったんだよな。
 昨日聞いた所によると、別に掃除をする分には入室禁止な部分とかそういうのはないらしいから、 やってみますか!
 皆の部屋も見てみたいしね!(邪気むんむん)

 俺はまず、掃除機を取りにリビングへと向かった。


 ***


 よし。
 掃除機にはたきも持った事だし、早速取り掛かりますか。

 リビングで掃除機をかけ、簡単に掃除を済ませると、俺はドアの向こうにあるダイニングまで行こうとして…
 …やめた。

 あのダイニングに掃除機かけるのはどうなんだろう?
 嫌な空気溜まったらヤバいかな?
 キッチンも含めて後で床を水拭きしとこう。

 俺はその辺の掃除もそこそこに、それ以上は萌えの欲求に打ち勝つ事が出来ず、皆の部屋を探す事に決定した。
 掃除機はコードレスなので、持ち歩きOK!!
 行くぞ!!

 俺は意気揚々と廊下に出た。


 さーてと。
 俺の部屋はこの先の階段を3階まで上ってちょっと曲がった所なんだが、今まで自室に帰る3人と3階まで一緒に上がったことがない。
 てことは、皆2階か1階なんだな。
 気まぐれで選んでそのままだと聞いたから、選んだ部屋に規則性はなさそうだけど?
 こんな事なら正確な位置まで聞いとくんだった。

 うーむ、どうやって探すか。
 しらみつぶし…なんて事してたらそれこそ日が暮れても終わりやしない。
 ここは一つ、ドアに何か名前の書いた札とかが掛けられてる事を望む!
 いや、男しか住んでない城の部屋にそんなモン掛けられてても微妙な気がしますが。

 部屋の並ぶ右側を見つつ、俺は掃除機を引きずって歩く。

 さーて、一番最初に見つかるのは誰の部屋だ!?





 ―――それから20分くらい経ったと思う。

 ・・・。
 ・・・・・・・・。


 ・・・だぁもう!!!
 誰だこの城設計した奴は!!
 広すぎるよー!!

 札も見つからないし、どうしたらいいってんだ…。
 第一、ここまで遠くに自室を持っているはずがない。
 リビングまで遠すぎるから不便だろう。
 …いや、気まぐれで選んだって言ってたからありうるのか…?

 あぁ、もう同じ部屋ばっかし見るのもげんなりだ。
 さっさとDeuilの部屋を出せ!!(地団駄)

 俺は溜息をつき、しゃがみ込む。ちょっと疲れた。
 …あー。
 2階行ったら誰かの部屋見つかるかも。絶対諦めないぞ。

 早くも休憩を終わらせ、立ち上がる。
 2階に登るための階段を目線で探し、はっとする。


 ・・・・・・ここ、城のどこら辺?


 ここに来るまでに何度も道が分かれてたし、どの部屋も同じように空だし、ドアの外も同じものばかりだし。
 特徴らしい特徴もない上、俺は方向音痴だ。
 勘で歩いてきたから更に分からない。

 階段も見当たらないし、戻る道すら分からない。
 どうすればいいってんだ、この状況・・・。

「うあぁ、やっぱ地図書いてもらえばよかった…」
 実は風呂とかの位置を覚えるのに難儀していた俺はスマイルに「地図書こうか?」と言われたんだけど、その時は書くの大変そうだから頼むの遠慮しちゃったわけですよ。
 …ええ、今更になって後悔してますよ、ちきしょー。

 道に迷った時は動くなって聞いたこともあるけど、生憎動かないでも探しに来てくれる人物がいない今は意味がない。
 皆が帰ってくるのも何時になるか分からないし…。
 どうしよう…。


「…もう、悩んでても仕方ないよな…。とりあえず歩こう…」

 仕方ないから、俺はのろのろと歩き出した。


 ***


 あれからどれだけ経ったのか。
 俺は更なる後悔に沈んでいた。

 ・・・やっぱし動かなきゃ良かった・・・。

 多分数時間経ってると思うんだが、一向にどこかへ辿り着く気配がない。
 並ぶのも変わり映えしない、同じ部屋ばかり。
 道は曲がりまくったし。
 それどころか何だか同じ場所をぐるぐる回ってる気すらしてくる・・・。

 実際そうかもしれない。
 使いやすさ重視で近道増設したら複雑になったとかあり得るぞ。
 妙な所に別れ道があったりしたからなぁ。

「俺、ここで野垂れ死にすんのかなー…?」
 自分で言っておきながら冗談に聞こえない。
 そんなの嫌だ!!まだ充分にポップン世界満喫してない!!(そこ、動機が不純とか言わない!)
 諦めるにはまだ早い、頑張れ俺。

 あー、お腹減った。
 歩きすぎて足痛い。
 掃除機や、はたきですら重く感じる。

「誰か助けてー・・・・・。」
 俺はその場にへたり込んで「ああぁー・・・」と絶望してみる。

 昼ご飯の時間もう過ぎてるんだろうなぁ。
 廊下にある窓から見える空は青いから、多分まだ昼と呼べる時間帯だと思うけど。

「…あーもーどうでもいいから疲れだけでも取りたい…。」
 数時間歩きっぱなしはちょっとつらかった。
 俺は適当に手近なドアを開く。
 使ってないだろうし埃っぽいだろうけど、丁度掃除機とはたきを持っている。

「…ありゃ」
 部屋の中はどこも同じだからここも俺の部屋と作りは同じなんだけど、どういうわけか入り口に近い方の空間にはベッドがなかった。
 どうやらこの部屋は物の配置が違うらしい。
 てことは、ベッドは奥か?

 あー、それにしても何だか知ってるような匂いがするなぁ。
 なんていうか、芳香剤とかの匂いじゃないんだけど、こう……
 人の匂いっていうか?
 あーもう眠いから幻覚ならぬ幻香でも嗅いでるんだろうか。

 カーテンも窓も閉められてて暗いから細かい部分までは見えない。
 何で各部屋に暗幕なんて付いてんだこの城は。俺の部屋の暗幕は引っぺがしたけど。
 まぁ面倒だからこのまま奥まで行くか。

 思ったより埃とかの臭いはないな。
 何でだろう?

「んー、何はともあれとりあえず休息休息ー」
 俺は奥の部屋に入って、目を凝らしてベッドを発見した。

 ずるずると掃除機を引きずりつつ傍まで寄って、腰掛ける。
 途中で何かにつまずいて転びそうになったが、何が置いてあったんだろう?
 テーブルの脚とかか?

 俺は掃除機を壁に立てかけ、はたきをぽいっと放り出して、ぱったりと後ろに倒れこんだ。
「あー・・・・・ふっかふかぁ」

 埃が舞い上がる様子もない。
 いや、暗いからよく分かんないんだけど、埃が積もってるようなザリザリした感じは全くなかった。
 寧ろふわふわで気持ちいい。

「んー…何か落ち着く匂いがする…」
 どっかで嗅いだような?
 さっきも思ったけど。

 ・・・・・。
 まぁいっか。
 疲れてて何も考える気になれない。

 こんなんじゃリビングを探し出す余裕もないよ…。
 …何か眠くなってきたし。

 疲れたままだったらどうにもならないし、ここは一つ寝ちゃおう!
 勝手に使っちゃって悪いけど、どうせ誰も使ってない部屋なんだろうし。
 …いや、埃が積もってない事からして多少は使っているんだろうけど。

 丁度部屋も暗いし、足も痛いし疲れたし、空腹を紛らわせるためにも俺はベッドに潜り込んで、寝る準備をした。

「・・・おやすみぃ」
 誰にともなく言って、目を閉じた。


 ***


「ふぅ…」
 溜息をついて、自室のドアを開ける。
 早めに帰ることができたものの、日程は少々ハードだったので現在元気とは言い難い。

 アッシュが夕飯を作るまで少しの間寝てしまおうか。
 そう思ってあかりはつけずにベッドの方へ歩いていく。
 そういえば昨日色々と出しっぱなしにしていたなと、床に散らばっているはずのものを思い出しつつ、足元に気をつけて。
 途中で着ていたコートを脱ぎ捨てる。

 ……と。


『キシ、』


 何かが僅かに軋む音。
 驚いて耳を澄ますと、続いて呼吸時の空気の擦れる音もする。

 誰かがいる…?
 しかし誰が?

 そんな疑問に行き当たるが、長時間悩む体力も思考能力も残されていない。
 非常に疲れているのだ。

 結果、近づいて確かめてみることに決定。
 そっと、足音を殺して近付く。

「……え。」

 暗くてよく見えないのだが、カーテンの隙間から差すほんの少しの夕日によって薄く見えたその人物は。

「………ん…」
 もそり。
 少しだけ寝返りをうつ、その人物。

 …だった。

「・・・・・何でここに・・・」
 少しだけカーテンを開いて顔を確認してみるも、やはり以外の何者でもなくて。
 再度ベッドの近くへ寄って、しゃがむ。

 黒い髪を白いシーツに散らし、穏やかな顔で寝息を立てている。
 …これ、僕のベッドなんだけどなぁ。

 疲れている自分を差し置いて幸せそうに寝ているを少々怨みのこもった目で見詰め、しかし寝ている本人にそれが届くはずもないので諦める。
 ……否。
 いっそのこと、


 ***


「取り繕ってるんじゃないわよ」

 立ち上がったその人物に、私――いや、『俺』は。
 『私』を捨てた『俺』は。

「何、言って――」
「気付かなかったの?私はアンタのことなんて」

 言葉を遮られて、何を言われているのか分からなくて。
 その人物の持っているそれを、見ても。

 何が起ころうとしているかなんて、予想だにできず。

「あんたの事なんて、―――――」


 俺は。

 俺、は。






「アンドロメダ星雲ごった煮尽くしーっ!!」

 叫んでがばりと起き上がる。
 …あー。
 俺、寝てたんだっけ。
 叫びと夢の内容が一致していない気がするが、まいっか。

「アンドロメダ…?」
「んー、我ながら意味不明な叫びだったよ」
「ビックリした」
「あー、ごめんごめん」

 頭を掻きつつ再びベッドに戻ろうとするが、

 ・・・・・・・。
 ・・・。


 


「っ!!!?」
 俺は思わず振り向いた。

 誰だ、俺は今誰と会話をしていた!!?
 この部屋には誰もいないはず…!

「やぁ。よく眠れた?」

 俺の右側。
 ベッドの上。
 膝立ちで片手を挙げて挨拶するそいつ。

「…スマ?」
「おふこーす。」
 微妙にへにゃけた声で答え、へらりと笑うスマ。
 …ん?疲れてるっぽい?

「何でスマがここに…」
「だってここ僕の部屋だし?が起きないならいっそのこと隣で寝ようかと思って」
「・・・・・」

 ・・・・・え?

「う?え?あ?へっ…?」
「だから、僕の部屋なの。ここ。今日は仕事が早く済んだから今いるんだけど」
「う、嘘っ」
 俺は慌てて周りを見回す。
 カーテンが少しだけ開いててスマの顔は見えるけど、差し込んだ光の当たる場所以外はやはり見えにくい。

 …しかし、思い当たる節はあるような…
 埃は被ってなかったし、かいだことのあるような匂いはしたし…。
 これは毎度飛びついてくるスマの匂いだったんだなぁ………。
 そういやドアの前に何か掛けられてるか確認するの面倒で忘れてた。

 てことは、俺今スマのベッドで寝てた!!?
 スマの匂いたっぷりのベッド…!!萌え・・・・・!!!(変態)
 しまった、もう少し堪能しながら寝ればよかった!!

 とりあえず俺は手近にあった枕を抱き締めてみる。
 んあー、スマのかほり………(オヤジ臭いのは自覚してます!)

は何でこんなとこにいるの?」
「え、あー…そのー…。」
 ぽりぽりと頭を掻く。

「掃除しようとして歩いてたら迷って……疲れたから適当に部屋に入って寝たんだけど」
「適当に入った部屋がここだったってこと?」
「そう」
 頷くと、スマはそのまま座っている俺の右側にうつぶせに寝転んだ。
 …どうやら相当疲れているようだ。
 俺はスマイルにスペースを空ける為に左側にギリギリまで寄ろうとして、

「んー、あったかいねぇ…」
 スマの両腕が俺を捕らえたから、無理になった。

 も、萌えだ!!!
 座っている俺の腰辺りに抱きついてきたスマに、俺は鼻血噴出しそうな勢いで萌えた。
 うがああぁぁ!!!これが萌えずにいられるか!!

も一緒に寝るー?」
おうともさ!(スマの添い寝ー!!!)御一緒させていただきます!!」
 俺は喜び勇んで仰向けに寝る。

 スマはこちらに寄ってきて俺を抱き締めなおした。
 み・・・密着状態ですよ奥さん・・・!!!
 俺の腕を間に挟んでるからワンクッションおいてある状態だが、これをどければ…!

 ・・・・・・、
 ・・・あれ?
 ちょっと待て。


 …俺……さらし巻いてない・・・!!!


 こんな状態で完全密着したら女だってバレる!!
 しかし、こんな良い状況を逃すわけには・・・っ(そんな場合じゃないのは分かるけど!分かるんだけど・・・っ!!)

 さっき起き上がった時は大丈夫だったのかな。見えなかったのかな。
 薄暗いから胸くらい分からんだろう。
 そもそも俺は黒い服を着てるんだから、電気でもつけて注視しない限りは…!!
 …う…び、微妙だ・・・。

 とにかく!惜しいけど今はこの状況を何とかせねば・・・!!

「ス、スマ…、」
「んー…おやすみー…」
 ぽやんとした感じで言うスマに、何となく「放して」と言い出しづらくなる。
 うぁ、どうしよう!!

 自分より身長の高いスマが、俺の頭に額を摺り寄せて俺を抱き枕にする。
 ・・・あの・・・・・
 そろそろ本気で萌えすぎて鼻血噴出しそうなんですが。

 ついでに俺の脚はスマの長い脚に絡め取られる。
 ぐ、ぐはっ・・・!スマの体温が!スマの体温が!!!

 既に俺は寝るどころでもこの状況を回避するどころでもなくなっていた。
 萌えパニック引き起こすってー!!!


 ……と。


『コンコン』
「スマ、ちょっと早いっスけど夕飯にするっスよ」
 部屋の外から聞こえる声。
 アッシュだ。

「むー……。眠いのになぁ…」
 本当に眠そうに呟くスマイル。
 た、頼むから耳元で言うのはやめて・・・!!

「スマー!!起きてるんスかー?!放っておいたらすぐに寝るんスから、早く夕飯食べるっスよ!」
 ドアの向こうでアッシュが叫ぶから、
「今行くー!!」
 スマイルはそう叫んだ。

 よいしょ、と起き上がるスマイル。
 俺は咄嗟に掛け布団を引き上げて体のラインを隠す。

「んー…。行こうか?」
「う、うん」
 スマはベッドから立って部屋の外へ向かっていく。

 スマが向こうの部屋に行ってこちらの姿が見えなくなったのを見計らってから、俺はベッドから降りた。

 カーテンを開けてみると、一気に西日が入り込む。
 …うーん、日の傾き方からして大体6時ちょいくらいか?

 アッシュの口ぶりからすると、スマイルは疲れていたらすぐに寝てしまうらしい。
 だからこんなに夕飯が早いのか。
 お腹減ってるから都合いいけどね!

 俺は部屋の中を見回して、掛けてあったダウンジャケットを着てきちんと前も閉じる。
 これで体型でバレることはあるまい。
 スマイル、ちょっと借りるよ。

ー、早くー」
 部屋の入り口辺りから聞こえるスマの声。

「え?がいるんスか?」
「うん。迷い込んでたみたい」
 アッシュとスマがぼそぼそと話すのを聞きつつ、俺は2人に近付く。

「お待たせー」
「あれ?そのジャケット」
「ごめん、ちょっと寒いから借りる」
「いいよ。大丈夫?」
「んー。俺寒がりだから」

 あははとスマに笑う俺へアッシュが「風邪引いてないっスよね?」と聞いてきたが、当然俺は全力で否定した。

 忘れそうになった掃除機とはたきを持って、俺は部屋を出た。





 その後俺はアッシュに俺の部屋まで道案内をしてもらって、さらしを巻いてから何事もなかったように装って夕食を食べた。(勿論その後ジャケットは返却した)

 …気付いた事。

 何であんな短時間で戻って来れたんだ俺ら!?
 俺は確かに何時間も歩きまくってスマの部屋に来たってのに!?

 どうやら俺は本当に同じ場所をぐるぐると回っていたらしい。
 あぁ…どういう構造してんだこの城は・・・。
 今度こそ本当に城内の地図を書いてもらおうと堅く心に決めた。

 それにしても他のメンバーの部屋を見られなかったのが心残りである。
 あぁくそう。
 でも今回は相当萌えゲージ上昇したからよしとするか。

 …キッチンを水拭きする予定だった気がするが、もうそれは忘れた事にする。
 ………。

 あ、洗濯物取り込むのも忘れてた!!





〜To be continued〜




<アトガキ。>

スマー!!!(何)
スマ大好きです。今回出せて満足です。
スマが部屋に入ってきた辺り、入ってきたのがユーリとも取れる風に書けていたのでユーリ寄り夢にしようかとも思ったのですが、次回がユーリ寄りなので元から予定していた通りに書きました。

あ、話の構成上かけなかったのですが、夢主さんがスマの部屋で何につまずいたかといいますと、実は…
ギャンブラーフィギュアだったりするんですね。(ええぇ)
書きたかったなぁ…。

それでは、次回ユーリ寄り夢になります。お楽しみに。

2005.3.21





加筆・修正→2008.2.23

読み返してみて予想以上にスマへの愛が深くて驚いちゃった回です、ハイ。
とりあえず書き間違いとか矛盾点とか修正してきました。前回よりも更に変更点少ないです。
違いが分かったら私から拍手を送ります!

しかしあんまり変更点が無かったとはいえ、一日かかった罠。いやー、ひとまず9日かかった第2話よりはましですよね。
さて張り切って次行きます!