俺の行きたい店でいいかと皆に訊いた所、それでいいとの答えが返ってきたので、手近な洋服店へと入った。
勿論男物を売っている店である。
女物なんて俺には似合わないだろうし、着る気もないしなぁ。
その店は結構広くて、ジーンズからジャケット、靴まで揃っている。
よし、この店で色々揃えるとするか。
只今店内を物色中。…は、いいのだが。
「君!次これ着て!」
「あ、ずるい!!次はこれっ」
「僕はこれが似合うと思うんだけどなぁ?」
ミミ、ニャミ、タイマーからの激しい試着攻撃が先刻から続いている。
俺が「試着・試着室から出て物色・入って試着…」をいちいち繰り返すのを見かねたミミニャミがさっき一着ずつ持ってきてくれた事から流れでそのままタイマーまで巻き込んで、俺を強制ファッションショーに参加させるまで発展したらしい。
「んじゃ、どれも着てみますか」
俺はとりあえず一番近くにいたタイマーから黒のカッターシャツを受け取った。
そして真後ろの試着室へ再び引っ込む。
何分続いてるんだか、この試着タイム。
それが趣味に合わない服だったら断る事もできるのだが、どれもこれも自分好みの服なのだから手に負えない。
買う事に決定した服が、試着室の鏡前に小山を作っていた。
だ、だってどれもいい感じなんだよ!
この店…俺の趣味に合わせて服置いてるんじゃなかろうか…。
俺はカーテンを閉め、先刻試着していたパーカーを脱いでカッターシャツを手に取る。
…このパーカーも買おう…。
あー、それにしてもよかった。
MZDがさらしをくれなかったらヤバかった。
男物の服にも色々あるわけで、ダボついたものならまだしもピッタリとしたものを着たらさすがに性別バレる。
…巻いたら巻いたで息はしづらいけど。
幸い胸辺りが開いている服は渡されていないから、さらしを巻いてる事は気付かれていない。
現在一緒にいるこの人達もDeuilと同じ業界にいるんだし、そこから情報が漏れてDeuilに俺が女だとバレるという可能性も出てくる。
バレても態度が全く変わらないならいいんだけど、あの3人って女性ファン多そうだから女の人の扱いとか慣れてそうだし、反射的にでもそれと同じ扱いに切り替えられたら俺がもたない。
「…これもいいなぁ。」
ボタンを留めて鏡を見る。
タイマーに選んでもらったこのカッターシャツも、かなり自分の趣味にぴったりだ。
しかし、こんなに買うほどの財力が自分にあるのか微妙である。
MZDに渡されたこのカードは、城の皆が言うには物凄いらしいが、俺には不確定要素たっぷりのただの正体不明な物体だ。
期待…していいのかどうか分かんないなぁ。
…けど、ここまで来たらこれで支払いしてみるしかないよなー。
今更誰かに買ってもらうとかはできないし。
てなことで、それならそれでじゃんじゃか選びまくろう!
悩むのはレジで困ってからだ。
…こういう時だけ俺って楽天家だなぁ……何か複雑。
俺は試着室のカーテンを開けた。
「やっぱり似合うね!」
「かっこいいよ君!!」
「あ、ホントか?じゃあこれも購入ー」
うーむ、こんだけ試着室使いまくるのは初めてだ。
ていうかこんなパワーショッピング自体庶民の俺にはドキドキ初体験だよ。
はじめてのおつかい級のスリル・ショック・サスペンス!!(サスペンスは無いと思うが)
「次はこれ!!」
「違うよー、次はこれなの!」
キャーキャー言っているミミニャミ。
タイマーは次の服を選びにかかっていた。(まだ着せるつもりなのか!?)
うーん、女の子はやっぱ買い物が好きなのか。…って、自分も女だが。
タイマーもアイドルだけあって服には興味があるらしい。
……俺、やっぱ女らしくした方がいいのかな?
…いや、今更かな。
今から女らしくしても、きっとぎこちなくて奇妙な動きしかできないだろうし。
しかもそんな事して女の子扱いされた日には、俺はまた焦って困って固まるに決まってる。
もう、あの子は傍にいないのに。
もうとっくに治ったはずの古い傷が、かすかに痛んだ気がした。
そんな風に少し遠くに意識を飛ばしていると、左の方からずいっと服が差し出された。
驚いて見てみる。
「…これ。着てみろ」
「え」
服を差し出しているのは、六だった。
何気に服選びに参加していたのですね・・・!!
俺はそれを受け取り、しばし眺める。
黒が基調の、背に不思議な文様が入った薄手のロングコート。
・・・・・・。
モロ好みです・・・!!
ロング系は元々好きだ。
それに加えて黒、不思議文様。
このコートは俺の為にあるんだ絶対そうだ!(思い込みも時に大切!)
俺は喜び勇んでそれを羽織る。
「うわー、すっげいいなコレ!六ありがとう!!」
「いや。お前に似合うと思ったんだ」
「!」
・・・っ、萌え殺すつもりですか六さん・・・!!
六にそんなこと言われるなんて、俺は今すぐここで魂抜かれても文句は言わない・・・!
「六、横入りは駄目ー!次はこれなの!」
「違うよ、次は私が選んだ服!!」
「あー、両方着るから・・・。」
溜息混じりにそう割り入れば、
「「ほんと!?」」
表情を輝かせて聞き返す女子2名。
「ホントホントー」
俺は苦笑しつつ両方を受け取って、カーテンを閉めた。
***
あれから30分程服選びに格闘させられ、それから靴や帽子を適当に選んだ。
それで、今からいよいよレジに運ぶ所である。
「さーて、某カードはちゃんと役に立つのかな?」
俺はポケットに突っ込んだカードを抜き出す。
やはり、裏も表も真っ白である。
これが本当に使えるものなのか?
「君、レジに運ぶの大変だから店員さん呼ぼう」
「あ、その手があったか」
俺は、鏡の前に積んである服の山からニャミに視線を移して手をぽんと打つ。
「すいませーん!!」
ミミが大声で店員を呼ぶと、若い男の店員が早足でこちらに向かってきた。
「レジに運ぶの大変なんで、ここで会計済ませていいですか?」
「はい、よろしいですよ」
店員は、試着室の傍にあった箱から電卓を取り出した。
俺が次々服を渡して、店員さんが確認して、電卓打って…を、幾度と無く繰り返す。
いや、量が半端じゃないだけに時間もかかるな。
見積もり出すのだけでも店員さん大変だ…。
最終的に店員さんをもう1名呼んでの作業になったくらいだ。
時間がかかったが、ようやく合計金額を出せた。
店員は打ち終わった数字をこちらに見せる。
えーと?
一、十、百、千・・・・・・、ん?
目を疑った俺は、再度確かめる。
が、やはり最初見た通りである。
軽く十万越してるんですが・・・?
どうしよう、こんなに払えるのか俺!?
こんな額初めて見たぞ!?
俺の顔色を見て心配になったのか、俺以外の皆が俺の顔を覗き込む。(店員含む)
いや、何だか食い逃げする奴の気分になってきたんですが…。
俺はかなりの冷や汗をかきつつ、握っていたカードを店員に差し出した。
「こ、これで・・・」
すると、店員はそれを受け取って固まった。
やはり駄目か!?
そうだよな、こんな真っ白でオモチャみたいなカード。
それとも使い方間違ってるのか?
「や、やっぱり駄目ですかねぇ…?」
恐る恐る店員に訊いてみると、店員ははっとしたようにカードから俺に視線を移して勢いよく首を左右に振る。
「いっ、いいえ!少々お待ちくださいませ!!」
店員さんは急いで店の奥まで駆け込んでいって、白髪交じりの男の人(何か妙に威厳を感じる)を連れて戻ってきた。
その間に他の店員さんが(なぜか総出で)服の値札をハサミで切り取っていた。(多分今からバーコードを読み取りにレジへ行くんだと思う)
え…これは、何事…?
「本日はようこそいらっしゃいました、少々お時間がかかりますが、宜しいでしょうか?」
「あ、いえ、構いませんよ」
ひょっとしてカード窃盗とかそんな罪に問われるんじゃなかろうかと冷や汗かいてたから、男の人の言葉の丁寧さに驚いた。
…ていう、か………
ネームプレートに店長って書いてあるっ!!!?
うわわわ!?知らない間に大騒動!?
店員さんたちが値札を全部切り終わった所で、店長さんが「それでは、カードをお預かりします」と軽く礼をして、俺がさっきカードを手渡した店員さんからカードを丁寧に受け取った。…すると、
「様ですね。お会計が済みましたらお伝えしますので、よろしければ皆様ご一緒に奥でお茶など…」
「いえいえ、お構いなく…!!」
なぜか俺の名前をぴたりと当てた後、VIP待遇で迎えてくれようとしてくれる店長さん。
俺は申し訳なくも若干言葉を遮って遠慮した……、っていうかこの状況で遠慮せずにいられるだろうか!?何だこの唐突な良質サービス!
店長さんは俺が言葉を遮ったにも関わらず優しく笑って「では、恐縮ですがもうしばし店内でお待ちくださいませ」とお辞儀をして店の奥へと行ってしまった。
………えーっと。
とりあえず名前が分かったのは仮にあのカードに俺の名前を認識できる何かがあったからだとして、じゃああの待遇は一体…?
「君、あれどこで手に入れたの…?」
タイマーが、呆然としたような声で俺に訊いてきた。
「ん?MZDに貰った。…あれって一体何なんだ?」
「知らずに使ったの?!」
「え、あ、そうだけど…何?」
聞き返したのに、返ってきたのは軽い溜息。
な、何だよ…?
「、あれは神のクレジットだ」
言う気のなさそうな3名を置いて説明する六。
「クレジット…って、やっぱそうなのか?で、何で皆反応がおかしいんだよ」
「まぁ…王族並みの買い物が軽くできるらしいからな…」
「・・・・・・」
・・・・・え?
「なっ、どういうことだよ!?それってかなり凄いんじゃ…」
「そういうこったな。他にも何か使い道があるらしいが…」
よくは知らん、と六は言葉を区切る。
何なんだ、あの不思議カード。
ていうか本当に貰って良かったのか!?
MZD、生活に困ってやしないだろうか?
でも軽ーく「やるよ」って言ってたし…。
うーん……。
カードが手元に戻って来た時思わず両手で受け取ってしまったのは、カードにすら威厳を感じてしまったせいだった。
恐るべし神カード。
***
「あー、結構買ったなぁ…」
恭しい礼を背後に受けつつ、店から遠ざかる。(恐いくらいセレブ待遇だな…)
いつの間にかタイマーも服を買っていたらしく、彼の手には袋が一つ増えている。
…ちなみに彼の手に握られているのは彼自身の荷物だけではない。
俺が買った服は大量だったので、タイマーや六にも持ってもらっているのですよ、ハイ。
自分も両手に3袋ずつ持っているのだが、これが大きい袋ばかりでうまく動けない。
当然俺が一番多く持ってるけど。悪いから。
「次は何買うー?」
「パジャマとか雑貨とかいるよね!!」
唯一荷物を持っていないミミニャミが、はしゃぎながら振り返った。
俺達はその後ろから(袋のせいでうまく歩けない)、のろのろとついて歩いている。
女子に持たせるのは更に悪い気がしたので、持たせなかったのだ。
・・・いや、本当に俺も女だってば。
「んー、今回は荷物も多いし、このくらいで引き上げようかと思うんだけど」
「えー?私達持てるのに」
「それじゃ持たせなかった意味無いって」
「君ってフェミニストだねぇ」
「そうかなぁ?」
自覚はないんだがなぁ。
というか、このまま他の物も買いに行ったらヤバいんだって。
雑貨まではいいのだが、必要物資といえば下着もかなり上位に来るだろうから、このまま買い物に付き合ってもらっては困るのである。
モロにバレるよ。
さすがに下着まで男物をつける気はない。
…しかし、このまま帰るとなると下着は今の1枚しかない状態が続く事になる。
もうそろそろつけ替えたいんだが…。
うぅ、困った。
「悩むくらいなら行った方がいいんじゃない?付き合うからさ。別の日に来るとしても大変でしょ?」
タイマーが荷物を持ち直しながら小首を傾げる。
荷物持ってくれてるのに更にそう言ってくれるとは、何て優しいんだろう・・・!!
「あ、じゃあ…お願いします」
へこりとお辞儀をする俺。(荷物が重くて多少ふにゃけた)
本当にありがたいなぁ。
実際、あんまりあの城から出入りするのはよくないから、一度に済むならそれに越した事はない。
「あ、そんな礼儀正しくしなくていいのに」
「そうだよ君。こっちは好きでやってるんだから」
ね、と俺の顔を覗き込むニャミ。
うーん、可愛い。
「何だか君見てると放っておけないんだよね。こう…か弱い乙女を見てるみたいでさ」
ミミがニャミの隣に来て言ったその言葉に、俺は思わずぎくりとする。
「な、何でそう思うんだ…?」
「何でだろう?あ、君男なのにごめんね、変な事言って」
「いや……」
確信は無いんだな…。
女の勘ってやつか?恐ろしい。
別に俺はか弱いわけでもないと思うんだが。
「じゃ、行こっか!」
「おー!」
掛け声かけてさっさと歩き出すミミニャミ。
その先には、大きなショッピングモール。
あー、あそこなら何でも揃ってそうだなー。
先のほうへどんどん進んでいってしまう2人をタイマーが早足で追いかけていった。
周囲の視線が再び集まりかけていたからだと思われる。
さっきタイマーが発見されたばかりだから、周囲も敏感になっていたのだろう。
つまるところ、某侍と俺の2人が取り残されたわけで。
「…あー、買い物付き合わせて悪いな」
かなり私的なことで連れ回してしまったので、申し訳ない。
「いや、どうせやることもなかった」
「そか。ありがとな」
よかった。とりあえず六の予定の邪魔はしていなかったようだ。
が、俺が笑って礼を言うと、六は考え込むように眉を寄せた。
・・・何?俺何か変な事言ったか?
「…なぜ隠す?」
「は?」
「お前は…」
言いかけた所で、
「早くー!!」
ミミが叫んできた。
俺達は、思わず顔を見合わせてから足早に追いかけていった。
…何を言いたかったんだろう、六。
***
必要雑貨も買い込んで、パジャマも買って。
今は荷物を休憩所に全部置いて自由に中を見ている最中。
荷物は六に見てもらっているので大丈夫だろう。(進んで見張り役を引き受けてくれたので任せた)
…自由にしたのには訳がある。
皆に自由に買い物をしてほしかったというのもあるが、理由の大部分は、付き添いがいない間に下着を買ってしまおうというもの。
確か下着はこのフロアで売っていたはず。
ぐるりと見回してみると…あった。
近づいてみると、どう考えても俺には場違いな華やかさを持つ女性用の下着売り場。
軽く溜息をついて入ってみる。
・・・・・・。
何だか周囲の視線が痛いんですが・・・。
やっぱあれか?ここでも男だと思われてるのか?
それじゃ俺変態じゃん!
あー、どうしよう。
でも必要なモンは必要。覚悟を決めろ、ファイト!俺!!
俺はさっさと下着選びにかかる。
なるべくレースのついていないシンプルなもの。
下の方は良いのが見つかり次第大量に抱え込んだ。
上は……これもシンプルなのがいいから、サイズを見て適当に数着選んだ。
さらし巻くから上は必要ない気がするけど、城の皆が出払った時には解いときたいし。
…だってほら、さらしって苦しいから。
ちなみに物色してる間、物凄く視線が痛かったのは言うまでも無い。
うううぅぅ、どうせ俺は変態だ!いいじゃないか、彼女の誕生日に下着贈る男だって居るんだから!!(そういう場合でも多分こんなに大量には買わないと思うけど!)
……周囲の目から見れば、女性用下着を真剣に選んで大量購入していく若い変態男。
こんなんじゃ来づらいじゃないか。大量に買っていかないと、次に買いに来る時なんて想像もしたくない。
くっ…我慢だ、今だけは我慢しろ俺!!
とりあえずレジに運んだ所で、店員さんにもジロジロ見られた時にはさすがに「俺、女ですから」と弁明しといた。
店員さんどころか周囲の客にもぎょっとされた…なんていうのは秘密です…。(あ、涙出そう)
会計を済ませて(ちなみにここでもカードにはぎょっとされた)、ここに来る前に購入した財布の中にカードを入れ、その財布を真新しい肩掛けカバンにしまう。
…終わった。全て終わった!!
よくぞ耐えた、俺!!!
ようやくこの場から離れられる、と心の中で自分に拍手喝采してスキップで下着売り場から出ようとした……その時。
「次何見よっかー」
「うーん、どうする?」
近づく女の子2名。
一瞬我が目を疑いましたが、数秒凝視して確認。
ミミニャミです。
どうしよう!!
下着売り場から出てくる姿なんて見られたら変態だと思われるか俺から女だとバラすかのどっちかしかないじゃないか!!
うぁ…こうなったらバレないように反対側から出るしか…。
俺は忍び足で下着売り場を抜ける。
…一般客の視線が痛かったが。
何とか気付かれずに済んだようだ。
喋りながら歩いているのが向こう側に見える。
俺は一目散に六の待つ休憩所まで駆け出した。
「あれ?今下着売り場に君いなかった?」
「え?」
怪訝そうな2名が、疑問符を浮かべているのも知らずに。
***
六と喋りながら30分程休憩所に座っていると、タイマーを筆頭にミミニャミも来て、全員が集まった。
どうやら個人の買い物も済んだらしい。
…全部の買い物袋を見ると、かなり恐ろしい量になっているのだが・・・。
大丈夫だろうか。
「さーて、帰るか」
「荷物、家まで持っていくよ」
ニャミが、俺の分の荷物を3袋ほど持って言った。
「本当か!?何か悪いなぁ…。」
「でも1人じゃ明らかに無理でしょ」
「…やっぱりそう思うか?」
荷物のせいで隣のテーブルまで占領してしまっているこの状態。
さすがに1人で運ぶのは無理か・・・。
「あ、女子は持たなくていいなんて言わないでね!私達だって持てるもん」
「実際、もう男子だけじゃ手に負えないでしょ」
「…だな。ありがとう」
全員に持ってもらって、立ち上がる。
「…あ、そういえば君…、30分くらい前に女性用の下着売り場にいなかった?」
背後から唐突に疑問を投げかけるミミ。
俺は数秒の間、質問の内容が理解できなかった。
ま、まさか見られていたなんて!!
気付かれていないとばかり思っていたので、かなり焦ってしまった。
だって下着が入ってる袋は自分の服が入ってる袋にこっそり突っ込んだ後だったから、証拠隠滅までしてバッチリ!なんて思ってたのに!
そして。
「えっ、そ、そんなとこにいるわけないじゃん!!」
答えるまでに数秒かかった挙句、果てしなくぎこちない返答。
俺の反応に、少々疑わしげに首を傾げるミミ。
うわバレる!!!
「は、1時間程前からここに座っていた」
固まる俺を置いて、六がミミにそう伝えた。
え…、今何て?
俺は少なくとも1時間なんて長い間はここにいなかったはず。
だとすると、六は俺のアリバイを作ろうとしている?
何で?
尋ねようとする俺を、六の視線が制止した。
「そっか、そうだよね」
「やっぱりー。君がそんなとこにいるわけないじゃん!」
「あはは…。君ごめんね?」
すまなそうに謝ってくるミミに、俺は「はぁ…」と気のない返事をした。
全員が外に向けて歩き出す。
六が皆からちょっと離れた後ろの方について歩いているのを見て、俺は意識的に歩調を緩めて後ろの方へ行った。
さっきの事を訊こうと思ったのだ。
「六、」
「もう少しうまく嘘をつけ」
「…え……」
俺が訊く前に小さく言われ、俺は一瞬驚く。
ちょっと待て、それってもしや…、
「俺の正体…」
「俺、とは女が言うものではないだろう」
「やっぱし・・・・・。」
バレてました。
どうしましょう奥さん!!
「いつから知ってたんだ?」
エスカレーターに乗りながら、段の前後でこっそり会話を続ける。
ミミ、ニャミ、タイマーは、前の方で話をしていてこちらの様子に気付いていない。
「いつから、と言われても、会った当初から分かっていた事だ」
「!?」
マジですか!?
今までMZD以外に気付かれた事なかったのに。
やっぱあれですか、侍の能力って奴?
「何で分かったんだ?」
「男と女の区別くらいつく」
「…はぁ、さいですか」
それが分からない人間が大量にいるのですがねぇ。
「六、このことは誰にも言わないでおいてくれるか?」
「構わん」
何か事情があるのだろう、と付け足す六。
いやまぁ、俺にとっては死活問題だけど……かなり私的な問題だからなぁ。
苦笑をしながら、エスカレーターを降りた。
***
ユーリの城のリビング。
こんもりと置かれた荷物達に、俺は軽く溜息。
ミミ、ニャミ、六、タイマーに荷物をここまで運ぶのを手伝ってもらって、皆で紅茶を飲んでから解散した直後だ。
六とタイマーは俺がここに住んでいる事に驚いていた。
まぁ、このメンバーなら連れてきても大丈夫だと踏んでここまで来てもらったわけだけど。
とりあえずミミニャミが口止めしてたから万事オッケー。
「今度皆にお礼しよう」
一人呟きながら、俺は大量の荷物の内6袋を持って立ち上がる。
手提げなので片手に3袋ずつだ。
何往復かしないと運びきれないな。
「…あ、もう2時過ぎてら」
ひょいと見上げた時計は、2時5分を指していた。
アッシュが作ってくれた昼飯食うか、と一人納得して、とりあえず持った荷物だけでも仕舞ってくる為に階段を上がる俺だった。
…ちなみに、後から分かった事だけど、最初履いてきた靴はスマイルのものだったらしい。
感謝!
〜To be continued〜
<アトガキ。>
か、買い物編何とか終わりました!!当初予定していたより長くなってびっくりです。
六にバレました。ろ、六なら分かってしまう気がしまして・・・!!(何それ)
Deuilにはまだバレない予定です。
下着事件は…まぁ…ノーコメントの方向で!!(?)
幻作の趣味ですハイ。(コラ)
書いていて冷や汗かいていたというのは秘密です。
Deuil中心なのに全くDeuilでてこないことに今更気付き。
ご、ごめんなさい・・・!!次回は出ます!必ず出ます!!
次回、夢主が家事を手伝う模様。お楽しみに。
2005.3.8
加筆・修正→2008.2.20
ふははは、本日2本目の修正ですよ。然程苦戦しませんでした、よかった……
シチュエーションを若干変えたりとかはしましたが、それでもほぼ変わってません。
やー、それにしても久し振りに読み返すとワケワカメな文章出てきますねー。
…修行不足ですいませんorz
では張り切って次へ行ってきます。