40.送り届けられて
無事に送り届けられました、ショッピングモール前。
道中KKと色んな話はしたけど、結局名前以外は聞けてない。こっちの話ばっかり。
多分意図的にそうしたんだろうけどね。
「じゃ、ここまでありがとうございました」
「本当に助かりました」
二人して頭を下げる。
「いや、乗り掛かった舟だ。荷物持ちくらいやるさ」
「え、でも」
「何か用事があったんじゃないんですか?」
「まぁ優先事項でもないからな。夕方までなら平気だ」
「さ…さすがに申し訳ないというか」
「いいからいいから」
押し切られてお店の中に突入することになったのである。
41.ショッピング
「まずは服かな」
「たくさん欲しいよね」
1週間分くらいあればローテーションして何とかなりそう。
季節が変わったらまた来ればいい話だし。
んで、自分好みのお店を探して突入。
KKはお店の前の椅子に座って待ってるようだ。
「ちなみに予算ってどのくらいとれる?」
「えぇっと。…多分思う存分お買い物できると思う」
「え」
「いつも余裕をもって補充してくれるし、遠慮したら怒られちゃうから……。それにね、無駄遣いじゃないからいいんじゃないかな?」
何というブルジョワ仕様。
そっか、皆有名人だもんね。
「じゃあこれと……ああ、これも捨てがたい」
値札は見ますよ、貧乏性ですから。安く済ます努力もしますよ、申し訳ないから。
42.次に買うもの
「あの…KKさん」
「ん?なんだ?」
さりげなく荷物(服がたくさん詰まった大袋)を持ってくれて、次のお店を探す。
ちゃんに聞いたからこっちで合ってるはず。
「えっと、この辺で待っててくれますか?」
「ん、近くにいた方が荷物を持ちやすくないか?」
「あー…その……」
「何をそんなにためらって、」
「ぶっちゃけ下着なんです、次に買うの。しかも大量に」
「・・・・・・・」
有無を言わせず別行動開始。
43.買ってきました
生活に困らないほど買ってきて、戻ってくる。
さすがにこれは自分で持つと言ったら「…そうか」と抵抗なく納得してくれた様子。そりゃそうか。
んで、次に向かうは雑貨屋さん。
食器が欲しい。
いつまでもお客様用を使うのは悲しいので。
バスグッズやアクセサリーの横に可愛い食器が置いてある。
なるべく皆のと似たような感じがいいなぁ。
ってことはシンプルな感じで。
雑貨類は見てて楽しいようで、ちゃんも見て回ってる。
カチューシャかぁ、似合うだろうなぁ。
私なんてどこのコスプレイヤーかと思われそうだから絶対付けられないけど。
で、ちゃんから預かったお財布で食器類一式を購入。
お店を出る。
「あれ?KKさんが居ない」
お店の前にあるソファに居ると思ったんだけど。
―――と。
「そんな、悪いですよ!」
「まぁそう言うな。似合うと思ったからつけてやりたくなった、じゃ駄目か?」
「で、でも…」
振り向けば、ちゃんの頭にカチューシャつけてあげてるKKの姿。
勿論そのカチューシャには値札がついてない。つまり購入済み。
ちなみにさっきちゃんが見てたやつだ。
「…ああ、やっぱ似合うな」
「……ありがとうございます」
若干照れた様子のちゃんと、それを目を細めて見つめるKK。
どっからどう見ても歳の差カップルですごちそうさま。
こっちに気付いたちゃんが駆け寄ってきて、「さん…」ってもじもじしながら呼んでくる。
どんな反応したらいいんだいまったくもう!
「うん、似合うね。こりゃ買ってあげたくもなるわ」
「そ…かな」
「で、お嬢ちゃんにはこれ」
「え?」
ぱちっと音がして耳たぶが挟まれる感覚。
しかも両耳。
「イヤリング?」
「ああ。シンプルなのばっか見てたから勝手に想像で選んじまったがな」
店頭に置いてある鏡を見たら、ほんとにシンプルなコットンパールのイヤリング。
え、こ、これ……
「いいんですか!?」
「ん。似合うぜ?」
「わ!わ!……ほんとにいいんですか!?」
「俺がつけても似合わない」
「ありがとうございますっ!!」
家宝にするかもしんない。
Mr.KKからのプレゼントー!!!
っていうかちゃんへのプレゼントだけで収まっちゃうかと思ったのはさすがにひねくれてますか。
44.まるで主婦
そっから色々買い漁り、いい感じに物が揃った所で食品売り場へ突入。
今度はちゃんのターンだ。
…っていうかヒロインとしても「私のターン」てなもんで、KKと並んであれこれ買ってる姿はまるで若夫婦。
何作るんだ?、えーっとね、なんてそんなやり取りが拍車をかける。
これ、私の場違い感半端ないね!
よそのご家庭を覗き見てるみたいで何だか申し訳ない気分になる。
というかお客さん(主に男の人)の視線がちゃんに吸い寄せられてるのが客観的に見てよくわかる。
さすが美少女。ここまで極端なのも初めて見たけど。
夢小説空間は違うってことですかね。
何人か声をかけようとして、隣に居るKKに目が行って未遂に終わるっていうパターンもありました。
男避けとしてもかなり優秀なんですねKKさん。
で、時々ちゃんから意見を求められつつ買い物は無事終了してレジを通過。
袋にいろいろ詰め込んでそれもKKさんがひょいっと持っちゃう。 紳 士 か 。
これで買い物は全部終わった。
あとは帰るだけ。
と、いう所で。
「あ、やだ、1個買い忘れちゃった。さん、KKさん、ちょっと待っててくれますか?」
言うとともに駆け出しちゃったから、止める言葉もかけられず。
仕方なく自販機の前にあるベンチで待つことにしたのだった。
45.思いがけず二人きり
「……あの、えっと」
二人並んで座ったはいいものの、話題がなくて困る。
ていうか今までちゃんがメインで喋ってたからいきなり二人になられても。
まさかヒロインを置いてお鉢が回ってくるとは思ってなかったし。
「まぁそんな固くなるな」
「…あ、ハイ、スイマセン」
「謝らなくてもいい」
「あ…はい」
背筋がなんとなく伸びる。
身長差があるからそれも何だか意識してしまう。
大人の男の人だー。
「とは友達なのか?」
「あ…えーっと。同居人というか何というか」
「? ルームシェアでもしてるのか?」
「いや、私とちゃんがとある物件に居候させてもらってる状態でして」
「ほう。まぁ一緒に住んでるのには違いないのか」
「ですね」
この場合Deuilの事は言ってもいいのか分かんないから伏せておく。
家主に迷惑かけちゃならんでしょ。
「その…なんつうか。助けてやりたくなるな、ありゃ」
「………」
KKさんの視線は食品売り場の方に向いてて、誰を指してるかなんて一目瞭然。
聞こえない程度に溜息をついて、まぁそうだよねと心を落ち着ける。こんな時にまでかぁ。
いいよ、慣れてるし。
「ちゃんですか」
「ああ。どうも頼りなさそうで、そのくせ頑張るもんでな」
「分かります、それ。漫画から出てきたヒロインって感じで」
「それは……納得かもしれん」
ですよねー。実際ありえない数のフラグを打ち立ててきた百戦錬磨のヒロインですしー。
手持ち無沙汰なもんで、KKさんに貰ったイヤリングをいじいじ。
「そうでなくても可愛いんだからもっと自覚を持ってほしいっていうか。危なっかしいんで困ります」
「出会いからしてそうだから何とも言えんが」
「そうですねー」
ぱちぱちと無駄に金具を開いたり閉じたり。
「ただいまー!」
不意に遠くから声が近づいてきて、顔を上げる。
ちゃんだ。
「何忘れたの?」
多少息を切らして駆け寄ってくるちゃんに、聞きそびれてたことを聞いてみた。
「えっとね、ジャム。朝ごはんに必要なの忘れてて」
「あー。そっか、そういえばもう無いって言ってたっけ」
で、それすらもひょいっと持ってKKさんが立ち上がる。
「買い物はそれで全部か?」
「あ、はい!」
「じゃあ帰るか」
「あぁ、でも……これだけ荷物が多いと大変だし、帰りはタクシーで行こうかなと思ってます」
「そうか。じゃあそこまで送る」
「なんか別れるの寂しいですね…なんて」
照れ笑いをするちゃんがあざと可愛い。くそう、やっぱ顔面偏差値が違うと好印象に映るんだな。
「まぁ、なんだったら連絡先教えとくか?一応これでも何でも屋ってなもんをやっててな」
「え?え?」
戸惑ってるちゃんに、内ポケットからメモとペンを出してさらさらーっと何かを書いて渡した。
覗き込んだら電話番号だった。
「困ったことがあったら呼ぶといい。猫探しから何からお任せあれ」
「KKさんってそういう職業だったんですね!わぁ……じゃあ何かあったら宜しくお願いします!」
キラキラーって表現が合いそうな笑みを浮かべるちゃんと、それを見つめるKKさん。
「ま、何もないにこしたことはないが」
「それは言いっこなしですよ!」
ああ、KKの好感度がぎゅんぎゅん上がってくのがわかる。
メーターの半分以上行ってるよ絶対。
そんなに攻略対象増やしてどうすんですか。
「さて、行くか」
「はい!」
というわけで外に出ることになった。
46.帰宅
「到着!!運転手さんお疲れ様です」
「いやいや、それよりその荷物大丈夫かい?」
「二人で持ってくんで大丈夫です!」
ショッピングモールでKKと別れて、タクシーに乗って帰ってきましたユーリの城。
両手に荷物をいっぱいいっぱい持って、降り立つ。
例のお財布から代金を渡して、ちゃんが手を振る。
ううむ、中々の荷物量。
それにしても今日は色々あったなぁ。
今日あったことを順に思い出していくと、疲れがどっと出てきた。
……うん、私一人だったらもっとスムーズに終わったような気がしなくもない。
ていうか確信。
ヒロインは買い物には向かない。
「ただいま!」
「ただいまー」
二人して玄関の扉を開いて入る。
今日ゲットしたもの:生活用品一式、大量のフラグ、KKから貰ったプレゼント、KKの電話番号。
うむ、モブとヒロインとしては十分な結果だ。
………。
次から一人で行こう。
続く!>>
<あとがき>
買い物編て鉄板じゃないですか。
別の長編でも書いちゃってるくらい鉄板じゃないですか。
そこで大量にフラグ立ててくるのもヒロインにはありがちってことで。
これ書いてる途中で今後の方針考えてたんですが、書いてみたい場面がぽちぽち出てきたんですよね。
今後ちょっとそれを書いてみたいと思います。