「クポオオォ!!」
 モーグリの嘆くような声が響き渡る。
 それまでアイテムの出来上がりを待っていたは、何事かとモーグリの背中に視線を注いだ。

 ここにはモーグリとだけしか居ない。
 は現在パーティーから離れた単独行動中だった。
 この町に着いた直後、いつものように『消耗品の買い足し』、『武器・防具の新調』、……等の役割を一人一つずつ分担する事になり、は『戦利品をモーグリに合成して貰いに行く』という役割を選んだのだ。

 ちなみにがこの役割をやりたがるのはいつもの事で、それが定着化しつつあった。
 本人曰く「アイテムが出来上がるまでの工程が面白いんだよね」との事。
 そして今回もいつもと同じように、何を合成したいかを決めて必要な材料をモーグリに渡し、出来上がるまでの工程を見ていた。
 が、モーグリに何か起こったらしい。

「どうしたの?失敗した?」
「………」

 何も答えないモーグリに首を傾げて、部屋の隅に居たはどっこらせと腰を上げた。
 背の低いモーグリの正面に回り、視線を合わせる為にしゃがむ。
 モーグリはビーカーの中の液体を見つめてふるふると震えていた。

「…あれ、何か違うね?」
 エリクサーを頼んだはずだが、ビーカーの中にはピンク色のとろとろとした液体が入っていた。
 見た目からしてエリクサーとは違う物体だ。
 そしてもわんと立ち上る甘ったるい香り。何だか美味しそうである。

 とりあえずモーグリが失敗するのは何度か見ていた為、また落ち込むだろうなと思ったは、その小さな肩をぽんと叩いて「どんまい」と慰めた。
 ――が、

「もったいないから貰うよ」
 がその一言を発した瞬間、モーグリは弾かれた様にの顔を見上げて固まった。
 振り向いた反動で、頭にくっついている丸いぽんぽんがゆらゆら揺れている。

「…何、そんなにヤバい液体なの?飲んだら死ぬとか?」
「………死にはしないけど……ヤバいクポ…」
「何がどうヤバいの?場合によっては捨ててくるけど」
「………誰にも言わないクポ?」
「言わない言わない」
「……………やっぱり言わないクポ」
「・・・」

 はにっこりとモーグリを見つめた。
 モーグリも(困惑した目で)を見つめた。
 そして、

「気になるでしょ!!言いなさいよおおぉ!!!」
「クポオオオォォ!!」

 がくがくがくがく、とモーグリの身体を引っつかんで揺すりまくる。…液体がこぼれない程度に。

「言う、言うクポっ!言うからっ!!脳みそが揺れる!内容物が出るクポ!!やめろクポオオォ!!
「よろしい」
 ぱっと放すと、よろけてへたり込んだモーグリは弱々しく言った。
「…実は……」


「………体力回復作用の他に、催淫作用がついちゃったクポ…」

「・・・・・・・・・・・・。」


 それはつまり、『媚薬』という奴で。





割別の鍵・EX
失敗は成功のもと?
〜乙女は強いのです。〜






 は、あらかじめ皆で決めておいた集合場所へ向かって、とぼとぼと歩いていた。
 ………失敗作であるはずのピンクの媚薬を持って。
 瓶に詰めて貰ったその液体を眺めながら歩くは、何かいけない事をしているようでドキドキしていた。

(どうしよう…これ)

 勿論、無理矢理持たされたわけではなく自分で貰ってきたのだが、効能が効能だけに持っているだけで戸惑う。
 用途は考えてある。…とりあえずは。

(ただでさえ私達、どっちもが奥手なんだもんね…)

 はソラと恋人同士になって随分経つが、恋人としてやっている事といえば傍に居ることくらいで、抱き合うことも稀、キスなど片手で足りるくらいしかした事が無い。
 ソラが恋愛に対して奥手なのは何となく分かっていたが、そんな風に遠慮されてしまえば、よもや彼女側の方から手を出す勇気など出るはずもなく。
 …せめて手を繋いでくれたりはしてくれてもいいのに、と思うのが彼女としての思いである。

 最近その事で途方に暮れていたに、たった今転がり込んだ解決への糸口。…この液体だ。
 これがあれば「手を繋いでもらえない」だの「キスしてもらえない」だのの域を笑顔でぶっ飛んで親密な関係になれるはず。

 思い切り順序が違うかもしれないが、にっちもさっちも行かないのなら仕方が無い。
 自分がこれを飲んで積極的になってみるしかない。
 要するにこれで勢いづけて色々注文するのだ。

 これでソラを上手い具合に挑発できればもうドナルドに『とソラって、恋人っていうより姉弟みたいだよね』等と言われることは無くなるはず。
 さらば無邪気な恋。こんにちは大人の愛。(レベルが物凄く飛躍しすぎなのはご愛嬌!!)

 しかし実際にそれを実行できるかと脳内で自分に問えば考え込んでしまうのが女心である。
 いきなり迫ってソラに引かれないだろうか、とか、やっぱり物事には順序が、とか、歩いている間中自問自答の無限ループだ。
 ひとまず言える事は、

「ヲトメにこんな事で悩ませるな馬鹿彼氏…」
 進展しなくて困ってる、ならまだしも媚薬を飲もうか飲むまいか悩んでいるという時点で果てしなく滑稽である。

 幸いこの媚薬はエリクサーとして作られようとしていただけあって、体力回復作用と媚薬効果が半々なので(どうやらMP回復の部分が媚薬効果に摩り替わったらしい)、そんなに強力ではないとのこと。
 それならば大惨事にはならない…かもしれない?

 ………。

「……よし」
 媚薬の瓶をぐっと握り締める。これを飲む決心はついた。一世一代の大博打である。
 強力でないなら何とか自我を保ったままソラとイチャつけるかもしれない。
 しかしいつ飲めばいいだろうか。
 何せいつもドナルドとグーフィーが一緒に居るから―――、


!こっちこっち!」
「遅かったねぇ」
「一体いくつ合成してたんだ?」

 思案途中に存外に近くから仲間の声が聞こえて、は思い切り肩を跳ね上がらせた。
 内心では夜の学校で死体を見つけたくらいの勢いで大絶叫だ。

「あれ?何持ってるの?」
「えっ?」
 おまけにグーフィーに訊ねられ、思わず声が裏返る。
 10メートルくらい先にいるはずなのに、どうしてここまで気付くのだろうか。

「えっと、これは……体力回復薬…だよ?(半分本当)」
「何でそんなに自信なさそうなんだ…?」
「(ツッコむなドナルドおおぉ!!)いいから今日休む所は?ドナルドの役割だよねっ!」
 慌てて道具袋の中に媚薬を突っ込みながら、ドナルドに詰め寄る。

 ドナルドの役割は『休む場所を見つけること』だ。
 グミシップのコックピットで睡眠をとるのは毎度の事だが、長い間それが続くと身体の節々が痛くなる。
 というわけで、定期的に街の中で休める場所(できれば屋根のある建物)を見つけて休むことにしているのである。
 今回のように初めて来た土地だと、見つけるまでにわりと時間がかかるはずなのだが。

「それは大丈夫!ここにはちゃんとした宿屋があったから、もう部屋も取ってきたぞ!」
「…手際いいねドナルド」
 話題が逸らせたなら別にいいか…と荷物袋を背負い直して明後日の方向を見た…直後。

 …宿屋?

 その単語から不意にあるアイデアがの脳裏を掠める。
 宿屋。…もしかすると、これは……

「ね、ドナルド。何部屋取ったの?」
「2部屋だよ。いつも通り、男部屋と女部屋」
「・・・・・・」

 この条件、使える。

 瞬間的に運命の女神に感謝の土下座をした。
 パーティーの中で女は自分一人だけなのだから、ソラを女部屋に誘い出せば二人きりになれるはず。
 作戦決行は今日の夜に決定。

「用事はもう皆終わったよね?早く宿屋に行こうよ!」
 テンション高くドナルドの背を押すに一同は多少の疑問を覚えながら、まぁとりあえず最近休息も少なかったのでそれも当然かと納得した。

「こっち」
 ドナルドが先頭になって歩き出し、赤いレンガの建物から右に曲がった。
 ――その時。

 するり。
 閑散とした街の中、影に紛れて何か黒いものが大量に動いた。

「…ハートレス!」
 動いた大量の黒いものは、全てハートレスだった。
 幸い周囲に一般人は居ない。
 ソラ達は武器を、は魔法を構えた。

 この世界に降りてから一度目の戦闘だが、どうやらこの世界にもハートレスが巣食っているようだ。
 襲い掛かってくるハートレスへ、4人は反撃に打って出た。


 ***


「あー、疲れた…」
「まさかあんなに居るなんて思わなかった…」

 道の端に座り込んで一休みする一同。
 後から後から増えてきりが無いように思われたハートレスをようやく掃討し終えた直後である。
 塵も積もれば山となる、とはよく言ったもので、弱いハートレスも束になれば疲労の原因にはなるらしい。

、道具袋貸して。足の傷が痛くてさ…」
 ソラがの隣にある道具袋を指さしつつ疲れた声で言った。
「え?回復なら私かドナルドが魔法かけるけど」
「二人とも疲れてるだろ?なら道具で十分。ほら貸して」
「んー、私は大丈夫なんだけどなぁ」

 が少し不満気な顔で道具袋を渡すと、ソラは「回復の魔法って凄く疲れるんだろ?」と笑った。

(…こうやって密かに大切にしてくれてることは物凄く嬉しいんだよね…)
 は顔を逸らして嬉しさに悶えた。
 いや、そちら側に居たグーフィーには丸見えだったかもしれないが。

 回復薬(多分ポーションか何か)を使い終えたであろうソラはドナルドに道具袋を手渡した。
 ドナルドは道具袋を魔法でこの場から消した。(本人曰く別の空間に仕舞っている、らしい)
 これで大きな荷物袋をわざわざ持ち歩かずに済む。

「さて、傷も治ったし宿屋に行こう」
「そうだね」
「早く行って休もう」

 ソラに習って全員がよっこらせと立ち上がり、ハートレスの消えた道を歩き始めた。
 ドナルドの道案内で達は入り組んだ町を右へ左へ進んでいった。



 5分くらい経っただろうか。
 あれからハートレスは一匹も現れず、戦うことなく歩いてきた。
 ドナルドの話によると宿までもう少しらしい。
 …が、

「ソラ、どうしたの?」
 隣を歩いていたは、ソラの様子がおかしいことに気付いて立ち止まる。
 前を行くドナルドとグーフィーもその言葉に足を止めて振り向いた。

「熱があるのかな…大丈夫?」
 ソラの頬は誰が見ても分かるほどに赤く染まっていた。
 そして多少だが息切れもある。

「大丈夫…だと思うけど。なんか暑い…」
「風邪かなぁ?」
「えぇっ、元気だけが取り柄のソラが!?」
「ドナルド…」

 怒る姿にも元気が無い。
 は心配になってソラの正面に回りこみ、額に手をあてた。

「…ソラっていつもあったかいから熱があるか分かんない…」
「んー…」

 ふぅ、とソラが溜息をついた。
 ………。

(・・・・・あれ?)

 ソラの間近に居たは、ソラの息の中に僅かに甘ったるい匂いを感じ取って首を傾げる。
 この匂いは………

 それに思い至った瞬間、ざあああ、と全身から血の気が引いた。
 それはもう、ホースか何かで血液をまとめて放出したかの如く。

「ドッ、ドナルド!ちょっと来てっ」
 は確証を得るべく慌ててドナルドを呼びつけ、道具袋を魔法で出現させた。
 そして中身を漁る。漁る。…漁る。

「………」

 その中に……ピンク色の液体が入った小瓶は、存在しなかった。
 ・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


(ぅひゃあああああぁぁ!!!)


 これはもしかしなくても、ソラがあの液体を飲んでしまったという事だ。
 恐らく戦闘終了後に飲んだ、あれだろう。は顔を逸らしていたので見ていなかったが、ポーションか何かだと思い込んでいた。

 わりと自分の事にズボラなソラの事だ、が『体力回復薬だよ』とか言ってしまったが為に「これでもいっかー」なんて飲んでしまったに違いない。
 確かに回復はするが、それに付随してくる効果がとんでもないというのに。

 しまったとかどうしようとか以上にそんな馬鹿なと頭を抱える。
 はあの時道具袋に適当に瓶を突っ込んでしまったことを激しく後悔した。

 力なくドナルドに道具袋を返却すると、ドナルドは「荷物に何かあるのか?」と訊ねてきたが、は引きつり笑いをしながら「何でもない、思い違いだったみたい」と返した。
 まさか自分が飲む予定だった媚薬をソラが飲んじゃったなんて言えやしない。

「とにかく早く宿屋に行って休もう」
「そうだね、ソラ大丈夫?」
「んー…。大丈夫」
「そこの角を曲がってすぐだから、頑張れ」

 励まされながら歩くソラは、やっぱりちょっとフラフラだ。
 まだ本格的に効いてはいないようだが、早く宿に行かないと本気でピンチかもしれない。
 は複雑な心境になりながら、ソラの隣を歩いた。


 道を左に曲がってすぐ、目的の宿屋が姿を現した。
 少し古い木造の建物で、グーフィーがドアを開けると、キィと鳴った。
 グーフィーはドアを開けたまま待って、全員が中に入ったのを見届けるとゆっくり閉めた。

 既にドナルドがチェックインを済ませて鍵を持っているので、一同は部屋に向かう。
 宿泊部屋は2階だ。

「ソラ、肩貸すよ」
 階段の前でグーフィーがソラの隣に来て腕を掴む。
 …が、ソラは不自然なほど驚いて身を竦ませた。その拍子にグーフィーの手が外れる。
「い、いいよ!俺自分でいけるから……ありがとな」

 どこかよそよそしく言って、ソラは階段を駆け上がった。…多少危うい足取りで。
(…あちゃー……)
 原因を何となく悟ったは思わず額に手を当てて唸った。

「ソラ!病人が階段を走って上っちゃ駄目!!」
 ドナルドが怒るが、ソラは階段を上りきった所で「大丈夫だって」と明後日の方向を見ながら返事をするだけ。
 …妙に痛々しい。

 ソラを追って達も階段を上る。
 その途中で、
「ねぇドナルド、グーフィー。頼みがあるんだけど」
「ん?」
「何?」
 が小声で二人に言った。

「今日の部屋割り、片方の部屋で私とソラの二人にしてほしいの」
「二人に?」
「そう。実はソラの病気に心当たりがあるんだけど、私にしか治せないんだ。その治療法、病気に関係の無い人が居るとできないの。だから今回は一部屋に二人ずつって事で」

 ……嘘は言っていない。
 ただしソラが病気なのかは置いておく。

「治せるの?凄いねぇ」
「うーん、でも男の子と女の子が同じ部屋って…」
「毎度コックピットで一緒に寝てる人が何言ってるの。大体私とソラは恋人同士なんだから普段から同じ部屋じゃない方がおかしいの」
「…そうなの?」
「そうなの」
「……分かった」

 強引に納得させた所で丁度階段を上り終える。
 ソラが「何話してたんだ?」と訊ねてきたが、二人が答える前にが「何でもないの」と言っておいた。
 …ソラのことだ、この状態で二人きりになると今知ったら拒否するに決まっている。
 ドナルドとグーフィーが変な顔をしたが、あえてそれは無視をする。


 鍵についているプレートの番号を見て部屋を探すと、借りた部屋は一番奥の角部屋とその隣の部屋だった。
 …誰かが仕組んでいるのかと思うほどナイスな位置である。
 ドナルドが両方の部屋の鍵を開けた直後、すかさずが一番奥の部屋にソラを誘導したのは言うまでも無い。

 がドアを開いてソラを部屋に入れた後、廊下に残った3人は神妙な面持ちで顔を合わせた。
、頑張ってね」
「今日中に治る?」
「明日になれば治ってると思うよ。あ!絶対にこっちの部屋覗かないでね。聞き耳も立てないこと。晩御飯いらないから」
「…分かった」
「また明日ー」

 ドナルドとグーフィーは隣の部屋のドアを開けて、入っていった。
 ぱたん。
 そのドアが閉まって、廊下には一人になる。
 …途端、緊張の糸が切れたように大きく息を吐き出した。

「……っあー…」
 我ながらとんでもない選択をした、と思う。
 最初から二人きりになる予定ではいたが、まさか立場が逆になっているなんて。

 これで後戻りは出来ない。
 覚悟を決めて部屋に入らなければ。

 多分、女として大変なことになる。
 しかしソラは現在進行形で大変なわけで。
 ・・・・・・。

(よくよく考えれば、これって…ソラのあーんな表情やこーんな表情見放題の美味しいシチュエーションなんじゃ!?

 照れの表情は時たま見られるが、これはよもや色々な意味でチャンスなのでは。
 は落ち込みと後悔をひとまずどこかに置いておくことにして、少し考えた。

(立場が入れ替わったとはいえ、本来の目的は果たせる…かも?)
 要するにソラとの距離を縮めたいのだから、これでも何ら支障は無いはず。
 寧ろソラの素敵な表情を拝めるかもしれない。(妄想中)

「うぉっし、これは行かない手は無いっ」

 ガッツポーズを決めて、ドアノブに手をかける。
 この部屋に入ったらどうなってしまうのか、等といった心配はもうしない事にした。
 …元々ソラに手を出されるのを待っていたから、というのもあるが。


 がちゃり。
 ドアノブを捻ってドアを開き、部屋の中に滑り込む。

 二つあるベッドの内一つの上に、シーツの塊……否、シーツに包まったソラが居た。
 がそっと近づくと、頭までシーツを被ったソラはシーツの中から「俺のことはほっといて…」とくぐもった声で小さく言った。

「そうはいかないでしょ」
「ぅわ!!?」

 ソラの居るベッドに浅く腰掛けて返したの言葉で、ソラは勢いよく顔を出して声の主を確認した。
 ばっちりと二人の目が合う。

「ええっ、ちょっ、な、何でがここに!?」
「何でって、今日はこういう部屋割りなの」
「う、嘘だろぉ…!!」
「ほーんと」

 搾り出すように嘆いたソラに果てしなく爽やかに返答して、はシーツを掴むソラの手を柔らかく握った。
 ソラの指先が怯えるようにぴくりと動く。

「えっとその、!病気がうつるといけないからさっ、今日はグーフィー達と一緒の部屋で寝てくれないか?」
「あらら?仮にも彼女である私を男二人の部屋に一晩置いとくの?」
「うっ…、じゃあもう一部屋取る…とか」
「満室だって聞いたよ?(嘘だけど)」
「…ああもう、俺が隣に移るから!」
「あの二人が居たら何かとやり過ごしづらいでしょうが」
「………え?」

「だから。私は全部知ってるんだよ」

 ソラが呆けた顔で固まるのと同時に、はソラの隣に倒れ込んでシーツの上からぎゅっとしがみついた。
 縮こまっているソラと向き合うように。

「体が変なんでしょ」
「えっ、う、えぇ?」
「しかも他の人にはちょっと言いづらい感じに」
「………」

 ぽかん、と口が開いたまま閉じなかった。
 何が何でも言うまいとしていた事が既に相手に知れていた。
 ソラは混乱と体の不調とで一旦頭が真っ白になったが、

「……。」
「あ、茹だった」

 次の瞬間、顔が燃えるように熱くなった。

「気付いて…たのか?」
「んー、気付いてたっていうか…本当は私がそうなる予定だったから」
「は?」
「今日私が持って帰ってきた合成アイテム…あれが原因なの。体力回復の効能もあるけど、半分は…」

 えっちな事がしたくなる効能なの、と小声で囁いた。
 それを聞いたソラはまともに噴出した。

「えぇっ、それって、」
「待って!頼んで作ってもらったわけじゃないの、それ!…えっとね、失敗作で偶然出来たんだけど、私が飲む予定で貰ってきちゃったの…」
「な、何で!?こんな大変な薬…!」
「だってソラってば全然恋人らしい事してくれないから、私から積極的になってみようかなって…。媚薬なんて一足飛びだと思ったけど、他の手段なんて…無いし。いい機会かなと思って…」
 最後の方はもそもそと口に含むような声になってしまったが、間近に居たソラにはきちんと聞こえていた。

「うーん…」
 ソラは少しだけ眉を寄せて考えて、シーツから手を出した。
 それから苦笑しての頭を優しく撫でる。

「…そんなに悩んでたのか?これって結構…その、凄い薬だし」
「いや、うーん。悩んではいたけど使うのは躊躇ったよ?でもソラともっと触れ合いたかったし。…大体、手出されるの待ってたから」
「…全然気付かなかった。でも俺もなるべく触れてたいとかそういう事は考えてた。…恥ずかしくて中々できなかったけど」
「そこんとこ頑張ってよ彼氏さん。せめて二人っきりの時に抱き締めるとか、たまにひっそり手を繋ぐとかさ。でないとまた私からとんでもないやり方で手出すよ?」
「それは困る」
「でしょ」

 毎度こんな事になっていては羞恥心でどうにかなってしまいそうだ。
 きっとはこういう“大人の”触れ合い方も望んでいるのだろうけど。
 まだもう少しの間無理そうなので、ひとまず現在の自分に出来る事から、だ。(今回は例外として)

 ソラはこれからの二人の進行方向を想像して少し恥ずかしくなった。

「…今度から頑張る」
「じゃ、私も頑張る」

 そうして優しく笑い合った……………のは、
 僅か1秒ほどだけだった。


「………う」
「……え?」
 ソラの視線が泳いだ。
 は瞬いた。

「…あー、その……、」
「ん?」

 もぞもぞ。
 シーツの中でソラが居心地悪そうに体を動かした。

「………、俺、そろそろ限界…なん、だけど」
「・・・・・・・」

 さっきまで雰囲気が思い切りかけ離れていたせいか、はそういえばそんな状況だったと今更思い出した。
 そして肩を震わせて笑う。

「ふ、くふふふ……そっか、そうだった」
「はぁ…も…、笑い事じゃないんだって…」
「ん。じゃあ…」

 息の切れたソラの唇を、一瞬掠め取って。
 綺麗な青の瞳をじっと見つめながら、は微笑んだ。

「その『病気』を治すのに、私を使ってよ」


 が両手をソラに伸ばすと、ソラは自分の体を包んでいたシーツをぶわりと広げてをシーツの中に引き入れた。
 シーツの中で切羽詰ったようにを掻き抱いて、ひとつふたつ、啄ばむ様に口付ける。

「使う、っていうのは違う気がするから…ちょっと、付き合って」
「…了解」
「何すればいいかよく分かんないけど」
「そこは大丈夫。伊達に腐女子やってませんから?」

 無駄な知識はしっかりついてますよ?

 は冗談めかしてそう言ったが、ソラは存外に真剣な視線を返した。
 その視線に思わず口をつぐんで、見詰め返す。

 それから数秒も経たない内に、深い口付けが交わされた。



 ***



「…ソラが全快したのはいいんだけどさ」

 グミシップへ向かう道の途中。
 宿を出て歩いている一行を振り返って、ドナルドはどこか疑うようにソラとを見た。

「今度はが疲れてるってどういう事?」

 …ぎくり。
 ドナルドの半眼にびくつく約2名。

「そんなに疲れる治療方法だったら僕らも手伝ったのに」
「そうだよ。ねぇドナルド」
「…あははは、まぁ、私は何ともないから…(手伝われたら困るし)」
「とか言いながら歩き方もおかしい」
「・・・・・・」

 まるで腰を庇うかのような歩き方にドナルドが疑念を抱かないはずもなく。

 容赦のない指摘に言葉を詰まらせたは、ちらりと隣を歩くソラを見上げる。
 以下、視線のみの会話。

(どうしよう…)
(まさか本当の事は言えないしな)
(何とか誤魔化せないかな)
(慣れてなくて無理させたの俺だし…俺が何とか…)


「えっと、一晩中イスに座って看病してくれてたから腰痛めたみたいなんだ。な、
「そうなの?」
大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫」

 ナイスソラ!と心の中で親指を立てる
 しかしドナルドの追撃は続く。

「でも何か、二人とも昨日より仲良くなってるよね?」
「!!」
「!!」

 ぴったりと寄り添うように歩いていた二人は鋭い指摘に再び心臓を縮ませた。
 ソラに至っては、歩きづらそうにしているを支えるべくそっと肩を抱いていた手を、一瞬どうしようか迷った。(ここで放すのもに悪いので結局そのままだったが)

「いっ、一日看病してもらえば絆も深まるって!」
「そうそう!」
「へぇ。僕もデイジーに看病してもらった時は嬉しかったなぁ」

(うまく逸らせた…)
(グッジョブソラ!)

 冷や汗をたらしながらグミシップまでの道のりを歩くソラと
 二人の仲は公認でも、二人の行動までは公認にできない辺りがスリル・ショック・サスペンスである。


 しばらく歩いてグミシップまで辿り着き、中に乗り込みながらソラは思う。
(とりあえず疲れを取るどころか増やしちゃったから、は当分休ませとかないとなぁ…)

 そしてそんなソラを見ながら、ドナルドはぽつりと言った。


「…はそんなにタフじゃないから、次からは気をつけるんだぞ」


 ・・・・・・・。
 ドナルドの最後の追撃に、固まったのは幸いその場に居たソラだけだった。





〜Fin〜






<アトガキ。>

た、楽し…かった…っ!!(号泣)
書いてる最中ニヤけが止まりませんでした。微ERO万歳!ソラらびゅん!!
突発企画だったのにご参加ありがとうございます。翼羽様へ捧げます。
書く順としてはこちらが後になる予定でしたが、指が止まりませんでした。どうかお許しを…!

これは連載より大分未来の話ですが、いつかは追いつくはずですね。
こんな感じの二人になってればいいなぁとか思います。
それにしてもソラって大人のキスとかすらやり方知らなさそうなんですが、どうでしょう。(何)
だって2ではキスシーン見るだけで赤面してましたし。愛い奴です。
それとも知識はあるけど恥ずかしいだけなのかしら。だって彼も健全な男の子だかr(黙れ)

しかし微EROにしても随分ぬるいですね。予定していたよりかなり安全ラインを走りました。
「ソラが間違えて媚薬を飲む」というリクエストを頂いた時は大人向けラインの話しか思い浮かばなかったんですけどね(!!!)
EROよりシチュ重視タイプなので前フリを長々やってしまう癖がありますが、こんな所で生かされました。

さて楽しいリクエストをありがとうございました!それではまた次の作品で会いましょう。

2007.06.10



(こっそり追記)
実はこの話、構成を練る過程で裏表現ばっかり思い浮かんでいたのですが(だって媚薬ですよ!腐女子の夢ですよ!!)、微ERO指定なので当然ぶった切りました。
二人がちゅーした後のシーンの事です。
しかし腐女子を地で行く私がそんな萌ゆいシーンを書き過ごせるはずもなく。…というわけでオフでこっそり書いてます。(!!!)
まだ途中ですが、完成したらその省かれたシーン……見たいですか?勿論大人向けになるわけですが。
もし見たいという方がいらっしゃれば、拍手やBBSにてその意気込みをお知らせ下さい。10人に達したら考えてみます(笑)
10人に満たなければこの話は無かった事に。あ、期限は…7月一杯くらいでいいかなぁ(適当だなをい!!)
では、追記は以上で!   2007.06.10

<途中経過> 7月4日現在…10名に到達!! 出来上がり次第何らかの形でサイトに出現させる事に決定。ありがとうございました!














遂に出来上がりました!!省かれたシーン!!(2007.9.7)
愛と萌えはぎゅうぎゅうに詰め込みまくりました。ギャグで甘でEROな物体が出来ましたとも。

しかし普通に陳列するわけにもいかないので、隠します。簡単なので見つけてやってください…!;
ちなみにこのページ内に有りますので。
質問は…基本的には受け付けませんが、どうしてもどうしてもどうっっっしても見つからない場合だけ拍手で質問どぞ。軽いヒントぐらいならお出しできる…かも?(何せ言ったら答え分かっちゃう勢いなんで)

そうそう、私のへっぽこ文章とはいえ一応大人な描写があるので、心が18歳以上の方のみ閲覧をお願いしますね。
体の年齢なんぞ、「私はこれが見たいんだっ!!」という方には制限かけても無駄だと思ってますので、精神年齢だけでも…。
では、お探し下さいまし……









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