割別の鍵・Secret
失敗は成功のもと?:EX
〜それでも彼らは彼らでした。〜
子供のキスの延長線のようなものを終えて、二人は息をつく。
そしては唐突にソラへと尋ねる。
「…ねぇ、ソラはこういう事についてどの程度知識あるの?」
「え…、」
「いやその、ね?わりと何でも受け入れるつもりだけど、流石にいきなり、つ、突っ込まれちゃったりとかは…嫌かなぁ、なんて……」
「………突っ込む?」
「……」
ソラの疑問に答えるようにして、視線を下の方に持っていく。
それで何となく『何を』『どこに』いきなり突っ込むと言われたのか理解したソラは、思わずごふっ、と噴出した。
「そ、そそんな事しないって!」
「…よかった、そのくらいの知識はあるんだ?」
「俺だってそのくらいっ!……知ってる、よ」
語尾が小さくなったのは、それ以外の知識が薄いからだった。
学校で同年代の知り合いが数人集まって話しているのを見つけて混じった時、わりと突然始まった『その類の話』に、ソラはその時ついてゆけず、しかし逃げるのもどこかプライドが許さなかったので聞くだけ聞いていたが。(そして最終的に湯気を出してショートした)
…そんな風にして培われた偏った知識でも、何となくが言ったような事が駄目なのは分かっている。
「じゃあ前戯はどんな風にやるのか分かる?」
「ぜんぎ?」
「(そっから来たか・・・)…突っ込む前のイチャイチャタイムの事…。」
最早講師と生徒になってしまったこのポジションで、ひとまず真剣に教えなくてはと恥を捨てた。
ここでさじを投げてはこれから先が不安である。
ソラと同じベッドに入ったはいいが、これほど知識が無いとは思わなかった。
ソラはソラで、女の子から教えてもらっているという状況が情けないやら、お預け状態で苦しいやらでかなり複雑な心境。
しかしここで教えを受けなければ困るのは自分である。
「ここで重要ポイント、前戯はしっかりしないと女の子の体にダメージ大!おっけ?」
「…うーん?何で?」
「(聞くなそれをっ)……慣らさないと入らないでしょ…」
半ば脱力気味に呟かれたそれは大分遠まわしな表現で、ソラは更に首を傾げる。
あぁジーザス。私早くも限界です。…講師側、そんな風に思ったとか思わなかったとか。
そしてソラが考えに考えて、学校での会話を照らし合わせて答えに辿り着いた(ちなみに正解だった)その瞬間、それに気付かずはソラとの講義ごっこを諦めてびしっと宣言した。
「よし、今日は私がしてあげる側になるっ!」
・・・・・・・・・・・。
「はぁっ!?」
「だってソラは殆ど知識ないでしょ?なら今日は私が実践で教えてあげるから!」
「な、何で!教えてくれればやるって!」
「却下。逐一説明しなきゃならんなんて、そんなムードの欠片も無い。もとい、面倒な。ていうか今回はソラの体をレスキューするのが大前提でしょ?説明会じゃないんだから、私がさっさと救助してあげる」
「面倒って何だよ!知らない俺も悪いかもしれないけどさ!……第一、俺だってに色々…したいしっ」
「………あぅ」
照れながら告げられた彼の本音に、思わず言葉を詰まらせる。その言葉はかなり魅力的だ。
が、それはそれ、これはこれ。
薬が入っていて尚且つ知識が薄いという彼の現状で、彼に任せろという方が無理である。
それこそ彼の体のことを考えると説明をしている暇もないはず。無駄に長引かせて苦しむのは彼だ。
「…そ、それでも駄目っ!ていうかそんな状態で私の事色々弄ってたら体が持たないでしょ!大体、私が薬飲んだのならソラが色々やってくれて構わないけど、ソラが飲んだなら早く体を鎮めなきゃ…」
「俺と恋人らしい事するために薬持ち出したんじゃなかったのか?なら時間かけたって問題ないだろ!」
「うっ…そうなんだけど…、でも時間かけて苦しむのはソラだし……とにかく!色々するのは、こういう緊急事態の時じゃなくてもっと普通の時にしよ?…ね?」
「………」
まだ何か言いたげなソラを宥めるように、はソラの唇に軽くキスをした。
そして有無を言わさず体勢をごろりと変える。
横倒しだった状態から、がソラを押し倒す形に。
それと同時に、今まで二人の上にかかっていたシーツがしゅるりと滑り落ちる。
「うわっ!?ちょ、待、俺いいって言ってない!」
「はいはい、我慢はよくな…い……、」
言葉を途切れさせ、はボッと顔を赤くさせた。
ソラを押し倒した時から感じる、この、下腹部の感触は。
「………あの、当たってる…よね」
「!!! う、わ!だだだからやめとけって言ったのに!!」
言ってない。
…とかいうツッコミをする以前に、二人は混乱していた。
は未知の感触に。ソラは羞恥に。
…要約すると、の下腹部にソラのナニが当たっているというわけで。
の下腹部に当たっているそれは、服越しであるにも関わらず充分な熱を伝えてきている。
試しにその部分だけ体を密着させて揺り動かしてみると、僅かの摩擦だというのにソラは眉を寄せて熱い息を吐いた。
(か…っわいい…っ!!)
男の人ってこんな風に思いながら女の人弄ってるのかな?とある種の感動を覚える。
それから部屋に入る前に期待していたのはこの顔だったのだと思い出し、心の中で「ナイスシチュエーション!!」と親指を立てた。
「いっ、いきなり何するんだ!」
「ごちゃごちゃ言わないの、媚薬で苦しいんでしょ?」
言いながらずい、と顔を近づけてソラの額に唇を落とす。
あっという間も無くはソラの耳に口付けて、唇で耳朶を挟んだ。
「あ、う、えぁっ、(耳…!!耳!!!)」
あまりの事に抵抗するという概念が頭からぽーんと抜けてしまったソラは、奇妙な声を上げながら固まった。
かくいうもこういった事は初めてなので動き自体はぎこちない。
しかし躊躇いはなかった。
ソラが媚薬を飲むまではソラからの行動を待つという受身な行動しかとれずにいたが、それはソラにその気が無いのかもしれないと思っていたからで、その気があるとはっきり分かっている現在は遠慮などという文字はの辞書に無いのである。
ソラに技術(主に小説や漫画から培った)を伝授する為、そして自信が楽しむ為に行動を進めてゆく。
わざと水音を立てながら耳の穴に舌を差し込むと、ソラは逃げるように体を揺らした。
はそれを逃さないように両手で顔の側面を挟み、続行する。
耳を舐めるのは何の関係があるのだろうと思いつつソラはぐっと耐える。
何なのだろう、普段より感覚が鋭敏になっている気がする、と思ったその直後、あぁ今は薬の効果が出ているのだと納得する。
というか無駄にぞわぞわするその行為に耐えかねて抗議の声を上げようとした、が。
「ぅ、あっ」
抗議の声とは全くの別物が喉から飛び出してしまい、慌てて口を閉じる。
「うわぁ、ソラ色っぽー」
「いいい今のなしっ!俺は色っぽくなんか無い!!」
「男の子が声上げるなんて、やっぱ媚薬が効いてるなぁ」
どうでもよくないが、耳元で喋るのはやめてほしい、と切実に思う。
息が耳にかかるたび、背筋に寒気にも似た何かが這い上がって、腰辺りが熱くなって、
「んー…っ」
の腹部と密着していて少しの動きでもバレてしまうと分かっていつつ、じりじりとした快楽に負けて腰を蠢かす。
…これは新手の拷問か。
「わわ、もう限界かな?そういえば限界だからコトを始めたんだっけ…」
は呟いて少し逡巡し、そして身を起こす。
ベルトを外しにかかった彼女を見てソラは飛び起きた。
丁度向かい合わせになってがソラの膝の上に座っているような体勢だ。
「も、もういいから!何ていうかもう恥ずかしくて駄目だ!!」
「う…恥ずかしいのは私も同じなんだけど…。ソラの事、好きだから頑張る…ん、だよ?」
「………」
ソラがぐうの音も出なくなった所でベルトを外し終わり(複雑な装備や上着は部屋に入った時点でベッドの下に放り捨てていたらしく、実に簡単だった)、意外な事にツナギ状でなく普通のズボンだったそれの前を寛げようとジッパーに手を伸ばした所で…ソラの手に捕まった。
「好き、っていうのは嬉しいけど…それとこれとは別」
「じゃあどうするの?ソラが上になるとしても、私の体を慣らすまで待てる?それとも私の目の前で一人でする?」
「何の嫌がらせだよ」
「じゃあ私に任せといてよ」
「何か慣れてるみたいだけど、ってこういう事したこと…あるのか?」
「あるわけないじゃん!変な想像しちゃって、やーいソラのスケベ!」
「なっ、何だよ!!」
言い争いながら、はもう片方の手を伸ばす…が、それもソラの手に掴まれてしまった。
…侮れない。
これで両手を封じられた事になる。
勝ち誇ったようなソラの顔を見て、は少し口を尖らせる。
…そして数秒間視線を彷徨わせて考えた後、
ずぼ。
「うわあぁ!!?」
突然、が体勢を低くしてソラの足の付け根に顎を突っ込んだ。
鼻先すれすれに、布を押し上げているソラのそこを見据えている状態。
それで何をするかと思いきや、
カチ。
ジッパーの金具を歯で挟んで、ニヤリと笑んだ。
ソラが嫌な予感を覚えたその直後、ジーッと音を立ててジッパーを引き下げてしまった。
口で?
そう、口で。
真っ白になりつつある頭で自問自答すると、ソラは頭から湯気が昇ったような気がした。
いくら両手を塞いでいるからって、口でジッパーを下ろすなんて。
ふ、と吐かれた彼女の息が下着越しに刺激を伝えて、その生ぬるさが、何というか。もう。もう。
「の馬鹿!!」
「は!?」
驚いたように振り仰ぐは、丁度ジッパーの上の金具を外そうと頑張っていた所だった。
ソラの顔が真っ赤なのを見て何となく心情を察知したは、放っておいても大丈夫だろう、と金具外しの続きに取り掛かる。
ソラはそれを阻止しようと考えるが、両手を防いだ時点でソラの両手も塞がっている。
四苦八苦しながら金具を外し終え、はソラを見上げてにっこりと…否、にんまりと笑んだ。
「ソラ、このまま棒アイスにされるか、それとも大人しく手を離すか。選んでね」
にこにこにこ。
そんな擬音を貼り付けながら、見上げてくる。
何が棒アイスになるかと聞けばきっと、ナニが、と返ってくるのだろうこの状況。
両手を離してしまえば何をされるか、いやしかしこのままでは棒アイス。(ある意味妙な思案)
選べと言われてうっかりソラは想像力を発揮してしまい、不明な前者はさておき何をするのかが明確な後者を脳内に描いて思い切り動揺する。
そんな事恥ずかし過ぎてさせられない。
反射的にぱっと手を放せば、はようやく顔を元の高さまで上げてくれた。
ソラはようやくほっとする。
そしても手を放してくれた事に内心安堵していた。
いくら知識があるからといって、それだけで何でも出来るというわけでもない。
口でする、というのはよく漫画でも小説でも見かけるが、初心者の自分がするには度胸も技術も足りない。
相手がソラなのだから嫌悪はないのだけれど(それも初心者ゆえだろうか、とも思う)。
「棒アイスは諦めるけど、抵抗してたらいつまでも終わらないよ?…手でしてあげるから、抵抗しないでね」
「えぇっ、」
「えぇっ、も何もないの!今はそれしかないでしょ!」
「……」
難しい顔をするが、ソラも解放を望んでいないわけではない。
腰の辺りはずくずくと疼くし、心臓の音はうるさいし、全身が薄い痺れで妙に切ないし、暑い。
しかし自分一人が熱くなっているのを見ると、恥ずかしくて仕方が無いのだ。
……なら相手も熱くさせればいいのではないだろうか。
唐突に思い浮かんで、ソラはいきなりの服に手を伸ばした。
「えっ、な、何?」
「俺だけが恥ずかしいのは嫌だ。だから、脱いでよ」
「ええぇ!?なんだかトンデモ理論だね?」
「いいからっ」
わりと切羽詰ったソラの声に、は大人しく脱がされる。
するり、と袖から手を抜いて、ソラがその服をベッドの下に落とした。
彼女の上半身に白いブラジャーだけが残る。
その姿を見て、ソラは思わずこくりと喉を鳴らした。
ふっくらと柔らかそうな体。
上気しているのか、少し赤くなった肌。
…熱くなっているのが自分一人だったというのは、もしかすると間違いだったのかもしれない。
初めて見る異性の体は、とても扇情的だった。
「…何で無言?そりゃ私、色白でもボインでもないけどさ…」
むっとしたようなの言葉でソラは我に返る。
「え、違う違う!…俺女の子の体見たの初めてだから…」
「……そう?…ていうか自分からこれ以上脱ぐのは恥ずかしいから、もういい?」
「…うん」
頷くと、は「じゃ条件達成って事で」とソラの下着に手をかけた。
…あれ。何か不公平じゃないか。
そんな疑問を覚えて、ソラは一瞬の行動を制止しようかどうか迷う。
は下着姿になるだけで、自分は下着の中をどうにかされる、というのは。
・・・・・・・。
数瞬迷って、ソラは右手をの脇腹に伸ばして、触れた。
柔らかな感触が指先に伝わる。
「うひぁっ、何っ!?」
驚いたが視線を落とすと、そこにはソラの手があった。(勿論手袋は両方外されていて、素手だ)
「が触るんなら、俺も触る。いいだろ?」
「い、いいけど…」
突然の事では驚いていた。
そもそもソラの体(しかも核心)に触れる直前だったので緊張も恥ずかしさも最高潮だったのだから、反応が些か大袈裟になってしまったのは仕方が無いだろう。
了承すると、ソラは熱い手での脇腹を何往復か撫でた。
くすぐったいような感触には少し身を捩りつつ、再びソラの下着に手をかける。
少し躊躇って、それからゆっくりと引き下ろす。
(っきゃああぁ)
こぉっ、と頬が火照るのが分かった。
外気に晒されたソラの熱の塊は、既に先走りの液で濡れていた。
媚薬の所為で快楽が暴走していたに違いない。思ったより彼は大変だったのだ。
恥ずかしさと焦りとで混乱する頭を何とか抑えて、そっとそれに触れる。
するとソラの体が一瞬硬直した。
の体を撫でていた手も一瞬止まって、数秒後にぎこちなさがプラスされた状態で再開された。
は、とろりと濡れた熱い塊をそっと握りこみ、上下に擦る。
存外に水音がぐちゃぐちゃと響いて、内心での動揺が広がった。
…と、脇腹を何往復も撫でていたソラの手が不意に道筋を外れ、躊躇いながらもの胸に触れてきた。
ふっくらとしたそこを、骨ばった手が下着越しに緩く包む。
胸に触られること自体は然程気にすることではなかったが、自分達を客観的に見たらどう見えるだろうと考えると、は頭を抱えたくなるほど恥ずかしかった。
(柔らかい…)
ソラは、自分だけ恥ずかしい思いをするのは嫌だ、と負けん気を発揮しての胸に触れたが、その存外の柔らかさに驚いた。
抗議の声が上がらないのでドキドキしながら感触を確かめるように指を動かすと、有り得ないほどの柔らかさが手の平に伝わる。
しかしその柔らかさを楽しんでばかりもいられない。
下半身からずくずくと快楽が響いてきて、無駄に息が上がる。
響く水音が自分の体液からのものなのだと思うと、ソラは恥ずかしくて仕方が無かった。
他人に触られる事など初めてでもあるし、もう何が何やら。
与えられる快感に飲まれそうになって手が止まりかけるが、それを振り切って今度はブラのカップの中に手を差し入れた。
…からは何の反応も無い。
ソラはさっきからに触られて息を詰めたり体を硬直させたりしているのだが、は顔こそ赤く染めているものの、びくともしない。
何とかしての反応を見られないかと、少し強めに胸を揉んでみるが、特に反応なし。
ソラはこの時はじめて、女の体のどこをどうすればいいのか全く知らない自分を恨めしく思った。
そしてなぜかむっとしているソラを見て内心首を傾げたのはである。
…とりあえず原因不明なので言われるまで放っておく事にして、手の動きを再開させた。
慣れない手つきながら何とか記憶を掘り起こして、先端の窪みを爪で少しばかり抉る。
「んっぅ!」
ソラがびくん、と体を震わせると同時に、
「んぁっ、」
のブラの中で蠢いていたソラの手が偶然胸の突起を爪で引っ掛け、まで連動して体を震わせた。
胸の片方だけが熱くなるような感覚を覚えて、は不覚にも今感じてしまったのだと知る。
ソラは一瞬何が起こったのか理解できないような顔をして、しかしすぐに誤魔化すように激しく施されたの愛撫に切なそうに顔を歪めた。
「、今、」
「な、何でもないのっ」
「……」
言葉を遮って手を動かしていると、ソラはあまり長くはない爪で再びの胸の先端を軽く引っ掻いた。
「んっ、」
否が応でも体が反応するし、邪魔でもしたいのかと視線を送る為にがソラの顔を見上げると、
…彼は快楽を耐えるその表情の中に、薄い笑みを浮かべていた。
悪どい笑みかと思いきや、熱っぽくも嬉しそうな笑み。
その表情を見て、どうやら違うらしいと判断したは、仕方なくそのまま行為を続けることにした。
ようやくの反応を見ることが出来たソラは、実際何を言われてもやめるつもりはなかった。
そんなわけでは時折訪れる快感をやり過ごしながらソラを追い詰めるしかなくなったのである。
微妙に状況悪化。
こんにゃろ、とばかりには最終手段を使うことにした。
右手で上下に擦る、のに加えて左の手の平で先端をぐちゃぐちゃに弄り倒す。
絡み付く液体を擦り付けて、時々爪でなぞって、右手は緩急をつけて動かした。
とりあえず媚薬が入っているのだから技術が下手でも何とかなるだろう。
実際、ソラは肩を上下させて息切れしている。
「ぅんっ」
ソラがの胸の突起を引っ掻いて、またもやは体を引き攣らせる。
というかそもそも、ソラの体調を治そうとここへ来ているのに、どうして悪い意味でのギブアンドテイクな状態になっているのか、は不思議だった。
…実際はソラが落ち着かないから、というのが事実だったりするのだが。
いつの間にか火照っている自分の体に気付いて、は抜き差しならない状態になる前に終わらせるべく一層手の動きを激しくした。
「ん…、…!」
どうやら限界が近いらしく、ソラは体を強張らせた。
零れた声が、熱くかすれている。
の胸を引っ掻く動作が止まって、手が小さく震えだした。
ソラの呼吸が切羽詰ったものに変わってきて、はとどめとばかりに先端を強く擦った。
「く、ぁ、ん…!!」
服越しでも、ソラの腹筋に力が入るのが分かった。
引き絞ったような声がの鼓膜に響いて、それから、白濁の液が手の平へと数度に分けて吐き出される。
ばたっ、とソラが仰向けにベッドの上へ倒れ込んだ。
マラソン直後のような荒い呼吸を繰り返す彼を気にかけながら、は手の平についた液体をじっと見詰めた。
(……うわぁ)
どろりとした白濁色。
それはソラが出したもので、…何というか。
自分がこうさせたのだと思うと、愛しさやら何やらが混じって大変な感情になる。
…余程の技術者でなければ手だけでここまで漕ぎ着けられはしないだろう。
媚薬って素敵だと思った、そんな腐女子ここに約一名。
ひとまずこのまま手の平をべっとり塗らしておくわけにもいかないので、洗面所で洗ってくるかとベッドから降りようとした…その時。
「ひきゃぁっ!?」
「今度は、俺の、番っ」
ぼすん。
いきなり腕を引かれたは、仰向けにベッドへと埋まる。
何が起こったのだろうと目を見開くと、視界にソラが大写しになった。
そして何やら肩が重い。
…そこではじめて、ソラに組み敷かれているのだと気付く。
まだ少し息切れが残っている彼を見上げながら、は先程の彼の言葉を脳内で噛み砕いて「え」と目を瞬かせた。
「ソ、ソラ?」
「何かまだ…足りない」
「……」
まさか、という思いと、やっぱり、という思いが五分五分で混ざる。
はそっと下の方を覗き込んだ。
(………既に元気でいらっしゃる)
…つくづく、媚薬って素敵だ。
心の中で滝のような汗を流した腐女子、約一名。
片手に残った液体を洗い流しに行きたかったが、雰囲気からしてどうやら無理そうなので、宿の管理者に心の中で詫びつつ、こっそりシーツで拭い取る。
冷静になろうと頑張るものの、の頭は次に起こる事を想像して焦りと緊張と恥ずかしさを呼び起こした。
同時に少しずつ期待が混じりこんできて、頬が赤くなるのが自分でも分かる。
もうパンクしそうだ。
「媚薬の効果が、まだ残ってるみたいだね…」
「…ちょっと頭冷えたし、今度は俺がにしてもいいかな?」
「……あ、やっぱさっきの『俺の番』てそういう意味?」
「言っただろ?俺だってに色々したい、って」
頭が冷えて余裕が出来たのなら、ソラが上になる事を拒む理由は大方消える。
多少長引こうとソラは苦しまないし、元々こうなる事を望んでいたのには違いない。
…が、残る問題が一つ。
「…やっぱ、私が説明しながらなの?」
「うーん…俺なりに頑張ってみるから、何かあればその度に言って」
「……了解」
(折角が俺と仲良くなる為に頑張ったんだし、俺もの事もっと知りたいし…)
今回の行為の大前提としてソラが考えているのは、体を治す事ではなくとの関係を深める事だった。
もそうであるはずだったが、自分の事よりソラの体調を優先させてしまって、ソラの考えている部分とは微妙に位置がずれている。
互いを思い合っているが故に起きた微妙なすれ違いだが、幸せなすれ違いでもあった。
「…これ、取っていいか?」
「……」
は、胸を包む白い下着を指差され、逡巡の後小さく頷いた。
…受身になれば流されるままで楽かと思いきやどうも落ち着かない。
もしや自分は攻属性なのではと微妙に嫌な予感がした。
少し背を浮かせると、ソラはするりとの背に手を回して、手探りで何とかホックを見つけて四苦八苦しながら外した。
途端、ブラジャーのカップが胸の上にかぱりと浮く。
服を脱ぐように自らがそれを取り払うが、ソラはその部分を凝視してから慌てて視線を逸らした。
「あからさまに視線逸らされるとこっちも傷ついていいのか照れていいのか」
「あ、悪い…何かこう、見慣れないからどうしたらいいのか分かんなくてさ」
「迷うくらいなら私が再びソラを色々弄ってあげますが?」
「それは困る!」
「じゃ、頑張ってね。取扱説明書はここに居るから」
「説明書って……」
少しばかり呆れかけたソラは、ふと思いついたように顔を上げてと視線を合わせた。
そして悪戯っぽい笑みを浮かべてこう尋ねた。
「じゃ、どこ触って欲しい?」
・・・・・・・・。
「おのれはああぁ!!経験浅きヲトメにそんな鬼畜言葉攻め使うなんて、お母さんそんな高等スキル教えた覚えは無いわよ!!!」
「えぇっ、それって凄い事なのか駄目なことなのかよく分かんないぞ!?」
「どっちかっていうと私には駄目。もっとMな人に使いなさい。…いやいや使うような相手作っちゃ駄目だけど」
「(どっちだよ…)じゃあ…勝手に触るけど」
「……うん」
俄かに雰囲気を引き戻され、緊張感が再び二人を覆う。
しかしソラはの軽口で先程より僅かに勢いづいたのか、の片胸を包み込むようにして緩く揉み始めた。
ぞわ、と背筋を何かが這い上がる。
それを快感と呼ぶかどうかは自身良く分からなかったが、
(…あ、ヤバい。私の腐女子+好奇心旺盛というスキルがあらぬ方向に発揮されてる…)
とりあえず何もかもが未経験の女子ならこの程度でこんなに感じる事が無いのは自分で分かっている。
寧ろ無垢な体を持つ女性なら一度目の性交渉で快感など得られないだろう。例外は居るかもしれないが。
…要するに、
(興味本位で自分の体の至る部分を開発しました、とか口が裂けても言えない…)
は以前から自分の体を弄っていて、既に快感を甘受できるようになっていた。(恥ずかしすぎて言えないが)
そんな事情など全く知らないソラは、切なげな顔で身を捩らせるに煽られて彼女の頬に口付けた。
ちゅっと一つ音を立てて吸い付き、次には小さく舌を出して頬をなぞる。
その舌が耳に到達して、水音を立てながら這う。
耳の穴をくちゃりとかき混ぜられた時、その行動が自分がした事と同じことを返しているのだとは気付く。
(…しっかり技術盗んでる)
遠い目をしようにも、状況がそうさせない。
じゅく、と間近で音が聞こえて、はほぼ反射的に小さな悲鳴を上げた。
すると耳元でそっと「…さっきの仕返し」と囁かれ、その吐息が熱かった事やら声が艶を帯びていた事やらが色々混ざって顔が熱くなる。
ソラは紅潮したに満足げに笑って、一度唇に触れるだけの口付けを落とした。
そのキスがあまりにプラトニックらしくて、は現状とのギャップに頭を抱えたくなる。
胸を指で緩く弄んでいたソラが、親指の爪でその頂を軽く掠めた。
息を詰めて体を硬直させると、熱に浮かされたように目を細めるソラ。
二人の視線が一瞬だけ合って、の方が恥ずかしさのあまり目を逸らす。
悪戯交じりにそのまま指先で胸の先端をぐりぐりと押し潰すと、彼女は少し震えて熱い息を零した。
中途半端に開いた口から赤い舌が覗いていて、眉は僅かに歪められていて。
その様子を見て不意に悪戯感覚ではいられなくなったソラは、それと同時に体の疼きを覚えてしまって必死に抑え込む。
体が熱を欲しているのは分かったが、今は彼女に与えてあげる側でいたい。
薬が残っているからといって頼りっぱなしでは彼氏の名も廃るというものだ(とソラは思う)。
それから大きな理由がもう一つ。
(のこういう顔、もうちょっと見てみたい…なんて言ったら、多分『変態』とか言われるよなぁ…)
――そういった言動が恋人同士の間では睦言として別段おかしくない事など、当人が知る由も無い。
そして片胸だけ弄っている事が何となくおかしいように思えたソラは、手付かずの右胸を見て考える。
…数秒躊躇った後、叱られればそれはその時だ、と踏ん切りをつけて頭の位置をずらす。
恐る恐る彼女の右胸の先端を舌で撫ぜると、泣き声のような艶のある声が聞こえた。
その声にソラの体が大きく脈打つ。薬の効果も相俟って大変な事になりそうだったが、そこも我慢。
舌をちろちろと動かしての反応を窺うが、とりあえず怒り出す様子は無い。
どうやらおかしな行動ではなかったらしいと安心したソラだが、当てずっぽうにこんな行動に出たわけではない。
以前学校で耳に挟んだ会話と、がわりと容易く「棒アイス」だの言っていた事からして『舐める』という行為はこういう場面であまり変なことではないらしいと踏んだのである。
彼も知らないなりに一生懸命考えているらしい(でも知識は偏っている)。
「…っは…ぁ、ソラ……ソラは、そろそろ…体限界じゃないの…?薬が…」
問われて、ソラは一旦口を離して返答する。
「俺は大丈夫。は?」
尋ねられて、どう答えるべきかとは逡巡する。
回答案1.「私の限界を聞くにはソラのレベルじゃまだまだ甘いっ!」と無駄な余裕をかます。
回答案2.「気持ちいいよ。だから前戯はもっとたっぷりして…」と教えるのを兼ねて甘くおねだり。
回答案3.「やせ我慢するんじゃないの!前戯はもういいから本番やっておしまい!!」といきなりラストスパート。
・・・・・・・・・。
数秒間頭の中でクイズ大会を開催してどれが正解か模索した挙句、とりあえずどれも不正解だという判断を下してソラに返答した。
(3でもよかったんだけど、せめて準備くらいして貰ったっていいよね…)
「えっと…もうちょっとお願い」
「…ん」
「………あの、脱ぐから…下、触って?」
「……………あ、え?…う、うん…」
一瞬意外そうな目をして、それでもぎこちなく頷くソラ。
それ以上の言及を避けたのは、が目を逸らして死にそうなくらい恥らっていたからだ。
は短パンを脱ぐべく留め金を外そうと試みるが、緊張と焦りで指先が上手く動かず中々外れない。
ようやく外れても今度はジッパーを下ろすのに苦戦して、思わず「うー」と呻く。
そんなに思わず笑みを零して、ソラは「俺がやるよ」とより幾分かましな手つきでジッパーを下ろした。
(やっぱも緊張してるんだな…)
緊張しているのに、何も知らない自分の所為で彼女は背伸びをしている。
それを感じ取ったソラはもっとしっかりしなければと思うと同時に、彼女への愛しさが溢れそうになった。
が腰を浮かせたのを見計らって脚からズボンを引き抜くと、彼女が身にまとっているのは下着一枚になる。
「…いい?」
「うん」
答えが躊躇わずに返ってきた為、ソラは一気にするりと彼女の下着を引き抜いた。
一糸纏わぬ彼女の姿に多少狼狽しながらも上から下へ視線をうろつかせて、普段からは想像もつかない(というか想像しない)体のラインや肌の質感に鼓動を早める。
そして彼女が視線を逸らしてじっとしているのを見つけて(どうやら指示を飛ばす余裕も羞恥で失ってしまったらしい)、そっと頬に手を伸ばした。
するとは一旦その手に擦り寄って、それから「大丈夫だから」と幾分柔らかな声でソラに行動を促した。
ソラは躊躇いながらも手を移動させ、下腹部よりもう少し下に到達する。
赤く色づいたそこに指を這わせ少し探ると、の体はすくみ上がった。
蠢く指があまりに生々しくては目を閉じる。
………数秒して、ソラの指が止まった。
……………。
は何事かと思い目を開ける。…と同時に、右脚がぐいっと持ち上げられる感覚。
「んー」とか言いながら片手で軽々と持ち上げたの右脚を太腿が胸に触れそうなくらい折り曲げさせて、難しい顔の彼。
って、
「ぎゃー!!いきなり片足開脚とかどこでそんな羞恥プレイテクニック教わった貴様ああぁ!!」
「えぇっ!?テクニック!!?俺、どこがどうなってるのか見ないと分かんないから見やすいようにしただけで…」
「あのね…ヲトメの心臓にはあんまり良くないから…!!ってか自分がされたら、恥ずかしい…でしょが…。」
最後の方はぼそぼそと呟いていて、開かれた脚を閉じたそうにもじもじしていた。
…自分が、されたら。
それを聞いて、全裸の状態で片足を持ち上げられる自分を想像したソラは、慌てふためきながら素早く手を離した。
「ご、ごごごめん!なんかっ、俺…」
「…いや、いいけど…。………見ないと分かんない、んだよね?やっぱ」
「……それはそう、なんだけど…。が嫌なら見ないで頑張るから」
「いやそれ無理でしょ」
言ってから、は小さく溜息をついて閉じかけていた脚をおずおずと開く。
「…今日だけは、譲歩してあげる」
「…え、」
「両脚持ち上げていいから。…見たものにいちいちツッコミ入れちゃ駄目だからねっ!!オールノーコメントよ!!OK!!?」
「あ、う、うん」
若干勢いに押されながら頷いて、しかし首を傾げる。
「…両脚持ち上げたら、両手塞がっちゃうんじゃ…?」
「そういう時は脚を肩に担いじゃいなさい。支えなくても私が落ちないようにするから」
「そっか」
今度こそ納得して、片足ずつ自分の両肩に乗せる。
そしてぐっと開くと、は再び恥ずかしげに顔を逸らした。
(あ、また無理させたかな…)
再び背伸びをする彼女に少しばかり心苦しくなるが、今は致し方ない。経験不足は事実なのだから。
せめてその分しっかり学習しようと行為に集中する。
開いたそこは、先刻落ちた日の所為で見え難かったが、湿っていた。
色が大体分かるだけという状況に明かりをつけたい思いに駆られるものの、自分がされたら、と想像して思いとどまる。
……。
しかし見えづらい。
悪いと思いつつに「ごめん、明かり…」と言いかけると、彼女は少し躊躇ってから手を伸ばしてベッドサイドの小さな明かりを灯した。
然程苦にした様子は無い。どうやら腹を括ったらしい。
少し明確さを取り戻した肌の色を、じっと見ながら指を這わせる。
今度こそどこがどうなっているのか見て取れた。
(ここかな?)
ぬめる柔肌を中指でなぞっていくと、くぷっ、と指先が入り込んだ部分があった。
「…ここ?」
「ん…うん(いきなり指挿入か…間違ってはいないけど)」
ゆっくりと差し込みながら尋ねると、は小さく頷く。
簡単に飲み込まれた中指を、探るように動かせば、粘着質な水音が盛大に響いた。
その音に反応するように彼女の内壁が緩く狭まって、恥ずかしがっているのが分かる。
「……。…えっと、大丈夫そうだと思ったら徐々に指の本数増やして。最終的に3本にして」
「分かった」
簡単に指示をするに頷くソラ。
と、いうか現時点ですんなり中指が入り込んでいるので、これは増やしていいという事だろうか。
数秒迷ってから人差し指を追加するが、これもまたすんなり入り込む。
そういえば誰かが言っていなかっただろうか。
未経験の女の子は指一本すら入らない、とか。
………。
しばし思案。
「…、本当に初めて?」
「え、…何で?」
「指が……入るんだけど」
「・・・・・・・・(何でそういう知識だけあるんだちくしょう)」
微妙な沈黙。
「これには浅い事情が…」
「深くないのか!?…じゃなくて、本当にどうなんだ?怒らないからっ」
「(既に怒り気味のようなっ)初めてだってば!間違いなく!!……ただ、」
「ただ?」
「……………自分で触った経験はあるけど」
間
「…なんからしいっていうか何ていうか…」
「あのねぇ!これってわりと普通っていうか男子は誰でもしてるんでしょうが!!」
「そうかもしれないけど…さっ」
差し込んだままだった二本の指をぐっと奥まで押し込むと、両肩に担いだの足が軽く引き攣った。
指からも彼女の反応がダイレクトに分かって、ソラは不覚にも思い切り胸を高鳴らせる事になる。
「酷い!不意打ちっ」
「俺を不安にさせた罰!」
「仕方ないじゃない!興味有り余るお年頃なんだから!」
「確かにそうだよな、じゃなきゃあんな薬使おうと思わないだろうし?」
「……あーもー、私が悪うござんしたっ」
口を尖らせて黙ってしまった彼女に、ソラは思わずクスクスと笑う。
まるで子供の悪戯を咎めたような気分だ。
…とはいえ、不安になったのは事実である。
既にが他の誰かと経験済みなのかもしれない、だなんて。
その瞬間は、他の男が彼女の体に触れたかもしれないという憤りよりも、彼女に嘘をつかれたのかという苦しさの方が勝っていた。
………。
どちらにしても、の事をとても好きなんだなぁ、と自覚する。
自己完結した所で少し恥ずかしくなり、ソラは誤魔化すように彼女の中に差し入れた指でぐちゃぐちゃとかき混ぜた。
するとかすれた声で抗議が上がる。
「や、もう…わざと音立てないでよ…!」
「…あ、いや、わざとじゃないんだけどさ…。」
二本の指がきゅぅっと締め付けられて、まるで感じているような反応。(どう考えても良い反応なのだと思うけれど、彼女にヘソを曲げられそうなので黙っておく)
ソラは言われて初めて、彼女に羞恥を感じさせる行動だったかと思い至る。
しかし音を立てるなと言われればそれは無理なのであって。(静かにするには些か湿り気を帯びすぎていた)
とりあえず分かる事。
…彼女が恥じる度に、体からは良い反応が得られる。
「……恥ずかしいのとか、ちょっとだけ我慢して」
「え、」
「目閉じててもいいから」
の切なげな顔を見たい、という理由と、満足してくれるのなら、という理由が相俟ってソラは行動を起こす。
状況を理解する隙を与えず、指を盛大に動かして音を立てた。
…今度こそ正真正銘の『わざと』である。
「や、あ、ぁあぅっ」
は飛び出した声に慌てて手で口を塞ぐが、苦しくなったのかすぐに口との間に隙間を作った。
時折探るように内壁をぐっと押すソラの指が、の体を揺り動かす。
突然本格的な攻め体勢に入った(としか思えない)ソラには僅かに混乱していた。
しかしこれが本来あるべきポジションなのだろうと納得しようとしても、羞恥に思考を邪魔されて更なる混乱しか生み出さない。
(ソラの事弄ってた時点で濡れてる自覚はあったけど、こんな音出るほどだっけ…)
時々掠める性感帯から背筋を快感が這い上がって、そのせいで戸惑いまで感じる。
『誰かに性感を与えられる』という経験が無い為なのだが、その戸惑いの行き場をどうするべきかが分からず、先程ソラに言われたように目をきつく閉じた。
(そろそろもう一本…?)
二本の指が余裕で滑るのを感じて、ソラは三本目の指を添えた。
ぐ、と挿入しようとするものの、第一関節辺りまで入った所できつくなる。
ここまでは彼女も試した事がない、という事だろうか。
「あ、う、」
「…つらい?」
「……ちょっと。でも大丈夫だから…」
「無理なら言わなきゃ駄目だからな。約束!」
「ん…」
小さく頷いたのを見てから、力を込めてゆっくり押し込む。
充分潤っていたのでゆっくりゆっくりと呑み込まれてゆくが、肩に乗った彼女の足が硬直していて、耐えている様子なのは明らかだ。
苦しいのか、痛いのか。それはソラには分からなかったが、それでもなるべくがつらくないように時間を掛けて指を進めてゆく。
それでもは眉を寄せて、快楽とは少し遠いものを感じているようだった。
ソラは媚薬の効果で徐々に快楽を待つのがつらくなりつつも、の表情にいたたまれなくなって何か方法は無いかと考えを巡らせる。
そして顔の位置を大きくずらすと、ソラはの唇を啄ばむように口付けた。
は薄く目を開いて、シーツを握っていた手をソラの背中へと回す。
甘受していた口付けを更に求めるように、は舌をちらつかせた。
浮かぶ汗と赤い舌のせいで、壮絶なまでに艶かしい。
彼女にしてみればほぼ無意識の行動だったのだが、ソラはあまりの情景に血液が沸騰するかと思った。
ずくんと腰辺りが疼くのを感じて、気を逸らすべく彼女の唇に口付ける。…そろそろ媚薬の効果の、第二波が来そうだ。
の気(プラス、自分の気)を紛らわせながら指を押し進めると、ようやく三本目の指が根元まで入り込んで一息つけた。
…指でこれでは先が思いやられる気もするが。
「、大丈夫か…?」
「…平気……。しばらく慣らして」
吐息の絡まるほど近い位置で会話を交わして、ソラは再び唇を落とす。
ちろりと彼女の唇を舐めれば、受け入れるように(あるいは求めるように)舌が絡められてくる。
(私が媚薬飲んでたらもうちょっと楽だったはずなのになぁ…)
がそんな事を頭の片隅で考えていた事など、ソラは知る由も無い。
無言でねだるへと深い口付けを送りながら、ゆるゆると三本の指を動かす。
時々、口内で遣り取りされるの息が苦しげに引き攣る。
「…痛い?」
「……う、ちょっと…。」
「…じゃあ指二本に戻そう。俺、が苦しむ所見てるの嫌だし」
実際の所、このままでは指で慣らした以降も苦しいだけだろうなとソラは思う。
それならもっと他の、が苦しまない方法をとりたい。
そうして指を引き抜こうとした、が。
「やだ、ここまで来て引き戻すの?二本は余裕で入るんだから、三本で慣らさなきゃ無意味!」
「けど痛いんだよな?無理なら言えって言っただろ?」
「無理じゃない!…あ、あのねっ、私だってもう…引き返せない所まで来ちゃってるんだから……責任とって、最後までして」
「………」
数秒間動きを止めて、その言葉を頭の中で分かりやすい言葉に変換してゆく。
…そして、あまりといえばあまりな変換をしてしまったソラは、頬を染め上げながらも、本当にそれで合っているのか分からずから視線を外す。
要するに、『私も欲情してしまっているから、最後までしないと許さない』と。
「…元々ソラを求めてたのは私なんだから、痛いのも苦しいのも耐えるよ。初めてだし、全然気持ちよくなくても構わない。だってもっと大切なのは…ソラと私が、こうする事で今まで以上に距離を縮められるって事だから」
今まで感じてきた心の隙間を、全部埋めて頂戴。
そうねだるように、はうっすらと涙を纏った目で、けれどしっかりとソラの瞳を射抜いた。
(ここで引き返すとは傷つく…って事か)
自分との絆をとても大切そうに、愛おしそうにしてくれるに、心を暖かくする。
「……じゃ、。頑張ってくれる?」
「そんなの当然。…ソラも頑張ってよ?」
「うん」
こんな状況下だというのに、二人は何故か無邪気に笑い合えた。
軽い口付けを交わせば、まるで夢心地。視線だけで愛しさが互いの瞳から全て見えるようなひと時。
キスなんてそう回数を重ねているわけではないのに、今日だけで何度唇同士で体温を感じ合っただろうか。
「…、大好き」
唇が触れ合いそうな距離でソラが囁くと、は花が咲くように笑んで、それから一言付け足した。
「『大好き』じゃ駄目」
「………」
そう言われて、ソラは数瞬考える。
一つだけ言葉が浮かんできたが、それで合っているのかどうか躊躇って、
「…じゃ、『愛してる』」
間違っていても間違っていなくても相応に恥ずかしい台詞を、吐いた。
……………。
……僅かな間。
間違っていたのかとソラが慌て始めた頃(正解の場合より倍以上恥ずかしい)、はソラの背中に回した腕をぎゅっと強めて、自分から一つ口付けを送った。
「……携帯の動画に収めたかった…」
「へ?けーた?」
「何でもない…」
微笑しながら言葉を切って、は再び自分からソラへと唇を重ねる。
そうして、ソラの口内へ『私も愛してる』と囁いた。
僅かに跳ねたソラの心臓と連動するように、の中に埋めたままだった指がぴくんと動いて、は少しだけ肩を震わせる。
差し込みかけた舌が縮こまって、唇が離れた。
「…じっとしてたお陰でちょっと慣れたかも。動かして」
「あ、うん」
きゅうきゅうと締め付けられながら三本の指を動かすと、先程よりはすんなりと抜き差し出来るようになっていた。
の表情からも苦しさは大分消えた。
充分濡れていたこともあり、どうやら多少馴染んでしまえば然程痛くはないようだった。
……、
(ヤバい)
ソラは、自分の頭がぼやけていくのを克明に感じていた。
が僅かに眉を寄せて、時折くぐもった声(それでも艶を帯びている)を上げたり喉をこくんと鳴らす様子に、先程から疼いていた下半身が徐々にヒートアップしていく。
(うっ…。ここで反応するのはおかしいはずなのに…なぁ…)
我慢していた媚薬の効果が臨界点を突破しようとしているらしい。
彼女が苦しむ様子にまで媚態を重ねて見てしまうとは、第二波の限界は近い。
そんなソラの心情を悟って…というより、どんどん熱を帯びてゆく視線に気付いて、は考える。
…一応三本入った事だし、妥協してもう本番に移ってしまうべきか。
それとも保身の為にもう少し愛撫を受けておくか。(あまり苦しくなくなっているので、受けるとしてもそんなに長い時間ではないだろうが)
考えたが、何となく黙っている事にする。
指示で動かしてばかりでは悪いし、何より………
(ソラが限界に達したらどういう行動に移るかちょっと見てみたい)
ちょっとした腐女子心…もとい、乙女心が働いたのである。
普段の付き合い方がプラトニックなだけに、プッツンきた彼を見てみたいと思うのは最早当然といえよう。
ソラの視線がみるみる熱を帯びて、とろりと蕩けそうな程にまでなった。
(もうちょっと続けた方が…いやでもそろそろ限界……でもまだが慣れきってないみたいだし…)
体の限界とへの心遣いの狭間で思い切り揺さぶられているソラは、ずくずくと疼いて快楽を強く求める信号を抑制するのに必死だ。
少し苦しそうなソラの表情はまるで愛撫に耐えている様で、からすれば内心ガッツポーズである。
無意識なのだろうか、ソラの指は徐々に遠慮をなくしてぐちゃぐちゃと内部をかき回し始めた。
は痛みが薄れてきてはいるものの、今の所その中に見出せる快感は随分緩いものなので(そもそもソラにそんなに技量はない)、とりあえずもっとソラを煽ってみる事にする。
頭をずらしてソラの首筋に音を立てて口付ける。
ちなみにキスマークの意味は知らないだろうから、つけないでおいた。(この時、後日教えようと思ったのは秘密だ)
幾度も唇を落とすと、ソラはくすぐったそうに頭を傾けた。
首筋が隠れてしまったので、今度は僅かに見える喉仏をべろりと舐め、唇で挟んだ。
の唇の間で、ソラの喉仏が上下する。
唾液と舌を使ってそこをぐちゅぐちゅと弄ぶと同時に、ソラの腰を卑猥な指使いで撫ぜてゆく。
時折ソラの反応が見られるのを確認しながら、は服の裾から手を差し込んで彼の素肌の背中を指で辿った。
ソラの喉の奥でぐぅっと息が詰まるのを感じて、はそろそろかとソラが理性をぶち切るのを待ってみた。
今ならどんな暴挙に出られても笑って許せる。否、寧ろ見てみたい。
優しい彼の事だ、今のように薬でも盛らない限りそんな姿は見られないだろう。
多少危険だろうがいいのである。いざとなれば魔法がある。(それこそ暴挙のような気がしないでもないが)
………。
差し込まれた三本の指ごと体が細かく震えているが、大きな動きは無し。
愛撫が止まっているという点を見ると、硬直に等しい。
まだ耐えているのか、と咥えた喉をひと舐めして口を離し、ソラの顔を見上げてみる。
・・・・・・・、
――違った。
耐えているのではなく、限界を超えた瞬間だったのだ。
ソラは壮絶なまでに情欲を滲ませた顔で素早くの唇を奪い取り、短く、しかし水音のするような卑猥な口付けを幾度も交わしつつ、三本の指を抜き取る。
そして涙すら滲みそうな瞳での目を正面から見詰めた。
「…、」
「…!」
来る。これは間違いなく、早急に本番だ。
瞬間的に察知したは、ふと彼を受け入れる為の最終準備――避妊を済ませていない事に気付いて慌てる。
押し返すか。否、これだけ勢いづいてしまったのだから無理か。ならば最終手段、魔法…!!
…魔法を放つ準備を瞬時に終わらせ(ちなみに小規模ブリザドだ)、いざ撃たんと身構える…が。
「限界、なんだけど…っ、は、大丈夫か?」
震える手で、できる限り優しく頬を撫でてくるソラに、魔法の発動を見送る。
(――何てこったい…)
は思わず頭を抱えたくなる。
限界をぷっつりと超えてしまった癖に、彼はギリギリの所でブレーキを掛けてこちらの心配すらしたのだ。
そこから彼のありえない程の優しさと愛を感じて、感激のあまり抱き締めてしまいそうになったが、それは今やってしまえば行為を促しかねないので思いとどまる。
「体は多分受け入れOKだよ。でもちょっと待ってね。避妊しなきゃ私、近々妊婦さんになっちゃう。ソラとの子供なら嬉しいけど、まだ育てる余裕がないよ」
「避妊……どうすればいいんだ?俺何も持ってない」
「フフフ、私が何も用意せずにあんな薬を持ち帰ったとでも思って?」
脚を肩からベッドに下ろしつつ、ゆっくりとソラの胸を押し返すと、彼は素直に体を起き上がらせた。
は素早くベッドの端に這っていって、床に落ちている自分の短パンを摘みあげた。
「今の内にソラも脱いでよ。…私一人だけ裸なんて恥ずかしい事この上ない」
「あ…うん」
背後でソラがごそごそと服を脱ぐのを気配で感じ取りながら、は短パンのベルト穴に取り付けられたポーチから手の平サイズの紙箱を取り出し、開封した。
箱の中から小さくて薄いものを抜き取って箱をベッド下に落とし、ソラと向き合うようにしてベッドに座る。
その時にはもうソラは殆ど何も着ていなかった。…そうして最後の一枚も躊躇い無く脱ぎ落とされる。(ここでナイス媚薬効果、と心で叫んだ腐女子、約一名)
は思わずソラの体に見惚れそうになりながら(その間も彼は『まだかな』とでも言うようにそわそわしていた)、本来の目的を思い出してソラに先程箱から抜き取った薄いもの…避妊具を差し出す。
「これ…薬局に寄り道して買ったの。付け方分かる?」
「……コン…何とかだっけ」
「………。やっぱ心配だから私がつけてあげる…。次回から頼むわ」
「………」
多少悩むような顔をしたソラだが、何も言わなかった。
てっきり反論があると思っていたは拍子抜けするが、に任せた方が早いだろうというのは分かっているだろうから、それもそうかと納得する。
要はそれだけ余裕が無いのである。
は避妊具の包装を裂いて中身を取り出し、裏表がどちらなのか多少悩んでから思い出してソラの性器に被せていった。
どこかで聞いた装着のコツを思い出しつつ、ソラにも説明をして、何とか装着し終える。
「よし、準備万端!どっからでもかかってきなさ――ひきゃっ!?」
言葉を終える前に、の視界はぐるりと回った。肩を押されてベッドに倒れ込んだのだと分かったのは、2秒くらい後だった。
……敢えて言うなら、ソラには今本当に余裕が無いのである。
ソラは膝立ちになって再びの脚を肩に乗せ、位置を確認しながら自らの熱の塊を彼女の入り口へとあてがった。
「…、もう…いい?」
切羽詰った表情のソラに思わず笑みを零しながら、は「しょうがないなぁ」と頷いた。
「いいよ…」
了承の言葉を聞いた直後、ソラはぐっとの中に押し入ってきた。
(いっ…たぁ……!)
少し入った辺りで突き刺さるような痛みを感じて、は思わず眉を寄せる。
しかしここで彼を止めるのも悪い気がして、結局耐えるべくシーツを掴んだ。
痛みを感じる部分は入り口だけだ、中は大丈夫なはず。
ここを乗り越えれば何とも無い。
「…痛い?」
不意にソラが尋ねてきたものだから、は一瞬混乱する。
「…ぇっ、あ、……いいから、早く来てっ…」
「……。ごめんな」
苦しそうに謝って、ソラは角度を変えながら力を込めてぐぅっと入り口から更に奥まで押し入った。
「…っ」
「ぅ、く…!」
は入り口周辺にじくじくとした痛みを感じながら、もっと奥までソラを招き入れる。
内臓が押し上げられるような感覚。あまりの質量と熱に、眩暈がしそうだった。
なるべく痛くないように、そしてソラが動きやすいように力を抜こうと努力するも、中々成功できずにいた。
少しずつ少しずつ熱いものが入っていって、二人は知らず息を詰める。
幸いコンドームのお陰で滑りは良かったので、の内部の湿りも手伝って確実に奥へ進んでいた。
狭すぎる内壁に力ずくで応戦しながら、ソラはようやく全てを挿入し終えて一息つく。
…熱い。ごわんごわんと響くようにそこが脈打っていて、少し揺り動かすと柔らかい壁がきゅぅっと狭まって苦しげな息遣いが聞こえた。
ソラが膝立ちの状態から両手をの顔の両側について姿勢を低くすると、は縋る様に両手をソラの背に回して無理矢理笑顔を搾り出した。
「まだ痛い…?」
「初めてで痛いのは当然なの」
「…俺、動いたらもう我慢できないかも」
「いいよ、この痛さは嫌いじゃない」
「……ありがとう」
「じゃ、動いて」
「…ん」
ソラがゆるゆると腰を動かすと、は苦しそうに、あるいは切なそうに眉を寄せた。
しかし媚薬の効果が相俟って、ソラには怒涛の如く快楽が押し寄せる。
これでいつもの自分を保てという方が無理なのであって。
…宣言通り、自分の意思などお構い無しに体は快感を求めて激しく動き始めた。
軽く抜き差しする程度だった動きは、の体を揺する程になり、そして腰を打ち付ける音がするくらい激化した。
「は、ぅあんっ、あっ」
苦しさからか快感からか分からないような声がの半開きの口からひっきりなしに上がる。
どちらにしても彼女の声は甘くて、腰に直接響くようだった。
「…っ」
「ソラ、好きぃ…!あっ、んっ」
「…っ」
『好き、じゃ駄目』と、そんな軽口で対応したかったが、ソラにはそんな暇など無かった。
応える代わりにの唇へ軽いキスを落として、髪を撫でた。
腰を打ちつけるたびに揺れる彼女の胸のせいで、彼女の全身が柔らかそうに見える。(実際柔らかいというのを、今日知ったのだけれど)
は自分の内で激しく動き回るそれが大きく引き抜かれる時は内臓が引き抜かれるように感じ、また奥まで突かれる時は肺がせり上がるように息を詰めた。
おまけに時々性感帯を掠められ、何が何だか分からなくなる。
最早痛いだとか云々ではない、まるで嵐のようだ。
体中をかき回されているようで、わけの分からない声まで上がる。
(とりあえず…私の中で動いてるこれが、ソラなんだよね…?頑張って最後まで受け止めなきゃ…)
ソラの表情が切なく歪む。
荒く繰り返される呼吸がの頬に当たって、体内の熱さも伝えてゆく。
脚を肩の上に抱え上げられている為か、深い場所まで幾度も幾度も突き立てられ、時間が経つにつれてじわりと奥が熱くなってゆくのが分かった。
…ソラの体温が移ったのかもしれないし、あるいは…。
「…っ」
熱の篭った声で呼ぶ声に熱い視線で返して、は更に強くしがみつく。
ソラはの名前を呼んだ理由が自分でも分からないまま、の中で膨張した熱いそれを強く擦り付けた。
媚薬の効果を我慢し続けたせいもあって、限界は近かった。
全身がドクドクとうるさく脈打って、頭が白んでくる。
一際強かに腰を打ちつけると、からは苦悶めいた声が上がった。
…刹那、
「っ、俺、もう……!!」
言うが早いか、腹部や腰が痙攣して、ソラは目を閉じる。
は突然ソラの律動が止まって一瞬不思議そうに見上げるが、すぐさま状況を理解して自分の最奥に居るソラをきゅぅっと締め付けた。
「ぅっ、…ん……!」
息を詰めて声を出すソラがとても艶めいていて、印象的だった。
の顔の両側につかれたソラの手がぎゅっとシーツを握り締めて、の中ではコンドーム越しにも分かる程勢い良くソラの熱が吐き出された。
―――…ぱた、ぱた、と。
ソラの額から汗が落ちて、シーツに染みを作った。
ソラが達してから数秒後、の内部にある硬さの残ったそれはそのままに、ソラは片肘をついて息を整えていた。
「…ソラ、大丈夫?」
言いながら、は『大丈夫?』という言葉を先刻から何度使ったかなと心の隅で思う。
は達していなかった為、然程息を切らしておらず、寧ろソラの心配をしていた。
「…っだ、大丈夫……。それより、ごめん…俺本当に抑えられなかったし、俺だけ…」
「いいの。今回は全面的に許可するから。ね?」
早くも息の整ってきたソラの背中を撫でて、微笑む。
苦笑したソラがへと口付けて、ちゅ、ちゅ、と何度か音を立てた。
………。
(…あれ?)
治まったはずのの中のそれが僅かに脈打った気がして、は内心首を傾げる。
…ひとまず気のせいだった事にして、今にも雫の落ちそうなソラの額を拭った。
「私の初めてはソラに献上しちゃったよ。これって記念日?」
「何の記念日だよ?随分やらしい記念日だな」
「あはは、そうだね」
どくん。
……再びの中でソラのものが脈打った気がして、は微かに予感めいたものを感じた。
・・・・・・。
どうやらそれはソラも感じているようで、一瞬の沈黙が漂った。
そしてソラは誤魔化すようにの内部に突き入れたままだったそれを引きずり出して、
「…あ、」
「…う」
完全に出きってしまう前に、擦れる感触で思わず内壁を引き絞ってしまったは、困惑気味なソラの顔を見上げて冷や汗を流す。
そして恐る恐る下の方を見てみると。
……たった今引き抜かれたはずのそれは、緩く勃ち上がっていた。
勿論一般的に言ってこの程度で再熱する事はあまりない。
という事は。
「………この薬、効果強すぎない?」
「やっぱし効果の半分が回復だったとはいえ元がエリクサーの材料だったからかなぁ…」
「それどういう理屈だよ?」
「エリクサーの効果は絶大だから、それに置き換えると…って感じ?」
「……そうなのか?」
しばし考え込むが、分からないものは仕方が無い。
効果が続いているのなら続いているで、どうすべきか。
「…で、どうする?」
「うーん……、、まだ付き合ってくれる?」
「……、」
聞かれて、は少し黙る。
ソラは運動神経抜群、体力も申し分ないどころかずば抜けていて、の遥かに上を行くからソラの明日の体力の心配はしないでいいとして。
問題は。一度も達していないとはいえ(多分今日の所はあっても一回くらいだろうと予想してみる)、体力は改善されつつあってもあまり良いとは言えず、既に腰が痛くなりかけている。
しかしこの日を逃せばまた二人きりになれる時間など少ないわけであって。
………。
「…無理はしなくていいからな?駄目ならいいから」
「……ううん、お供する。言ったでしょ?ソラを救助する為に来たって」
「でもの体が大事だから」
「………私が、」
は一瞬言い淀んで、
再びソラにぎゅっと抱きついてから、ぽつりとソラの耳元で呟いた。
「…私がもっとソラに愛されたいから……。いいでしょ?」
こんな機会滅多に無いし、と付け加えると、ソラはの頬と自らの頬を合わせて体温を混ぜた。
「がいいなら、いっか」
そうして二人とも愛おしそうに目を細める。
「とりあえずゴム付け替えて再戦だね」
「ゴム?」
「…その避妊具の別称」
「うーん………でもまずはを満足させるのが目標!」
「えぇっ」
「えぇっ、じゃない!俺頑張るからなっ」
語るソラの瞳には、炎がちらついていたとかいないとか。
その後、宣言通りがソラによって(苦労して)達したのは然る事ながら、再戦に再戦を重ねて、ようやく眠りにつけたのは大分遅くになってからだった。
夜が明けて、二人とも寝不足であるのに加えての体(主に腰)がダメージから立ち直れなかったのは、言うまでも無い。
〜Fin〜
<アトガキ。>
ぎゃー、随分時間が開いてしまいました…!!(滝汗)
でも実は「書く」と言い放ってからずっと少しずつ書いていたのですよ。サボってはいませんでした。
他の夢小説放り投げて書いていたんですけどね…。
でもなぜか難産で、気付けばこんなに時間が経過してました。すいません……;
てなことでお約束通り翼羽様へ捧げます。こんな微妙でしかも長いブツですが、宜しければどうぞ…。
さて、今回は恥ずかしげも無く行為まるまんま書いちゃったわけですが。
…ていうか普通の文章より行為だけのこの文章の方が長いってどういう事よ。
私の趣味が思いっきり発揮されてます今回。ああぁ。
EROだからって最初から最後までそんなムードなわけじゃなく、『らしい』会話を目指してアフォやってみました。
結果、ギャグなERO。いいじゃないですかギャグERO。(何)
行為の最中だからってツッコミに回っちゃいけない方式なんぞ無い!(根っからのギャグ書き)
そして愛たっぷりな雰囲気大好きです。
ていうか「初めてなピュア男子×初めてな腐女子」って、楽しくて仕方ないですね!!
もっと男前なソラも書くつもりでしたが、彼がストイックすぎて断念…。あうあう。
実際ハグを目の前にするだけで赤面するピュアっぷりですからね。(ゲーム内)
でも愛する彼女の為なら色々やってみたい、そんなお年頃男子。(だといいなという妄想)
それにしても書く度思うんですが、私の書くEROってあんまりEROくないですよね。
鬼畜が苦手だからでしょうか。
今回これを書くに当たってソラの服の構造を思いっきり調べ上げたんですよ…。(U以降の話なので、Uの服です)
主に腰付近。ツナギ状なのか、別々なのか。…結局別々だという事が設定画で判明したんですがね。
でも別々だと分かるような絵は1枚だけだったので、そこんとこ公式も曖昧なのかもしれませんねぇ。
さて、ひとまず長すぎるアトガキはこれ位にしときまして…そろそろ終わります。
ご感想などありましたら拍手やBBSにてどうぞ!感想に飢えているので舞い上がって喜びますよ。
ちなみにBBSに書く場合はこのページの隠し場所を教えるような発言と、あまり生々しすぎる発言は控えてくださいね(笑
隠語で行きましょう(何)
では、またどこかで。
2007.9.7