「あぁ丁度よかった、ちょっと手伝ってくれよ。そこの台座を向こうへ動かしといてくれ」
 こちらへ振り返らずに後ろを指差す、下半身ヤギオッサン…もとい、フィル。
 あー、こんなシーンもあったなぁ。

 ソラは条件反射でフィルの言った事に従い、後ろにあった大きな石の台座を動かしに行く。
 ちなみに、ドナルドとグーフィーは気分が悪いままなので、壁にもたれてじっとしている。
 …大丈夫だろうか。

「ファイトー、男の力の見せ所だぞーv」
 私が声援を送ると、ソラは「がってんだ!」と台座に両手をかけて足を踏ん張った。

「ふぬぬぬ…っ」
 かなり力を込めて押しているようだが、石の台座は全く動かない。
 まぁ、結構大きさあるしなぁ。
 しかしソラは一向に諦めようとしない。
 あー、その細腕が折れそうで恐いんですが!(失礼)

「ソラ、無理しないで;」
「む、無理じゃない…っ」
「それ滝の裏でも聞いた。」
「・・・・・」

 私のツッコミに黙るソラ。
 そして、

「おいハーク、いつまでかかってるんだ。そんなんじゃいつまで経っても準備が終わら――」
 フィルが、振り返って言葉に詰まった。






割別の鍵・14
境界線
〜ピピピ電波キャッチ限界値〜







「何だ人違いか。こんなとこで何をしている?」
 台から降りたフィルが、私達を見回して言う。

 ハーク…もとい、ヘラクレスと間違えたのはフィルでしょうが。
 ていうかこんなに人数居るのに気付け。

「ここは英雄だけが集う由緒あるコロシアムだぞ。今は闘技大会の準備で忙しいんだから子供は帰った帰った」
「いや、帰る方法を探してるんだけどね、私は」
 シッシッ、と払われるが、私はぼそりと呟いて溜息をつく。

「何か言ったか?」
「日本って知りませんか?って」
「あー、知らん知らん」

 酷いー! いくらなんでもそんなに投げやりに言う事ないじゃん!
 尻尾逆撫でしまくるわよ!!(やってみたかったのよね)

「それより、俺は子供じゃない!!キーブレードの英雄だ!」
 胸を張って進み出るソラ。
 うひひひ、アテクシは限りなく無視ですか!?
 抱き締めて窒息死させるわよ!!

 ソラの背後から桃色オーラを漂わせていたのが分かったのか、その場のメンバーはびくりと肩を震わせました。
 …そんなに強力なオーラ出したかしら。

「ふ、ふん!こんな台座一つ動かせんようじゃ、英雄とはとても…」
 台座に両手をかけ、力一杯押すヤギなオッサン。
 …あ、背がちっちゃくて構図的に可愛い。
 そして、台座は動かない。
 結局力足りないんじゃん。

「と、とても―――」
 ぐぐぐ、と体勢を変えつつ押すが、やはり動かない。

 私は、この暇を使って後ろで壁にもたれているドナルドとグーフィーの無事を確かめた。
 多少青ざめているが、先刻よりは大分いい。
「大丈夫?」
「大分治ってきたよ」
は大丈夫なの?」
「私は大丈夫」

 そして、フィルは「ぜぇっ!ぜぇっ!!」と息を切らして、石の台座を押すのをやめた。
 あーぁ、無理するから。
 …やっぱり最後まで動かなかったか、台座。

「…ま、力が強けりゃいいってもんでもない。いいだろ、試してやる」
「え、っていうか私らは英雄かどうか試させたいわけじゃなくてここで休みたいだけ…」
「望む所だ!」
「ソラっ;」

 あぁ、駄目だ!目がキラキラしてらっしゃる!!
 やる気だわソラさん。
 …まぁ、私もクラウドを捜す予定だったからこの世界にいるのは賛成なんだけど。
 背後で呆れてるドナルドはちょっと無視して。(コラ)

「こっちに来い」
 フィルは、通路に掛けた『CLOSE』の板を外して手招きをする。
 スタスタとついていくソラを尻目に、私はドナルドとグーフィーをどうするかちょっとその場で止まって考える。

「動ける?」
「うん、殆ど治ったから」
「じゃ、見学にとどめておこうね」
「そうだね」
 …あ、やっぱり見学にとどめておきたいくらいには体調よろしくないんだ。

 私はドナルドとグーフィーを引き連れて、フィルとソラが通った道に入る。
 …が、ソラの姿もフィルの姿もない。

「あ、あれぇ?;」
 少し進んでみる。
 見えてきた出口の先にあるのは広大な闘技場。多分試合に使うんだろうなー。
 が、ソラもフィルもいない。

 何これ神隠し!?
 …と、

?」
「こっちじゃない?」
 ふいにドナルドとグーフィーの声が聞こえて、私はそちらを振り向く。
 そこには、通路の中に分かれ道が。

「ここを曲がっていったんだと思うけど」
 …どうやら私は途中で道を見逃していたらしい。
 素で間違うとか若干恥ずかしいじゃないか!!


 私も続いて歩いていくと、その先にあったのは闘技場に似ている場所だった。
ただ違うのは、柱やら段やらタルやらが沢山あるという事。

「さぁ、ボウズ。ここにあるタルを制限時間内に全部壊してみろ」
 段の上やら色んな所に置かれた大量のタルを視線で示しつつソラに指示を出すフィル。

 戦闘やら武器を使うことなら本来私やドナルドやグーフィーも入った方がいいのだろうが、それでは今回の場合ソラが納得しないだろう。
 私達は黙って見ておくことにした。

「よーい…スタート!!」
 フィルがストップウォッチのスタートボタンをかちりと押した。
 …制限時間いくつよ。

 しかしソラはそんなものを気にすることもなく突進していく。
 キーブレードでタルを殴り、はたき、かち割り……

「頑張れソラー!!」
「うおおおー!!」
「残り10秒」
「「泊≠チ!?」」

 一体制限時間どのくらいに設定したのさ。

 私はハラハラしながらフィルの手元とソラを交互に見る。
 ドナルドやグーフィーも、声を張り上げてソラを応援。
 そして……

「終了ー!!」
「ギリギリセーフっ」
 何とかタルを全部壊し終えたようで、一安心。

「はい、次ー。もっと沢山壊してもらうぞ」
「えぇー!?次があるのか!?」
「この程度じゃ英雄かどうかは分からんからな!」
「…分かったよ」
 ソラはさっさと認めてほしいらしい。
 私はどっちでもいいんだけど。(だって英雄じゃなくても結局やることは同じなんだし)
 けど一生懸命やってるソラは可愛いなぁ。

 そして私が場外の壁にもたれて応援者を決め込んだ直後、
「次の試験用のタル運んで来い。表にある倉庫にまだまだ置いてある」
 全員に向けて言われるフィルの指導。
 ・・・・・・・あのー、それってもしかして・・・

「試してやるとか言っといてタルを一々運ばなきゃなんないってことですかい?」
「当然。破壊したものは元に戻らんからな」
「…おっしゃる通りで」
「じゃあお前も手伝えよ!言いだしっぺ!」
「ワシは試験官だぞ!認めてもらいたいならそれくらいやれ!」
「むきー!!!」

 何だかソラとフィルさんは反りが合わないっぽいですねー。
 でも私はタルなんて重そうなもの運ぶ腕力ないよ。
 任せちゃっていいのかなぁ。

「ソラ、運ぶのは任せていい?あ、協力したら運べるかな。手伝おうか?」
はいいって。タル重そうだし」
 隣で私を制すドナルド。
 けど自分が手伝いには行くんだねぇ。ソラの後をついていってるし。
 あ、グーフィーも?
 じゃあ私この場に1人じゃん。

「全く、近頃のガキは文句しか言わん」
 ふん、と鼻息を出すフィル。…コイツがいたか。

「でもソラは偉いですよ?友達を探すのに旅までできてるんですから」
「旅…」
「あの歳で旅をすることを決意するのは、結構勇気がいると思うんです」
「……そうか」
 ちょこちょこ、と歩いて私の隣まで来るフィルさん。
 …うーん、やっぱり背が低い。

「お前、さっき『ニホン』がどうとか言っておったな?」
「あ、ええ。私の故郷です」
「お前も旅を?」
「はい。彼らと一緒に。…頼もしいですよ」

 私が戦えるようになったのも、彼らのお陰。
 帰る事を諦めなかったのも、彼らがいたから。
 今の私は……彼らのお陰で成り立っている。

「お前も試験を受けてみるか?」
「いえいえ、私はただの魔法使いですからね。英雄じゃないです」
「魔法…」
 フィルは、腕を組んで視線を上に向ける。
 何かを考えているんですかね?

「あ、それと私、っていう名前がありますから!名前で呼んでくださいな」
「…、」
「はい?」
「何かと大変だろ。これを渡しておく」
「え?」
 そう言って、フィルは私に向けて両手を突き出した。
 瞬間、私の視界が白く光る。

『ドンッ!!!…ごん。』
「みきょッ!!?」
 私は、激しく奇妙な声を上げて後ろに傾く。
 おかげで背後の壁に後頭部を強烈に打ち付けました。
 たんこぶできたらどうしてくれんのさー!!

 …え、ていうかこの衝撃って……

「雷の魔法『サンダー』。何かあった時に使え」
「あ、ありがとうございます…!!でも何でこんな凄いものを…」
「あのボウズと旅をするにはお前さんはあまりに華奢だったんでな」

 それを言ったらソラの方が華奢のような気がしますが。(失礼)

 何にしろ、使える魔法が増えたのは喜ばしい事だ。
 練習しておこう。
 ていうかフィルって案外とおじいちゃんみたいで優しいなぁ。
 普段威勢がいいから、こういう一面があるって知らなかった。
 お陰でサンダー会得。チャララン♪(効果音?)

「…それにしても皆遅いなぁ…。タル、そんなに重いのかな。私やっぱり手伝いに…」
 入り口を振り向いて、駆け出そうとした…その時。


「今度こそ男らしく・・・ッ!!!」
 搾り出したような声を上げながら、タル登場…じゃなくて、タルを一気に2つ持ってソラ登場。
 あー、まだこだわってたのですかソラさん。
 タルの上にもう1個タルを乗せた状態だから崩れて落ちたらヤバいですよー?

「おー、それをそっち!それは隣にな」
 後から入ってきたドナルドとグーフィーにも指示を飛ばす監督もといフィル。
 何とか無事に置き終えた3人が一息ついて、監督は「合計25個運んでもらうからなー」と悪魔の言葉を吐きました。
 うへー、大変だよこりゃ。
 グーフィーは比較的平気っぽいんだけど。

は手伝うな!!絶対だぞ!!…これができたら男らしいって事を認めさせてやる…!!」
 ぐっと拳を握るソラ。変に燃えてますね。

「い、行ってらっしゃい;」
 ひらひらと手を振ると、「おー!」とソラはダッシュでタル置き場へと戻っていく。
 …何が彼をそこまで駆り立てるのか微妙に疑問だ。

「僕らも行ってくるね」
「暇だったらそこら辺を歩いてみたら?」
行き際にそう声を掛けてくれたドナルドとグーフィーにも手を振りながら、私は「そうするよ」と頷いた。
 ま、サンダーを練習したいけど、ここで魔法練習したら折角運んだタルを破壊しかねないからね。
 練習はお預け。

「じゃ、フィルさん行ってきます。監督頑張って下さいね」
「おう」

 私はゆっくりとフィールドの反対側へ向けて歩き出した。



「……、はて?ワシの名前はいつ教えたか…?」
 軽く首を傾げて、自分の記憶を掘り起こそうとするフィルだった。


 ***


「うあー、広いなぁ…」
 感心しながら歩き回る。
 一番反対側に来ると、フィルの姿なんてゴマ粒にしか見えない。(失礼)

 それにしても綺麗な場所だ。
 柱とか壁とか、細かい細工が施されていていい感じ。
 お城みたいだ。

 ぶらぶらと歩いていて、ふと気付く。
 自由に歩いていいなら、「彼」を捜してもいいんじゃなかろうか。

 …ふふふ、待ってろよ金髪碧眼・・・ッ(怪)

 私は、彼…クラウドの姿を見つける為にぐるりと見回す。
 見当たらないので、次に柱の影を見に回った。
 どこだ…!!

 しかし、彼は一向に見つからない。
 …ここにはいないのか。
 てことは、闘技場の方だろうか。
 それとももっと別の部屋があるのか?

 とにかくこの場には居ないようなので、ひとまず闘技場へ向かう事にしてくるりと踵を返す。
 練習フィールドの向こうにある出入り口へと向かって歩き出した。

 …そして、


「!?」

 今、視界の端にひらひらした何かが映りました!!
 私は、そちらをがばりと振り返る。
 その方向には、パルテノン神殿のような白い柱。
 …見間違い?でもはっきり見えたんだよね……

 …よし。

「追っかける!!」
 ダッシュでそちらへと駆け寄り、柱の後ろを覗き込んだ。
 しかしそこには誰も居ない。

 ……って、これは…?

 柱の後ろにある壁に、取っ手があることに気付く。
 ちょうど長方形に切れているようだし…ここにはドアがあるのか?
 壁に近い色をしているが、扉があることが判明。
 私は取っ手を引いてみる。

 む…、開かない。
 鍵でもかかっているか?
 押したり捻ったりしてみるが、全く開かない。
 あー、こうしてる間にも行ってしまうかもしれないのに!!

 私はいい加減苛立って、両手を前に突き出した。
「ファイアアアァ!!!」
『どごん!!!』

 背後から皆の視線が集まった気がしたけど、まぁ気のせいです。(コラ)
 フィルが何か叫んでいる気がするけど、素知らぬ顔でスルーです。(貴様)

 しかしドアは崩れない。
 …特殊な石でできてるんだろうか。このくらい崩せるような威力で撃ったはずなんだけど…。

「くああぁぁぁっ!!!会えないなんてっ…!!」
 私は膝をついてダンダンと地面を殴った。
 うあーん、会いたいよー!!(だからって破壊行動はやめて下さい)

 …こうなったら何が何でも会いたくなってきた。
 闘技場でも何でも探し回ってやる。

 私は驚くべき速さで(自己ベストかもしんない)練習場入り口まで走って、廊下に出た。
 かなり息が切れてしまって、あとは歩くしか出来ないんだけど。(駄目じゃん)
 広いよ練習場…!!

 えー、闘技場はどっちだったかな?
 一度左右を見て、確かこっちだったと右へ歩き出す。
 そんなに複雑な道はないので、すぐに分かった。

 で、闘技場に入って。
 見た感じ誰もいないっぽい。
 …捜すか。かなり広いけど。
 練習場より広い気がするなぁ。
 でもだだっ広いだけだ。視界は開けてる。

 練習場のあった場所とここの位置関係からして、あの扉を隔ててこっちに繋がっている可能性も高い。
 細かく考えるとあの位置くらいだろうか…?

 闘技場入り口側の壁を丹念に探っていく。
 …ドア…ドア……うーん。
 広いから時間かかりそうだなぁ。

 単純にクラウドの姿だけを捜してみるも、あの目立つ金髪はどこにも見当たらない。
 どこに居るんだろう…。

 と、


ー!!」
ソラの声が廊下を渡って耳に届く。
 練習場から呼んでいるのだろう。
 何かあったんだろうか?でも私はクラウドを捜せ!に熱中しているんですが…!!
 あの、見つかりそうで見つからない感じが楽しいのです。(何のことを言っている)

、来てー!!」
 …何だか困っているのでしょうかね…。
 うーん、それじゃ我侭を言うわけにもいかないし…。
 でも諦めきれないなぁ…。

ー!」
「はーい!!」

 …しょうがない、行くか。


 ***


「どうしたの?」
 私が戻ってきてみると、タルは全部所定の位置に置いてあった。
 あとは試験を開始するだけっぽいんだけど、どうしたんだろう?

、ここにいてくれないか?」
 ソラが、真剣な表情で私に言った。

「え、何?私が応援してないと嫌?
ばっ!そ、そんなわけないってっ!!…あのな、が近くに居ないとキーブレード出せないんだよ」
「あ。」
 そういやそんなのあったな。
 てことは、ソラの試験中及び闘技場での試合中はクラウドを探せないってことか?
 …いや、ちょっと待て。

「この際だから確かめたいんだけど、私らってどのくらい離れたら駄目なの?」
「あ、それ知っておきたいな…」
 ソラと私は、何となく知識の多そうなドナルドを振り返るが、ドナルドは首をブンブンと横に振った。
「それは僕にも分からない。試してみたら?」
「そうだね」


 そんなわけで、私とソラはどのくらい離れたらヤバいのか実験してみる事にした。

「キーブレード出してー!」
「おー!」
 50mくらい離れてソラに言ってみる。
 ソラは、きちんとキーブレードを出せた。

「そのまま離れていくよー!キーブレードが消えちゃったら教えて!」
「分かったー!!」

 ドナルドはグラウンド用のメジャーを持って、最大値が決まった時に測れるようにスタンバイ。
 グーフィーは、私とソラが離れすぎて会話が届かなくなった場合の伝達係。
 フィルは…タルの上で見学。
 うーむ、さすが監督だ。(何)

 段やタルのあるフィールドから少し離れた場外で、私達はピピピ電波キャッチ限界値…もといキーブレード出現に必要な最低ラインの距離の計測を開始した。

 まず私が後ろへと下がっていく。
 どんどん下がって…下がって……

「まだ消えてないー!!!?」
 叫んで確認すると、向こうからも大声で「消えてないー!!」と返ってくる。
 もう70mくらい来たと思うんだけど。
 じゃあもっと下がるか。

 すたすたと歩いて、どんどん遠ざかる。
 振り返ってまた大声で確かめる。…そろそろ聞こえなくなってきた。
 ソラはブンブンとキーブレードを振って存在を示してきた。まだ消えていないようだ。
 更に離れていく。
 …100m以上来たような気がするんだけど。
 しかしまだ消えていない模様。

 やがて私は、背中から壁にぶつかる。
 これ以上下がれない。
 私は手を大きく振ってグーフィーを呼ぶと、その旨をソラに伝えるように頼んだ。
 そして今度はソラが後ろに下がり始める。

 ソラは自分の手にあるキーブレードが消えたら止まればいいので、走って下がっていく。
 が、どうやらそちらも壁際まで来てしまったらしい。
 グーフィーの伝言によると、全く消えていないとか。

「あっれぇ…?何でだろう。離れたら駄目ってユフィに言われたんだけどなぁ」
 しかも現に、私をここに呼ばないと試験を開始できなかったっぽいし。

 一応ドナルドを呼んで距離を測ってもらったけど、距離にして170mちょい。
 これ以上離れようがないし、どうやって測ろう?
 …あれ?でもこんなに離れてて大丈夫なら何でさっき私は呼ばれたの?

 考えていると、ソラは更に下がる為に入り口から廊下に出た模様。
 …あ、その手があったか。
 でもせいぜい数mしか下がれないと思うけどな…。
 ・・・・・ところが。


!!キーブレードが消えた!!!」
 グーフィーが、叫びながら走ってきた。
「!!?マジで!?じゃあ境界線はそこか」

 ドナルドが距離を測り終えたのを視認して、私はソラのいる方へ走り出す。
 …体力尽きてすぐに歩きになったけど。

 ソラも廊下から練習場に戻ってきて、私達は入り口付近で集合した。
「ドナルド、最大値はいくつ?」
「178mかな」
「うーん、思ったより結構長距離だったなぁ」
「でもちょっとおかしいんだ」
「何が?」
「練習場を出て曲がった瞬間に消えたんだよ」
「…え?」

 それは、つまり?
 …もしかして?

「…ソラ、ちょっと廊下に出てみて」
「え、ああ」
 くるりと踵を返して入り口へと走っていく。
 そしてソラが角を曲がっていなくなった瞬間。

「消えたー!!」

 ソラが、こちらに聞こえるように叫んだ。

「………」
「………」
 私とドナルドは、無言で顔を見合わせる。
 今、はっきりとした。
 距離は問題じゃない。
 問題なのは……

「壁を隔てちゃ駄目ってこと、だね」
「うん」
「あひょ」
 頷きあう私達。

 帰ってきたソラにもそれを伝えると、彼は「あー、そっか」と手を打った。
 つまり別室に行った瞬間にキーブレードは出せないって事なんですな。
 …ある意味距離の限界値で決まるより不便なんじゃなかろうか。
 野外で戦うなら大丈夫だけど、それ以外は気をつけないと駄目なんだ。
 距離だけなら多少大丈夫だったものを。

「よし、じゃあ、この場にいてくれ」
「はーい」
 私は仕方ないのでここにいることにした。
 …クラウド捜し、したいんだけどなぁ…。

 まぁ、物語が順調に進めば会えるか。
 隙があれば捜しに行くけどね!!


 とりあえず試験が終わったらダッシュで捜してみることを決意する私だった。





〜To be continued〜






<アトガキ。>

・・・・・・えー。
すいません!!またクラウドの旦那出てません!!(をい)
出す予定だったんですがね…。夢主さんが離れていい距離は出しておきたかったんですよ。
うあー。次回は出せるといいな・・・。(出せ)
頑張ります・・・。

2005.6.26