「―――っ…」
急に喉に痛みを感じて、私は眉を顰めた。
目を開いて、喉に手をやってみた。
…ハートレスが体当たりしてきたのは、やっぱり当たってたんだ…。
あぁ、空が暗い。
気絶してたのかな?夜になってるよ。
石張りの地面が冷たいや…。
…。
・・・ん?
「!!!?」
地面はコンクリだったはずじゃ!?
私は慌てて周りを見回す。
すぐ横には大きな木箱が積んであって、私がもたれかかってたのは板の柵だった。
どう考えてもさっきいた場所じゃない。
つか、寧ろ…
「…トラヴァースタウン・・・?」
割別の鍵02
出会い
〜探索〜
そう、そこはKHのソラが島で大きなハートレスと戦って別の世界に飛ばされて、辿り着いた場所。
そこにそっくり…ってか、そのもの。
目を覚ましたらここにいたわけで……。
何でだ!?
えーと、どっか帰る道は…あるわけないよね。
大掛かりなドッキリとか…じゃ、ないよね。
……どうしよう…。
帰れない。
私はまだKH全クリアしてないのよ!!(それか)
…ここでじっとしてても仕方ない…。
どこか行ってみるか。
とりあえずこの街のマップは把握してるので迷うことはなさそうだ。
少し歩いてみると、路地を抜けて広い場所に出た。
そこで見えたのは、何だか形の妙な建物とか、ちょっと暗めの黄色い光を放つライトとか、頭に赤い球体をアンコウみたいにぶら下げた白い生物とか…
・・・・・。
買a[グリだ!?
FFで毎度出てきてるあのかわいらしくてしょうがない生物が、画面で見たとおりの糸目できょろきょろ辺りを見ながら歩いてる!!
だ…抱きつきたい・・・!!
「もぉぐりぃぃぃ!!!」
「買Nポぉ!!?」
私は沸き立つ欲望に負けてモーグリに飛びついた!!!
モーグリ、急に抱き上げられ頬ずりされ、驚くのを通り越して混乱中。
「あぁっ、このぶらさがった赤い球体がとってもらぶりーvv」
「や、やめるクポ!それに触るなクポ!!!」
「いーじゃんちょっとくらいぃー。折角この世界に来たんだから!!」
「嫌クポぉ!!!(泣)」
半泣きになってきたのでしぶしぶ下ろすと、モーグリは逃げるように(いや、逃げてるんだろうが)走り去ってしまった。
んもぅ、イケズなんだからーv(キモ)
それはいいとして、今から何処に行こう?
行く所…行く所…
…あ。
「シドなら何かアドバイスしてくれるかも…」
アクセサリー屋にいるシド。
…私は初め見た時驚いたよ。
テレビで放送されてた「FF:U」のシドは10代だったから。
KHで出てたのはガタイのいいおっちゃんですが。
私はFFのゲームはちょっとしかしたことないからあんまし知らないけども。
ソラもこの街に初めて来たときはシドに事情話したんだよね。
行ってみよ。
私はくるりと方向転換し、すぐそこにある石の階段を登った。
ていうか、店は目の前にある。
私が今いる1番街は結構狭いからなぁ。
少ない割りに密集している建物の内の1つ。
私はその建物のドアを開けた。
木のドアは、音を立てずに開いた。
「おぅ、らっしゃい」
「えーと、シドさん?」
「…知らねぇ顔だが、よその世界から来たのか?それにしちゃ俺のこと知ってるようだし…」
眉を顰めて首を傾げる、カウンター越しのシド。
…やっちまったぁ…。
説明するのが面倒だ。
「えーと…気のせいですよ!!私とあなたは初対面ですから!!」
「・・・・・・」
あ、怪しまれてる・・・。
しまった、この人頭いいんだった。
「…まぁ言いたくねぇみてえだから聞きやしねぇが」
「(ほっ…)あの…私、急にこの世界に飛ばされてきたみたいなんですよね…。」
カウンターの隅に置かれたショーケース内のクリスタルをチラ見しつつ(綺麗だなぁ)、言った。
…唐突だったかな。
「気絶して、眼を覚ましたらこの街にいたんです」
そう付け足すと、シドはうーんと唸った。
「…譲ちゃんと似たようなことを言ってきたボウズがいたな」
・・・・・・。
え?
私は我が耳を疑った。
同じようなことを言ってきたって…もしかして?
「名前は!?その男の子の名前っ」
「ん?確か…ソラ、とかいったか?」
「!!!」
やったぁ!!!
ソラはもうこの街に来てた!!
しかもこの言い方からして会って間もないよね。
ゲーム後半辺りになると大分シドと仲良くなってるし、今の発言じゃそうは思えない。
じゃあゲームで言えば序盤の方なんだ!!
「その子、どのくらい前に来ました?」
「ついさっき、だな。来たのは2度目だった。何でも2番街に探索に行くとかで」
「って、ことは…」
この世界…トラヴァースタウンに来て、わりとすぐなのかな?
探索ってくらいだからまだこの街を把握できていないのだろう。
「何だ?ソラの知り合いか?」
「え?うーん…まぁ、そんな所でしょうか」
「…そうか。歳が近いように見えるが、ソラの言っていた友達か?」
ソラが探してる友達=リクとカイリ
いやいや、私は全く違うもんでっせオヤビン。(ぇ)
「違いますよ。…2番街、でしたよね」
「あぁ。行くのか?」
「んー…。行きます」
「2番街からはハートレスが出る。気をつけろ」
「はい」
…正直、ハートレスは怖い。敵だし。
が、今はもっと多くの人物に会っておきたかった。
何となく、全く知らない場所というのは全く知らない人しかいなくて寂しい。
「…譲ちゃん、俺がついていこうか?」
「大丈夫です。これでも逃げ足は速いですから(嘘だけど)!!店番があるでしょう?」
心配そうなシドを振り返って、私はにっこりと笑った。
シド、優しい・・・v
でも迷惑をかけるわけにはいかないからねぇ。
「…あ、それと。私、 っていいます。「」でいいですよ」
「おう。…何かあったら戻って来いよ、」
「はい!」
そして私はドアを開いた。
再び街に出て、深呼吸。
ハートレスが出ても、対抗する術はないのよね。
逃げるっきゃないか。
この街は3番街まである。そこまで見ていなかったら…
…って、いないはずないか。
まだソラはドナルドとグーフィーに会ってないだろうし、だとしたらこの街…世界から、抜けることはできないだろう。
よし、探すぞ!!
生脚萌えするぞ!!!(ぇ)
私は石段を登り、1番街を奥に進む。
やがて大きな…っつか、巨大な扉を前にして立ち止まる。
この先が2番街になっている。
101匹わんちゃんの家もこの先である。
…おいしいシチュエーション望む!!
さぁ行くぞ!!!
私は扉を押した。
……重いかと思いきや、実はかなり軽いぞこの扉・・・。
まぁ、ソラ1人で開けられるんだもんね。
本当に木か?
2番街に来ると、1番街のイメージとは全く違った雰囲気が漂う。
人気がないから寂しい、というのもあるだろうが、何となく暗い感じがする。
明かりはついてるのになぁ。
「さーて、ソラはどこかな?」
入り口付近の高い位置から2番街を見渡す。
隠れて見えない場所意外は全部見えるのだが、そこにはソラは見当たらなかった。
…うーん、死角にいるのかな?
数歩、足を進めた所で。
『ボン!』
何か爆発するような音が・・・
『ボンッ!!』
「!!!?」
私の鼻先を掠めて火の塊が飛んでった。
ぱっと振り返って、一瞬の凍結。
ハートレスだ。
何だか振ったらチリンチリン鳴りそうな形で、空中を浮遊してる赤い物体。
火球出すそいつらが4〜5匹いるんだからたまったもんじゃない。
小さくてかわいいのに!!小さくてかわいいのに!!!(問題はそこじゃねぇ)
ソラは何発か食らっても大丈夫だったが(ゲームでは)、一般人の私はそんなもんHPゲージ少々減るくらいじゃ済みやしねぇ。
大体ゲージあるのか?
あっても短いんだろうな・・・最近運動不足だし。(そこか)
私は必死に逃げ惑う。
てか、逃げるしかない。
やっぱしシドについてきてもらえばよかったぁー!!!
しかも何だか逃げるごとに敵の数増えてますよ。
いつの間にかハートレスパレードできてますって!!!
助けてぇー!!!
あぁ、1番街に戻れない…。
扉のある方向にはハートレスの軍団…。
何気にソラ探しながら走ってますが、全然見つからない。
…もう3番街に行ってるのか?
でもストーリー的に…
・・・。
言ってる場合じゃない。
ソラも人間である。
行ける場所があるなら行ってる可能性は十分にある。
よし行くぞー!!!
つか、さっさとこの軍団から逃げるぞー!!!
私は101匹わんちゃんの家を泣く泣くスルーし、3番街に向かった。
細い道に入って、角を曲がって、更に進む。
あぁ、何かシャドウのパワーアップバージョンみたいなハートレスまで追ってきた!!(名前忘れたよ!)
3番街に続く扉は……あった!!
あと少し!もうちょっと!!
私は脱兎の如く走り抜けた。
そしてたどり着いた3番街への扉!!!
2番街に通じる扉より遥かに小さいのが気になるところだが、ここはさっさと開けて勢いよく閉める。
数秒、鈍器を木材に投げつけたような音が扉から響いたが、無視をすることに決めた。
あぁ、追ってきた奴らがドアにぶつかってるんだ?などとは考えてはいけない。(何故)
3番街に来ました。
何だかイルミネーションが妙にきらびやかな場所ですな。
誰もいないのにこんなに電気消費してて大丈夫なのか?とか現実的なことを考える。
…と、
『どすぅっ!!』
「うわぁ!!!」
「「わぁ!」」
突然エルボーかましたような音と叫びが。
壁のせいで死角になっていて見えなかった、すぐ近くにある階段の、その下。
叫び声の主達はそこにいるようだった。
…ていうか、何だかモロに聞いたことのある声だった気が。
私は駆け足で階段を下りる。
すると、
「…いててて…」
何とそこではKHメンバー集合してました。
しかも何だか3人とも積みあがって山になってますv
要するにあのシーンです。
ソラが歩いてたら上からグーフィー&ドナルドが降ってきて大激突した場面です。
ソラとドナルド・グーフィーが出会ったのもこの場面だったよね。
で、キーブレードの持ち主がソラだって事が判明して3人が仲間に!!
つか、その前に
「わぁぁぁ生だ!!生KHパーティーだ!!!萌え!!寧ろ愛!!触らせてー!!!!!」
私が発狂した。
「な、何だ!?」
一生懸命立とうとしてる3人に突っ込む私。
そして狼狽する3名。
私は見事、直線上にいたソラに抱きついた。
「誰…わっ!」
「んんー、もち肌ーv」
頬ずりしていると、ドナルド&グーフィーの視線が痛いほど刺さってきたので私はようやく離れた。
「こほん!!あー、君たち「鍵」を知らない?」
「特別な鍵なんだ」
ドナルドが軽く咳払いをして言って、グーフィーがそれに続けた。
…どうでもいいが、文字がないとドナルドの声って聞き取りにくいな…。
ドナルドとグーフィーって確か「鍵を持つ者と行動を共にしろ」って王様から命令受けてるんだっけ?
「鍵?」
だったらソラが、と言おうとして、私は止まる。
・・・・・・。
「煤I?」
無い!!ソラがキーブレード持ってない!!
戦闘時以外は確かに消してるけど、このシーンでは出してるはずだよね!?
まぁ、この街にソラが来た直後に3番街にこの人たちが集合してること自体おかしいよね。
私が来たからか?
「それよりお前誰なんだよ?いきなり抱きついてきたりしてさ!」
ソラが眉根を寄せて尋ねてきた。
「私?えーとね、」
「それよりじゃない!鍵!!」
割って入ってドナルドが喚く。
あぁー、一生懸命だなぁ。
「鍵…なら、俺が持ってたはずなんだけど…」
ソラが自信なさげに言った。
ん?何でそんなに語尾が小さいのかな?
ていうか…
「持って、た?」
「過去形?」
私とドナルドが問うと、ソラは頷いた。
「出せなくなったんだ。この街に来てから」
のたまったソラ。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
しばし沈黙。
「出せなくなったって、鍵が?」
「持ってたのに?」
「そう」
そしてまた沈黙。
「・・・・・・・・って、んのぉぉぉ!!!?」
沈黙を破ってこれでもかというほど叫んだのは私だった。
だってキーブレード持たずなソラですよ!?
これからの旅はどうするのさ!!?
ドナルドに至っては白目向いて昇天しかけてる。
グーフィーは相変わらずのほんとしてるけど。
「あひょっ、どうするドナルド?」
妙な語頭つけながら意見を聞こうとするグーフィーに、私もドナルドの方を向いた。
「・・・・・・こっちが聞きたいよ・・・。」
頭抱える王国お抱え魔法使い。
突き出た尻が、やたらカワイイ。(関係なし)
「そんなに大切な鍵だったのか?」
ソラが、さすがに心配そうに尋ねてきた。
青色の瞳がくりっと動く。
・・・。
・・・かわいいー!!!(関係無)
「大切も何も、あれがないと…」
「どうなるんだ?」
「…どうなるんだろう?」
「あっひょ、それは僕らにも分からないんだよね〜」
「何だよそれ・・・。」
ソラは呆れたように肩を竦めた。
……その瞬間。
『ガシャン!ガコン!!ガランッ!!』
殆ど無音だったこの3番街に、鉄がぶつかるような音が響き渡る。
・・・まさか、
「!!!!」
「なっ、何だアレ!!!?」
叫んだのはソラだった。
その他3名(私含む)は、開いた口が塞がらない状態。
…そのまさかだった。
しまった、ドナルドとグーフィーに会った直後はボス戦だ!!!
すっかり忘れてた。
小さいハートレスを倒しててもきりがないからってんで、ソラが親玉を倒しにここまで来るんだよね。
それでこの2人と会って、そのままボス戦突入。
ソラが親玉退治を既に頼まれた状態なのかは甚だ疑問ではあったが。
少し広くなっている所にそいつは佇んでいた。
…つか、体の殆どが浮遊してるから「佇んでいる」とは言いがたいのだが。
巨大な鎧の形をしたそのハートレスは、足以外の頭やら胴体やら手やらのパーツを浮かせている。
・・・あの中身ってどうなってるんだろーか?
やっぱし空洞?
けどあんなに大きな鎧つける人なんていないよね。
それとも巨人用鎧!!?
鎧が勝手に動くから大変だろうなぁ・・・(ぇ)
その巨大鎧ハートレスは、私達の姿を見留めるとガシャガシャと音を立てて走ってきた(足以外のパーツも付)。
ちょっと待て。
私は戦えないー!!!!!
しかもキーブレードを持たないソラも戦力外になる。
こ、ここはドナルドとグーフィーに頑張ってもらうしか・・・!!
私はくるりと踵を返す。
「んじゃ、戦力にならない私はさっさと退散しますんで!!」
半ば(というか100%)逃げる気満々の私は、手を振って走り出す。
「あぁー!!逃げた!!」
「こら待て!!!」
後ろから怒号が聞こえたが、待ってどうする一般人。
私は剣も使えなければ空手柔道合気道も何にもやってない普通の女子高生なのYo!!!
戦いなんて無理です。
2番街への扉は階段を登ってすぐにあるので、私はそこに向けてダッシュをかけた。
戦線離脱といきますよー。
・・・が、
『がしっ』
「・・・へ?」
何があったのか一瞬分からなかった。
しかし、胴体の苦しさですぐに気付かされる。
「いっ、いやぁぁぁ!!!?」
続いて地に足の着かない浮遊感。
そう、私は巨大ハートレスの右手に鷲掴まれてしまったのだった。
手が胴体にくっついてないなんて反則よ!!
つか、ヲトメの体を握るな!!!つぶれるぅー!!!
私は半ばパニックになりつつ現状を呪った。
〜To be continued〜
<アトガキ。>
中途半端な終わりです第2話。
とりあえず出会えました。
やはり説明くさい…。でもトラヴァースを抜けたら大丈夫だと思うので!(何がだ)
そ、それではまた次回!(逃)
2005.1.10