空は快晴。私の心も快晴。
何たって一緒に歩いてるのはMZDなのだから。
最近増えてきたデートに浮足立ちながら、隣に居る彼を見た。
…が。
彼の視線は、あらぬ方向へ向いているのである。
001:女子高生
〜コノミニアワセテ。2〜
何を見てるんだろーか、とMZDの視線を追って見てみると。
「ね、その髪マジ可愛いよね」
「思ったー」
「えー、今度やったげよっか?」
などとキャッキャウフフしている女子高生3名。
ついでに皆スカート短い。見えそう。(何が)
はっとしてMZDの方を見ると、心なしか口元が緩んでる…気がする。
ま さ か
「コルァ、エロ神!!どこ見てんのよ!!」
『バチイイィンッ!!』
「いだっ!!?」
盛大に炸裂しました背中への平手打ち。綺麗に決まると意外と派手な音がするよね。
「何だよいきなり!」
「今女子高生の太もも見てデレデレしてたでしょっ」
「あ?……べ、別にいいだろ!減るもんじゃねーし」
「やっぱ見てたんじゃん。減るわよ私のHPが!!」
HPだと体力だから減るのは寧ろMPかもしんないけどね!!(どっちでもいい)
「しゃーねぇだろ!見えるんだから!」
「やだやだ!!浮気だああ!!折角隣を歩いてるのに他の女の子に釘付けってどういうことよっ、嫌に決まってるじゃないの!!」
「だーーー!!悪かった、悪かったって!!もう見ねぇから!!」
どうどう、と私を鎮めようとするMZD。いや私は馬かっつの。
分かるんだけどね、あんなピッチピチ(死語)な太もも見えたら釘づけになっちゃうのも。
MZDも男だし。
これってどうしようもないんだろうか…。
再び二人で歩き始めながら、私は何となくモヤモヤしたままだった。
***
ごろん。
デートから帰ってきて、ベッドに横になる。
時刻は夕方。相変わらずモヤモヤは胸の中に御在宅。
あれからMZDのセクハラ視線が再発する事もなく、普通にデート出来たんだけど。
…何か、いつまた魅力的な人が現れるかも分かんないし。
だって私、自分で言うのもなんだけどMZDに釣り合う自信なんて持った事無いし。
本人はそんなん気にしないって分かってるけど、こんな事があったんじゃ気になりもする。
もっと色気があったらなぁ…なんて。
ベッドの上で仰向けになりながら首を下に傾けて、ぺたんこの胸をしげしげと見下ろす。
…サーセン、こりゃどうしようもないですわ。
溜息をついて、うーん、と唸る。
……そうしている内に、ふと何か思いついた。
そうだ、今日見た物の中から学べるものがあったじゃないか!!
ピコーン、と頭上に電球が点灯する。
私は思い立ったら吉日とばかりに、素早くベッドから降りたのだった。
***
翌日。
実は今日もデートですオゥイェ。
作戦をとっとと実行できそうです。
昨日思いついた作戦。
それは…私もミニスカ履いちゃえばいいじゃないの作戦だ!!
これなら昨日の女子高生に太刀打ちできる…!!
いくら私に色気がなくても胸が無くても顔が普通でも……言ってて悲しくなってきたけど、とりあえず太ももはあるもんね!(どういう理屈だ)
今まで「私には似合わないしー…」とか「度胸もないし…」とか思ってたけど、こうなったら手段は選べない。
私は、昨日思い立った直後にダッシュで買ってきたミニスカを見下ろした。
それを履いて、デートに向かってるなう。
…うん、やっぱちょっと…だいぶ恥ずかしい。
かがんだら見えちゃうかもだし。
いやいや、昨日の女子高生達もこんなだった!
MZDの好みって多分こんくらいなんだ!
…と自分に言い聞かせて何とか羞恥心を打ち消してみる。
そうして待ち合わせ場所までダッシュで…行こうと思ったけどスカートなびいて中身見えたら憤死しそうなのでちょっと歩調を緩めながら急いで向かった。(なびくほど長さないけど!)
やがて見えてきました待ち合わせ場所。そしてMZDの背中。
私はあえて声をかけるでもなくそっと近づいて、ぎゅっと彼のパーカーの袖を握った。
袖を引っ張られる感覚で気付いたのか、MZDは「おう、やっと来たか」と振り向く。
………そして。
「………」
私の存在は認識したはずなのに、なぜかMZDはピタッと固まって動かない。平たく言うと石化した。
え、と思って目の前でひらひらと手を振ると、反応は無いのに徐々に顔がぼわぁっと赤くなっていく。
「え…MZD?」
「……っ!」
そこでようやくスイッチが入ったかのようにビクッと肩を揺らして息を詰まらせる。
何これ…えっれぇ年季の入ったブリキの人形みたいな。
「お…おまっ……」
「?」
こくり、と彼の喉が鳴る。
「ど、どうしてそんな短けぇんだよバカっ!!」
言うが早いか、どっから出したのか不明だけど(多分神パワー?)随分丈の長いロングコートをぶわっと広げて私に被せた。
あばばば、適当に被せるから急に何も見えなくなっちゃったじゃないか!!
私はもがもがとコートの中で暴れて、やっときちんとコートを着る事が出来た。
何すんの、と抗議の声を上げようと彼を見上げるが、
『ぼふっ』
「ふぶぅ!!」
再び目の前が真っ暗になって言葉が阻まれる。
ぎゅう、と腰に圧迫感を感じて、それで抱きしめられてるのだと気付いた。
え、え、何この急展開!?
何が起こったWhat!!
「…おいコラ。」
「ふ!?」
ぎゅうぎゅうに抱きしめられたまま、MZDが耳元で不機嫌そうに言う。
「誰引っかけようとしてんだよ。そういうのは2人だけの時にしろ、アホ」
不機嫌そうなのに、どこか熱っぽい。
それだけで私の頭の中はいっぱいいっぱいになってしまって、心の中でぎゃああ、と叫ぶ。
多分もう顔真っ赤だ。
やだやだもう、不意打ちじゃないか。
「返事は?」と問われ、私は一も二も無くこくこくと頷いた。
それでやっと解放されて、ほうっと息をつく。
…び、びっくりしたぁ。
「さ、帰るぞ。そんな恰好で歩かせたくねぇし、今日は俺んちにでも来い」
手を取られて強引に引っ張られる。
いや、MZDの家に行くのは別にいいんだけどね、その前に!
「待ってよ!…その、そりゃちょっと大胆な服装だけど…、折角MZDが喜ぶと思って着てきたんだよ!」
そう、これじゃ私の計画が全てパーなのだ。
色気…はもしかして感じ取ってくれたかもしれないんだけど、何か予定と違う。
私はMZDとデートをしたかったのだ、あくまでも。
MZDが私の事だけを見てくれる素敵なデートを!
「お前な、他の男に見られたらどうすんだよ!」
「そ…れは考えてなかったけど。こうすればMZD、もう余所見しないかなって…思ったの!そしたらお互い楽しくデート出来るでしょっ」
「……」
ぽかん、と口をあけるMZD。
何さ、そんな変な事言ってない…はずなんだけど。
「…お前、ずっと気にしてたのか?」
「……気にするよ、そりゃ」
「あー……」
額に手を当てて唸る。
その様子をじっと見る私。
「そっか…わりぃ、俺のせいだな。…でもなー…お前にそんな恰好で外歩いてほしくねぇんだよな。他の男にそーいう目で見られんのも嫌だし、独り占めしてぇし。…大事にしたい」
「それは…その、嬉しいんだけど。でもそれじゃ、」
「もう余所見しねぇよ。これならいいだろ?…大体、俺が余所見するたびにお前がそんな格好するんじゃ、俺だって落ちつかねぇっつの!」
お前がどんな目で見られるか想像するだけで嫌だ!! と顔をしかめる彼。
作戦を立てた時はこんな反応予想だにしてなかったけど…思ったより大切に想われてるようで、何だか嬉しい。
「じゃあ、私もこれからはもう少し考えて服選ぶよ。だからMZDも、もう他の女の子にデレデレしないでよね!」
「デレデレって…単純な興味なんだけどな」
「MZDっ」
「分かった、約束するよ」
ぽふぽふ、と頭を撫でられてなんか誤魔化されたような気がしたけど…「約束する」と言った表情は意外と真面目。
うむ、今日はこの辺にしておいてやろうぞ。
で、それはそれとして。
「ね、MZD」
「何だよ」
「…似合ってた?」
今はもうコートの内側に隠されてしまった、私の今日の服。
それは何も女子高生に打ち勝つためだけに選んだわけじゃない。
「……」
なでなでなで。
頭の上に置かれたままだった手が再び私の頭を撫でくり回す。
「っちょ、誤魔化さないでよ!」
「あーあーもう!…似合ってるよ、今すぐ食っちまいてぇくらいにな!」
「はっ!?」
期待の斜め45度をかっ飛んで行った切り返しに私は思わず瞠目する。
そ、それはどういう意味で捉えればよろしいんでしょうか。ちょっと乙女にあるまじき方向で認識しそうになったけど、
「だから俺んちに来いっつったろ。…あ、言わせたからにはもう拒否権ねぇからな」
訂正、認識「しそうになった」じゃなくて、もう他の意味で認識しようがない。
じわじわと顔が熱くなる。
あ、あれ、もしかしてそういう感じで見てたから私を発見した時あんな反応してたの?
というか…そっか、他の男の人にもそんな風に見えちゃうんだ。
急に納得して、MZDの言ってた意味がすとんと頭の中に入ってくる。
…これ、わりと本気で服装について考えなきゃならないかも。
手を取られずるずると引っ張られながら、苦し紛れに「デートはー?」と問うものの、「今日はお預けに決まってるだろ」とにべもなく切り捨てられた。
そうしてデートコースから強制連行された、とある昼下がりである。
〜 Fin 〜
<アトガキ。>
こんばんにちは、リハビリ第2弾完成でございます。
サブタイで2と書かれております通り、2つセットです。(1個目は26「何をしてるの?」)
単品でも読めますので、意味合いとしては「二度美味しいかもしれない」程度(何
書いてる内に何だか共通点が見えづらくなってしまいましたが、お互いが好みに合わせて暴走っていう感じで(笑
今回はちょっぴりテンションが戻ってきてるかも知れません!希望的観測ですが!!(
書いててずっと「今回は甘いの入れるんだああアァァッ」とKIAI入れて頑張ってました。
精一杯頑張ってギャグ甘。いいんだ、元々甘書くの苦手だし…
どうやら私、MZDに照れさせるのがツボらしいです。楽しかった。
ニヒルで自信満々なMZDも大好物なんですけど、それを書くにはもう少しリハビリ要りそうです(笑
というわけで、おそまつさまでした!
2013.10.30