しんしんと降り続く雪のおかげで
外にはかなりの雪が積もっている。
銀世界 とはまさにこのことだろう。

この美しき世界で思うのは 愛しき貴方のこと。


Snow and paint
        white and black


「えらくご機嫌ね。ハボック少尉。」
鼻歌まじりで陽気にスキップをしながら司令室へ入って来たジャン・ハボックに
は不可思議な顔をして問いかける。
その問いにハボックは満面の笑みを浮かべながら答える。
「実は今日 午後から非番でさぁ!」
その続きをに耳打ちする。
「デートなんだよ!!」

その答えには眉間に皺を寄せながら言う。
「それってって人?」
それにハボックは目を見開く。
「あれ!?なんで知ってんだ?」
「・・・知ってるも何もハボックが自慢してたんでしょーが。
『最近可愛い彼女ができたー』って。」

実は2週間程前、ハボックは親馬鹿で有名なマース・ヒューズ中佐を思わすテンションで
彼女自慢をしていたのである。
この東方司令部で知らない者はいないだろう。
・・・といってもたった5人だけだが。(ハボックを除いて)

ハボックは「そうだっけか?」と頭をかきながら首をひねる。
「でも災難ね」
くすくすと笑うの言葉の意味が分からずハボックは首を傾げた。
横で二人の会話を聞いていたフェリー曹長とブレダ少尉も吹き出しそうである。

そこへロイ・マスタング大佐が入って来た。
「あ、大佐。」
「どうしたんスかそんなに書類もって。」
ロイは山ほどの書類を抱えていたのである。
その問いにロイは忙しく手を動かしながら答える。
「午後から早退する。
そのために午後の分もやっておこうと思ったのだが
なぜか他の仕事までまかされてしまってな。」

でた。大佐の18番、仕事貯め。
そのツケが回って来たのだろう。
そのおかげで一体何十回残業させられたと思っているのだろうか。
いい気味だ と思いながらハボックはロイに問いかける。
「でもなんで早退なんかするんスか?」
「デートだ。」
すぱっと答えたロイに、4人はため息をついた。
女のためにそこまでするとは。
恐らく『女性を待たせるわけにはいかない』とか言うんだろう。
たらしと言うか、フェミニストと言うか、それとも女好きか。
「今度はどんな方ですか?」
が言うとロイはてきぱきと手を動かしながら答える。
「中々美人な女性だ。 1週間ほど前に知り合ったのだが
今の彼氏と別れたいらしく一昨日から約束していた。
まぁ、飽きっぽい性格なのだろうな。」

はにこにこしながら次の質問をする。
「お名前は?」
するとロイはその『今の彼氏』がいるにもかかわらずきっぱりと言い放った。
そう。その女性とは・・・
だが。」

「〜〜っ!あっははははははは!!」
こらえきれずに笑い出したとは裏腹にハボックは凍り付いていた。
ブレダ達は『ぷっ』と吹き出している。
〜〜〜!!」
先刻の笑いはそう言う意味だったのか
こんなことをしてもが自分に戻ってくるはずも無いのだが、ハボックは恨みを混めた目でを睨む。

あぁ、でも・・・・

わずか2週間で破局になろうとは

そう考えるとハボックは何もやる気がおきなくなり、トボトボと自分の席へ戻る。
大佐といえばそんなのどうでもいいようで素早く書類を片付けていく

そんな様子を見ていたは、何を思ったか司令部を飛び出していった

周りが首を傾げる中、は5分ほどして戻って来た。
「あ、少尉どこ行ってたんで・・・」
フェリーの言葉を無視し、はずかずかとハボックの方へ歩いていく

ハボックは『真っ白な灰』になってぼけーっと煙草を吸っていた
「ハボック」
自分をよぶ声に反応して声の方ーー・・
この場合 後ろを振り返ると

ドサッ

頭上から真っ白なモノが降って来た
ぶわっ!?冷てっ!!なにしやがんだ!!」

真っ白なモノーー・・もとい大量の雪を頭からはらってみあげると
がからっぽのバケツをもってにやりと笑っていた

「雪合戦をしよう!!」
「は?」
「は?じゃない!いい?この季節に雪合戦をしないなんてありえないわ!!
冬と言えば雪!!雪といえば雪合戦なのよ!!」
「いや、意味不明だし・・・・」
「はいィ!!そういうわけで雪合戦いくわよ!!」
「え!?」

は一気にしゃべりだすとハボックの返事も聞かずに襟首を引っ掴み
そのまま引きずって外に出ようとした
が 何かを思い出したように立ち止まる。

「あ、大佐。ホークアイ中尉が・・・」
そういって手招きする。
すると大佐ことロイはめんどくさそうに席を立ち、の方へ向かう。

は再び にやりと笑うと今度は大佐の襟首をひっつかんだ
「むあっ!?」
「あの中尉が上官を立たせるわけないじゃないですか〜」

言われてみればそうだ。
ロイは少し体を解すついでとまでに立ち上がったのだが、見事の策略にはまってしまったのだった。
だが後悔しても 時既に遅し
「じょ 上官の襟首を掴むとは何事だね!?」
「大佐、中尉にデートで早退 とは言ってないんでしょ」
「!!」
びくり とロイの肩が震える。
「大方『今後の作戦のために極秘で調査をしてくる』とか言ったんじゃないですか?」
「・・・・・・・・・・。」
ロイは無言だ
「はい決定ね!!
いーじゃないのサボリはいつものことでしょ」
「・・・・! 君 仕事は終わったのかね?
終わってないのなら今夜残業という形でだな・・・・」
「大佐に言われたくないです
おあいにく様ー。もう終わってますよ。」
ロイはがくりと肩を落とし、深くため息をついた。

「それじゃあレッツゴー!!」

の笑い声とともに2人は引きずられながらその場を後にした。



「うっひゃぁ〜!スゴイスゴイっ!!」
「・・・何考えてるんすかね は」
「知らん。」

軍服のままでは寒いのでコートを羽織り、マフラーと手袋をして三人は外に出た。

・・・・・・・・中尉に見つかってはまずいので
空き地の方へ移動したのだが。

ここまで来るのに誰も止めなかったのは、話しかければ
自分も巻き込まれると思ったからだろう。
の自己中さは有名だ。

「全くいい大人が・・・『バサッ』ぶぉ!?
前方からスゴイ勢いで雪玉が飛んで来た。
顔でそれをキャッチするロイ。
「ブツブツ言ってないで大佐・・・・
2発目!!」

2発も喰らうか とひらりと身をかわす。
だが背後からの3発目。
・・・・・・ハボックだ。
「ハボック 貴様・・・・・」
「いい大人がこんなことでムキにならないっすよね?」

にんまりと笑う2人。

・・・・2人の間にバチバチと火花が散る。

バサッ

そんな二人に特大の雪玉がなげられた。
「・・・っっ!!!!このやろっ」
やり返すハボック。・・・・いや、ハボックは標的をからロイに変える。
雪玉はみごとロイの顔面に。
その勢いでロイは尻餅をつく。
「なっ なにをする!?」
「日頃の恨みっすよ〜〜〜」

にまにまと意地の悪い笑みを浮かべ 手の中の雪玉を玩ぶ。
「・・・っこの!!」
大佐はポケットをあさりだす。
「やべっ! 発火布はずるいッスよ!?」
「ふははははは!!こちらも日頃の恨みだ!!」
あわてて後ずさるハボック。
それに対し、にやりと不気味な笑みを浮かべるロイ。(だが尻餅をついたままだ)

形勢逆転かーーと思われた が

「・・・・・?」
「・・・・・・大佐?」
「発火布の手袋なら抜いときました」
台詞と共に手の中の雪玉をロイの頭に雪玉を落とす
「わぶっ!? な 何を!」
「何をじゃないッスゥ〜。錬金術はずるいッスゥ〜〜」
「・・・それ 俺の真似か?」
ハボックは呆れた目でをみるが、は気にしない。

「なっなんだ2人して!!」
「へっへ〜。日頃こき使われてる恨みっす!!」
「あれ?私はハボの方についた気はないけどな。」

「え?」

は 言うなり超特大雪玉を背後から出し頭上に掲げた。
一体どこに隠していたのか・・・・(禁句
それにしても、この雪玉 でかい。
の頭3つ分くらいだ。
よくもまぁこんなものをささえていられる・・・・
バゴ
「あれ?」

嫌な音がしての頭上の超特大雪玉がくずれ
の頭に降り注ぐ。

ドザザザザザザザザ
「あんぎゃぁああああぁうぇおわおごぉ!!?」

「「!?なんだその叫び!!特に後半!!」」
「私の心配は!?」

声を揃えて言う2人に雪から這い出てツッコミを入れる
たしかに女とは思えない奇声だったが・・・・
「普通ヒロインを心配して助けるでしょ!!?」
「「誰がヒロインだって!?」」
言いながらそばにあった雪を掴み、の頭に落とす2人。
またもや声が重なる。

「ひっどぉい!!みてろー!」
はその場から駆け出し空き地の隅の方に避難してしまった。
「・・・・なぁハボック」
「・・・なんすか大佐。」
「少し冷えないか」
「そうすね大佐。」
「一段落ついたらホットコーヒーでも飲んでゆっくりしたいと思わないか」
「いいすね大佐。」
「お前奢れ
私は2人でコーヒーを飲んでデートに行く!!
「いやっす!!」
何気デートが追加されているロイの願望に即答するハボック。
またもや2人の間に火花が散る。

「・・・・・・雪合戦で勝った方が彼女とデートが出来る というのはどうかね」
「・・・・・を大佐の毒牙にかけるわけにはいかないっす」

すごい形相でにらみ合うハボックとロイ。
しかしなんとも本人の意思を無視した言い合い(睨み合い?)である。
ドバサァ!!
「どわぶ!?」
「ぶわっ!?」

そんな2人にまたもやの特大雪玉攻撃。
「油断大敵雪まみれ!!」
にやりと満足気に笑いながら言うに、2人は悔しそうな視線を送る。

「あ」
だが、突如がすっとんきょうな声を上げた。
「・・・なんだ?どうした。」
「いや、雪合戦ってどうやったら終わるんだろ?ハボ、知ってる?」
ハボックに問いかける
しかしハボックは首を振る。
「・・・・・・・・生き残り戦じゃないか?」
ぼそり と大佐がつぶやく。
「どういうこと?大佐。」
「三人の中で最後まで立っていた者が勝ちだ。」
「・・・・というと?」
「残りの2人を動けなくなるまで倒す!!」

そんな危険なルールではない気がする!!(某ジャングル漫画じゃあるまいし
ロイの自信満々の発言に、ハボックとは顔に縦線を入れて心の中で叫んだ。
しかし他になにかいいルールも思いつかないし・・・・
いや でもすごく危険な気がする・・・

「いや、でも他の『ドバサッ』ガハ!?
ハボックがロイにそのルールの危険性を告げようとすると
いきなり雪玉が飛んで来た。
雪玉をはらい、飛んで来た方向を見ると、不気味な笑みをしたロイ。
「そうと決まれば早速攻撃再開だ!」
決まってないから!!

またもや心中で叫び雪玉を掴みロイに投げ返すハボック。

それをよけてに雪玉を投げるロイ。

雪玉に当たり転んで、仕返しとばかりに2人に向かって某ピッチャーのごとく豪球をなげる

それが急所に命中し、転げ回る2人。


そんなこんなで雪合戦は3時間ほど続いた


「もっ・・・もう・・・だめ・・・・・・・・あ〜〜〜!
ぎぶあっぷーー!!」

一番最初にリタイアしたのはだった。
どさり とぐちゃぐちゃになった雪の上に座り込む。
ハボックとロイはと言うと
本来ならば遊びのはずの雪合戦を決闘のごとく本気でやっている。
そこまで本気でやらなくてもいいだろう。というぐらいに。
まぁ、がかかっているのだから仕方がないのだけれど・・・・

「・・・わからんな」
突然ロイが口を開く。
「なにがっすか?」
警戒を解かず手に雪玉を持ったままハボックが問う。
「貴様彼女が出来たと喜んでいたではないか
それをあっさりへ乗り換えか?」
「大佐こそ これからに会いにいくんすよね?
仕事あんなにがんばってたし。
といるとこ見られちゃっていいんすか?」
「かまわん。
私はお前をふるためだけに使われるのだからな
とデートの為に早退というのはサボるための口実。
それにを好きなわけではない」
「あ〜あ。また大佐の女癖の悪さが広がりますね」
「それよりお前はどうなのだ」

大佐の鋭い睨みに圧倒されるハボック。

・・・・本気なのだろうか

「別に・・・・・」
「?」
ぼそり とつぶやくハボックの台詞にロイが首を傾げる。

「別にただの悪あがきッス!!!!」
台詞とともに雪玉が投げられる。
それをぎりぎりでかわす大佐。

またもや、2人の睨み合いが続く。


と そのとき

「とう!!」
ゴン!!
「うぉ!?」
「ぐはっ!!」



ドサ

ドサ


突如飛んできた雪玉によって倒れる2人。
が投げた雪玉に当たったのだ。
「へっへっへー!名付けて『バタンキューのフリして襲っちゃうぜ作戦』!!」
「くっそ・・・卑怯者〜・・・・」
雪に倒れたままつぶやくハボック。

「しかし やけに固くないか?この雪玉。」
の雪玉が命中した脇腹をさすりながら問うロイ。
それには恐るべき答えをする。
「だって石入れたもん」


え・・・ちょ・・・?


石・・・・?

「お前やめろよそれ!!あっぶねぇなあーー!!」
「あ なんだハボ元気。」
「そうじゃなくて当たりどころ悪かったらどうすんだ!」
「だって石入れた方が有利だしさ。」
「ずるいから!!この雪合戦ものっそい危険じゃん!!」
「いや、私が勝ったら2人に飲み物おごってもらおうと思ってね」
「たかが飲み物のためにそこまでやるかぁ!!?」
「考えたらすごく飲みたくなってきました!!」
「わけわかんね・・・・・・」

ハボックが疲れて動けない上にものすごく疲れる会話をしていると
ロイが不適な笑いをして話しかけてきた。
(ロイも疲れているのか這って来たのだが・・・)

「ハボック、私の勝ちだな この勝負」
「へ?引き分けでしょ?結局が勝ったんだし。」
その言葉にロイは一層笑みを深める。
「先に倒れたのはお前だ」
「え・・・?」

「だな?。」
「え・・・?うん。確かハボの方が先に倒れたよ」
「!!」

ショックを受けているハボックを無視し、ロイは立ち上がっての手を取る。
「ハボック、私にはホットコーヒーを頼む。は何だ?」
「えっと・・・じゃぁカフェオレ!温かいのね。
・・・・ってハボ、大佐のまでおごるの?
大佐だって私に負けたんだから私の分は2人で出すんじゃない?」

しぶしぶ立ち上がったハボックだが、これを聞いて振り向く。
だがロイはきっぱりと言った。
との勝負と私達の勝負は別だぞハボック。」
「・・・・へいへい。わかってますよ〜。」
また自販機の方へ歩き出すハボック。

「勝負って?」
「何、負けた方が勝った方にコーヒーをおごると言う勝負をしていたのだよ。」

後ろからはこんな会話が聞こえて来る。
きっとこのあと2人でデートだろう。
たしかに大佐はかっこいいし女には理想と言える存在だろう。
だが、たらしでサボリ癖があって子供っぽいロイが女性と長く付き合えるだろうか?
現に今までの恋人と思しき女性達とは長く続いていない。
せいぜい二ヶ月ほどで別れていく。

でも だったら・・・・

今まで告白やデートの誘いをするのは大抵女性からだった。
だが大佐はのことを好きだと言う。
も大佐のことを嫌いではないようだし・・・・・・・

はぁ と深いため息をつき、考えるのをやめた。
自販機にコインを入れてコーヒーのボタンとカフェオレのボタンを押す。

「・・・・何やってんのかな 俺。」

出て来た温かい缶を取りながら ぼそりとつぶやいた。




「うぁ〜〜・・・・温か〜い・・・・」
まだ開けていない缶を額につけながらつぶやく。
缶から伝わる温かさが心地良い。
「たしかに少し冷えたな。こういう飲み物は体が温まって良い。」
大佐もごきげんで言うが、ハボックだけはあまり楽しそうではない。

「どうしたの?ハボ。」
「別に・・・」
私が聞くとハボックはぶっきらぼうに返事をする。
「あ そういやハボは何も飲んでないね。なんで?」
「・・・・。」
「あっ!お金足りなかったとか!?」
「あのなぁ・・・俺、どんだけ貧乏なんだよ。」

・・・やっぱなんかおかしい。
ツッコミに勢いがない!!

「・・・私のカフェオレ飲む?」
「んなぁ!!?」
!!?」



コーヒーを吹き出して咳き込む大佐
ハボックはよろけて雪の上に尻餅をつく。
・・・・何大佐まで反応してんの。
ていうかなんでそんなびっくりするんですか
「だって寒いし・・・なんか飲んだ方があったまるよ」

そういってカフェオレを差し出すけど
ハボックは「あほか!?」とか言うし大佐は「!?気を確かに持て!!」とか叫ぶし。
なんだってのさ。

!ハボックに飲ますくらいなら私が飲む!かせ!!」
「あんたもなに言ってんだーー!!」


カフェオレを飲みたがる大佐をハボックが止める。
そして数分のにらみ合いの後、さすがに疲れたのか2人とも顔をそらした。
「さて、。そろそろ行こうか?」
「へっ?どこに?」
「近所においしいパスタの店があるのだよ。
そこで軽く何か食べた後ちょっとぶらぶらしないか?」
上機嫌な大佐。ハボは大佐を睨みつけているが止める気配はない。

「・・・・ハボは?」
「俺は・・・えっと・・・」
「ハボックはこの後と会うそうだ。」

大佐の言葉に嫌そうにうなずくハッボック。
・・・・なんで嫌そうなんだろ。さんが大佐を好きだから?
「そうなんだ。でも大佐はいかなくていいの?」
「何、ハボックが一人でいくというのでな。」
「・・・・・そうなの?」

ハボックの方を向いて聞くとハボックは小さく「あぁ・・・」と答えた。
「えっとさ、顔色悪いよ?・・・無理しないでね。」
言うと、ハボックは少し嬉しそうな顔をして頷いた。

「・・・さぁ、。」
「うん。・・・そのパスタの店ってどの辺?」
「五分ほど歩けば着く。」

大佐と会話をしながら歩く。
ふりかえるとハボックが反対方向に歩いていくのが見えた。

・・・・・・あ

「雪だ・・・・」

空から白く輝く雪が ゆっくりと舞い降りて来た。






ドサリ
その辺にコートを脱ぎ捨ててベットに倒れ込む。

「・・・・・腹減った」
・・・あんだけ動けば腹もすくわな。
棚からカップ麺をとりだしてお湯を注ぐ。

三分も待たずにかき回して麺をすする。
・・・・きったねぇ部屋。
掃除なんかたいしてやらないしな。

・・・・はどうなったのだろうか。
多分待ち合わせ場所で憤慨しながら待っているだろう。
意外に短気だから・・・・いや、こんだけまたせれば誰でも怒るか。

中尉、今頃怒ってるだろうな。
大佐が抜け出したと思ってるんだろう。
次ぎ会ったら間違いなく射的の的にされるぞ大佐。

・・・・そして
は本当のとこ、大佐をどう思っているのだろうか。
・・・・・多分好きだ。
よく大佐と話しては笑ってるし、結構仲がいい。

俺はどうだろう?を・・・・

はっきり言って好きだと思う。
話してると楽しいし、かわいいと思うし、一緒に居たいとかも思う。
でもは結構もてる。本人自覚ないけど。
どうせ俺はの中で『友達』の一人だし
恋人とか そういうのは無駄だと思ってる。
だから他の女と付き合ってごまかそうとしてみたりしたんだけど

「・・・・・・駄目なんだよなぁ」
スープをすすりながら呟く。

やっぱ思い出しちまう。の事。

「・・・・・・はぁ」
空になったカップを投げ捨ててベットに寝転ぶ

「本当 なにやってんだろ。俺」
うじうじうじうじ。女かっての俺は。
でもなぁ どうすりゃいいってんだよ

・・・このまま寝ちまうか

こういうときは寝てすっきりするのが一番だ。
が、目をつぶって寝返りを打ったところで

リリリリリリリリリ

・・・・電話だ。
誰からだろう?・・・・きっと母親だ。
まったくこういうときに電話をかけないでほしいもんだ。
「あーもう。めんどくせ・・・・」
だがブツブツ言っても電話のベルはやまないわけで・・・

リリリリリリリリリリリリリ

「あー ハイハイハイハイ!!!」
床に落ちているゴミやら脱ぎ散らかした服やらを蹴散らして電話をとる。
「ハイ、ハボックですけど」
ぶすっとして決まり文句を言う。
だがその返事は思いもよらない人からだった。

『・・・・あっ!もしもし?ハボ?』
「!! !」
今、彼女のことを考えていただけに顔が赤くなる。

『へっへっへー。びっくりした?あ、今レストランの電話からかけてるんだけど
イカスミスパゲティー食べたんだ!もう絶品でさ』
・・・大佐はいいのか?」
『ん?大佐なら席で待たせてるけど
・・・・ってもしかして今かけちゃいけなかったかな?』
すこし申し訳なさそうな声。
んな声だすなって・・・・・

「いや、そうじゃないけど・・・どうして俺が家に帰ってるってわかったんだ?」
『大佐と「今ハボどうしてるかな」みたいなこと話してたんだけどさ
大佐が「家でふて寝してるんじゃないかー」って。
で、気になって電話してみたんだけど・・・・
何?もしかしてふられた?彼女口説くの失敗?』

とたんにの声が楽しげになる。
俺は顔をしかめて返事を返した。
「あーそうだよ!
で?なんだ?用件はそれだけか?」
『・・・・・・・・』
「? どうした?」
『・・・・えーと、それだけ です。』
「・・・あのなぁ・・・・・」
俺をおちょくるためだけに電話したのか・・・
そしてーー推測だがーー俺が怒ったから言い難くなったんだろう。

『えーと、怒らせちゃった?ゴメン。』
やっぱりか。
「・・・別にいいけど・・・・」
『そ。 じゃきるけど・・・』
「おー。」
ぶっきらぼうに返事をして電話を切ろうと受話器を置くーー・・・
否、置こうとした。置く手を止めて、急いで受話器を口元まで持っていく。




『ちょっっ!!ちょっと待った!!』
「どわ!!?」
向こうが電話を切るのをまっていたらいきなり大音量でハボックの声が響く。
少し受話器を遠ざけ返事をする。
「なに!?」
『ああっ 悪い。いや、その・・・あれがだなぁ・・・』
しどろもどろしたハボックの声。
何が言いたいんだ!?
「あれじゃわかんないっ!アレリーマンかおのれは!!」
『いや、スマン・・・ってなんだそりゃ!?』
「・・・でさ、何か用でもあったの?」
『・・・・・・・・・・・・・・。』

何故無言!?

「もしもぉーーし」
『いや・・あのなぁ・・・、お前大佐のことどう思ってんだ!?』
台詞の最後のあたりが大きくなる。
何か焦ってるみたいだけど・・・・・
「無能」
『いや、そうじゃなくてだなぁ・・・・』
汗をかくハボックの姿がふと 目に浮かぶ。
「じゃ、たらし。
『いやそうでもなくて・・・』
「馬鹿、阿呆、子供っぽい、すぐサボる
錬金術師、指パッチン、童顔、オヤヂ、三十路」

『そういうのじゃなくてだな・・・・・・』
「じゃ、なにさ。他に・・・・ええっと・・・

そうだね、ちょっとカッコイイって思う時もあるし
優しいとこもあるよね。」
『!!  ・・・・そうか・・・』
「で、結局なんなの?
大佐のことでなんかあった?」
時計をちらりと見ながら問いかける。
こりゃチップ追加だな。
『いや・・・・あーもう。・・・・じゃ、言うぞ!?』
「? どうぞ?」

『お前大佐のこと好きなのか?』



え?(思考停止中)




「ただ今ご発言なさった言葉の意味が理解できません。
もう一度ご自分の頭と精神状態をお確かめになってご発言くださいっ!」

『俺の精神が異常だと言いたいのか!?
いや・・・・だからお前が大佐のことをだなぁ・・・・』
「すすすすす好きじゃないよぉおおっ!!?
あれだけ欠点上げといて好きもくそもあるかっつうの!!」


おどろきのあまり口がうまく廻らない。早口になる。
きっと顔は真っ赤だろう。
ていうか
「ハボックあんた頭どうかした!?」
『なんでそうなるんだよ!!
・・・・お前ほんっとーに、大佐のこと・・・・好きじゃないのな?』
「しつけぇ!!
だって・・そんな好きとかっ人に対して思ったことっないしっ!」
『そうか・・・・』
あ ほっとした声。
どうしたんだろう。今日はハボ、いつもと違う・・・?

「あ じゃぁっ!ハボックは!?」
『は?』
「ハボは好きな人いないの!?」
『え? 俺?・・・・・・・・』
また 無言。
だけど なんだろ。
いそうな感じ。
ハボック・・・やっぱさんかな?

なんだろ この 間

聞かなきゃ良かった

そう思ってる。
なんでだろ? 今、すごい後悔してる。

『あのな』
「ごめんやっぱいい!!」
『は?』


自分のバカーー!!
なに断ってんのさ
すごい怪しいじゃん
なんで急に態度かえたんだみたいなさ!?
あぁああああどうしようどうしようどうしようっ!?

・・・はっ!
よく考えればそんな慌てる必要ないじゃん
つーかなんで断ったんだ自分?
ハボの弱みとか握れるチャンスだったかも・・・

だけど

チャンス だけ ど

『もしもし・・・・?』
「えっ!?あっ!?うん!!なに?」
『いや、どうした?』
「へっ? なにが?」
『いきなり黙ったし俺のすーー・・・好きな人誰かって
興味津々だったのに急に断ったし。』
あ、やっぱ不自然だったか

「え・・・・だってなんかいやじゃん」
『なんで?』
なんで・・・って
「どっどうせふられるんでしょ!?だったら聞いても無駄っていうか・・
それでっハボが可哀想じゃないっ!」
『あのな・・・・』
呆れてる・・・怒ったかな?
「・・・・・・・・だって・・・・・」

あ 何 情けない声だしてんだ自分
やばいやばいやばい だめだだめだだめだだめだ
すごい泣きそう
なんで?

『ま 確かにそうだけどよ』
あ 怒ってない
むしろ納得してる?
『・・・じゃー、俺いまからふられます。』
「は? え?

なにまさかいまから告白!?ちょとまって誰よそれ
誰に告白するの?私の知ってる人!?
あっふられるってことはさんじゃないよねもうふられてるし
じゃあ誰!?」

『落ち着け!
さっきは聞かないっつったくせにどっちなんだよ ったく!』



またやっちゃった
どうしよ さっきからなんかあせってるよ

「いや・・・その・・・誰?」
『あぁ? 誰って・・・』



「ってまた沈黙!?それカンベン!長くなっちゃうし!」
『うぉわ!??  あー・・・・えっとなぁ
・・・じゃ、言うぞ!?』
「・・・・・・・・・・・・・どうぞ」
『返事遅!』
「うるさいっ!はよ言え!!」
あーもう女は度胸だッ!
いや度胸とか以前になんでこんな緊張せなあかんねん
ただハボの好きな人聞くだけじゃねぇべか!
って口調おかしくなってる!
落ち着けーーってもう落ち着いてるよ!
あぁもう大パニック!

『は。』
「は!?あっごめん聞いてなかった
え?何?『ハ』さん?」
『違うって!
――ファミリーネームは
・・・聞いてろよなー』
「え・・・っと・・・?」

軍部に私以外でっていた?
まさか家族?
いやそりゃないか
「わかんないよ!
もしかして私が知らない人?
あーもういいやっ!ファーストネームは?」

『あぁ〜?・・・・。』
あ 黙った
「なに!?おしえてよ!」
教えてよ
その人の名前

なんか もう最後まで聞かないと 気が済まないっていうか

「〜〜〜〜っはよ言えやぁっ!!!」
『うぉっ!?
すっスマン!?・・・・・じゃぁ、言うぞ!』
「・・・・あーもう『言うぞ〜』とか言わないでいいからっ!」
どうしよ すごい 泣きそう
『ファミリーネームは』
こらえろ自分
『ファミリーネムはなっ!』
早よ言えハボ!

あぁ 前が霞んできちゃったじゃん

!!』
「何!?ファミリーネームは!?」
『・・・・・いやだから
「なに!!?」

「はい!!?」
『だぁかぁらぁ!ファミリーネームがだって!!』



うん?(またか)




「ただ今ご発言なさった言葉の意味が理解できま『その手はもうダメ!!』

私の台詞をハボが遮る
え だって だって

って・・・・・

あっ そっか 
「なんだ・・・同姓同名?その人どんな人?」
私かと思ったよ
そう、つけたしながら笑う
ちょっと泣いちゃったけど
大丈夫 ばれてない・・・よね
『だから・・・・
今俺と電話してるお前だよ』
「なにが?」
『おまえは! 話を! 聞け!!』
「耳痛い耳いたいっ!!だから何が私なのさ!」
『・・・俺の そのほら ほれてるヤツ。』
さん?」
『そう!』
「ってどういう人?」

ドテッ
・・・・今、転んだような音が聞こえたけど・・・


あれ?

「もしもし?ハボそれって もしかし『だから!!その俺が好きなヤツがお前なの!!

俺がお前を好きなんだって!!』

ガチャン

「あ・・・・・・・」
きっちゃった 電話
えぇ?だって好きって

『俺がお前を好きなんだって』

頭の中でリピートされる言葉。
そんな
だって
こんな
ドラマみたいに

顔が真っ赤になる
涙が?をつたった

なんだよ・・・・
私ばっかり勘違いしてたんじゃん・・・・・

店員にチップを渡してすばやくその場を離れた
どうしよ・・・・
ちょっと嬉しいかも

ふと ここで足を止める。

あ でも電話きっちゃったよ

えぇええこれってふっちゃったみたいじゃないか!
どうしよ言わなきゃっ!

・・・・・何を?

“私も”

す き っ て ?
無理無理無理!!
面と向かって言えるかっつの
でも電話ってのもまたきっちゃいそうだしっ!

あ  そうだ

ちょっとはずかしいけど・・・・・

私は足を速めて大佐をまたせている席へ向かった

「あぁ、お帰り」
私の姿を確認した大佐が言う。
「あの 大佐ごめんなさい長電話しちゃって」
「いや、別にそれほど待ってない。」
「それで本当に悪いんですけど用事が・・・
出来ちゃったんですけど・・・・・」
あははーーって笑いながら言うけど
ちょっと 悪い よね?

「・・・いや、別にかまわない。」
「本当ですか!?よかったー。本当ごめんなさいーっ」
「で?」
「へ?」
大佐が私の腕を掴む。
「次はいつ会えるのかね?」

「あ いやー・・・まだわかんない・・・かな?」
「・・・・そうか」
あっ ちょっと悲しそう。
でも急いでるしね
財布からスパゲティーの代金をとりだし、机にのせる。
「これ料金です。じゃ、本っ当にごめんなさい!
それじゃさよならっ!!」
早口で言ってその場をはなれる。
大佐が後ろで何か言ってたっぽいけど無視!!

「さてーー・・・・」
私は店を出て『ペンキ屋』をさがした




「あーーーーーーー」
きれちまったか・・・電話・・・
「これってやっぱ・・・ふられた?」
口に出すとよけいに虚しい。
だが
ショックなんだろうか?
それどころか言ってスッキリした気がする
そうだよ・・・駄目で元々だったじゃないか
ベットに寝転び今度こそ寝ようとする
明日 はどんな顔して俺を見るかな?

そんなことを考えながらまぶたを閉じていくーーー


ゴバン
「うぉ!?」


ベットの近くにある窓ーー
このアパートの裏庭がよく見える、窓の一つから石が当たったような音がした
見るとなにか白い物がくっついている
雪だ
「・・・・子供のいたずらか?」
どうやら周りは俺が寝るのをとことん邪魔したいらしい。
めんどくさいしほっときゃいいか
やっぱりコーヒーでも飲もうか と立ち上がったとき

バシン
もう一発
しかもこんどは黒い液体が雪に混じっている
これは・・・
「黒ペンキ?」
と、雪が落ちてペンキだけがガラスに付着した状態になる
・・・・窓について、とれなくなったらどうするんだ

さすがに腹がたったハボックは勢い良く窓を開けて叫んだ
「こらぁっ!!誰だ人ん家に雪玉ーーー」
だがこの言葉は最後まで発せられなかった。
裏庭には真っ白な雪の上に黒いペンキで大きくーー

『I Love You』

そして文字の側にはペンキをひっくりかえした後と
それをふんずけたのか足跡が塀の方へと続いていた。
恐らくこれを書いた犯人は塀を乗り越え、逃走したのだ。
耳を澄ませば『ザッザッザッザ・・・』という足音が聞こえてくる。
確信は無い
自意識過剰かもしれない
だがなんとなく
なんとなくだが

・・・?」

そんな気がしてならない。

ふと、口から笑みが漏れた。
笑い出したら止まらなくなった
「へったくそな字・・・・」
それだけ呟いて部屋の中へと向きを変えた


「・・・まさかハボックが好きだとはな」
ロイはハボックのアパートの裏庭で
彼女が書いた字をみながら苦笑する。
だが、たとえ両思い出も諦めはしない
「それがどうした 略奪愛」
この言葉を編み出した人物に心中で拍手を送りながらそっとその場をはなれた

その後ーーロイに邪魔をされながらもーー
2人が笑顔で手をつなぎ、軍部でも有名な中になったのは
少し 先の話

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作者:FROG
夢幻世界管理人、幻作様のみ修正、お持ち帰り、その他諸々可能な文章です。

おまけ↓

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、そういやなんであのとき雪合戦さそったんだ?」
「え?いや、雪合戦で大佐への日頃の恨みを晴らしてもらおうかと。
それでスッキリしたらいいんじゃないかなーとか思ってさ!!」
・・・・・嬉しいけど
あーいう誘い方は止めてくれないか?
すげぇ冷たかったんだぞあの雪!!」
「うっ!!・・・あのねぇ!そういうのは黙ってるもんよ!
それか、『君への愛の熱さですぐに温かくなったけどねHAHAHAHAHA』とかーー」
「ちょっとまて!本当に俺にそれ言ってほしいのか!?」
「・・・・・・・・・・やっぱやめて。キモイ」
「だろ」
「・・ふられてがっくりきてるの見てて腹立ったし。なんかさぁー」
「・・・・・・。(ヤキモチ?)」

今日も平和なこの2人。