雪が降り積もるこの街の景色を、いつまで見ていられるのだろうか。

――君がいる、この景色を。






「おまたせ!」
 彼女の声に、空を向いていた顔を横に向けた。

「ごめん、待ったよね? 寒かった?」
「別に。……随分と沢山買ったんだな」
「限定アイス発見しちゃったんだよ!
滅多に買えないからもう感激でさ〜」
「この寒いのにアイスか?」
「オシャレじゃん」

 俺の居た世界には、冬にアイスを食べないのか、と聞かれて
普通はそうだろう と答えた。

「冬に暖房の効いた部屋で食べるアイス…最高の贅沢じゃない!」
「アイスが食いたくなるまで暖房かけなきゃいいだろ」
 そう言うと、彼女は面白くなさそうな顔をして、歩き出した。
俺もそれに続く。

 会話も無く、少々暇になったので、周りの景色を見渡した。
いつ帰るか解らないのだ。
この景色を覚えておきたい、という気もあった。

 …が、目にうつるのは
カップル、カップル、またカップル。

街中でいちゃついて、見ているこっちが恥ずかしくなる。
 と、
「あ、あの子達カップルかな? 可愛い〜〜」
という声が耳に入った。
気になって振り向けば、見覚えの無い男女がこちらをみているではないか。
「こっちみた!」
「やっぱきこえてたんだよ」
「ごめんね〜」

 そんな会話をした後、、そのカップルは人混みにまぎれて見えなくなった。
慌てて下を向いて、赤くなった顔を隠す。
こんな雰囲気の街を歩くから、彼女と恋人同士に見えたのだろう。
 前々から彼女にはそういう感情を抱いていたので、嬉し恥ずかし と言った所か。

 彼女をちらりと見たが、ただ前を歩いていて今の声を聞いた様子は無い。
なんとなく落ち込みながら、先程からの疑問を改めて考える。
 なんだって、彼女はいきなり「買い物に行きたい」などと言い出したのだろうか。
食料の買い足しにしては早すぎる。まだ冷蔵庫はいっぱいだ。
服はこの間買っていたではないか。
女というものは、その辺りがよくわからない。
 そういえば、ウインリィも意味も無く買い物に行きたがっていた。
歩き回るのは疲れたとわめくくせに、何故買い物は平気なのだ。
 嗚呼、その話をしてやったら彼女は楽しそうに笑っていたなぁ。
その顔を見て、もっと話してやりたいと、こちらまで楽しくなったものだ。
一番楽しそうだったのはなんの話だったか。
そうだ、アルと近所の林で遭難しかけたときの話だった。
あのとき、デンが自分たちを見つけてくれたのだ。

 …向こうの事を思い出し、ふとした不安に襲われる。

『いつまで、こちらにいられるのだろう』

 いきなりこちらの世界にやってきて、偶然居合わせた彼女の元へ転がり込んだ。
やって来たのもいきなりで、きっと帰るのもいきなりだ。

 幾度彼女に、この想いを打ち明けようと思ったか。
だが、いつまでいられるかわからないのだ。
告白した翌日、元の世界へ帰っていたりしたら冗談ではない。
それに、彼女を困らせるかもしれない。
ぎくしゃくした関係でいるのが一番怖かった。

 一応元の世界に帰る方法を探しているものの、
はっきり言えば彼女のいない世界には行きたくない。
だが、そうも言っていられない。
自分がこちらに居る事とで彼女も色々な事件に巻込まれている。
もうこれ以上、被害をだしたくないし、迷惑もかけたくなかった。

 自分が居なくなったら、彼女はどう思うだろう?
最初はきっと泣くだろう。
でも、すぐに日常が戻って来て、きっと俺の事も忘れる。

――実を言うと、一番怖いのはそれかもしれない

帰りたくない、いつも一緒に居たい、忘れられたく ない。

 そんなこと、思っちゃいけない。
俺は、ポケットの中で強く左手を握った





 ちらりとうしろを向いて、ため息をついた。
やはりエドは退屈そうだ。
エドと出かけたくて街へと出て来たものの、あまり会話も無く帰宅することになるとは。
やっぱり迷惑だったろうか。
いいや、きっと家にいても暇だったに違いない。
私の家の錬金術関係の本も読み尽くしただろう。

 図書館にいっても、それ関係の本は中々見当たらない。
うむむ、骨董品屋にでも行ってみようか。
エドがこちらの世界に来たきっかけも、古い書物だったと言う。
そういうものがありそうな店に足を運べば、なにかあるのではないだろうか。
エドが帰る為の、手がかりが 

 …元の世界の話をすると、エドは本当に楽しそうだ。
やっぱり知らない世界よりも自身が居た、仲の良い友人と会いたいに違いない。
エドからはあまり話さない。きっと私に遠慮しているのだろう。
だから私はよくエドに故郷の話を聞く。
鋼の錬金術師の世界は、一ファンの私としてはとても気になる話でもあるから。

 けれども、最近は聞きたくない。
楽しそうに話されると、早く帰りたい、そう言っているように聞こえてしまうのだ。
もう、私の所にはいたくないと。

 エドには帰ってほしくない。
そう言ったら、彼は困るだろう。
 それに、この世界の住人ではない者が長居したらなにかしら影響が出るに違いないのだ。
非現実的かもしれないが、エドの居た世界が壊れてしまうかもしれない。
けれども漫画の主人公が現実世界にやって来るという、非現実的の中の非現実的な事が起こってしまったのだ。
世界が壊れる、という漫画的なことだって、あってもおかしくない。

 向こうの人達にも心配をかけてしまうだろう。
早く帰ってしまった方が良いのだ。早く、元通りになった方が

 けれど、たとえ世界が壊れようと、私はエドと居たい
絶対に帰ってほしくない

そんなこと、思っちゃいけないのに。
なんだか今にも泣き出してしまいそうになって、動かしていた足を止めた。
 どうしたのかとエドが聞いてくる。
答えない私の顔を、エドは心配そうに覗き込んで来た。

「…えいっ!」
かけ声と共に、エドの左手が入っているコートのポケットに手を突っ込む。
うわっ、というエドの短い悲鳴が聞こえた。
「なにすんだよ!」
「だって寒くなったんだもん」
「自分のポケットに手、入れろよ」
「エドのが温まってそう」
「…あーもう!!」
 
 観念したようで、エドは私と歩幅を合わせて歩き始めた。
 しかも、ポケットの中で私の手を握って来たではないか。

 さすがに私も赤くなる。
エドといえば、私より真っ赤で、それを隠すようにぷいとあちらを向いてしまった

「…エドの手、温かいね」
「お前のは冷てぇけど」
「じゃ、放せば良いじゃん。冷たいの嫌じゃないの?」
「誰が放すか」

 そんなエドが可愛くて、笑ったら怒られた。

いつまでも、こうしていたい




 けれども、私は気持ちを打ち明けない

 俺は、彼女にこの気持ちを伝えない


――二人は、同じ『想い』で 違う『道』を見続ける










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あああああお、遅いーー!
今、今四月!雪っていうか桜の舞う季節です。
春ですよ!エイプリルフールも終わった四月です!
お そ す ぎ る 。

本当にごめんなさい。無駄に長いですね。

なんだか切ない系ですね。
こんなん書いちゃいましたが。(何

大丈夫きっと最後はハッピーENDです。
そして最後の方には私の願望が。
ポケットの中で手つなぎって さいこう!ですよね(きくな)
私の萌えポインツです。
嗚呼ヒロインはエドと身長があわなくてポケットから手が出ちゃうと良いよ
そんでエドが頑張るってかわいくないですか?(だからきくなよ)

PCから行方不明になったんで急いで書き上げました。
それではこれにて失礼いたします。
なんか毎度毎度テンション妙でごめんなさいーー


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甘い…!!素敵に甘くて見てるこっちが照れちゃいますぜげへへへ(コラ
二人のすれ違い具合がもう何かこう、もどかしくて甘あああっ
素敵な文章ありがとうございましたっ!!
感謝感謝っ!!

by.幻作