エド、アル、大佐の3人が来てから2週間。

 12月に入ったばかり。

 冬休みも、近いような遠いような、そんな時。

 私は、部屋に篭もって必死になっていた―――。






stigmata・EX
番外・ドシュラバ。
〜candidate〜






「ぬぅぉぉあぁぁぁー!!!!!」

 変態のことやらエド達に対する萌えのせいですっかり忘れてた。
 今週の木曜と金曜に期末テストがあることを!!!

 そして今日は水曜日。
 テスト勉強する時間ほとんどねぇじゃん。

 今回の成績、高校に行くんだよねぇ?
 しまった………。
 もっと早くに気付くべきだった。

 テスト週間なので比較的早く学校から帰ってこれたものの、やっぱり時間は少ない。
 問題集を開きながら溜め息をつく。

 あ、ちなみにさっきの叫びは分からない問題に突き当たっただけ。
 ………だけって、だめじゃん私。
 などとノリツッコミかましていると。

『コンコン』
さんどうしたの?」

 ノックの音と、ドア越しに聞こえる声。

「アル?んー、いや、何でもないのー」
「でもさっきからずっとでしょ?」
「ちょっと数学分かんないだけー」
「数学?何で?」
「テストがあるのよ」
「そっか。数学だったら僕が教えてあげられるかもしれないね」
「ほんと!?入って入って!教えてー」
「分かった」

 よっしゃ、アルに教えてもらえる!!!(萌)
 鋼関係の本やらは引き出しにしまってあるから大丈夫よね!

 ドアを開け、ちょっと腰をかがめて「お邪魔しまーす」と言いながら私の部屋に入るアル。
 あぁ、背高いなぁ。
 2メートル20センチだし。

「こっちこっち」

 ベッドの上に寝転がった態勢のまま呼ぶ。

「勉強机でやらないの?」
「だってこっちの方が楽なんだもん。で、ここなんだけど」

 問題集の一箇所を指差す。
 アルはベッドに腰掛けながら、

「どこ?」

 問題集を覗き込んだ。

「……問題、読んでくれる?」
「あ、うん」

 アルは日本語読めないんだった。


 ***


 あれから、私が問題を読む→アルが教えてくれる→また聞く……を随分繰り返した。
 これだけ分からないところがあっていいのか受験生。

 つーかアルの教え方めっちゃうまい。
 分かりやすい。
 教師に向いてるのかも。
 しかも科学者なだけあってやっぱり数学は得意分野みたい。

 しかし広大なテストの範囲を全て見直した時には もう夜7時を回っていた。

「やばっ!晩ご飯 下ごしらえしか済んでない!!急いで作らないと」
「もうこんな時間?結構かかったね」
「範囲が広すぎるのよね、3年生って。
アル、付き合ってくれてありがとね。やること色々あったでしょ?」
「大丈夫。泊めてもらってるお礼だよ」
「……私にはあなたたちがいるだけでそれがお礼になってるんだけどね」

 萌えさせてもらってるし。

「え?」
「ううん、何でもないよ。じゃ、作ってくるねー」
「?うん」

 ぱたぱたと部屋を出ていく

「……部屋に戻ろうかな」

 何となく部屋を出るタイミングをなくしていたアルフォンスは、ようやく立ち上がった。





「遅かったな。奇声の正体つきとめるだけじゃなかったのか?」

 部屋に入って数秒。
 本を読んでいたエドワードはやっと弟の存在に気付いた。

「勉強教えてたんだ。テストが近いんだって」
「はーん。……そーいや俺らも学校行ってた頃はあったよなぁ、テスト」
「そうだね」

 そんなに昔のことではない筈なのに、今ではなぜか遠くに感じる。
 世界が違うから、というのもあるが、もっと違う何かがそうさせているような気がした。

「兄さん、テスト中に錬金術の勉強して先生に怒られたことあったよね」
「うるせぇや。お前だって答案用紙の隅に構築式落書きして怒られたくせに」
「あはは、そんなこともあったっけ」

 学校の勉強そっちのけで色々やっていたその頃。
 やろうとしていることの罪の重さなど知りもせずに。

「…なつかしいなぁ」
「………だな」

 暖かい、過去。
 体を取り戻すために色々なものを捨ててきたが、思い出まで捨てるつもりはない。
 前に歩けるのなら、それでいい。

「絶対、元の体に戻ろうね」
「ああ」

 強く、頷いた。


 ***


 夕食を済ませて後片付けを終わらせたら、私はすぐに自分の部屋に直行。
 勉強再開。

「さてと、数学は分かるようになったし、あとは英語かな?」

 問題集を開く。



―――数分後。

「ぬがああぁ!!!」

 再度奇声発生。
 発信源:
 どっかのジャングルにいる食料奪われた獣の様な叫び方である。

 何で英語なんか勉強せなあかんのぢゃ!!!
 わたしゃ生粋の日本人じゃーい!!!!!


 そんなことを心の中でぶちまけつつも、取り敢えずやらなければならないものは仕方がない。
 またアルに頼るのもちょっと悪いし。
 でもはっきり言って数学より苦手なんだよね。
 困ったなぁ………。

 などと考えていると。


『コンコン』
君?帰ってから変だがどうかしたのかね?」

 あ、大佐。
 ていうか帰ってからこの調子だってこと知ってたんかい。
 もうちょっと早めに来てくれてたらアルと大佐で逆ハーレム完成してたってのに。
 エドも来てくれてたら更にグッド。

「大佐、勉強教えて下さーい」

 ドアを開けて大佐を招き入れた。

「私が分かる範囲でいいなら」
「はい。……っていうか分からない筈はないんですけどね」
「?」

 だって大佐達が普段使ってた文字だし。

 さっきの様にベッドに寝転がって問題集を開く私だった。





「………大佐」
「何だね?」

 問題集から顔を上げて私を見る大佐。
 その顔の位置は妙に近い。

「ちゃんと教えてくれるのは嬉しいんですけど、何もこんなにぴったりくっつかなくたっていいのでは………」

 そう、大佐は私の隣に寝転がって勉強を教えていた。
 肩が触れるほどにくっついているので、互いの一挙一動が全て分かる。
 微妙に動いても全て伝わる。
 そんな距離。

「この方が楽だと言ったのは君だったはずだが」
「そうですけど……」

 大佐に聞かれてそう答えたのは本当なんだけど、大佐もアルと同じように座ってくると思ってたし。

「照れているのかね?」
「んえっと………」

 照れてるっていうか寧ろ萌えゲージがMAXになりそうでヤヴァいのよ。
 これだけ密着してると私の心臓音は「ドキンバクン」どころか「ドッコンドッコン」だしね。(意味不明)

 ああもう髪の匂いすら分かるこの距離でこの腐女子が萌えずにいられようか!!!
 こうしてると大人の男って感じが……………もう萌え過ぎで死ぬかもしれません私。

「つ、次の問題行ってもいいですか?」

 何とかこのドス黒いオーラをごまかさないと……。

 あ、今「クスッ」て笑った!!
 何!?何に対して笑ったの!!?

「………どの問題だね?」
「あ、これです」

 少々気になるが、取り敢えず今優先すべきは勉強。
 テストは明日からなのだ。

 ………と、その時。

『コンコン』
ー」

 あ、エドだ。
 どうしたんだろう?
 さっきの願いが届いたのだろーか。
 いやいや、どうせなら3人揃えばいいのに。(欲張り)

「どうしたの?」
 ドアを開ける。
 エドは部屋の中を覗き込み、

「あぁーっ!!やっぱりいたな、大佐!!!の部屋で何やってんだよ!!」
「何って、私は勉強を教えていただけだが?」
嘘つけ!!じゃあ何でベッドの上にいるんだこのタラシっ!!
誰がタラシだ。変なことなどしていないぞ」

 いやいや、密着してる時点でどうよ?
 私的には嬉しかったけどね。

「絶対にをタラし込もうとしてたな!!
は自分の半分以下の年齢だろ!このロリコンめ!!」
「年齢など関係ないと思うがね。それに君は外見的にも大人っぽいから問題ないだろう」
何がだ!!この変態!!」

 うわぁ、なんか妙なことになってきてるよ。
 ていうか内容が痴話ゲンカみたい。
 わぁ、ヤキモチやいて大佐と痴話ゲンカ!?
 生ロイエドだー!!!(違)

「どうしたの?また凄いことになってるみたいだけど」

 あ、エドの後ろにアル出現。

「大佐がをタラし込もうとしてたんだ!!」
「違うと言っているだろう」

「……さっきからこの調子なのよ」
「あーぁ………。この2人はいつもこうなんだ。ごめん、勉強の邪魔だね」
「んー、ある意味楽しかったけどね」
「?」

 小首を傾げるアル。
 かわいーなぁv

「お湯張りましたからどっちかお風呂に入って下さい」

 アルが2人に向かってそう言った。
 私を対象外として言っているのは、どっちかをお風呂に入れてケンカを止めようとしてのことだろう。

 …ケンカが始まってしばらくしてから駆け付けたのはお風呂のお湯を止めに言ってたからだったのか。

「大佐が行け!」
「仮にも上官に向かって『行け』とは何だ」
「うるせぇ!!」

 あーあ、また始まっちまった。

「いいよ、私が行ってくる。
勉強詰めで脳みそイカレそうだったからちょっとリフレッシュタイムってことで」

 は、タンスからパジャマやらを取り出してさっさと部屋を出ていった。

「………」
「………」

 騒ぎの的がいなくなり、2人のケンカは一気に鎮火。
 それどころか無言になった。

「兄さん、部屋に戻ろうよ」
「……ああ。大佐も戻れよ」
「分かっている」


 そして部屋に帰る途中。

「それにしてもあんなにムキになるとは、君に気があるのだろう、鋼の」
「別にそんなんじゃねーよ。ただ、大佐に引っ掛けられたらかわいそうだからな」
「ほほう、それはどういう意味だね?」
「そのまんまだよ。大佐女癖悪ぃからなー」

「兄さん、それくらいでやめときなよ」
「そうだぞ、鋼の」
「大佐もです。」
「……………」

 すっかり諌め役になっているアルフォンスに言われ、2人とも黙る。

 部屋の前に着いて、3人はそれぞれの部屋に入っていった。





 私が部屋に戻った頃には、中には誰もいなかった。
 何で?
 もうちょっと痴話ゲンカが聞きたくて急いで戻ってきたっていうのに。

 ってか、1人で英語の勉強するのは難しい。
 でもわざわざ呼びに行くのも何だか悪いし。

 仕方ない。
 腹くくってやるっきゃないか。
 明日・明後日のテストのために……………!!!












 そして無事テストを終えました。
 英語は大佐に教わったところだけよくできてたんだけど、やっぱり他のところはダメでした。

 他の教科はまあまあ。
 取り敢えず番数は30番以内キープできました。
 よかったよかった。
 天才ばかりいるってのも便利ですな。(何だと)

 そして取り敢えずテストのドシュラバは幕を下ろした。





〜fin〜




<アトガキ。>

どうも、番外からコンニチハ。(何)
この話は10と11話の間…つまり「死神」と「クリスマス」の間の話になる訳ですね。
「死神」が11月末って設定で書いてましたから。
この話は12月始めだって冒頭でドリ主さんが言ってますし。

この話と「クリスマス」の間って結構開いてますよね。
まぁ、全部の日の出来事はさすがに書けませんから、仕方がないんでしょうけど……。
………何だか勿体無い。萌え場面もあっただろうに。(それかよ)
冬ネタ少ないのに………。(だから何)

それにしても私は何が書きたかったのだろう。(知るか)
受験勉強で修羅場状態になってるような話にしたかった筈なのに。
何だかやっぱり思い通りに書く才能は無いようですね。
でもアルとかロイとかの話にはなったの…かな?それも怪しい………。

いや、もともとそれは予定してなかったんですが。でも楽しかった。
エドも書きたかったなぁと思いつつ、出来なかったり。うーん、残念。

奪い合い逆ハーが書きたい………。(何)
でもまだエド達がドリ主を『好き』になってないし。
『大切な人』にはなっているんですけどね。(本編では)

………てなことで、次の番外をお楽しみに。(あるの?)

2005.3.5