あれから2日くらいエドは目を合わせてくれなかった。
私、なんかヤバいことしたかなぁ。
まぁ、例のバスタオル事件が原因なんだろうけど。
前に着替えを見られた時はいきなりで驚いたけど、今回はそれなりに覚悟してたから私的にはそんなにショックでも何でもなかったのよね。
でもバスタオル緩んだときはちょっとヤバかったかなー。
今はエドとも普通に接してるけど。
今日は何しようかな。
受験も終わっちゃったし、本当に何もやることないのよね。
買い溜めもしてある、掃除も昨日済ませた、あとは何かあったっけ?
………いや、本当に何もない。
暇がほしいと常々思っていたのだが、こうしていざ暇になってみると案外つまらないものである。
趣味っつっても何もないし、あーぁ、本当にヒマだ。
ヒマは嫌いなのに。
しょーがない、テレビでも見るか。
寝起きの私は、着替えてそのままリビングに直行した。
stigmata・20
策士?
〜stalker〜
リビングに入ると、皆が一斉にこっちを見た。
な、何事?私どこか変なのかしら?
いや、脳ミソは変だとバッチリ自覚してるけどねっ!(をい)
「やっと起きたのか…もう10時だぞ?」
エドが呆れた声で私に言った。
「皆が早いんじゃない?私何も予定がない日は大体こんなもんだし」
数か月一緒に過ごしてきたんだからそれは皆よく分かってるハズなんだけど。
「兄さんは早く渡したかったんだよ」
「は?」
渡したい?
私何か貰うものあったっけ?
よもや辞表!!?
エドの高い知能を買った他社が引き抜きに!?
………って、この家はいつ会社になったよ。
つか、エド会社員!!?
スーツ着たりとかして………!!
萌 エ 。
で、他社の社長が大佐。
うわぁ、ワイングラス転がしてそう……。
アルは社長秘書で、私は…………………庶務やってんの!!
ショ○ニだぁ〜v
「……あの、さん?」
訝しげな声で私を現実に引き戻すアル。
はっ!!ついついMyワールドに入り込んでいたわ……!!
「何?」
「(大丈夫なのかな……)今日はホワイトデーだから、バレンタインのお返ししようと思って」
「え?あ、もうそんな日?てか、そんなに気使わなくていいのに」
「いいから受け取っとけ」
エドが、そっぽ向きながら私に青い袋を押しつけた。
折角用意してくれたものだし、っつか寧ろこの人らにプレゼントされる物だったら萌え受け取らない訳ないんだけどね!!
ホワイトデーのお返しはバレンタインの告白のOKサインでもあるし。
……まぁ、私も萌えはチョコに含めて贈ったけどそれだけだし、応えられてもちょっと……。
いや、嬉しいんだけどあり得ないから。
けどこの3人に関しては本当にお返ししたいだけだろうから大丈夫だろう。
「ありがとv」
「別に何の意味もないからな!ただバレンタインに貰ったからそのお返しで……」
「わーかってるって。貰えるだけでも感謝感謝」
………………なぜだろう、この軽い喪失感。
は当然の事を言っただけなのだが、何か裏の意味が汲み取ってもらえてないというか……。
別に俺のプレゼントに裏の意味なんてないはずなんだが。
「エド?何悩んでんの?」
「あっ?いや、別に!?」
「鋼の、その慌て方は少々怪しいな」
「うるせー!!」
叫ぶエド。
うーん、どーしたんだろうね?
「あ、僕からはこれ」
「わーいvありがと!!」
アルからは少々大きめの箱を貰った。
何が入ってるんだろ。
前回(クリスマス+誕生日)はオルゴールだったよね。
「君、私からはこれを」
そう言って大佐が差し出してきたものは、手の平サイズの小さな箱。
ちょっと表面がほわほわしてて、よく鏡台の引き出しに入ってるような……………
……って、
「大佐、これ……」
「開けてみたまえ」
……よもや……………
何となく一抹の不安を覚えながら、そーっと開けてみると。
「………うそん」
箱の中には、キラキラと光り輝く青い宝石がちょこんと取っ付けられた見事な指輪が差し込まれていた。
いや、私のあげたお金で買ったんだろーけどね。
別にお金は掃いて捨てる程あるからいいけど、ホワイトデーに指輪ってどうよ…!?
「気に入ったかね?」
「え?えぇ、まぁ…。でも指輪って……」
「サイズも合うはずだが?」
「え?」
………。
私は、何となくその場の空気におされて指輪をはめてみた。
「キツいよ?」
奥まではまらない。
「いや、薬指にならはまるはずだ」
「………は?」
私は片眉を上げながら、人差し指から指輪を抜いて薬指に付け替えた。
……………………。
「……何でそんなにピッタリなんだよ?」
エドが、私の手を覗き込んで言った。
そう、指輪は見事にピッタリはまったのだった。
「それはもう私の情報網が物を言ったのだよ!!」
「情報網?」
アルが首を傾げた。
……なんか嫌ーな予感が……。
「強いて言うと、こっそり計ったのだ」
「こっそりっていつ!?っつか私計られた覚え無い!!!」
「それは企業秘密だ」
フッと笑って歯から光の微粒子飛ばす大佐。
企業ってナニ!!?
大佐……もしかして私は危険な情況に置かれているのでしょうか……。
今更ながら大佐の地位の凄さを実感したような気がします……。
いや、こんなことで実感するのもどうかと思うけどね。
「どうだね君、この機に乗じて私と婚や」
「あ、そーだ。アルとエドのも開けてみていい?」
「どうぞどうぞ」
「いいけど」
………ん?
今大佐何か言ったかな?
まいっか。
どうでもいいけど今私が気になるのはなぜかアルが大佐の方見て「ざまあみろ」的な感じに笑った気がした事。
気のせいだよね?
つか、アルがそんなことするはずがない。
……………と、思う。
私は取り敢えずそれらを無視って、まずエドからのプレゼントを開ける。
リボンを解いて中身を取り出してみる。
「あ、マシュマロ〜v」
中に入っていたのは、真っ白なマシュマロの詰まった小瓶だった。
「おいしそう!ありがとねエドv」
どっちかっていうとエドの方がおいしそうなんだけどね。(をい)
うあー、可愛いなぁ。
食べるの勿体無いや。
「じゃ次、アルのー」
私は大佐とエドから貰ったプレゼントをテーブルに置いて、アルから貰った箱を開けてみた。
中には銀色で直方体の物体が……………
「……あ、もしかして目覚まし時計!?」
「当たり。さん、今持ってるの古いからって買い替えたがってたけどいつも買うの忘れてるでしょ?だから僕が錬成してみたよ」
「作ったの!?凄い!!」
構造とかが分かってないと錬成なんてできないから、かなり研究したんだろうな。
これってばいろんな機能ついてるみたいだし、一体どんな方法で調べたんだろう。
……色々買ってきて分解した、とか?
うーん。
材料も必要だし、あり得るっつーかそれしかないでしょ。
まぁそれはいいとして、今から部屋に置いてこよっかな。
「じゃ、ここに置いたままにしとくのも何だし、部屋に置いてくるねー」
「行ってらっしゃい」
アルが軽く手を振った。
私はリビングを出て階段を上がる。
2階について、突き当たりを右に曲がる。
遠いんだか近いんだか……。
毎回行くのが面倒でしょうがないんだけど、家族全員が住んでた頃は他の部屋も全部埋まってたし、皆がいなくなってからは面倒だから部屋を移動しなかっただけだし。
今も面倒だから移動はしない。
尤も、階段がある方はエドとアルと大佐が使ってるから、移動するとすれば今私が使ってる部屋の正反対の位置まで移動しなきゃなんなくなるんだよね。
面倒っていうか私の力だけじゃ最早無理だし、手伝わすのも何だし。
てなことで、面倒な部屋のまま。
私は部屋のドアを開け、中に入る。
「………りつ、…%……………」
あ?なんか聞こえたよーな?
空耳?
それともこの歳でボケた!!?
それやだなぁ………。
私はテーブルの上にエドがくれたマシュマロを置き、ベッドの側に目覚まし時計を置いた。
指輪は……まぁ、嵌めたままにしておこうか。
結構綺麗だし。
大佐がくれたものだしね!!(ここ重要)
さて、ダイニングに行って朝食でも食べますか!!
……いや、今の時間ならブランチ?
起きるの遅かったしなぁ。
「ブランチの事を考えている確率、89%……」
……………………。
今、なんか……いや絶対聞こえた。
何?誰かいる訳!?
でもあの3人はリビングにいるはずだし……よもやドロ!!?
どこどこ!!?
警察呼ばなきゃ!!!
ていうかここにいたら危ねーよ!!
……で、振り返ってドアに走り寄ろうとしたところ。
「……………。」
「……………。」
「いやああぁ変態いぃっ!!!」
「!!?」
「なっ、何だ!!?」
「さん!?」
突如部屋の外から聞こえてきた叫び声に、驚く一同。
恐らく2階から響いているのだろう。
「上か!」
「行くぞっ」
「うん!!」
リビングにいた3人は、部屋を出て駆け出した。
少々叫び声の内容が気になるところだったが、それを差し引いても何かあったのは確かだ。
長めの階段を駆け上がり、の部屋に向かう。
「何でこんなに遠いんだよ!!」
「家に愚痴言っても仕方ないだろ兄さん……。」
「うるせー!!」
「鋼の、止まれ。壁に衝突するぞ」
「!!」
どうやら、アルフォンスの方に向いている間にの部屋の前まで辿り着いていたらしい。
エドワードは慌てて両足でブレーキをかける。
そのせいで前につんのめりそうになったが、何とかとどまった。
そんなことをしている時間すら惜しい、といった感じで、ロイはの部屋のドアを開けた。
『ガチャッ!!』
「君!!!」
ロイはの部屋に飛び込んだ。
そして………………固まった。
「おい、何してんだよ邪魔だ!!」
「何があったの!?」
続いて部屋に入ったエドワードとアルフォンスも………固まった。
いや、別に動けばどうにかなってしまう、などといったことはない。
しかしどうにもこうにも、そこにあったのはある意味想像を絶する光景だったのだ。
その光景とは……………
「同居人が今から4.65秒間石化している確率77%呪印の少女、朝食は未摂取、昨日は夜中まで起きていたためクマが目立つ。血行が著しく悪い模様。本日着用している服は黄緑と青のチェックのカッターシャツに紺のロングスカート、同居人その1から貰ったネックレスと同居人その2から貰った指輪を付けている。ネックレスは錬金術によって作られたもので、もう片方は……………」
「もういやああぁこの変態いいぃー!!!」
……どう言ったら良いものか一言では表せないのだが、要約すると、渦巻きメガネの男が部屋の隅っこでメモ帳見ながらしゃがみこんでブツブツ呟き続けていて、がそれを聞きながら四つんばいになって床をダンダンと叩いて絶叫しつつ必死に男の言葉を遮ろうとしていた、ということだ。
「………」
「………」
「………………はっ、しまった。あまりの珍妙な光景に思わず石化していた」
ようやく石化状態から復活したロイ。
それに連動して後の2人も意識を引き戻した。
「何だお前?泥棒か!?」
「でも何も盗ってないみたいだね。やっぱり変態さんだよ!」
「失礼な。俺はれっきとした変態……ってチガーウ!!」
私が耳元で「変態変態変態変態変態……」と囁いてみたせいか、変態は見事自分を変態だと認めやがりました。
「では何なのだね?」
「俺は呪印の娘を奪いに来たんだ。つまるところ敵なのだよ」
「!!何っ」
喚き散らす変態に、驚く大佐。
どうでも良いが、普通そんな事バラすか?
私がジト目で見ていると、ヘンタイはいきなし私の腕を掴んできた。
しまった、コイツは私を捕まえる為に来たんだった!!
「この娘は貰ってゆく」
ははは、と高笑いしながらベランダへ私を引きずっていこうとする変態。
ちょっと待テ、ここは2階だぞ!?
飛び降りるのか!?
……いや、そもそもこいつどこから入ってきたのだろー。
「待て!は渡さないぞ!!」
「さん!!」
私がくだらん疑問こねくり回している間に、エドとアルが変態に向かって突進。
大佐は私に向かって一直線。
「右ストレート&跳び蹴り、両方避けられる確率3%…娘を一旦放して避けられる確率72%…」
変態は何やらまたぶつぶつと呟き、突如私を突き飛ばした!
『ブンッ!!』
『ギュンッ!!』
丁度変態がいた所に、エドの跳び蹴り&アルの右ストレートが空振った。
エドは身軽に着地し、変態の方に振り返る。
そして私は大佐に腕を引かれてドア付近(安全地帯)へ。
「何だか久し振りに敵が来たと思ったらこんな変態か………」
「変態ではないっ」
「というか最近シキミやエルトが全く姿を表さないようだが、どういうことだ?」
「俺らにはこんなので充分だってことじゃねーのか?」
変態の叫びを無視って会話する2人。
確かに、最近あの最凶最悪の2人が全く来ない。
なぜ?
しかもそういえば敵が来たのも久し振り。
何か1つのものを狙ってるんだったら間を置かずに来てもいいはず。
「……ふふふ、それはだな……」
何やら変態が眼鏡をキラリと光らせて激しく不気味に笑った。
「シキミ様とエルト様には重要な仕事がある為、こちらに来られないのだ」
「仕事って…?」
アルが訊くが、男はチチチ、と差し指を左右に振ってこう答えた。
「それは俺達の間でもトップシークレット。下働きの者は何も知らないのさ」
「じゃ、あんたは知ってるのか?」
エドの問いに、再び不気味に笑う男。
「知らない」
「…………………。」
「…………………。」
「…………………。」
「…………………。」
一気に場が白けました。
「って事は変態さんは下働きの人なんだね?」
アルがズビシと鋭くツッコんで、変態は片眉を上げた。
「下働きというか、まぁ……そうなるが………」
下働き、と言われたのがどうも気にくわなかったらしい。
「ところで何で最近全然敵が来ないの?来ても困るけどさ」
私は、もう1つの疑問をぶつけてみた。
だって気になるじゃん。
ここまで饒舌な敵を初めて見るからってのもあったかもしれない。
……いや、いくら饒舌だからってこれ以上情報提供なんぞしてくれるだろーか。
向こうから見れば、私達は仮にも敵なのだ。
「それはこの世界と俺達の世界の時間の流れが違うからだ」
言ってくれましたよこのヒト。
敵だっていう自覚あんのかねぇ?
………っていうか、
「時間の流れが違う?」
「ああ。こっちの世界では向こうの世界の約5倍の速さで時が流れているんだ。
一日置きに俺達が乗り込んだとしてもこっちの世界では5日置きになってしまう」
「てことは、こっちでは2ヵ月半経ってるけど向こうでは16日間しか経ってなかったのね」
「その通り」
成程、だからいつも間をあけまくって出現するのね。
私達にとっては好都合なことこの上ない。
1秒間に1人送られてきても、こっちでは5秒間のタイムラグがある訳だから、態勢をたてなおすことも可能。
傷を負っても大分間が空くならその間に治してしまうこともできるのだ。
「ところでもう1つ聞きたいことがあるんだけど」
「何だ?」
「こっちの世界に来るには何か大きな力を持つものが必要なはず。何を使っているの?」
そう、賢者の石かもしくは呪印並の力を持つ何か。
それだけの力を持ってでないとワープは成り立たない。
「それはあのお方の力で……」
「あのお方?」
その言い回しからすると上司か。
……黒ずくめ達を従えているボスだろうか。
ワープを取り仕切っている所からして、シキミやエルトより上のようなイメージがあるけど。
「………って、なぜ敵であるお前たちに懇切丁寧にそこまで教えなきゃならんのだ」
急にふと気付いたように言う変態。
やっと気付いたか
「どうせならもう少し遅くに気付いてよー。ねぇアル」
「うん……あのさ変態さん、せめて今の質問の答えだけでも教えてよ」
「敵に頼むな。しかも変態ではない」
「えぇー?ちょっとくらいいーじゃん」
「駄目だ」
頑として言おうとしない変態。
困ったなぁ。
「何の話をしてるんだ?さっぱり見えないぞ」
エドが割って入ってきた。
「いや、この前話したワープの原料の事。この人なら何か知ってるかなって」
アルが簡単に説明した。
……エドにもあのこと言ったのか。
「あー、あれな。よし、口を割らないならちょっと痛め付けてみっか!」
にこやかに言わないで下さい
「……そう簡単にいくかな?」
不敵に笑う変態。
どうでもいいが、その右手に持ってる手帳は何なんだ。
よもや………
「でやぁっ!!」
エドが変態に向かって拳を繰り出す!
が、
「右アッパーの確率87%」
ヒラリとかわす変態。
ちょっと待てお前は某テニスマンガに出てくる決して透けないどうやって視界確保してるのか分からないようなメガネをかけたあのデータマンか!?
い○いなのか!?
あの毒としか言いようのない飲み物はどこどこ!?
あ、でもこいつメガネが渦巻いてるから本人じゃないや。
じゃあいぬ○モドキか!!
なんか「モドキ」がついてると目がめきょってなりそうだな。(by.ツ○サ)
つーか大体、い○いはこんなに気持ち悪い顔してない。(ここ重要)
「くっそ………」
ぜーはーと息を切らせているエド。
攻撃が全く当たらないらしい。
アルも参戦しているものの、やはり全て避けられてしまうようだ。
大佐は…………………
「戦わないんですか?」
大佐、今だに私の真後ろに立っています。
「私は君を守らなければ」
「私はいいですから、2人を手伝って下さい」
「しかし相手は君を狙って……」
「部屋から出ておきますから」
間髪入れずに大佐を説得する。
あんな出来損ない○ぬいモドキ、さっさとはり倒して外にほっぽりだしてくんなきゃ嫌だ。
ちなみに私はい○いが好きである。
「てなことで、頑張って下さいね〜v」
私は大佐の背をドンと押し、さっさと部屋から出た。(酷)
さて、どこに逃げておこうかしら……………と。
『ドカッ!バシン!!』
「うおおぉー!!」
「ぎゃあっ!?」
「何だその真緑の液体は!?」
「ぅわ、かけんなって、うわああぁ!!」
『ドスンバタン!!バギョッ!!!』
しばらく争った音や叫び声がした後、物凄い音を立ててドアがこっち側に倒れてきました。
「みぎゃああぁ!!?」
驚いて思わずしゃがむ私。
何事だ!?
「呪印の娘は貰い受けたっ」
ドアがあった所に立っている偽○ぬい。
どうやらコイツがドアを蹴倒したらしい。
「………って、うちのドア壊してんじゃないわよ!!!」
『スパーン!!!』
「ぐふぅっ!!」
私から強烈なハリセンツッコミをドタマにくらった偽い○(以下省略)は、その場にうずくまる。
「デ……データ以上だ………」
「そこまで真似してんじゃないよ偽い(以下略)!!!」
「真似?というか偽い(以下略)とは?」
「(自覚無しなのか…)いーからさっさと出てけ!!」
「そうはいかない。お前を向こうの世界に連れていっ………」
『ガスゥッ!!』
見事 大佐の蹴りが偽(以下略)の背中にミラクルヒット。
偽(略)は顔面を床に打ち付けました。
「君を攫おうなど、言語道断っ!!さっさと成敗して国道のど真ん中に捨ててやるから覚悟したまえ!!」
わざわざ国道まで行くんですか
っつか、そんな所に捨てたら車に潰され ……いや、わざと言ってるんだろーから何も考えないでおこう………。
「、逃げろ!」
「あ、うんっ」
エドに言われ、頷いて走りだす私。
取り敢えず1階に下りてどこかに隠れよう。
私は書斎の前を通り過ぎ、エド達の部屋の前を走り抜けて階段を駆け下りた。
「どこに隠れようかな……」
廊下にいては奴が来た時すぐに見つかってしまうため、リビングに入って考える。
テレビの後ろとか?
……いや、狭いだろう。
じゃあテーブルの下?
……いや、丸見えだから。
お風呂の湯槽とか?
かくれんぼじゃあるまいし。
中庭……は、隠れる場所無いね。
キッチンの天井に張りつく!!
ちょっと待テ、私は忍者か!!
しばらく自分の脳内でノリツッコミをしていた所、あることが脳内によぎる。
………書斎の隠し部屋行きゃよかった………。
書斎は2階にある為、もう行けそうにない。
そこだったら見つかりにくくて安全だったのに。
あぁ、さっさと離れたいからって1階に来るんじゃなかった………。
「って、そうじゃなくて。」
今は隠れる場所を探さないと!!
と。
『タタタタタ……ドタンッ!バタン!バゴンっ!!!』
「リビングにいる確率78%ーっ!!」
「ひきゃーっ!!!?」
またもやドア蹴破って突入してくる偽。(←最早(略)無しですか)
「ドア壊すなこの変態っ!偽っ!!団子汁ーっっ!!!(意味不明)」
『ブンッ!ブオン!!ギュンッ!!!』
「うわっ!?ぅおっ!!わわわっ!!」
私のハリセンをギリギリで避けている偽。(どこからハリセン出した)
「さん!」
「大丈夫か!?」
「君っ!!」
3人がリビングに駆け込んできた。
「すまん、そいつが目から怪光線を出してきて全員金縛りになっていた!!」
「そいつ人間じゃねー!!」
「ただの変態さんじゃないよ!!」
「元々変態ではない!というか俺は人間だ!!」
嘘をつけ
あぁ、変な奴だとは思っていたがよもや目からビーム(で○こ?)を放つとは。
その割にメガネは割れていないが、どうなっているのか。
っていうか寧ろ素顔見せろ。
「いーかげん諦めろっ!!」
エドが偽に回し蹴りをかます。
が、偽は軽くそれを跳んで避けた。
ついでに私の腕を掴もうと手を伸ばす。
「そうはさせない!」
大佐が素早く私と偽の間に入った。
偽は一旦右へ移り、
「呪印の娘、これを見ろっ」
と、ポケットから何かを取り出して私に向けて突き出した。
何だ?
偽が持っている物を見てみると、
「!!それは……!!!」
写真が4〜5枚。
その中に写っているのは大佐、エド、アル。
何と隠し撮り写真でした。
「ほ、欲しいっ!!!」
あぁっ、一番右の奴にはエドの着替え写真!!
真ん中には猫と戯れるアル!!
その隣なんて大佐の寝顔が!!!
どれもほっすぃーv
私は萌えのせいで無意識にふらふらと偽の方へ歩きだす。
「ど、どこから撮ったんだ……。というか君行くな!!」
「(はっ)危ない危ない…あやうく連れ去られる所だったわ」
「ンなもんで釣られてんじゃねーよ」
「しょーがないじゃない!貴重な写真だったんだから!」
言いながら、私は慌てて窓際まで下がる。
「失敗か……ならば!!」
偽は恐ろしい程のスピードで私に駆け寄る。
ヤヴァい、逃げられない!3人とも間に合わない!
「いやぁっ!!」
偽が目前まで来たその瞬間、私は思わず後ずさる。
……足元のゴムボールには気付いていなかった。
「!!?」
ゴムボールを踏み付けてしまった私は、バランスを崩して倒れそうになり、咄嗟に床に両手をついた。
「うわっ!?」
偽は急ブレーキをかけるが、止まらない!
ぶつかるのを防ぐためにジャンプする!!
そして私を飛び越えた偽は……………
『すぽん』
「………………エ?」
私は、思わず目が点になってしまった。
そう、奴は何と頭から壷にハマってしまったのである。
壷、といっても小さいものではない。
中で座れば大佐もスッポリなサイズのビッグサイズの壷である。
……っつか、ジャンプして壷にハマっちまった人なんて初めて見た。(そりゃそうだ)
やはり只者ではない……!!(何)
「だっ、出せー!!」
少々エコーがかかっている偽の声。
ちなみに頭からツッコんでいる上に、倒したら壷が割れて全身に破片が刺さりかねないので自力では抜け出せないらしい。
「出せと言われても……なぁ」
「ねぇ」
元々敵だし。
「どうする?」
アルが全員を見回し、言った。
「どうするもこうするも、このまま国道に転がしに行―――」
「却下。殺人罪で捕まります」
大佐の言葉を遮って言う私。
ていうか本気だったのか。
「じゃ、どーすんだ?」
「うーん………ねぇ偽、今回のワープ陣はどこに描いてあるの?」
「偽ではないっ!それに、いらん奴等までいるというのにそう易々と言えるか」
「あ、もしかして忘れたの?そんじゃ仕方ないか……」
「庭だ」
かなり単純だなぁ。
こんな小学生並みの挑発に乗るなよ。
「そんなこと聞いてどうすんだ?」
エドが訊ねた。
「言わずもがな、その陣の中に捨てるのよ」
「あ、そっか。そうすれば自動的にあっちの世界に送り返されるよね」
「何っ!?やめろ!!」
「敵の言うことなんか聞けるか」
そしてアルとエド、大佐の3人で偽ごと壷を持ち上げた。
***
庭に行くと、すぐに陣を見つけることができた。
10分もしない内に陣は光り、偽が転送されていった。
それを見送って、私達は家に戻った。
………で、
「良かったの?」
「何が。」
リビングでソファに座りながら聞いた私に、エドがそっけなく返す。
「……あの陣で、向こうの世界に帰れたんだよ?」
「あー………。」
ガリガリと頭を掻くエド。
だって、皆は向こうの世界に帰りたいはず。
その為にいろんな事を調べてるんだから。
「……、お前1人で敵を相手にできるのか?」
「え………」
「できねーだろ。置いていけるかよ、そんな奴」
「でも…」
「でもも何も、僕らがそう決めたんだ」
アルが、隣に座りながら言った。
「そうだ。君が気を使うことはない」
アルと私の間に、無理矢理座る大佐。
………おい、狭いって。
「大体君も私達も狙われているんだ。どこにいても同じだろう」
「……って、え?大佐達も狙われてる?」
どういうこと?
狙われているのは私だけじゃないのか?
「君がここに逃げている時、戦っている途中メガネの男に聞いた。
私達は向こうの世界に連れ帰る事こそ奴等の目的内に入っていないものの、元々敵側の秘密を知ってしまっている時点で命を狙われていた。それは変わっていない。
ただ、君を連れていく事が最優先事項なだけなのだそうだ」
「…そっか……。でも私、足手纏いじゃない?」
「いちいちこだわるなは……。いいか?二度とそんな事言うな。…愚問だ」
「!」
「さんは足手纏いなんかじゃない。寧ろさんがいてくれるから、僕らは元気でいられるんだ」
「エド…アル……」
「君はそこにいてくれるだけでいいんだ」
「大佐………」
私は。
ねぇ、今度こそ。
「ありがとう!」
信じていいですか……?
〜To be con「…って、ちょっと待て!!!」
「へ?」
てっきり前の行で終わると思っていた私は、ちょっと驚いた。
(無理矢理終わりを延ばさんといてやエド…)by.幻作
エドはずかずかとこっちに歩いてきて、
「わっ!」
「きゃっ」
「!」
いきなり大佐+アルと私の間に力ずくで隙間を作った。
「お前ら何ぎゅうぎゅう詰めになってんだよ!」
「ははーん、羨ましいんだろう鋼の」
「なっ!!違っ……」
「ほら、あけてあげるから。入って入って」
私は左に寄って隙間を作った。
そんなに大佐の隣がいいなんて、やっぱりロイエド(エドロイ?)説は当たっていたのね!!(違)
「〜〜〜っ……もういい!!」
エドはなぜか怒ってそっぽを向いてしまった。
「何でさぁ!?入ればいいのに!」
「いいったらいいんだ!!」
そう言ってリビングから出ていくエド。
なぜ?
思春期はむずかしいのぅ……(老)
なぜだか急に緑茶が飲みたくなった私は、キッチンに茶葉を探しに行った。
〜To be continued〜
<アトガキ。>
前回予告した「敵」というのは、いわずもがな奴です。い○いです。……ファンの方、ごめんなさい。
何となく特徴のある敵キャラを出さないとなぁ、とか思いまして。毎回黒ずくめだとつまらないですし。ギャグになんないし。(そうか?)
念の為に言っておきますが、私はいぬ○の事好きですよ?(本当かよ)
それにしても目からビーム………。
どうしよう、物語的に存在しても良かった技なのか?ハガレンも一応現実味あるし、理論とかが……。………まいっか。(をい)
ちなみに冒頭のホワイトデーネタは某方達が提供してくださったものなのですが、本来書く気全く無いものでした。(え)
それにしてもいいのかねぇ、指輪。プレゼントのネタが尽きちゃうよ。(お前の都合か)
さて、次回は花見ネタ!!いつの話だー!!
……はい、ごめんなさい。でも書きたいんです。といっても超短編になるでしょうが。季節ネタは逃せませんからねー……。(をい)
夢主さんまだ高校入ってないですよー……。頑張って書きます。では。
2005.6.13