冬休みは物凄く短い。
 受験生にとっちゃ矢どころかミサイルのごとくさっさと過ぎる。

 今日は冬休み最後の日。
 宿題は少なかったからすぐに終わったんだけど、受験勉強があるし。

 もうイヤ………。
 さっさと過ぎてよ受験………。
 そしてエド&アル&大佐に萌えまくる日々を!!!(をい)

 ………あぁ、その日が待ち遠しい……………。






stigmata・15
嵐、到来…!!
〜jealousy〜






 午後3時を回った頃。
 その日はロイもデートの約束をしておらず、全員揃っていた。
 しかしやることはこれといって無く、アルフォンスとエドワードはいつも通り本を読んでるものの、ロイは暇だった。

 も(勉強をサボっていて)暇だったので、紅茶を淹れにキッチンの方に行っている。
 平和で静かな午後。

 ……………だった、はず。

 その静けさは、たった今見事なまでに打ち破られた。


『ガチャッ!!』
ーvv!!!」


 突如勢い良くドアを開け、リビングに顔を出す見知らぬ男。
 そして3人の姿を認め、その男は固まった。

「………誰?」
 本から顔を上げたエドが、尋ねる。
「それはこっちが聞きたいんだが」
 男はそう言ってじろりと睨んだ。

 男は黒髪の長身で、スーツ姿だ。
 歳は大体20代前半……いや、後半か?判別ができない。
 もしかするともっと若いのかもしれない。
 恐らくこちらの世界の人間だろう。

(アル、置物のフリしとけ)
(分かった)
 ソファに座ったまま、アルフォンスは動かなくなる。

「まっ、まさかお前……の彼氏っ!!?
 エドワードを指差し叫ぶ男。

「は!?俺!!?なっ、ななな何で俺がっ……!!」
「俺というものがありながら何でこんなちんちくりんに!!!」
「んなっ!ち、ちんちくりん!!?いきなり入ってきて何なんだお前は!!!」
「というか私を無視して話を進めないでくれないか?」
「くそっ!!どんな卑怯な手でを落としたんだ!!!」
「だから俺は彼氏じゃねーって!!」
 ロイが間に入ろうとするが、どうやら男の眼中に全く入っていないようで、すっかり存在を無視されている。

「うあああぁぁがこんな野郎の毒牙にかかるくらいならやっぱり傍にいれば良かったあああぁぁぁーっ!!!」
誰がいつ毒牙にかけた!!おい聞いてるのか!!?つかお前誰なんだよ!!
「……先程から聞いていると どうやら君と親しい者のようだな」

 ロイに言われ、はっとする。
 そういえばのことを異常に気にしている。
 しかも彼氏がどうとかこうとか。
 更に「俺がというものがありながら」とか言ってなかったか?

 ………ということは。


(ねぇ兄さん……もしかしてこの人)
(………の?)


 彼氏………!!?


(あり得るのではないか?君はあれだけ整った顔立ちをしている訳だし……)
(!!!んなっ、)
(えぇ?!!)
 動揺し始める3人。

「何をさっきからコソコソと話してるんだ?
……はっ!!もしやそこにいる男は父親で、そこのちんちくりんとの、け、けけけ結婚の相談を………!!?ゆっ、許さん!!俺は断じてそんなこと許さんぞー!!!
「誰が父親だ!!!」
結婚!?何の話だよ!!!」
 どうやらロイをエドワードの父親と勘違いしたらしく、怒り狂っている男。

「ぅをのれ抹殺しちゃる………を惑わす害虫は皆排除したるうううぅぅぅ……
 コフー、コフー、という効果音が付きそうな呼吸をしながら某腹に七つの傷を持つ格闘家で『お前は既に死んでいる……』とかいう決めゼリフを吐く男の様なオーラを漂わせ、エド達ににじり寄る。
 と、その時。

「お待たせー」
 ポットとカップをトレイに乗せたが、キッチンから戻ってきた。
っ、コイツが突然入ってきて………」
!!!ただいまっ!!!
「お、お兄ちゃん!?」


「…………………………。」
 ………何ですと?


 思わず耳を疑う3人。
 今確かに……
「………兄?」
「うん、そうだよ。私のお兄ちゃんでっていうの。
前に言ってた17歳上で現在31歳の若社長。あ、今は16歳上の、だね」
 言いながら、テーブルにトレイを置く

 ……………。

 ………何だ、彼氏じゃなくてただ単にシスコンだっただけか………。
 何だかドッと疲れてきた。

 そういえばこの兄は他の家族と違ってを嫌っていないのか。
 まぁ、周りから嫌われまくる妹を見ていれば過保護にもなり得るだろうが。
 ……それにしてもこれはちょっとばかし溺愛し過ぎなのでは?
 過保護の域越してるっての。
 つーかどうでもいいが、31には見えねぇよ。(若すぎ)

「お兄ちゃん仕事は大丈夫なの?一応社長なんだからサボったら駄目だよ?」
の為に時間を空けてきたんだ。ただ、あと1時間くらいしかいられないが…」
「それでもいいよ。嬉しい!!」
ーっv兄ちゃんも嬉しいぞー!!!」
 この2人、相当仲がいいらしい。
 なんか抱き合ってるし。

「ところで、この人達は誰なんだい?」

(態度違っ……………!!!


「え?……塾の先生の炉猪(ろい)さんとクラスメイトのエドワード。
あとそこの鎧は気に入ったから買っちゃった」
「………本当に?」
「お兄ちゃん、素直に信じとけや。
がそう言うならそうかな?そうだよな。が男を連れ込んでる筈ないもんな」
(ギク。)う、うん。ただの友達だよ」

 そしては、すすすっとエド達に近寄り、
(同居してるなんてバレたらヤヴァいから絶対秘密だよ。お兄ちゃん過保護の域越してシスコンマシーンだから。)
(あぁ、大体分かってる)
(気を付けよう)
(大変だね………。)

「何を話してるんだい?兄ちゃんにも聞か……」
何でもないから。あ、ケーキ買ってあるの。持ってくるね」
 兄の問いを無理矢理スルーしてぱたぱたとリビングを出ていく

「………」
 茫然とその様子を眺め、がリビングからいなくなると、
「……ふ、ふふふふふふふフフ不負腐………
 何やら不気味な笑みを漏らし始める。

秘密の会話v か………ふふふふふフフフ……………
「な、何なんだお前さっきから!!と俺達で接し方180度違うじゃねェか!?
うるせぇ!!どうせお前、普段この家にしかいないの知ってて来てんじゃねーのかよ!!
はっ!!まさかそれを利用してあーんなことやこーんなことをしてるんじゃあるまいな!!俺の妹にそんな破廉恥な!!!
破廉恥なのはてめェの思考回路だろが!!俺はそんなこと全ッ然……」
嘘だな。ぜってぇ覗きくらいはしてるはずだ!!!」
「………!!!」
 その言葉に顔を朱に染め、俯くエドワード。

(何で黙るんだよ兄さん)
(いや、その…)
(よもや本当に覗きを……
ちげーよ!!!不可抗力だ!!)
(でも見たんだな)
(うっ……)
(兄さん………。)

 の着替えを一度だけ見てしまったことがあるエドワード。
 まだ覚えていた………。


てめーやっぱし覗いてやがったのか!!!こ、殺してやる………!!!

『ガチャ。』
 今まさにがエドワードにスタンガンをくらわせようとしていたその時、丁度がケーキを持ってリビングに戻ってきた。

「騒がしいなぁ。何やってるのよ」
「いや、何でもないよv ちょっとおしゃべりしてただけさ!」
 態度急変、爽やかに笑う

(くぬ野郎……………!!!)by.エドワード

「はい、ケーキ」
 私は4つのイチゴショートの乗った皿と、兄の分の紅茶をトレイからテーブルに置き換えイスに座る。
 ちなみに何で4つあったかというと、私がケーキ好きなので余分に買っていたのだ。
 あぁ、アルが不憫……。
 ケーキが食べられないなんて………。(をい)

「おっ、うまそう!!」
 エドがケーキを見て表情を明るくした。
 かっ、かわいいー!!!
 私はケーキよりエドの方がうまそ(以下略)

「これ駅前の『風花堂』で毎日限定100個しか売ってないのよねー。買うのに苦労したんだから」
 開店1時間前から並んで店に入った直後残ってた限定ケーキ全部買い占めたなんて言えないけど。
 後ろにまだ並んでた人、ごめんなさい。
 それでも5個しか買えなかったしなぁ。(そんなに買ったのか)

「いっただっきま〜す」
 ケーキを頬張るエドに、上品に黙々と食べる大佐。
 それと……
「んー、おいしいな!v」
 見事にセリフと表情が一致していない兄・
 ケーキを食いながらギリギリとエドを睨んでいる。

 どーせまた何か勘違いでもしてんだろーなぁ。
 連れてきた友達が男の子だった時いつもガン飛ばしてたし。
 挙げ句には泣かせちまって男の子に親呼ばれてこっちが説教くらった時もしばしば。
 まぁ、説教くらったのは兄ちゃんだけな上に逆ギレして追っ払ってたしね。
 でもエドを彼氏と思われるのは嬉しいかもっ!!
 ………と、その時。


『シュトンッ!!』


「うううわっ!!!?」
「おや、すまんな。手が滑ってしまったようだ」
「エド大丈夫!!?」
「鋼の!!」


 何と、兄ちゃんが持っていたフォークが壁に突き刺さっていた。
 何で驚いたかって、突き刺さった場所がエドの顔の真横だったからですよ!!
 フォ、フォークじゃなくてスプーンにすれば良かった……!!(そういう問題でも)

に何か付いてるのかな?さっきから人の妹ジロジロと………!!!


 見てたのかエドよ。


「いっ、いや!!見てねーよ!!」
「それならいいんだ」


 ヤヴァい。
 彼氏に間違われたのを嬉しがってる場合じゃねえ。
 これじゃ泣かされるどころか殺られる………!!!
 な、何とか阻止せねヴァ!!


、ちょっと」
「へ?」
 決意した直後に兄に呼ばれ、思わず間の抜けた声で応じてしまう私。

「こっちだよ」
 何を思ったのか、兄ちゃんはリビングの出口の所で手招きをしている。
 っつか、いつそこまで移動した?

「何?」
 呼ばれるままに歩いていき、リビングの外に連れ出された。
 ドアを閉め、兄は真剣な表情になった。

「……、いつも1人にしてごめん……。寂しいだろ?」
「んー………しょうがないよ。私のせいだし」
「そんなことはない!はもう充分苦しんだ……!!」
「お兄ちゃん……」

「しかしいくら寂しいからといって男の子を家に入れるのはどうかと……」
「……………へ?」
エドワード君とはどういう関係なんだ?

 真顔でそれか。
 ちょっとコケそうになったぞ。


「だ・か・ら!ただのクラスメイト!!友達だってば!!」
「嘘をつけ!兄ちゃんには分かるんだぞ!明らかに仲が良すぎる!かなりいつも一緒にいるな!?」
(ギク。)そんな訳ないでしょ!信じてよ!!!」
「………そうか?」

 そして兄ちゃんは首を傾げながら再びリビングに入った。
 私もそれに続いてリビングに入り、元のイスに座ろうとした……その時。

「エドワード君、可愛いと思うのは分かるが妹は絶対にやらんぞ!!!
 入り口に立ったままの兄が のたまいやがった。

「お兄ちゃん!!違うってさっきから言ってるのに!!!」
「つか何で俺なんだ!!?
ええぃ聞く耳持たん!!!怪しすぎるんだよ!!」
「少しは落ち着いたらどうだね?」
「先生は黙っててください!!!」
 ごまかすために教師という事になっている大佐、兄に圧倒されてます。

「そんなにが欲しいならば俺とサシで勝負だ!!!」
「お兄ちゃん!!!いい加減にしてよ!!」
「何で俺が………。」
「どうした?怖じ気付いたのか?」
ぬにぃ!!?んなわけねーだろ!!」
「ならかかってくるがいい」
「上等だ……やってやろーじゃねェか!!!

 ああぁ完全に兄ちゃんのペースにハマッちまってる………。

「鋼の、やめておけ。お前がここで暴れたら後で片付けるのが面倒だ」
 エドは心配じゃないんですか大佐。
 ……まぁ、心配する程じゃないけどさ。

「んなもん後で錬金術使ってぱぱっと直しゃいいんだよ!!」
 やる気満々のエド。
 兄ちゃんも昔空手を習ってたから多少は強いんだけど、エドはエドで強いしなぁ。
 多分エドの圧勝。

 しかし怪我人が出るのは御免被りたい。
 っつか、これ以上話をややこしくすんな。
 ああもうこうなったら仕方がない……。
 私は奥の手を使うことにした。

「いざ!!」
「後で泣いても知らないからな!!!」
 今まさに勝負が始まるという、その瞬間。


『ピコン!!ビッコーン!!!』
「いだっ!!?」
「でっ!!!」

 アホな音と共に2人はうずくまる。
 そう、私が奥の手・ピコハンを使ったのだ。


…っ、愛が痛いよ……
「何すんだいきなり!!」
「バカな事やってないで静かにしとれ2人とも」
「というか今君を殴った時の方が音が凄くなかったか?

 大佐、そういうところは鋭くなくていいです。

「気のせいですよ」
「それも愛の大きさですよ先生!!!」
「黙っとれナルシスコン兄貴
「反抗期なのかな?も大変だなぁ!!」

 ああもうこの人には何を言っても無駄らしい。

「しかしなぜそこまでエドワード君を庇うんだい?…はっ!!よもや、もう既にデキ上がっていて俺の手には届かないところまで行ってしまっている………!!?
「何でそうなる!!!」
「勝手に妄想進めないでよ!!」

 反論する私達を無視して大袈裟に溜め息をつく兄。

「………分かったよ、仕方がない。が幸せなら俺はそれでいい………。」
 とか言いつつエドの紅茶に毒と思われる粉をサラサラと混入している。

「こんなチビだが根はいい奴なのかもしれんしな。あぁすまないな、チビは失礼か。ではゴマ粒とでも言っておこうか?それともミジンコ?」
「だっ、誰が………っ」
「エド、抑えて抑えて。一般人だし」
「ぐ………っ」
「おや?何だか一部だけ髪がハネているね。切ってあげよう
 言いながら、どこから取り出したのかハサミでエドのアンテナを切ろうとする兄。

「………っ、の野郎!!!もう我慢できねぇ!!ぶっとばす!!!
 エド、遂にブチ切れた。
 目にも止まらぬ素早さで握りこぶしを振り上げ、そしてそれが振り下ろされるより早くに大佐がエドを羽交い締めにした。

「待たんか鋼の!!仮にも君の兄だぞ!!」
「仮にもって何だ、仮にもって」
 さりげにツッコむ兄ちゃん。

くぬやろーっ!!!放せ!!放せったら!!!」
 じたばたと動くエド。

 と、その時。


『バラバラバラバラ………』


 何やら唐突に他の音が全部聞こえなくなる程の物凄い音が。
 音の振動が直接脳ミソに響いてくる様で、ちょっと気分悪い。
 あぁ、窓もガタガタ鳴ってるよ。

「なっ、ななな何だ!!?」
「何!?なんか言った!!?」
「あ!?なんか言ったか!!!?」

 会話が全く成立していないが、それすら知る術がないので仕方がない。


 やがて音がおさまり、しんと静まる。
 ………っていうか、鼓膜がマヒしてなんも聞こえない。
 あー、耳がキンキンする。

「くそっ、もう時間か!!」
 かろうじて兄の声が聞こえた。
 段々聴覚が戻ってきた。

「時間?」
「ああ。もともと仕事の合間を縫って来たからな。時間が全くなかったんだ。
来るときは近所の迷惑を考えて違う場所に停めたんだが、約束の時間にその場所まで行かなかったからここまで迎えに来たんだろう」

「迎えってまさか…」
「おう。ヘリだ!
 ヘリかよ。

 あぁ、そーいやうちにも1機あったなぁ。
 兄ちゃんが会社に乗ってったけど。
 ………って、それ使ったのか。
 庭にでも降ろしたのか?しばらく手入れしてなくて草伸びてるのに;

「ヘリで来る程時間がないなら無理して来なくてもいいのに……。しかもうちまで迎えに来る程切羽詰まってるんじゃないの!?」
の為ならどんな無茶なことだってするのさv」
じゃかぁしいわ!!早く行かないと仕事ヤバいんじゃない!?」
「いいや!!こんな害虫がいると分かっていながらを残して行けるもんか!!
しばらくここに残って排除しなければ!!!
 ガッツポーズをする兄。

 いやいや、あんたが残ったらエドどころか居候してる大佐まで排除されちまうから。
 そうなったら私の萌え源が減ってしまうではないか!!

 つーかそれ以前にこの人達がここから放り出されたらまずマトモに生活できずに三日と経たずにホームレスの仲間入りするだろう。
 国籍もないしエドはあの歳だし、どこも雇っちゃくれんだろうし。
 てか、アルがここに残っちまうよ!!
 弟残して行ける程エドは薄情じゃないし。

 待テ。
 何エド達が出てく方面で想像してんだ私。
 そんなこと絶対にさせない。

 兄ちゃんも大事だけど、2人が浮浪者になって飢え死にでもしてしまったらハガレンの物語自体ヤヴァいからそっちの方優先。
 ハガレンに大佐とエドが登場しないなんてそんなのキーの付いてないキーボードとか画面のもげたケータイと同じくらい意味がない!!!

「いいから早く行ってよ。私のことは心配しなくても大丈夫だから」
「いーや!!!コイツをから永遠に引き離すまで絶対ここにいる!!」
「いーからさっさと行けやリジェクトするぞアホンダラ」
『ゲシッ!!!』
 兄の背を蹴り飛ばし、リビングの外へ追い遣る。

「し、しどい………。」
 涙を滝にしてうなだれる兄に、
「行ってらっしゃいv」
 にっこりと笑って手を振ると。

「はーいvv」
 すぐさま笑顔で手を振り返してくれる。
 立ち直り早っ!!

 私は見送りに外に出て、兄が行ったのを確認すると中へ入った。
 リビングに戻り、ほっと溜め息をつく。

「あーもう……。嵐が物凄い速さで通り過ぎていったみたいだわ………。」
「ふぅ、やっと動けるよ」
 それまで置物のフリをしていたアルが、ようやく喋った。

「ごめんね、突然来たから……」
「ううん。仕方ないよ」
「つーか失礼な奴だな!!人のこと勝手に勘違いして!!」
「随分過保護なのだな」
「うーん……私が昔から周りの人に色々されてるの見てたからなぁ、お兄ちゃんは。
その時いつも私を庇ってたのはお兄ちゃんだったし、その名残かな?」


 そう。
 目の前で母が死んだせいで取り乱した私を、優しく宥めてくれたのは兄だった。
 兄がいなければ、多分今の私はなかった。


「四面楚歌な訳じゃなかったんだな」
「まぁ、一応ね。あと、お父さんは取り敢えずこっち側に付いてくれた……のかな?」
「聞かれても分かんねーよ」

「んー……お父さんは何もしてこなかったけど、ただ私に謝ってた。
前は分かんなかったけど、多分あれ呪印のことだね。
お父さんから受け継いだものだし、そのせいで私は死神って呼ばれた訳だし………。
でも恨んではいないなぁ。私を見る時の目は凄く優しかったし、それだけで充分だった」

 感情を表現することが苦手だったみたいだし、よく分からないんだけど。
 でも、それでも。
 私に居場所をそっと置いておいてくれた。
 それが罪悪感からか私を思ってかは、今となっては確かめる術もないけれど。

「それにしてもお兄ちゃんは過保護過ぎるのよね。本当の兄妹でもないのに」
「え…それって義兄妹ってこと!!?
「うん。お母さんは1回離婚しててね、前の夫から引き取ったのがお兄ちゃんなの」



 ……………こりゃマズい。
 もしかするとに恋愛感情を持っているのでは?

 義兄妹な上にこれだけ過保護で更に近付く男をことごとく追っ払ってきたとなると、かなり怪しい。
 には悪いが、は他人同士だ。
他人に興味を持つのはだれしも同じ事で、こんなに近距離にいて、しかもそれが可愛いとなると。

 ………はっきり言ってイチコロ。
 もしや自分はとんでもない相手を敵に回してしまったのでは………。



「どうしたの?皆固まっちゃって」
「い、いや………」
「何でもないよ」
「……何か隠してる?」
「ううん、別に………。ただ怖いなぁって」
「つか、面倒なことになった」
「は?」

(これは厄介な事になったな…。君を嫁に貰うにはまずあの恐怖の兄をどうにかしなければならないとは)
(あの人は敵に回したくなかったんだけど仕方ないなぁ……。)
(今度会ったら問答無用で戦わされるんだろーな…。何で俺がを奪い合いしなきゃなんないんだよ。あー、やっぱ勘違いされたまま帰すんじゃなかった!!)
 約一名、違う方向で悩んでいる様子。


「どうでもいいけど、もうしばらくは来てほしくない………。」
「同感」
 アルの言葉に残りの3人が同意した。
 頷いた意味は、それぞれ微妙に違っているのだが。

 そんなことを私が知る由もなく。
 ただ切に思っていた。


 どうか私の萌え源奪わんで下さい………と。





〜To be continued〜




<アトガキ。>

終わり方が何だかビミョーだということは置いといて(をい)、兄登場ドリ完成!!
兄最強。兄最高。
ギャグキャラは書いてて楽しい!!兄が叫ぶシーンは全てスラスラ書けました!!ビバ!ギャグ兄!!!(いいのかそれで)

兄ちゃん、ドリ主のことどう思ってるんでしょうね。私にもよく分かりません。(何だと)
初期の設定ではただのシスコンだったんですけどね。
……いや、『ただの』ではないか。
初期の時点から超ド級のシスコンで、ヘタすりゃ殺人するかもしれんってのは決まってたしなぁ。(決まってたのか)
うーん、もうこうなったら恋愛感情有りの方がおもしろいかな。そうしちゃいましょう!!(貴様)

それにしても兄ちゃん、スタンガンとか毒とか一体どこから仕入れてどこに持ってたんでしょうね?
謎だ………。

次の話は大佐の話になりそうです。(またか)
だって………書きたい話があって……。エド寄りもアル寄りも早く書きたいんですが、思いついた順で。(おいこら)
ちゃんと予定はあるんですけどね、全員。

では、ここらで第15話を終了しましょうか。
それではまた次回で。

2005.4.9