悪い事は重なると言うが、重なるにも程があると思う。
 そういえば最近そんな事が続いている気が。
 何となく本屋で立ち読みした雑誌の後ろの方に載ってた占いでは確か、私の星座が最下位だったような。

 あぁもう。
 何だか嫌なイメージしか思い浮かばない。

 ていうか止まれ、このマッチョ!!






stigmata・13
風邪ひき・後編
〜patient〜






 私を担いでいる男が、中庭の真ん中くらいの位置まで来た。
 出入り口まで20メートルくらい。
 あー、もう駄目かぁ。

 …と、その時。

「うっ!!?」
『ゴリュッ!!』

 何だか妙な音をたてて、私を担いでいる男は前方に倒れる。
 それと同時に担がれていた私も雪の上へダイブ。
 私の上半身は男と雪の間に挟まれた。

「みゅっ!!」
 な、何が起こった!?
 あたしゃ何もしてねーぞ!!?
 ていうか何も見えねぇ!!!

 足をバタつかせていると、急に両足引っ掴まれて男の下から引きずり出された。

!!無事か!?」

 開けた視界に、エドの姿が映った。

「エド………」
「ったく、何でお前はこんなとこにいんだよ!!」
「えへへー、暇だったから」
「アホか!!!」

 私を担いでいた男を見てみると、ドタマに靴跡付けてノビてました。

「エド、どこから来たの?」
「どこって、あそこから」

 指で上を示すエド。
 見てみると、そこには渡り廊下が。

 2階には中庭を横断する渡り廊下が通っている。
 ただし、そこから中庭に降りることは出来ない。
 階段も何もないのだ。

 ……ってことは。

「飛び降りた?」
「そう」
「で、男の頭に着地した?」
「命中率いいだろ」
「そういう問題じゃなくて、危ないじゃん………。」
「いーじゃねーか。ケガなかったんだろ?」
「私じゃなくて、エドが」
「!うるせぇよ。俺のことだから別にいいだろ?」

 エドが言った直後、ようやく現状を把握できたのか、残りの男達が一斉にこっちにかかってくる。

『パンッ!!』
 エドは両手を合わせ、

『バチィッ!!!』
 オートメイルを刃に変えた。

「今日はシキミとエルトはいねーようだな?」

 あ、確かに。
 脳内沸騰してて気付かなかったけど、あの最凶最悪の2人組がいない。
 しかし、だからといって楽勝という訳には行かないようだ。

 私達2人に対し、男達は約40人強。
 ぐるりと囲まれているこの状態では、更に状態悪化。
 しかも私がいるせいで自由に戦えないと来たもんだ。
 狙いは私。気を抜けない。

「ちっ………」

 状況の悪さに舌打ちをするエド。
 何か打開策はないものか。

 ………その時。

『ボズッ!!!ボッ!!』
「!!!?」
 上の方から何やら大きいものが2つ程落っこちてきました。

「な、何だ!?」
 一斉に周囲の視線を集めたそれは、

「た、大佐にアル!!」
 舞い上がった新雪が、スモークの様だった。
 そうか、スーパーマンはこいつらか。(違)

 2人は連携して男達を殴り飛ばし蹴り飛ばし、こっちまで来た。

さん大丈夫!?」
「なぜこんな所にいるんだ!!」
「それさっき俺が聞いた。っつか俺はどうでもいいのかよ!!
「さて、さっさと片付けるぞ」

 完全にエドを無視って男達を見回す大佐。
 少々むくれながらも戦闘態勢に入るエド。
 男達の内の1人が大佐に切り掛かったのを合図に、戦いの火蓋は切って落とされた。

『パキン!』
「うわああぁっ!!」

 大佐は、火力を抑えて相手を爆発させた。
 家に火がついては困るからだろう。

 私の方に走ってくる者は、アルが殴り、蹴り、投げ、次々と倒していく。
 エドは残りの奴らを片っ端から切り捨てる。
 大佐は連続発火させて数人ずつ片付けている。

 そしてあっという間に全員ノビてしまった。

「さて、仕上げといくか」

 エドが両手をパン!と合わせ、雪に手をついた。

『バチバチバチッ!!』

 みるみる内に巨大な雪像が錬成されていく。
 その雪像は、ノビた男達を家の外へ放り投げて全員追い出した。
 エドが雪像に両手をつき、元の雪に戻して仕上げ完了。

 それはいいんだけど、何だかもう頭どころか体中が沸騰してるみたい。
 平衡感覚狂ってる?
 でんぐり返り10回続けたみたいに視界が回転する。
 ………あぁもう、考えてる余裕すら………。

 無意識に視界を閉じ、思考を停止する。
 力が、一気に抜けていった。


「さてと、!部屋に戻………」

『とさっ』
 雪がクッションになったせいか、軽い音だった。

さん!?」
っ!!」

 が、雪の上に倒れたのだった。

「………ひどい熱だ。無理をしたから……」
 ロイは、の額に手を添えて言った。

「…っとに、このバカは……」

 大きく溜め息をつくエドワードだった。










『あの人は私の全てだった………私からあの人を奪ってまであなたは何をしたいというの!?』


 ……違う………


『お前なんか…生まなければよかった………!!』


 私は………


『死神の思うようには、いかせない……』


 やめて……やめてよ………


『お前に殺されるくらいなら、』


 私が死ねばいいなら、それでも構わないから!!!


『自分で死んだ方がましだ』



 視界を染める、紅。
 頬を濡らしたのは、何?

 涙。
 それとも、血。

 父の温もりを求め書斎に入ろうとした私を、母と呼ぶべき女性は突き飛ばした。
 持っていたナイフで喉を掻き切り、いとも簡単に息をしなくなる。

 音もなく広がる緋色に、私は胃が逆流しそうになった。



……』


 呼ぶ声に振り返る。


『死に…たい………』


 かすれた声で、私は呟いた。
 私を呼んだ兄の、ズボンの裾にしがみつき、見開いたままの瞳で。


『死なせて……死なせてよ………』


 うわごとのように呟き続ける。


『……そんなことは、俺が許さない』
『何で?嫌!!死なせてよ!!!』



 視界が涙で霞む。


『俺の家族はもう………お前しかいないんだ。1人にしないでくれ……』


 優しかった兄。
 私を“人間として”見てくれた人。


『これ以上苦しむなよ……。お前のせいじゃないから……』
『おにぃ……ちゃ………』



 私の死を、許してくれなかった。
 私を、必要としてくれた。




“何を、”



 頭の中に響く、声。



“何を、期待している?”



 低く唸るような、声。



“お前が1人でいなければこの男も……”



 ―――分かってる。
 分かってるから、



“死んでしまうというのに”



 やめてよ――――――!!




 ―――――何を。
 何を、期待してた?

 私は、ただ。
 ただ……………一緒に。
 一緒に…………………




“心配しないで”

………『生きろ』”

“無理をするな”




 一緒にいたい。

 守られてばかりで何も出来てないのは、私。
 アルにあんなことを言ったけど、何も出来ないのは私なんだよ………。

 一緒に、いたい。


 願ってもいいの?
 それは叶うの?


“少なくとも僕らはさんを必要としてる”


 必要………本当に?

 本当、に……………………?


 私 ハ 、 コ コ ニ イ テ モ イ イ ノ ?


 そんな答えさえ、私はまだ……見いだせずにいる。










「……………ん………」
 目を開ければそこは私の部屋で、何一つ変わっていない。

 ………夢………。
 変な夢だったよ、全く。
 熱のせいか?

「………?」

 体を起こそうとして、何かが自分に触れているのに気付く。

 見てみると、エドが私の右手を握ったまま寝ていた。
 マンガで有りがちな光景。
 でも、あったかいなぁ。

 ………はっ!!!
 エドの寝顔だ!!!
 写真に撮って永久保存したい!!!(するな)

「………んー………。ん?」

 あ、起きちまった。
 ちっ。(をい)

「エド、おはよ」
 実際は夕方なのだが。

「うっ、わ!!?
こっ、これはだなっ、お前がうなされて何かを掴もうとしててそれで……っ」

 握っていた私の右手を放して慌てふためくエド。

「……ありがと。あったかかった」
「………っ」

 エドは、ふい、とそっぽを向いて黙ってしまった。
 かわいいなぁもうv

ゴホン!!いいムードの所悪いのだが……」

 わざとらしい咳払いで、ようやく私とエドはその存在に気付く。

「た、大佐!!いたのかよ!!」
「いたのかとはご挨拶だな。君、熱の方はどうだね?」
「あ、なんか随分とすっきりしてますよ」
「そうか。多少下がったのかもしれんな」

『コンコン』
 少々控えめなノックの音がした。

「どうぞ」

『ガチャ』
「……あれ?さん起きたんだ。
兄さんと大佐が一緒にいるから騒がしくなってないか心配で見に来たんだけど、やっぱり起こしちゃったね」

 アルは、ゆっくりと部屋に入ってベッドの傍でしゃがんだ。

「ううん、そんなことないよ。自然に起きたし、今の所騒がしくはないし」
「そっか」

「そっかじゃねーよ!簡単に人を疑うな!!」
「そうだぞアルフォンス君!」
「日頃の行いがものを言うんですよ、大佐。」
 ずびしとツッコむアル。
 中々に厳しい。(何が)

「ほら皆出て!ゆっくり寝かせてあげよう」
「あ、待って。私暇なのは苦手だから、ここにいて」
さん……騒がしくなるよ?」
「いーのいーの!」

 1人よりは、ましだから。

「………じゃ、ここにいよっか」
「私は元よりそのつもりだったのだが」
「をい。」
 エドにツッコまれ、目を逸らす大佐。

 騒がしくても何でも………皆がいるならそれが一番いいや。
 ていうか萌え場面を1つたりとも見逃したくねぇ!!
 カメラどこに置いたっけ?

 視線を巡らせ、探す私だった。





〜To be continued〜




<アトガキ。>

第13話終了!
今回夢の中でドリ主の兄が出てきましたね。近い内に出て来るんでよろしくです。
多分キャラ濃いです。(何だと)

ま、そんな訳で次の話は季節感ゼロの元旦ドリです。(コラ)
大佐寄り最近少ないんでエド寄りから急遽変更してやろうかと思っています。(をい)
エドファンごめんなさい。
というか私、今まで誰か1人に寄らせたことってありましたっけ?
目論みはしたものの全部撃沈してましたよね。
次もできるかどうか。ちょっと心配です。
毎回目的達成できない萌えられずドリだしなぁ……。
まぁ、期待せずに待っててください。では。

2005.3.24