あの事件の後、記者やらなんやらが学校に来て大変なことになったらしい。
 学校が今日のニュースに出てた。

 そりゃそうだろうな。
 刃物持った男が学校に侵入してれば。
 しかも取り調べでは男は全員身元不明だとか。

 いや、当然だろ。
 向こうの世界の人なんだから。

 『何で犯人が全員ノビていたのか』は、なぜか校長が取り押さえたということになっていた。
 その方が色々と都合が良かったのだろう。
 ま、こっちは疑われずに済むからそれで構わないんだけども。

 で、今日はあの騒ぎのせいで学校は休み……かと思っていたのだが、どうやらいつも通りに登校しなければならないらしい。
 ご丁寧にわざわざ連絡網まで回ってきた。

 まぁ、それは別にいいんだよ。
 いいんだけど、3年生は午前中で授業が終わった。
 そろそろ受験も近いしね。
 色々あって、今日は給食を食べたらすぐ下校なのだよ。

 問題なのはそのせいで時間ができてしまったということ。
 前にも言ったように、土日や連休は買い物やらで潰れるので、私に遊ぶ時間は殆どない。
 友達が誘ってきても遊べなかった。

 私はそれでもよかったんだけど、友達はどうしても私と遊んでみたかったらしい。
 つーか、私の家に来てみたかったらしい。
 それで今回「平日ならいいでしょう」とせまられ、うっかりOKしてしまったのだ。

 ………困った。
 以前は別に誰が来ても良かった。
 むしろ嬉しかったし。
 が、今来られては困るのである。

 何といっても動く鎧金目金髪、果てには年上だけど私と似もしない男という組み合わせが家の中に、さも当たり前のようにいるのだ。
 怪しまれること必至………。

 しかも今日来るのは 私の家族構成を大体知っている2人。
 「兄弟だ」とか「父だ」とかいう言い訳は通用しない。

 そもそもその2人、ハガレンの大ファンである
 これが一番のネックだ・・・。

 今更断るのも逆に怪しまれそうだし……。
 困った………本当に困った………。






stigmata・08
ピンチ!!!
〜visitors〜






「………という訳なんだけど………どうしよう?」

 帰って速攻で事情を打ち明けた。(鋼ファンだということを除いて)

「どうって……どうするよ」
「うーん、僕は置物のふりをしてればいいよね。で、問題は…」
「俺と大佐……か」
 顔を見合わせる2人。

「んんー、いっそのこと2人でどっかに出掛けてくる?」
「日が暮れるまでか?」
「……………うーん………。それも悪いなぁ……」

「……てか、俺らがいたら何で都合が悪いんだ?」
「僕は鎧だから分かるけど、兄さんと大佐は大丈夫なんじゃ?」
「いやー、その………。」

 どう言ったらいいのか。
 まさか両方ともハガレンファンだからなんて言えないし。

「お、男ばっかりの中に私だけ女でしょ!生活臭ありすぎなあんたたちがいたらここに住んでるのバレるっていうかそれ以前に私が男を連れ込んでると思われちゃうわよ!」
「………ふーん」

 果たしてこの頭良過ぎな連中に嘘が通じたのかどうか。
 ちと不安だけど仕方がない。

「で、どうする?」
「ふむ……」
 考え込む一同。
 ……と。


『ピーンポーン』


「!!!」
 呼び鈴だ!!

「き、来ちゃった……」
「まだ打開策考えてないのに……」

 うわあぁぁどうしよう………。

 こうなったらもう、今日来た友人2人組みにも事情説明すっか?
 いやいや、友達を事件に巻き込むのはちょっと。
 変態に追っかけられるハメになるかもしんないし。

 同居してる事実だけバラすか?
 いやいや、変な目で見られるのは避けたい。
 困った………マジで困った………。

「早く行かねーと余計に怪しまれっぞ!」
「うぁ、行ってきますぅ!!!」

 ダッシュで玄関に向かう。





『ガチャ』
「いらっしゃーい」
「おじゃましま〜す」
「おじゃましまっす」

 1人は私のクラスによく来てくれる流美。
 もう1人は、クラスがかなり離れているので中々会いに来れないが昼休みなどには必ず来て私達とツルんで遊ぶ、星花。

 どちらも今年になってからの友達で、実はハガレンが元で仲が良くなった。
 だからして、3人ともハガレンファンなのである。

「どーぞどーぞ」

 中に通す。

「うわっ、外から見ても凄いと思ったけど中もやっぱり凄いねぇ」
「大豪邸じゃん」

 驚いている2人。
 うーん、初めて来た人っていつもそんなこと言うんだよね。

「どうする?私の部屋に行く?」
「うーん、これだけ広いと………」
「うん、そうだね」
「何?」
「探険したくなるね」
「うん!!」

 星花が提案し、流美が頷いた。

「えっ」
 ちょっと待て、まだエド達を隠してねぇよ!!
 まだリビングにいるのか?
 てか、ここから一番近い部屋は?


 ……………リビングだ。


「てなことで、探険だー!!」
 流美がこぶしを高々と上げ、
「オー!!」
 星花がそれに続いた。

「いや、ちょっと……」
、いいよね?」
「お願ーいっ」

 両手を合わせて拝む星花に、瞳うるうるさせて頼み込む流美。
 あぁ、もう断りきれません………。
 ヘタに断ると怪しまれるし。

「仕方ないなぁ」
「やたっ!」

 ガッツポーズをつくる2人。
 あぁもう……。
 どうしよう……。

「じゃあ、あっちから!」
「いこいこー!!」

 ちょっと待テ、そっちは……………


 リビングだ。


「んああぁ待ってぇ!!!」
 私に構わずすたすたと進む友人2人組。





『ガチャ』

 白い扉を開け、リビングに到達した探検隊達。(ぇ)
 どうやら誰もいない模様。

 よかった………。
 移動してたのかな?

「リビングだね。あ、すごーい!最新型のテレビだぁ」
「ねぇねぇ向こうにドアがあるよ!行ってみよう」

 あー、ダイニングに繋がってるドアだ。別に珍しいものなんかないってのに。
 まぁいいか。
 しばらく自由にさせとけばその内飽きるでしょ。

 ドアを開け、ダイニングに入る。

「ダイニングだね。……ん!?ねえあれ……」
「あー!!!」
「?」
 流美の視線の先を見てみると、


「!!!!!」


 待テ。
 なぜに……なぜにここにいるんだアル!!!

「もしかしてあれって等身大のア」
「ぢぇいっ!!!」

 とっさに星花の口を塞ぐ。
 だってあれだよ?
 こっちの世界でアルやエドや大佐が有名人だって事は本人達には秘密にしてるんだよ。

「にゃ、にゃにふんの……」
 手の下でもごもごと言う星花。

「ん〜?うふうふうふふふふv
「……………」

 よっしゃ、ごまかし成功。(え?)

「それにしてもそっくりだよねぇ」

(そっくり……?博物館に飾ってあるものにでも似てるのかな)by.アル

 流美は、近付いて眺め始める。

「と、特注なの」
「へぇ……」

 しばらく眺め回し、こともあろうか流美は、

「………えいっ」
「!!!?」


 後ろから毛を引っ張ってアルの頭を引っこ抜いた。


「ちょ、ちょっと流美……」
「わぁ、凄い!!細かいとこまでよくできてるよ、これ!!」
「本当?!」

 星花が 私の手から逃れてアル(の頭)に駆け寄る。
 ちなみにここからではアルの背が高すぎて(+突起物が多いし後ろからだし)中身は見えない。

「凄い凄ーい!!かわいいー!!!

(鎧になってから初めてかわいいって言われた………!!)

「あれ?今なんか動いた?誰か入ってるの?」
「!!!きっ、気のせいよ!!ほら早く頭戻して次の部屋に行こ!!」
「あー、まだ本体の中身見てないのにー」
「ふんどしめくってないのにー」
 無理矢理頭を奪い返し、元の位置にはめ込…もうとしたが、届かなかったのでテーブルに置いておく。

「こっちこっち!」
 部屋の奥にあるドアに誘導する。
 アルに脳内で(すまん)と言い残し(?)、その部屋を後にした。




 ドアを開け、キッチンに入った。
 ダイニングにあるドアからはキッチンに繋がっているのだ。

「凄い広いねぇ」
「キッチンがこんなに広くてどうすんの?」
「どうって………別に?」
「かーっ!これだから金持ちは!!」

 おいおい、言い回しがオヤヂ臭いぞ、流美。

『ごと。』
「ん?」
 物陰から音がした。

「何?なんかいるの!?」
って一人暮らしだよねぇ!?」
「えぁ、う、うん……」

 今はそうでもないんだけどね。

「私見てくるよ」
 進み出る私。
 だって大佐とかエドとかだったらヤヴァいもん。

「い、いってらっしゃーい………」

 おやおや、相変わらず怖がりなんだねぇ星花は。
 そしてそれとは正反対に、

「私も行ってみていい?」
 好奇心たっぷりな表情の流美。

「いや、いいからここにいてよ(来られると困るから)。ネズミかもしれないよ」
「ネっ、ネズミっ!!?」
 とたんに青ざめる。

 流美は昔、犬がネズミの死骸を持ってきて褒めて褒めてと言わんばかりに飛びついてきてから、ネズミと犬だけは死ぬ程嫌いになったとか。
 そりゃもうその光景がまぶたにこびり付いてしまって気持ち悪かったのだそうな。

「どこかの猫型ロボじゃないんだからネズミなんてねぇ」
「うるさい!!あんな身長12●cmで体重もおんなじ12●kgタヌキと一緒にするんぢゃないよ!!」

 あんたそれ、ド●えもんに失礼や。

「じゃ私行ってくるよ」
 まだキーキー喚いてる流美はさて置き(をい)、音の元へレッツラゴー。(古)
 角を曲がって、覗き込む。

「!!」
「しーっ!大丈夫、私です」
「…君………」

 案の定、いたのは大佐だった。

「なぜこんな所に?」
 小声で尋ねる私。

「いや、流石にキッチンまでは来ないだろうと踏んで隠れていたのだが」
「あー………あの人達変わってまして。探険したいとか言い出したんです
「……………。」

 何その呆れたような困惑したような表情は。(何だそれ)

「大丈夫、何とかしますから。あ、エドはどこにいるか知ってますか?」
「…鋼のだったら2階に隠れたようだが」
「2階か………。早く見付けないといけないなぁ」

 少なくとも友2人より先に。

「多分キッチンとダイニングには戻ってこないと思うんで安心して下さい」
 そう言い残し、かがめていた腰を伸ばす。
 ちなみに大佐はしゃがんでいる。

「じゃ、行ってきますんで」
「健闘を祈る」

 私はちょこんと敬礼し、大佐がそれを返した。
 踵を返し、友2人の元へ戻って私は告げる。

やっぱネズミだった。いやー、古い家はやだねーぇ」

 それを聞いた流美は見る見る内に青ざめた。
 で、

「きぃやあああぁぁぁ!!!こんなとこ早く出るううぅ!!!」

 叫んだ。

「わーかった分かった、とっとと出るから叫ぶな」

 適当に宥めてダイニングへと引き返す探検隊一行だった。




「で、次はどこに行く?」
「んー、1階はもう制覇しちゃったから次は2階かな?」

 あれから廊下に出て、1階をぐるりと回った。
 勿論中庭も探険済み。
 キッチンを出た流美はありえないくらいに元気だった。

!置いてくよー」
「ま、待って!」

 星花に声をかけられ、慌てて後を追う。

 ………って、ちょっと待テ。
 2階って確かエドが隠れてるって言ってなかったか?

 が、時既に遅し。
 流美と星花は2階に続く階段をのぼり始めていた。

 仕方がない。
 こうなったらさっさとエドを見付けて隠すしかない。
 ならば2人より先に部屋を回らねヴァ………!!!

 階段を駆けのぼり、先頭につく。

「ねぇ、ちょっと片付いてないところがあるかもしれないから先にこのフロア全部回っておきたいんだけど、ちょっとここで待っててくれる?」

 勿論そんなのウソッパチである。
 待っててもらう間にエドを見付けて居場所を把握しておこうという寸法だ。
 居場所が分かればその時に応じて先に逃がすことも可能だし。

「えー?やだよ。の家広いから全部なんて回ってたらどのくらい待たされるか分かんないもん」

 あぁ流美………。
 頼むからそんなわがまま言わんといてくれや………。

「私ら別に散らかってても構わないもん。ていうかその方がの私生活が丸分かりでラッキーって感じ?

 あぁ、星花さん!!
 私なんぞの生活暴いてもシャーペンの先程も面白くないですよっ!?

「で、でも……」
「んー、じゃあ私らゆっくり回るからその間に大急ぎで片付けたら?」

 どうしても待つつもりはないらしい。

「仕方ないなぁ……。ゆっっっっっっっくり回ってよ!?」
「はいはい」

 そして私は手近にあった部屋…エド&アルの部屋に飛び込んだ。



 部屋の中を見回し、エドがいないことを確かめる。
 クローゼットとかに隠れていないだろうか。
 取り敢えず人が入れそうな場所を一通り確かめた。

 ……それにしても、散らかっている。
 例の隠し部屋から持ってきた本がそこら中に散乱していた。

 全く、これだから男の子は。(何)
 仕方がないから集めて積んでおく。

 ………って、そんな時間ねーっての!!
 本当だったらじっくりゆっくり見ていきたいところだけど、時間がないので仕方がない。
 他の部屋に移ろう。

 しぶしぶ部屋を出て、隣…大佐の部屋に入る。
 それと同時に星花と流美はエドとアルの部屋に入った。

 ………あ、赤コートとか隠しとけばよかったかな。
 まいっか。
 私もハガレンファンな訳だし、何とかごまかせるだろう。
 コスとか言えば多分納得する………よね?(知るか)

 わぁ、大佐の部屋使ってなさそう。
 ベッドは使いっぱなしなんだけど他は全く動かしてないって感じ?

 まぁ、この部屋でやることなんてないからね。
 大佐はエド達を手伝うっていうよりは寧ろ傍観か邪魔の側に回ってそうだし、本も読まないのだろう。

 それにしてももっと模様とか変えててもいいのに。
 一応それぞれにお金は渡してあるから自由に買い物はできるはずなんだけど。
 ……めんどくさがりそうだしなぁ、この人。


 ……………じゃなくて。


 エドはいるかな?

「エドー」
 さっきは焦っていて考え付かなかったが、名前を呼べばよかったのだ。
 かくれんぼをしている訳じゃあるまいし、返事を返さないということはないだろう。

 隣の部屋に声が聞こえない程度に抑えて。

「エド、いる?」

 ………。
 返事はない。
 ここじゃないか。

 大佐の部屋を出、隣の空き部屋に入る。
 ……元、じいちゃんの部屋。
 がらんとした部屋は、他のどの部屋より肌寒く感じた。
 人のいた気配がしないからか。

「……エド、いる?」

 返事はない。

「エドー、私だよ」

 念のためにもう一度呼び掛ける。
 やはり返事はなかった。

 その部屋を後にし、次の部屋に向かう。
 あの2人はまだエド&アルの部屋にいるのかな?
 細かいとこまで見てなきゃいいけど……。

 だってどう考えても私が使わなそうなものってあるじゃん。
 下着とか。(おい)

 ドアを開け、入る。
 ここは物置になっている部屋だった。

 位置的に言えば 元じいちゃんの部屋から出て右側。
 つまり家の四隅の内の1つにあたる部屋。
 物置なだけあって扇風機やら何やらがぎっしり置いてある。

 うーん、暗い。この部屋こそ本当にネズミが出そうだ。


「エドーっ」

 呼び掛けるが、やはり返事はない。
 一体どこにいるんだ。
 もしや私の部屋とか………?

 ………マズい。

 私の部屋にはハガレンの単行本やらファンブックやら色々置いてある。
 そんなもん見られたら今まで隠し通してきたことが水の泡になる。

 ていうか今まで全く知らなかった人物が自分たちのことを過去から事情まで色々知っているなんてことになったら気持ち悪がられるどころか敵視されるような気がする。

 うわぁ、マジでヤヴァい。
 早く見付け出さないと。

 さっさと物置を後にし、隣の部屋に入る。
 そこは書斎だった。

「あ、もしかしてここかも」

 待ち時間を無駄に過ごす程エドの気は長くない筈だ。
 ってことは、隠し部屋に隠れて尚且つ暇を有効利用しているのでは?
 絶対本熟読してるよ。

「エードーっ」

 呼ぶが、反応はない。
 ハズレか?
 いやいや、集中しすぎて聞こえてないのかも。

「エド、いるー?」

 探し歩く私。
 最奥である窓際に辿り着き、ふぅ、と溜め息をつく。
 やっぱし隠し部屋か?

『ガコッ』
 隠し扉を開け、中に入る。

「エドー」
「お?」

 あ、いたいた。
 やっぱり本読んでた。

「どうした?」
「やっと見付けた………。いや、居場所を把握しとかないといざっていう時にね」
「ここまでくる奴はいねぇよ。遊ぶだけなんだろ?」
「いや、それが………」


 私は今までの事情を掻い摘んで説明した。
 で、やっぱし呆れられた。

「でもさすがにここまでは来ないと思うんだけどね」
「そりゃそうだろ。何の為の隠し部屋だよ」
 なんて話していると。

「凄い広ーい!!書斎だぁ!!」
「学校の図書室よりおっきいよ!!!」



 壁の向こうから2人の声が。

 ………うわ、もう来た。
 ゆっくり回ってって言ったのに!!!

「み、見つかんないよね………?」
「大丈夫だろ。入り口があれなんだ」
 隠し扉の入り口を指差す。

「だよね………」

 ちなみに出口は最近アルが見付けた。
 実は入り口付近の壁にあった。

 この間壁はくまなく探したつもりの私だったが、まさか引き戸になっているとは思わなかった。
 入り口が押して開く仕組みだったから出口もそうかと思っていたら、まさか左右にスライドさせるタイプだったなんて。
 うぬぅ、中々にヒネた造りである。

 ……なんて考えてる場合じゃなくて。

「声が近付いてくる………」
「シッ、静かにしとけ」
 エドは人差し指を口にあてて言った。
「うん………」


「あー、わかるわかる!この家ってどこかに隠し部屋とかありそうだよねー」
「うんうん!!例えばこの壁が『ガコン!!』って開いたりとか!!」



 ………ん?
 待テ。
 よもや……………………



『ガコンッ』



「きゃあああぁぁっ!!!」
「うやああぁ!!!」


『ごろごろごろ………どしゃっ!

 ……案の定、2人は隠し部屋に転がって入って参りました。


「うーん………ここは………?」
「目ぇ回った………。」

 すげぇ、隠し部屋まで見付けやがった。
 この2人、できる………!!(何が)

「うっわぁ、もしかしてここ隠し部屋!?」
「本当にあったよ!!!」

 ちなみに私達は今現在本棚の後ろに隠れております。
 流美と星花には見えてないと思う。
 ってか見られたら困る………。

 今いるのは壁と本棚の間なんだけど、これがめっちゃくちゃ狭い。
 そこ以外に隠れる場所がなかったから仕方ないんだけど。

 いや、問題はそこじゃないのよ。
 寧ろそれはどうでもいいのよ。
 問題は………

(何でお前まで隠れてんだよっ)
(と、とっさのことだったから……)

 そのめっちゃくちゃ狭い所にエドが一緒にいるのです。

 高さは3メートル以上あるからいいとして、本棚の幅は推定1.5メートルくらい。
 2人隠れられるギリギリな幅。

 私は出ても大丈夫なんだけど、出られないのです。
 私が先に入っちゃったからエドが出ないと出ることは不可能なんですな、これが。

(もっとそっち詰められないのか?)
(む、無理……。壁があって進めない)

 そんな場所に2人がいたらどうなるかお分かり?
 なんと私は今エドと超密着状態なのですよ!!!

 もうもう……私の萌え心が理性を引きちぎらんばかりにたぎっております。
 問題とは私の理性が持つかどうかということなのです。(をい)

 あぁ、エドの体温が伝わってくる………v
 萌える萌える萌える萌え萌え萌え萌え萌え萌え萌萌萌萌萌………(壊)


「ねぇねぇ、これ見て!」


 星花の声で はっと現状に引き戻される私。
 やべェ、マジでMyワールドに行っちまうところだった。

「すごい……」

 何の事だろう?

が描いたのかな」
「だろうねー」

 ………床の錬成陣かな。
 いや、それ以外にない。

 つーかそれより2人がハガレンの話題を出さないかめっちゃ心配なんですけど。
 もう出してるんだけど、エドにバレない程度ならまだセーフ。

「でもここ出口どこだろうね?」
「隠してあるのかも。探そう」

(俺らが全く見付けられなかったのに大丈夫なのか……?)
(もしかしてこの状態のまま長時間いることになるのかも……)
(それは俺が困る)
(え?何で?)
(えっ、あ、そ、それは……)

 なぜどもるんだエドよ。
 ……………。
 ……はっはーん。

(分かった、女の子と密着するの初めてなんでしょ)
(う、うるせーよっ)
(かわいいなぁv)
(悪かったなっ)
(悪くない悪くないv純なのはよろしいことです)
(このやろっ、どうせお前は慣れてるんだろ!落ち着き過ぎなんだよっ)
(……………だとしたら?)
(えっ……)
(じょーだんじょーだん。私も…いや、ちょっと緊張してる)
(………)

「あ、出口はっけーん」
 星花が嬉しそうに声を上げた。

「ほんと?じゃ次の部屋にレッツゴー!!」

 ……をい。
 私らその出口を見付けるのに何日かかったと思ってるんだ。

(………もしかしての友達ってすげェ奴ら………?)
(かも……。私も初めて知ったけど)

 カラカラカラ、と音がして出口が開けられ、2人分の足音が部屋から出た。
 戸が閉まる音がして、ようやく私達は本棚と壁の隙間から抜けられることとなった。
 ちょっと残念………。(をい)

「あー、狭かった」
 大きく伸びをするエド。

「じゃ、私行ってくるね!友達放っておく訳にもいかないし」
「おー。行ってこい」
 ひらひらと手を振った。


 流美と星花の声がしなくなったのを見計らって部屋を出た。
 隠れていたことがバレたら何を言われるか分からないからだ。

 2人が書斎から出たのを見、ドアに近付く。
 そっとドアを開け、廊下に出る。
 書斎から出たのを気付かれないようにそっとドアを閉め、2人に駆け寄る。

「流美ー!!星花ーっ!!」
「あ、だ」
 足を止めて私を待つ2人。

の家って凄いね。隠し部屋まであるんだから」
「えへへぇ、お父さんの趣味。最近は私が使ってるんだけどね」
「やっぱり。床の錬成陣、が描いたんでしょ」

 やっぱし錬成陣を見てたのか。

「う、うん。結構大変だったの」
「でしょうねぇ。かなり精密に描かれてたから」

 取り敢えずごまかせたか。
 ていうか本当のことを言っても信じちゃくれないだろうけど。

 そして探険を再開する私達だった。


***


「ふー、楽しかったね」
「うん!」
「そりゃようござんした………」

 あれから空き部屋2つと私の部屋を回った。

「どうしたの?なんか疲れてるみたいだけど」
「ううん、別に………」

 そりゃ疲れるわ。
 家中を探険もとい案内した上にアルやエドや大佐のこともあったんだから。
 こっちの身にもなってくれ。

「あ、もうこんな時間だ」
 星花が腕時計を見て言った。
 私も覗き込んでみる。
 時刻は6時近く。

「帰らなきゃ」
「じゃあ私も帰る」

 そんな訳で玄関までお見送りすることに。





「それにしても家の中を探険するだけで3時間もかかるとはねぇ」
「広すぎだよ」
「あははー………」
 曖昧な笑みを送りながら玄関の扉を開ける。

「じゃ、ばいばーい」
「また明日ね」
「ばいばい」

 手を振って別れる。


「………ふぅ」
 何だかめっちゃ疲れました。

 扉を閉めてリビングに向かう。


「あ、さん」
「友達は?」
「今帰りました」
 リビングに入り、ソファに力なく座り込む私。

「今日は大変だったね」
「んー………。まさかこんなに大変だとは思ってなかったわ」
「兄さんは?」
「まだ隠し部屋で本読んでるのかも」
「そっか」

 もう疲れました。
 しばらくソファでだれてることにします。





 翌日、また学校は午前中で終わった。
 が、遊びの誘いを速攻で断ったのは言うまでもない………。





〜To be continued〜




<アトガキ。>

毎度変わらぬ奇妙ドリへようこそ。

実はこの話、初期の設定ではバトル有りだったんです。(ぇ)
でも話が次と噛み合わない上に被りそうだったんで変更しました。
友達が来て更に敵まで襲ってきた!!っていうのにしたかったのですが、無理でした。
ちくしょう、やりたかったなぁ。
しかも本当は次の話の足掛かり的な重要文章になるはずだったんですが。

今回予定していなかったことといえば、微妙にエド寄りになっちまったこともですかね。
微妙すぎて何とも言えないのですけども。

エドも思春期ですね。
でもまだ1人の女の子としてドリ主を意識してる訳ではないです。
「女だ」くらいにしか思ってません。
それでもやっぱりエドは男の子ですから女の子と密着するのは恥ずかしいらしいです。

あーあ、それにしてもシキミ出したかったなぁ。バトル有りだったら出てきたのに。
わりと気に入ってるんです、シキミ。敵キャラだけども。
美形ならいいんです。(うわ最悪)

表現してないので分からないでしょうが、シキミ、美形です。(何だと)
敵キャラ美形にして思い入れが強すぎて結局味方にしちゃった例もある位なので(ぇ)私にとって敵キャラはただのバトル相手ではないということですね。
でもさすがにシキミは仲間にできません。すでにストーリーが最後まで組んであるんで。
んん、残念。

では、また次の<アトガキ。>で。
次の話とその次の話はどうやらストーリーの柱的なものになりそうです。

2005.1.25