昨日の買い物はマジで悲惨だった。
いや、冗談抜きで。
何といってもあの変態女装癖症候群クランケが。
……あんまし思い出したくない。
で、一応昨日買い物は終わったから、今日は やらなきゃなんないことパート2をやっておこうと思う。
私の家では毎週日曜日に1部屋ずつ掃除をしていくことにしている。
だって一気に掃除なんてできないし。
そんなことしてたら休みが毎週丸々2日全部潰れちゃうッス。
受験生な私にそれはちとキツい。
それで回る順番を決めて「今週はこの部屋」っていう感じに掃除してるわけです。
まぁ、暇だったら2〜3部屋くらいやる時もあるけどね。
そんな訳で今週も掃除をすることになりました。
今日掃除をする場所は、
stigmata・05
書斎の秘密
〜decipher〜
「ぃよっしゃ、始めるわよー!!」
はたきに雑巾を持って三角布をかぶった私は、気合いを入れるために大声で言った。
「重装備だね。そんなに掃除のしがいがある部屋なの?」
掃除機を持ったアルが私に尋ねる。
この掃除機、勿論私が持たせた物である。
「うん。今日掃除をするのは書斎だからね」
「書斎!?」
私の言葉に真っ先に反応したのはエドだった。
「鋼の、掃除が先だぞ。第一読めないだろう」
「う……」
本がある、と聞いて読みたくなったのだろう。
そりゃ向こうの世界では何日も徹夜するほど本を読み漁ってた訳だし、それがここ数日全く何もしていないとなれば反応もするだろうさ。
「掃除が終わったら私が読んであげるから」
「本当か!?」
あぁ、目が輝いてる。
そんな反応されたらこっちまで嬉しくなるよ。
ていうか寧ろ萌える!!!
「でも何で文字が読めないのに言葉は通じるんだろうね?」
アルが首を傾げて言った。
……そういえば。
向こうは国も違うはずだよね。
使う文字が英語なくらいだし。
「それ言ったらこっちに来たこと自体謎だって。いいからさっさと掃除掃除!」
マンガの人たちなんだから少々非常識でもいいじゃないのよ。
気にしない気にしない。
「書斎はこっちよ」
半ば強引に納得させ、書斎まで3人を誘導していく私だった。
2階の奥にある 大きな黒い扉。
それを開けると、そこは書斎だ。
「すげ……」
「広い………」
固まっているエルリック兄弟。
「君、この本の数は一体?」
ちょっと広めな図書室くらいの書斎を見渡しながら、大佐が問う。
「……父の趣味です。私は本とかあんまり読まない方なんで何の本なのかはよくは知らないんですが、いっぱいありますね。」
いかがわしい本ではないようだけど。
硬派だったしなぁ、お父さん。
「5年前に父が死んでから配置も何も変えずに掃除もあんまりしてなかったんで、本当に父がいた頃のそのまんまが残っているはずです」
だってこれだけ広いと1人で掃除するのは無理だし。
何日かに分けて掃除するのは面倒だし。
週に1日しかとれないんだよね、掃除の時間は。
2日の休みの間に1週間分の買い出しとか色々やってたら自然と時間もない訳さ。
私だって一応受験生だし、勉強しなきゃいけないし。
「後で読むと言っていたが、それはいいのか?本の位置が変わるかもしれないぞ」
「ええ、いいんです。元々何も変えていなかったのは―――」
言い掛けて、私の脳裏によぎった顔。
“あの人が残したものだから”
私に向けられるその瞳が、
“お前は”
冷たく突き刺さったのを、
“ふれるな”
私はまだ、覚えている。
「……………めんどくさかったからです。位置を変えるのにも時間がかかりますし」
「………」
……ヤバィ、また読まれたかもしんない。
いつもはこんなに思い出したりとかしないのに。
「ー!!」
呼ばれ、びくんと跳ねる肩。
「早く掃除して読もうぜ!」
あぁ、びっくりした。
聞いてなかったのね。
いや、別に聞いててもどうってことはないんだけど。
「うん、分かった!」
エドの元へ走っていく、その前に。
「君」
「はい?」
大佐に呼ばれた。
「話したくないならそれでいいが……あまり無理はしない方がいい」
「あ…はい………」
やっぱりバレてました。
それから掃除を始めた訳なんだけど、それが結構時間のかかるものだったり。
まぁ、1人でやってた時は丸一日かかってたからこれでも早い方なんだけど、時間にしてなんと5時間!
学校の授業かよ。
ようやく掃除が終わって、カーペットの床に腰を下ろしている一同。
5時間ってあんた、疲れるわよ。
そりゃもう、このまま寝ちゃいたいくらいに。
休憩入れてもこれだからねぇ。
「どーするぅー?本読むー?」
本棚にもたれかかっているエドに視線を投げる。
「あー……。読むー……。」
読むんかい。
本に対する執着は強いのね。
「何か向こうの世界に戻る手がかりとかあるかもしんねーし……」
「やらなきゃなんないことを残してきたしね。」
アルが付け加えた。
賢者の石のことかしら。
そうだよね。
元の身体に戻ることをほっぽりだして来ちゃった訳だし。
早く帰りたいよねー。
「そんな文献があったらいいけどねぇ。」
書斎を眺め回して軽くため息をつく私。
だって異世界に行く方法だよ?
あるかな、そんなの。
普通に考えて無いように思うんですが。
でも掃除してて化学系の本が多いことは分かったけどね。
お父さんの仕事とは全く関係がないはずなんだけど、何でこんなにあるのかしら。
趣味?
「まいっか。それらしいのを選んで片っ端から読んでみよう」
自己完結し、立ち上がる。
「あ、大佐お昼ごはん作っててくれます?」
私はくるりと振り返って言った。(+期待のまなざし)
エドの読書に付き合うとうっかり昼食を忘れかねない。
「…わかった、私が作っておこう」
大佐が扉に向かう。
何だか少々嫌っぽかったけど。(おい)
「やった!大佐の手作り第2弾!!」
何を作ってくれるのか楽しみ。
……おっと、忘れちゃいけない。
「大佐ー!!!エプロン付けてくださいねー!!」
「あ、ああ…」
うわぁい、やっと大佐のエプロン姿が拝めるvv
萌エ!!!
後でキッチン覗いてみよう!
「どーする?アルも聞いてく?」
読み聞かせるのだから「読む?」はおかしい。
「うん。そうする」
頷くアル。
そんな訳で、大音読大会が始まった。
「どれから読もうか」
本の選択中。
ずらりと並んだ本から、関係りそうなものを探す。
「字が読めたら選べたのにね」
背表紙を見ながら唸るアル。
しょうがないよ、異国どころか異世界の人なんだから。
「じゃあ…これとこれとー」
化学に関係りそうな本を適当に取り出し、左腕に抱えていく。
でも大抵のことは知ってるだろうなぁ。
勉強し尽くしてるだろうし。
「なんか所々読める本があるな」
エドが、本棚を眺めながら言った。
あ、英語で書いてあるやつかな。
「外国語だよ。そっちの世界の文字と一緒のが使ってあるのかも」
おや、錬金術についての本発見。
何でこんなに都合のいいものばっかりあるんだ……?
「じゃ、読むよ〜」
5〜6冊選んだところで振り返る。
……が。
「ありゃ、集中し始めちゃってるよ」
読める本を選び出して熟読中のエド。
「ああなると止まらないからなぁ、兄さんは」
「凄い集中力だよ……。」
もう何も聞こえてないや。
「じゃあアルだけでも聞く?」
「お願いするよ」
その場に座って音読を始めた。
それはそれで良かったんだけど、難しい漢字とか表現があって読みにくかった。
記号とか多かったし。
こんなド素人が読んでて分かるのか心配になったが、アルはそれでもかなり理解しているようだった。
あの兄にしてこの弟だよ。
凄い。
ちなみにこの本は錬金術について書かれた本だったんだけど、何か参考になる部分はあったのかしら。
錬金術についてはベテランだからなぁ、この2人。
「ね、何か分かった?」
「うーん……この世界での錬金術は僕達の世界で言う錬金術とは根本的に違うみたいだね。この世界で僕達が望む情報を得るのは難しいかも」
おぉ、中々理解力があるぢゃないか。
常識人誕生だ。
「この世界で言ったら僕達の言う錬金術師は魔法使いと同じような感じになってしまうのかな。でもそれなら何でそんな存在のものについての本がこんなに多いんだろう?」
「え?」
「だってさん、さっき本を選ぶとき適当にさっさと取ってたよね。探さずにすぐに取れるっていうことはいっぱいあるんじゃないかなって」
「あ……」
隠し事ができないなぁ、この人たちの前では。
どうしよう、隠し事なんてありすぎてるのに。
その内全部バレちゃったりして。
「んー、そのことは私も疑問だったのよ。お父さんが集めた本だってことには間違いないんだけど、仕事にも関係ない分野だし。ていうかお父さんの口から『錬金術』のレの字すら聞いたことないし。どうしてこんなに多いのかちょっと不明」
どのくらい多いかというと、2〜3万冊くらいある本の内半分以上が化学やら錬金術に関係るものだった、という感じ。
掃除をする時にチラ見しただけだからちょっとわからないけど、その位ある。
私は本にあんまり興味がなかったから今まで背表紙チラ見することすらなかったんだけど、今ちょっと興味が湧いたかも。
本にというか、むしろこのジャンルを集めた訳に。
「偶然集まった訳じゃないだろうしなぁ……。」
呟きながら、書斎を見回す。
この膨大な本の量にそれはないだろう。
「さん、この世界の文字を僕らがさんに習う、っていうのは無理かな。それだったらさんに迷惑かけないで済むし」
「んー……習っても読めないと思うよ?多分覚えきれない」
「え?」
「この世界の…っていうかこの国の文字は複雑なの。
『平仮名』っていう簡単な文字と、『漢字』っていう複雑なのもあるの。
あとは外国語をこの国の言葉に訳すときに『片仮名』っていうのも使うから……全部で3種類の文字をセットで覚えないと読めないのよ」
「3種類………。随分難しい文字を使う国なんだね」
「まぁ、他の国よりは難しい方らしいけど」
今までずっと使ってきたしなぁ。
そんなに気にしたことなかった。
「………って、あれ?エドは?」
「え?さっきまでそこにいたはずなんだけど」
いつの間にか忽然と消えている兄。
「エドー?」
呼んでみるが、返事はない。
読み漁っている内に移動してしまったのだろうか。
「どこかで熟読中かな?」
「それっぽい。探してみる?」
「んー、うん。おもしろそうだし」
「?」
疑問符浮かべるアル。
それはどうでもいいとして、(をい)
「行きましょう!」
「う、うん」
で、二手に別れて探し始めました。
本棚の高さは2メートル以上あるので、背伸びして向こう側を見ることはできない。(アルは可能かもしれないが)
いちいち回り込むしかないんだけど、これが迷路みたいで楽しかったりする。
あ、さっき私が「おもしろそう」って言ったのはそれとは別。
実は私、エドを背後から襲…いやいや、おどかしてみようと思っているのです。
「いないなぁ……」
なかなか見つからない。
奥の方まで行っちゃったのかなぁ。
かといって名前を呼ぶと「後ろからおどかせ!作戦」が無駄になるし。(何ソレ)
などと思っていたら。
(ターゲットはっけ〜ん)
見付けちゃいました。
壁ぎわに座り込んで本を読んでいるエド。
ターゲットは半径5〜6メートル先、前方!
熟読しております!!
壁に向かっているため、こちらには気付いていない模様!
接近します!!
………。
そこかしこに本が散らばっていて足場が悪い。
慎重に近付かなきゃ転ぶよ、これ。
今エドが座っている場所にも本が何冊も積まれている。
掃除した意味がないぢゃん。
ま、それは後で片付けるとして、今はエド。
何とか足場を確保して少しずつ近付いていく。
ターゲットを前方に確認!!
まだ気付いていない模様!!
ターゲットから半径約2メートル!
気配を消して接近します!!(できるんか)
ターゲットから半径1メートル!!
射程距離内に入りました!
作戦実行します!!!
「エードっ!」
両手を勢い良く突き出し、エドの背中を押しておどかす……はずが。
「んあっ!?」
なんと、足元にあった本に気付かず転倒。
声を上げたのは私だった。
「うおっ!?」
転倒の際に 前方にいたエドを巻き込んで2人まとめて壁に突撃。
『ゴッ!』
実にド派手な音を立てて2人の頭部が壁に激突した。
………と同時に。
『カコン。』
なんか音がしたよ!?
なんか!!
更に。
「いゃああぁぁあ!!?」
「うわあぁ!!」
壁に激突して終わるかと思いきや、何だかそのまま前方に転がっている模様。
何事だ!!
2〜3秒転がってようやく止まった。
「うぇ、気持ち悪………。目ぇ回った……。」
これしきで目が回る私も私だが、一体なぜ家の中で転がらにゃならんのだ。
「う……。な、何だ……?」
「あ、エド。大丈夫?」
「ああ……っつーかここは?」
「え?」
ぐるんぐるん回った目で確認するのは少々困難だったが、ここがさっきの場所ではないということは分かった。
どんな場所なのかはちょっと今確認できません。
なぜかというと、
「暗くて何も見えない……」
窓がないのか、はたまた暗幕でも引いてあるのか。
真っ暗闇で自分の姿の欠片すら見えない。
「明かりかなんかないのか?」
「うーん、探してみる」
まだ脳ミソがくるくる回ってるけど、取り敢えず立ち上がる。
「うにゃっ!?」
『べしゃっ』
こけました。
「大丈夫か!?」
「だ、だいじょぶ……。」
真っ暗+目が回っている=こけるって、絶対。
暗いと歩きにくいよね。
「取り敢えず壁を見付けっか」
「うん」
歩くと危険な事が判明したので、這っていくことに。
しばらくして。
「おっ、壁発見」
後方でエドが声を上げた。
「でかしたー!」
すぐに行ってみたいのだが、這っているので不可能。
地道に近付くことに。
……ってか、方向は分かっても正確な位置が分かんねぇよ。
どこだよ。
「エドー!どこー?」
『ぽん。』
突如、肩に堅い感触が。
「んあああぁぁぁ!!?」
頭真っ白にして叫ぶ。
「うるせぇな!俺だよ!!」
………え?
「……エド?」
「ああ」
うわぁビビったぁ。
エドの手か。
「何だよお前恐いのか?」
上の方からからかうような声が。
「う……。な、何よ悪い?」
「いや、意外だ。」
ククク、と笑うエド。
何さ、それじゃまるで私が普段物凄い気が強いみたいじゃない。(違うのか)
エドが私の腕を掴んで引き上げ、壁に手を付けさせてくれた。
これで転ぶ心配はない。
「まーさか幽霊が恐いとはなー」
「うるさいなぁ!仕方ないでしょ?この家に1人でいるとどうしても……」
あ、しまった。
滑りやすい口だなぁ。
「……ご、ごめん」
「え」
もごもごと口の中で言ったので聞こえにくかったが、確かに今「ごめん」て。
エドにしては珍しい。(失礼)
「別に…気にしてないよ。今更だし」
「……」
あ、エド黙っちゃった。
本当に気にしてないのになぁ。
「あっ」
「え?」
なんか今 壁に置いている手に出っ張りが当たった。
「スイッチだ」
形からして電気のスイッチだろう。
「押してみろ」
「う、うん」
『カチ』
ぱっと部屋の中が明るくなり、視覚が戻った。
……が。
『ぷち』
「えっ」
「おぉ!?」
再び真っ暗闇に舞い戻る。
「蛍光灯がダメになったみたい。」
「ぬにぃ!?」
私がこの部屋知らないってことは相当前から使ってないってことになるからなぁ。
蛍光灯が古かったのね。
でも一瞬部屋の全体が見えた。
「どうやらここは隠し部屋みたいね。ドアがなかったもの」
「転がって入ってきたしな」
私達が入ってきた場所らへんにあったのは斜面。
その先には壁があった。
入ってきた時の情況を考えると、どうやら書斎の壁の一部が隠し扉になっていて、その壁に激突した際に扉が開いてしまったらしい。
ってことはこの部屋の斜面の奥にあった壁は書斎に通じる扉だと考えていいだろう。
「えーと、確かここら辺に……」
さっき見えた時に見付けた物。
「あった!電気スタンド!」
手探りでスイッチを入れる。
どうやら今度は大丈夫っぽい。
「……これ、お父さんの机かなぁ」
古い木製の机を見、呟く。
机の上には本が数冊積んであり、そのどれもが分厚いものばかりだった。
走り書きで何かが書いてあるメモが壁に貼り付けてあったが、癖字過ぎて読めない。(日本語?)
「!これ……」
エドが1冊の本を持ってきた。
この部屋にも大きな本棚が4つくらいあり、本がぎっしりと詰まっている。
その中の1冊だろう。
「何?」
「錬成陣が載ってる」
「!!」
錬成陣!?
父はハガレンファン!?
………んなバカな。
大体父が死ぬ前にはハガレンなかっただろう。
「この世界には錬金術を使える奴はいねぇんだろ?なら何でこんな本があるんだ?」
「私にだって分かんないわよ、そんなの」
よく見たら床にも錬成陣が幾つか描いてある。
もしかして……いやそんな。
でもそれだったら書斎に錬金術の本があんなにあったのも頷ける。
「うーん……。」
「何だよさっきから」
「いやー、それがねぇー…」
「はっきり言えよ」
「………うちの父さん、もしかすると錬金術師だったのかもしれない」
「え・・・・・」
「ただの推測だけど、それしか説明のしようがないのよね」
「おい、錬金術を使える奴はいないんじゃなかったのか?」
「そうなのよ」
「そうなのよって……」
それしかないんだよね。
それか向こうの世界と同じような理論を自力で見付けだしちゃったか。
…いや、いくら何でもそりゃないだろう。
あっちの世界でも何人もの人が研究して錬金術として成り立たせたんだろうから、父1人で錬成陣まで作れはしないだろう。
でも、だとすると何で錬成陣が載っている本が?
「……あ、そうだ」
さっき机の上にあった本の中に……
「何だよ」
「日記があるのよ。それを見たら何か分かるかも」
一番初めのページを見る。
「えーと……」
なになに?
目を走らせ、固まる。
「……………」
「どうした?」
エドが日記を覗き込む。
「……読めない」
「は?」
「英語で書いてある……」
「……貸してみろ」
「…はい」
ワタクシ、英語はダメなんです。
もう見ただけで目が回っちまいます。
受験生がそれでいいのかって?
いいのですよ、英語捨ててますから。(をい)
「……これ、研究記録だ……」
「え?」
「日記でもあるみたいだが研究記録も一緒に書いてある。一体何の研究だ……?」
研究?
ってことはやっぱり錬金術師だったんだ。
「…1冊目じゃねぇな。最初から見てみよう」
本棚から一番古い日記を探し出し、エドが読み始めて間もなく。
「……おい」
「え?」
「お前の親父さん…この世界の人間じゃねえぞ」
………は?
なんですと?
「この日記によると、俺らのいた世界の住人だ。それがこっちの世界にとんできちまった…今の俺らと同じでな」
「うそ……」
「研究内容は元の世界に戻る方法を探すためのものだろう」
どうしよう…それが本当だとしたら。
だとしたら………………何だろう?
別になんもないよね。
ていうかむしろ。
(ハガレンの住人がこんなに身近に!!!)
嬉しかったり。
ってことは私ってばハガレン世界の人の子!?
うわーv
運命だわ!!!
「……ん?」
エドが眉を顰めた。
「何?」
「もう1つ別の研究が同時進行されてる」
ページをめくる。
と、その時。
「兄さーん!さーん!!どこー?」
アルの声だ。
部屋の外からかな。
「くーん!鋼のー!!」
大佐?
昼ご飯できたのかな。
「エド、ひとまずここ出よう」
「や…俺はまだここに…」
「だーめ!お昼ご飯食べるの!!」
本の世界にのめり込みかけなエドを引きずって入り口まで戻る。
「よいしょ……」
斜面の先にある壁を押す。
……が。
「あれ?」
再度押してみる。
しかし、その壁は開かなかった。
「貸してみろ」
場所を譲り、今度はエドが押してみた。
が、やはり開かなかった。
「何で!?まさか一方通行!?」
「んなわけねーだろ。出れなかったらどうやって仕事してたんだよお前の親父さんは」
そりゃそうだ。
「じゃあどこかに別の出口が…?」
「かもな」
うわぁ、探すしかないのか?
「じゃ、お前が探してる間に俺は本を読んどく」
「なにー!?一緒に探してよ!」
「俺は外に出ようとは思ってないからな」
「うー………。」
くそう。
探す義理がねーってか。
いいもん。
自分1人ででも探し出してやる。
あぁ、アルと大佐の声が遠ざかっていく。
早くしないと置いてけぼりに……。
どっかりと座って研究記録を読み始めたエドを尻目に、出口を探し始める私だった。
探すのはいいけど全く見つからないってどういうこと?
色々壁を探ってみたけど、なんにも仕掛けがない。
あぁ、お腹減ったよぅ……。
どうしようかと考えあぐねていると。
「……………!!?」
なんか。
今なんか。
なんか動いた………!!!
目を凝らしてよく見てみると。
「………」
見るんぢゃなかった。
「ぃやああああぁ!!!」
「何だ!?」
エドが顔を上げた。
「ゴッ、ゴゴゴゴゴゴ……」
「ゴ?」
「ゴキブリいいぃ!!!」
「何だゴキブリか。」
何だぢゃない!!
ゴキブリと幽霊だけはダメなのよ私!!
これだから古い部屋はー!!!!!
「いやあぁぁ今動いたあぁ!!!」
ひいいぃぃ!!
気持ち悪い!!!
「それ位で喚くなよ」
「うるさいいぃなんとかしてえぇぇ」
「ったく……」
本を持って立ち上がるエド。
「どこに行った?」
「わ、わかんない…」
……と。
足に何か変な感触が。
……………よもや。
「きっ………」
足にゴキブリが登っていたり。
「きゃああああぁぁぁ!!!!!」
思わずエドにしがみ付く。
だってゴキだよ!?
足に登ってきたんだよ!!?
平常心保てってのは無理な話だ。
「ちょっ、放せよ!!!!////」
「ゴキがぁー……ゴーキーがーぁー………(蒼白)」
「さん!?そこにいるの!?」
うぁ、アル?
「アルうぅぅー!!!」
「待ってて!今行くから!」
………行く?
『バチィッ!!』
閃光が走り、そして目の前の壁にドアが現れた。
「大丈夫!?」
「君!!」
ドアを開けてアルと大佐が入ってくる。
「アルうぅぅー」
アルに駆け寄る私。
「どうしたの?」
「うわあぁぁーん」
「………鋼の」
「あ?」
「君に何かしたのか?」
「なっ!!何もしてねーよ!!」
「本当に?」
「アルまで!!」
「だって顔赤いし」
「!!」
さっきしがみ付いた時のか。
しばらく濡れ衣被ってろ。
だってさっきのアルの錬成で気付いたけど、出口が見つからなかった時エドがドアを錬成すればよかったんじゃん。
絶対気付いててやらなかったんだよ。
本が読みたいからって。
エドの誤解が解けたのは、ほとぼりが冷めただいぶ後だったらしい………。
〜To be continued〜
<アトガキ。>
相も変わらず尻切れトンボな後味最悪ドリへようこそ。
ごめんなさい、色々話を詰め込みすぎて意味不明です。
読みにくいことこの上ない。
この話、実はエドと絡もうと目論んでいたのですが失敗しました。(うをい)
何が言いたいのかよく分からなくなっちまいましたね。
書いてる途中でスランプしました。困った筆者です。
そんなのがドリ書いてて本当にいいのか(汗)。
ヤヴァイと思っている今日この頃。
次の話はバトル有りらしいです。
ツッコミどころ満載っぽいですが、どうか大目にみてやってくだされ……。
では、次回のアトガキでまた会いませう。
2005.1.6