大佐に色んな事がバレた日の翌日。

 その日は 見事な晴天。
 私は土曜日で休日。

 普段なら午前中全部使って寝ているのだが、今日はそういう訳にもいきそうにない。
 なぜなら、色々と忙しくなってしまったからだ。

 一人暮らしだったのが一気に4人になってしまったのが最大の理由だが、他にも彼らがこの世界に元々いた者達ではないことが原因だ。
 この3連休でやっておきたいことは多々あるので、少しずつでも消化していかねば。

 取り敢えず 今日やっておきたいことは……………、






stigmata・04
お買い物
〜select〜






「む〜……。」
 寝呆けまなこで、先程からけたたましい音を立てている目覚まし時計のスイッチを切る。

 時刻は 午前8時。
 今日は午後まで寝ている訳にはいかない。

 ベッドから降り、クローゼットを開けて服を選ぶ。
 むー、今日は少し寒いからあったかくしておきたいよね。

 外は風強そうだし……。
 カタカタと鳴る窓を一瞥し、クローゼットに視線を戻す。

「………これにしよ」

 白いセーターに 黒のロングスカート。

 ………静電気凄そう………。
 でも寒いよりはいい。
 パジャマをベッドの上に脱ぎ捨てて、着替え始める。

 あー、掃除もしておきたいけど 今日はひとまず買い物かな。
 エドとか大佐とかの服を買っておきたい。
 じゃないと外出ができんだろう。

 あの姿のまま外に出たら コスだと思われてお姉様方に囲まれるのがオチ。じゃなければ補導される。
 アルは もう外出禁止。中庭で我慢してもらおう。

 普通の公園位の広さはあるからそれで勘弁。
 などと考えながら 後はセーターを着るだけ、という所で。


『コンコン』
 ノックの音が。


ー」
 エドの声だ。

「待って、今着替―――」
 言い終わる前に。

『ガチャ。』
「ここら辺に図書館は―――」

 両者固まりました。
 ワタクシ、男子に下着姿(上半身だけ)を見られたのは初めてです。


「いっ、いやああぁ!!?」
「ごご、ごめん!!!」


『バタン!!』
 勢い良く閉まるドア。
 うわぁ、覗かれちゃった。(違)

 多分 今顔赤くなってるよ、私。
 別にエドならいいけどさ(いいんか)、思いっきし驚いた。
 あ、ちなみに大佐でもアルでもオッケ。
 わりと気にしない方だし。

 右手に掴んでたセーターをさっさと着て、ドアを開ける。が、そこにエドはいなかった。
 どこにいったかな?逃げなくてもよかったのに。

 取り敢えず 朝食を作るためにキッチンに向かう。


「や、おはよう君」
 キッチンに行くにはダイニングを通らなければならないのだが、私はダイニングに入った時点で歩を止めた。

「おはようございます大佐……あの、昨夜はどうも」
「ああ、気にするな」
 爽やかに笑う大佐。

 優しいなぁ………。
 ………って、

「……………大佐、それ……」
 大佐は目玉焼きを乗っけた皿をテーブルに置いていた。

「キッチンを使わせてもらったが、よかったか?」
「え、ええ」

 むしろ嬉しい。

 あぁー!!!まさか大佐の手料理が食べられる日が来ようとは!!!
 嬉しくて涙が滝になりそうです。

 ただ、エプロン着用していてほしかったです……。(をい)
 用意しとけばよかったなぁ。

「ところで君、鋼のが変なのだがそれについて何か知らないか?」
「へ?」
 見てみると、アルとエドがテーブルについていて、アルが隣の兄を心配気に見下ろしていた。
 あ、ここにいたんだ。

 エドがどうしたのかと窺ってみると、何やら顔を真っ赤に染めて俯いてました。

「………あー、はいはい。何でもないのよ」
 さっきのか……。

「何?さん何か知ってるの?」
 アルが顔を上げた。
「んー、あはははは。」
 笑ってごまかせ。

「???」
 何か聞きたそうな感じのアル。
 表情は鎧なので読めない。

 ま、とにかくそれは無視。(酷)
 エドは言われたくないみたいだし。

 …や、私もあんまり言いふらしたくはないが。
 わざわざ言うことでもないだろう。

 全員がテーブルについて、
「いただきまーす!!」
 私はトーストを頬張った。



 朝食が終わって、片付けも済んだ頃。
 やることのなくなった私達はまさに暇でした。

 ……あ、
「そうだ、買い物に行こうと思ってたのよ!」

「買い物?」
「突然何を言いだすかと思えば…。」

「何か買いたいものがあるの?」
「そりゃもう。一気に人数が増えたからね」
「あぁ」

 そして私はずびしとエドを指差し、宣言した。
「エド、一緒に行こう。」
「お、俺!?」
 自分を指差し嫌そうに言うエド。

「何で俺が!」
 いや、それを言うなら何でエドはそんなに嫌そうなんだ。
「唯一連れていけるからよ。」
「え?」
「だからね、きのうも言ったけど その服装じゃ怪しまれること必至なの」
「それで?」

(……………よもや…)by.以外の3名

「だから私の服を貸すのv大佐やアルじゃ入んないし」

(やっぱりか………!!!)

 ん?何その“うわぁ……。”って感じに体にかかってる斜線は。

「嫌だ!絶っっ対着ねェ!!!」
「だーいじょうぶだってば。男の子用の服ばっかり買ってるからエドにも入るってv」
「そういう問題じゃねぇよ………。」

 私より背が低いんだから、というのは敢えて言わない。
 ていうか早く私の服を着て私服姿を見せてください。

「だって3人も住人が増えちゃったんだから買う物もそれなりに増えるでしょ?」
「いやそれ遠回しに『荷物持ちになれ』って言ってねぇか……!?
「そうとも言う。ま、小さいことは置いといて レッツ着替え〜!!!
「うわっ!押すな!ってか小さいことじゃねぇ!!寧ろ小さいって言うなー!!」
 微妙なツッコミ入れないで下さい。
 心の中で裏手突っ込み入れつつ、エドを自室に引きずっていく私。

「嫌だああぁ・・・・・」
 段々小さくなっていく叫びに、大佐とアルは そっと幸運を祈った。



「じゃ、いってきまーっす♪」
「…………………。」
 最早抵抗する気力もないのか、エドは随分静かである。

「い、行ってらっしゃい……」

 なぜどもるんだ弟よ。

「そうだ、何か買ってきてほしい物ある?」
「や、別にないな………」
「でも 服は買ってくるね。どんなのがいい?」
「……なるべくシンプルなのを頼む」
 大佐の注文を受け、「りょーかいっ!」と敬礼をする私。

「アルは?何か買ってこよっか?」
「あ、オイル買ってきてもらえるかな?」
「オッケ!」

 鎧を拭くのに必要なんだよね。
 アルも大変だなぁ。

「じゃ、行ってくるね。12時までには帰ってくるから」
 お昼ご飯作んなきゃなんないし。

 ………いや、大佐が作ってくれるかも。1人暮らし長いだろうし。(酷)
 …外食で済ませてたとかも考えられるけど。

 でも大佐のご飯もおいしいんだよね。
 エドとアルは「微妙・・・」とか言っていたが。
 私は大佐の料理なら何でもいけるのさ!!これぞ愛のパワー!!(ぇ)

 そんなことを考えながら、玄関のドアを開ける。
 表玄関を使うのはこれが初めてだよね、エドは。

「エド、早く!」
 のろのろと歩いているエドをせかす。
「バスに間に合わなくなっちゃう」
「……ばす?」

 ………。
 向こうの世界では汽車だっけ?

「公共の乗り物よ。それに乗ってお店まで行くの」
 あとは説明が面倒なので、少々省く。
 白い柵を押して開け、道路に出た。

「それにしても似合ってるなぁ♪」
 エドは、白のフード付きトレーナーに 下は紺のジーパンという、何とも普通な服を着ていた。

 もっと萌えいいのもあったのだが、エドが拒否に拒否を重ねてきたので仕方なくここまでシンプルなものになってしまったのだった。

 それでもエドの私服姿を見るのは初めてだったので、嬉しいことに変わりはない。
 っていうか もう悩殺レベル………!!!

「何にやけてんだよ。さっさと行くぞ」
 すたすたと先を歩いていくエド。

「あぁ!待って置いていかないでー!!」
 急いで走っていく私だった。



「すっげー……」
 感嘆の声を漏らすエド。
 丁度バスが来たところだった。

「ほら、早く乗らないと出発しちゃうよ?」
 バスに見入っているエドをせかした。
 だってこれをのがしたらあと10分は待たなきゃなんなくなるし。

「あ、あぁ」
 バスに乗り込み、中を見回す。
 席はかなりすいているようなので、適当に座っておくことにした。
 間もなくバスは発車し、窓の外の風景が移り変わっていく。




 バスに揺られること約20分。
 ようやく目的地に辿り着いた。
 お金を払って降りる。

「うわ、でっけぇー……」
 見上げるエド。
「デパートだからねぇー」
 私も初めて来た時はこの大きさに驚いた。
 あの時はお兄ちゃんと一緒に来てたんだっけなぁ………。

 ……じゃなくて。

「行こっ」
 エドの手を引っ張って入り口に向かう。
「おい、放せよ!」
 再度引きずられるエドだった。



「えーと、まずは何を買おうかなぁ」
 きょろきょろと辺りを見回す。
「頼まれたものでも買ったらいいんじゃねーのか?」
「あ、そっか」
 忘れない内に買っておかなきゃ。

 てなことで、まずはここから近いので 大佐の服を買うことに。
 ………洋服店って嫌ってほどあるのよね。
 そんなにあってどうするのかしら。
 需要量が多い物ではあるけれど。

「シンプルなのがいいっていってたよね。どれがいいと思う?」
「大佐の趣味はわかんねぇよ。私服姿は見たことないし」
「ふーん、そっか。じゃ エドの趣味で」

 だってエドが着てた服って結構趣味いいと思ったし。
 シンプルだし。

「後で文句言われても俺は知らねーぞ?」
「いーのいーの。私が選んだってことにしとくから。2、3枚買っとこう」
 最寄りの洋服店に突入。

「わぁ、やっぱり男の人用の服っておっきいねぇ」
 視線を巡らせていると。

「……、サイズ聞いてきたのか?」
「……………………あ。」
 すっかり忘れてました。

「おいおい……。」
「だ、大丈夫よ。大体分かるし」
 Lサイズくらいでいいよね…?いや、Mかなぁ…
 …小さいと入らないけど大きいのは何とかなる!Lにしよう。(そんな適当な)

 エドは、軽く溜め息をついて 服を選びにかかった。



 結局色々揃えていたら大量に買ってしまった。
 別にエドがあれもこれもと言った訳ではなく、私が これから必要になるであろう物を色々選ばせていたら大きな紙袋4つにもなってしまったのだ。(買い過ぎ)
 ……まぁ、エドの分もあったからね。

「ごめん、買い過ぎたね。半分持つよ」
「いいよ。元々俺は荷物持ちだしな」

 ちょっとふてくされてるみたいだけど、結構優しい。
 これはこれで嬉しいことこの上ないんだけど、ドデカい紙袋を4つも一人に持たせておく程私も鬼畜ではない。

「1人に全部持たせるとかそういう意味の荷物持ちじゃないの。私1人じゃ持ちきれないから来てもらっただけ」
「なんだ、そうならそうと最初から言えよ」

 ………はい?

 さっきと打って変わって明るい声で言うエド。
 ま、まさか私が持てなくなるまで自分は引き受けないとか言うんじゃ………。

「ほい」
「へ?」

 思惑ははずれ、渡されたのは紙袋1つだった。

「持つんだろ?」
「え、うん」
 何だかんだ言って3つは持ってくれるのか。

「次は何を買うんだ?」
「えーと………」



 そんな感じで食料やら何やら買って、カートを2台も使う程の荷物になった。

「……まだあるのか?」
「うーん……何かあったっけ」
 エプロンも買ったでしょ、アルのオイルも買ったでしょ……………

 ん?エプロンは何で買ったかって?
 だって今朝大佐に朝食作ってもらった時にエプロン姿じゃなかったのが悲しくて。

 エドの分も実はこっそり買ってたりする。
 アルのは……サイズが………。
 いや、アルがつけてても妙な気がするが、面白いだろうなと思って。
 んん、残念。

「もう特にないわね。そろそろ帰ろっか」
「………どうやって持って帰るんだよ」
「大丈夫。ちゃんと考えてあるから」
 考え、とはタクシーを呼ぶことだったりする。
 カートを押して出口へ向かおうとした、その時。

「見つけたぞ!!」

 ………は?何?
 一瞬何が起こったのかよく分からなかった。

「げっ!あいつらこんなとこまで来やがった!!」
「え?」
 エドの見ている方を振り向くと。

「のぇっ!?」
 黒コートにサングラスの変質者!!
 何でこんな所まで追って来るんだチミ達ぃ!!!

 ああぁ周囲の視線が痛い……。(汗)
 私らまで怪しまれるじゃないか!

「に、逃げるわよ!!」
「言われなくとも!!」
 カートを押しながら疾走する私達。
「逃げたぞ!!!」

いやあぁぁ追ってくる!!!寄るな追うな変質者ー!!!
変質者だと!?失礼な!!我々は…」
黒コートにサングラスかけて子供追っ掛け回しとる時点でじゅーぶん変ぢゃ!!!
 文房具屋を通り過ぎ、CDショップを駆け抜け、とにかく脱兎の如く走り抜ける。

 向こうが約10人ちょいなのに比べて こっちは2人。
 二手に分かれてもこっちの方が部が悪い。
 回り込まれたりしたら終わりである。
 と、その時。

『パンッ!』

 両手を合わせるエドの姿が。
 ………よもや。

「ま、待ってー!!!」
「!!」
 慌てて エドのせんとしていることを止める。
「今ここで錬金術はマズいって!!」
「何でだよ!」

「この世界で錬金術使える人は1人もいないの!!怪しい宗教やらどっかの研究所に売り飛ばされたくなかったら人目に付くところでの錬金術の行使は禁止!!!
「何ーっ!?そんな大事なこともっと早く言えよ!!!」
「忘れてた!」

「待てえぇぇ!!」
「うわ早えぇ!!」

 くそぅ、やっぱりカートが邪魔で全速力は無理だ。
 追い付かれる。
 ………が。

「の、乗せて下さーい!!!」
 どうやらこっちにも運は残っていたらしい。
 丁度エレベーターのドアが開いた。
 中に乗っているのは中年のオバサン2人。カートが2つあっても何とか入れる。

 慌ててスペースを作るオバサン達。
 そこに駆け込む私達。

「待てー!!」
 追ってきた変質者達は、閉まるドアの向こうに姿を消した。

「ふぃー………。これで安心」
「…でもないみたいだぜ?」
「はへ?」

 エドが視線で示す。
 ……………嫌な予感が。

 恐る恐る見てみると、ヅラのずれたオバサン達が。
 しかもサングラスかけてる?
 ………ていうか。

「いやああぁ変態女装癖症候群クランケー!!!!!」
「誰が変態女装癖症候群クランケだ!!!」


 おまいらぢゃ、おまいら。

 そう、そのオバサン達は私達を追っている男達が女装をしているものだった。
 それにしても女装までして追うとは、一体なぜ?

 ボスの名前とか組織の最大の目的を知っちゃったから、とかいうにはちょっとばかし必死になり過ぎなんじゃ?
 いやまぁ、それを知る人がたった3人なんだから消すに越したことはないんだろうけど(酷)、こっちの世界に来てまでやることか?
 私らは向こうの世界に帰る方法を知らない訳だし。

 ………しかも、そういえば。

「エド、私こいつらの組織の最終目的聞いてない」
「んなもん後だろ!!身の安全を考えろ!」

 あ、そうだった。
 うっかりうっかり。(をい)

「ふっ、もう遅い」
 変態の内の1人がナイフでエドに切り掛かった。
 やだ、エド危な………

「どっちがだよ」

 金属音が響く。
 エドがオートメイルを刃に変えて攻撃を防いだのだった。

「ここだったら錬金術使ってもいいよな?」
「え?あ、うん」
 監視カメラがついていないか確認し、頷く。
 が。

『チーン』
「あ。」
 どこかの階に到着してしまった。

「何だ?」
「どこかの階に着いちゃったのよ!ちなみにこれはエレベーターっていって上の階や下の階に行くための乗り物!」

 うわぁ、エレベーターの前に人がいたらどうしよう。
 この変態どもと一緒にいるのを見られるのは嫌だ。

 どうせこれからも追っ掛けられ続けるんだろうし、こいつらが何か騒ぎを起こして私達まで警察に疑われるのはごめんだ。
 と、思いきや。

 開いたエレベーターの外を見て思わずほっとする。
 外には誰もいなかった。

「セーフ……。」
 どうやらここは屋上らしい。駐車場になっている。

「エド、降りるわよ!」
「んなこと言ったって!」

 いつの間にやら変態2人ともが攻撃に回っていて、エドは防ぐので精一杯の様子。
 部屋狭いしね。

 私はカートを1つ押し出し隙間を作り、もう一つのカートにある袋の中から卵を取り出した。
 あーあ、もったいない。
 パックの封を開け、卵を2つ、


『ペキャ!!』


 なーげましたー………。(実況風に)

「ぎゃああぁ!!」
「うわっ!!」
 見事変態ズの目にヒット。
 残りの卵を袋にしまい、

「今の内に!!」
「お、おう!」
 カートを押してエレベーターから出るついでに、一番下の階のボタンを押しておく。
 閉じるボタンを押してから素早くエレベーターを降りた。
 よっしゃ、変態撃退。

 ………ところが。

「こっちだ!」
「いたぞー!!」

 待テ。
 まだいたのか変質者。

「ちっ………」
「しつこいなぁ………。」
 一斉にかかってくる変態ズ。
 エドは私を庇うように数歩前に出て 刃に変えたままのオートメイルを構える。

 あぁ、空手とか柔道とか習っとくべきだったなぁ………。
 これじゃ足手纏いだよ。
 運動神経も切れてるし。

 ……って、考えてる間に……

「ぎゃあっ!」
「ごふっ」
「おらおらおらおらおらー!!!」

 なんかどんどん敵さんの数が減っていってるんですけど。
 私が心配するほどでもなかったか?

 20人くらいが10程度に、10程度が数人に。
 勿論気絶させる程度にとどめている。
 派手な錬金術は控えているらしい。
 オートメイルの刃だけで戦っている。
 って言ってもそれで充分か。

 凄いなぁ。
 後少しだ。

「………っ!!」
「動くな」

 ……………。
 どうしてこう、人生とはうまく行かないものなのだろう。

 首の後ろに突き付けられた冷たい感触。
 少しだけ振り向いて確かめる。
 ………やっぱり。

「エドワード・エルリック!この娘の命が惜しければ動くな!!」
「!!!」

 あと2〜3人で終わる、というところでエドの動きは止まった。

……っ」
「おとなしく殺されな」
 銃を突き付けられた私を見て戸惑うエド。

 こんな場面で「私はいいからあなたは逃げて」なんて言うヒロインがよくいるが、そんなもん実際にはできたもんじゃない。
 後ろには自分の生死を左右する物がある。
 声を出すことすら恐くてできない。


 ……………。

 ……恐い?
 ……………………今更?
 私は…………………………………


 両目を閉じる。
 もう…覚悟はできていた筈だから。

 今度こそ、あなたは許してくれますか………?


 ………が。

「うあぁっ!!!」
『ゴシャッ!!』

 すんげぇ音と共に叫び声が。

「え………?」
 目を開けると、後ろにいたはずの男が仰向けに倒れていた。
!大丈夫か!?」
「あ……うん」
 どうやらエドが助けてくれたらしい。

「ったく、力は抜けまくってるわ両目閉じてるわ……お前死ぬ気か?」
「えー?そんな訳ないじゃーん」
「本当かよ?」

 ………私はまだ、死ねないようです。
 『あなた』が許してくれなかったから。

「……さっさと帰るぞ」
「うん」
 カートを押して車の出入口の方に向かう。
「中を通るとまだ敵がいそうだしね。こっちから出よう。…本当は下から出ないとだめなんだけどね」



 ようやく外に出て、タクシーを拾いました。
 荷物を積み込んで席に座り、行き先を運転手に告げる。

 あー、今日は疲れたー。
 こんなハードな買い物は初めてだよ。(そりゃそうだ)

「そういや、どう考えてもこっちの方が早いのに 来るときは何でバスだったんだ?」
「タクシー呼ぶのに飽きてたからよ」
「………。」
 おい、とでも言いたげな視線。
 だってしょうがないでしょ。
 気分変えるくらいしたいわよ、たまには。

 それから会話はぱったりと途絶えた。
 エドはそうでもなさそうだったが、私は疲れていたのだ。

***

「おい、着いたみたいだぞ」
「んあー………。」
 エドの声に顔を起こす。
 もう少しタクシーの中でダレときたかったなぁ。


「ただいまー…アル、大佐、ちょっと来てー」
 玄関のドアを開け、2人を呼んだ。

「お帰り。って、どうしたの!?その荷物」
「凄い量だな。一体何を買ったんだ?」
「えへへ、色々ー。まだあるから運ぶの手伝って」
「まだあるのか!?」



 待たせてあったタクシーのトランクから荷物を全て運び出し、食品を冷蔵庫に入れたり色々してたら結構時間をくった。
 まとめ買いはするもんじゃないわね…。

「はい、アル」
 ようやくオイルを発見したので 渡しておく。
「ありがとう」
「どういたしましてv」

 あぁカワイイーv
 鎧の姿でもかわいさは減少しませんね!

「ほい、大佐の服」
 エドが大佐に袋ごと差し出す。

「……大量だな」
「大量だな」
「なぜこんなに?」
「いや、何でだろう。」

 A.私が大量に選ばせちまったからです。

「気に入りました?ていうか着れます?」
 袋を漁る大佐に尋ねてみた。
「ああ。ありがとう」

 ふぅ。
 やっぱりエドに選ばせて正解だったか。
 …というか今更気付いたが、1枚だけ買って後から選ばせればよかった。

 ………と。

『きゅるるるる……』

 何の音だ。
 視線を巡らせると、エドがお腹押さえてました。

「あ、お腹減ったよね。12時過ぎてるし……。お昼ご飯何がいい?」
「何でもいいのか?じゃ、オムライス!」
 一気に表情が輝いた。

 アルもカワイイけどエドもカワイイ。
 腐女子心をくすぐられます!!(やめれ)

「オッケ♪ちょーっと待っててね」
 よっしゃ、精根込めて作るぞ!!!
 意気揚々とキッチンに入っていく私だった。





〜To be continued〜




<アトガキ。>

なんと大佐に朝食作ってもらっちゃいました。
いいなぁドリ主。
羨ましいよ。
それにしても戦闘と言えるのか?あれは。
微妙だったなぁ。
今度戦闘を書く時はもうちょっとバトル入れて書きたいと思います。

今回は女装してましたね、あの変態。
ドリ主さん思いっきしツッコんでました。
ドリ主の叫びはほぼ私の叫びなので、私も壊れてるんでしょうね。(うわぁ)

さて、次回はどうなるのか?
どうやら戦いはないようですが。

お楽しみに。

2005.1.2