細い道を くねくねくねくね曲がって ようやく私の家に辿り着いた、はたからみれば怪しい集団な私達。
道に誰かいたらその道を避けて他の道を通ってきたので、かなり時間がかかってしまった。
しかし、その苦労の甲斐もあって 私達の姿は家の中から覗いてでもいない限り見られていないだろう。
何せ 私は除くとしても、普通の人からみればコスしてるようにしか見えない人や果ては鎧までいるんだから、目撃なんかされようもんなら さっきの爆発事件のことについて調査され始めた瞬間に私らが関わっているとバレてしまう。
警察の厄介になるのはさすがに嫌である。
表から入ると 誰かに見られかねないので、裏口から入ることにして回り込む。
黒い柵を押して開け、ドアの前でポケットに手を突っ込んだ。
少し小さめの鍵を、鍵穴に差し込んだ―――――。
stigmata・02
事情聴取
〜explanation〜
「凄い大きい家ですね」
アルが感心したように言う。
「そ?生まれたときからこの家に住んでたからよくわかんないけど」
カーペットの敷かれた廊下を歩きつつ、リビングを目指して歩く一行。
スリッパの音がぺたぺた響く。
程なくして 両開きの白い扉が見えてくる。
私はドアの前で止まった。
「……あの、」
「え?」
「開けて………。」
「あ…。」
いまだに 背中にエド、前にカバン状態のままだった私。
エドを背負ってたらそれだけで両手塞がってるってのにドアなんか開けられない。
「ごめんなさい、気付かなくて」
ドアを開けながら言うアル。
「あぁ、いーのよ。平気だったから。……ていうかそれより、」
「それより?」
4人が入り終わり、ドアを閉める。
「敬語やめて……。なんか変な感じがするから」
「え?あ、はい…じゃなくて、うん」
いくら何でも同い年の人に敬語を使われるのは何となく抵抗が。
今まで敬語なんか使われたことあんまりなかったせいもあるけど。
……まぁ、なにはともあれリビングに到着。
私はエドをソファに寝かせ、アルと大佐にイスをすすめた。
「ぃよいしょ」
ごとり、という音と共に カーペットの上に私のカバンが置かれた。
「…何が入ってるの?それ」
アルが尋ねてきた。
いい年した女子が年寄くさい掛け声をかけながら置く程重い物が気になったらしい。
「何って、教科書とか資料とか」
「…学校に行ってたの?」
「そうだよ。ていうか制服で分か…」
そこまで言って、止まる。
果たして 向こうの世界にセーラー服なるものがあったかどうか。
……なかったような気がするなぁ……。
あったとしても水兵さんが着るようなものだろうから、まさか学校の制服だなんて思わないだろうし。
「……何でもない。気にしないで」
「?」
私は テーブルを挟んで2人に向かい合う形でイスに座り、ふぅ、と短くため息をついた。
「………何から話そうか?」
そういえば 何を話すかなんて考えちゃいなかった。
だってさぁ…とにかく連れ込むことしか頭になかったし。(待テ)
「……………取り敢えず名前を」
大佐に言われて初めて私が名乗っていなかったことに気付く。
……いや、彼らも名乗っちゃいないが。
「 。『』って呼んで」
「何か ファーストネームとファミリーネームが逆転したような名前だね」
「あー、ここでは ファミリーネームが先でファーストネームが後なの。そっちで言うと私は『・』になる訳ね」
そんな風習がある地域あったっけか?とでも言いたげな顔で私を見てくる約2名。
…めんどくさいから それはムシすることにする。
「私はロイ・マスタングだ」
「さっき逃げてくる時大佐って呼ばれてましたね。ってことは軍の人ですか?」
「ああ」
…いや、そのくらいのこと 確認しなくても知ってましたとも。
ロイも好きですから、私。
ただ、最初から知ってるのを気付かれて その理由を聞かれるのが嫌だったのですよ。
だって あれでしょ。
自分たちの行動…楽しい場面はいいとしても、つらかった時やら苦しかった時を見て楽しんでる人がいるってどうよ?
私だったらちょっとやだ。
……だから、その辺は隠し通したい。
「僕はアルフォンス・エルリック。で、そっちで気絶してるのが 兄のエドワード・エルリック」
「………そういえば起きないね…」
気絶していることを改めて聞いて、未だ起きない金髪少年を見た。
「……どこか打ち所が悪かったか?」
ロイがぽつりと呟く。
「だ、大丈夫かなぁ…」
「死んでないよね…?」
その場にいる全員が なぜかマイナス思考になっていく。
少しの間沈黙が流れ、
「起こしてみる?」
それに堪えられなかった私が提案した。
だってさぁ、暗い雰囲気って苦手なんだよ。
その場に居づらいっていうかさぁ。
たたでさえ私は場違いっぽいのに。(1人だけこっち世界の格好)
で、私とアルは取り敢えずソファの眠り姫を起こしに近付いた。
わぁ、寝顔(?)かわいいなぁ。
金髪綺麗だし まつ毛長いし、肌の色結構白いし。
ちっちゃいし♪
「だぁれがミジンコドチビかー!!!」
「みぎぃやああぁ!!!?」
エドが突如飛び蹴りかましてきました。
すんでの所でかわしたものの、当たればヒドいことになっていた。
「に、兄さん!誰もそんなこと言ってないよ」
どうどう、とエドを宥めるアル。
「ごめん、私の脳内で言ってた」
「えっ……」
そんなに驚かんでもいいだろうに。
…や、私の脳内まで読んだエドには私も驚いたが。
「うっ……」
エドが、呻いて両膝を付く。
「兄さん大丈夫!!?」
慌てて駆け寄る弟。
兄想いだねぇ。いいなぁ。
……アルエド万歳。(違)
「大丈夫だ…大したことない……」
とか言いつつ声がかすれてる。
そこまで強がらんでもいいのに。
「やっぱしこっちに来たときにどっか打ったのかな…」
私がエドを覗き込むと。
「………あんた、誰?」
眉根顰めながらのたもうた。
あぁ、そういえばエドは私のこと知らないんだった。
私はアニメとかマンガでよく知ってるから、初対面でも顔見知りのような感じがしていたのだが。
「兄さん 失礼だよ。この人はさん。兄さんをここまで連れてきてくれた人だよ」
「………は?」
いまいち情況が掴めていないようである。
そりゃ 起こされて(?)いきなり言われてもすぐには理解できないだろう。
道のド真ん中に倒れてたってことも知らんだろーし。
「…ここ、どこだ?」
いまだにぼんやりした感じで問う、エド。
「私の家よ」
アルが支えながらゆっくりとエドをソファに座らせた。
「……何で?」
「それを今から話すんだけど……大丈夫?」
まだ顔を顰めたままのエドに、声をかけた。
「…大丈夫だって言っただろ?ここに来る前にちょっとあっただけだ」
エドのちょっとって、あんまりちょっとじゃない気がする。
「…血は出てないから打撲ってとこかしら?ちょっと待ってて。湿布持ってくる」
どうせまた何か事件にでも巻き込まれたのだろう。
背を曲げていたところを見ると お腹だな。
殴られた、というのが妥当な線か?
それにしてもエドを殴るとは太い奴だ。シメてやろうか。
……はい、無理ですね。
エドを殴れるほど強い人なんだから。
私は、この部屋の隅にある 食器棚程の大きさの棚から救急箱を取り出し、湿布の入った袋を掴んでエドのもとへ戻る。
「はーい、痛いのはどこかな〜?」
湿布を袋から取り出しながら、にっこりと笑う。
「じ、自分で貼る!」
ぶっきらぼうに言って、エドは私の手当てを辞退しました。
あーあ、せっかくエドの生腹が見られるかと思ったのに。(ぇ)
くるりと後ろを向いて服を捲るエド。
やっぱし腹だったらしい。
その後「うわ、すっげぇニオイ」とか言いつつ湿布を貼り終えたエドはこっちに向き直りました。
「……で?」
「え?」
いきなし「で?」とか言われても。
「さっきの続きだろう」
「あー」
大佐に言われ、ようやく気付く私。
さっき座っていたイスに再び腰掛け、何から話そうかと思考を巡らす。
「えーと…まず言っとくけど、あなたたちがなんでここに来たかは不明。」
「は!?『それを話す』ってさっき言ってたじゃねーか」
言ってから、腹筋に力が入ってしまったのか 「いてて」と再び顔を顰めるエド。
「話す、とは言ったけど知ってる、とは言ってないわよ」
「………。」
何やら恨めしそうにこっちを見てる人が約一名。
……無視無視。
「でも あなたたちがこっちに来た瞬間は目撃したの」
「あの道に来た時か?」
「ええ」
「道?」
エドが問う。
あぁ、知らないんだっけ?
「あなたたちは最初 ここからちょっと離れた場所に位置する道のド真ん中に気絶してたのよ」
「そうそう。起きたら全く知らない所にいたんだよ」
「ここに来るまでに結構ドンパチやっていたのだが、鋼のは全く起きなかったな。」
「ぐっ……。仕方ねーだろ!俺はここにくる前に気絶してたんだから」
果たしてそれは言い訳になるのかどうか。
いいや、エド可愛いからそういうことにしとこう。(ぇ)
「で、話を戻すけど 今日は虹がかかってたのよ」
「は?」
目を点にする3名。
「それが左から消えてって、右側だけが柱状に残ったの。で、なんか不思議な事に虹に近付けるっていう怪現象が起こったから近付いてみたら、目の前に雷が落ちて…」
「………まさか…」
「そう、そのまさか。雷の落ちた地点にあなたたち3人がいたわけ」
「「「……………。」」」
な、なんなのさ。
も少し「えぇーっ!!?」とか「うそーっ!!」とかリアクション返してくれたっていいじゃないのかい?
そりゃ確かに脳みそフリーズしてもおかしくないけどさ。
「………君」
おや、大佐が解凍した。
「何ですか?」
ついつい敬語が。
『位が上だ』っていうイメージ固定しちゃってるからなぁ。
ま、もともと 初対面だったり大人の人が相手だったら敬語使ってたからね。
「その『雷』とは、どんなものだったんだ?」
…そうきたか。
どうだったかなー…。
一瞬のことだったからよく覚えてないんだけど……。
っていうか 雷であるかどうかも不明なんだよね。
中心にいたこの3人が生きてるから。
「確か 青白い光だったと思うんですけど…。物凄い雷鳴と光でしたよ」
「……ふむ…」
何やら考え込んじゃいましたよ。
私の説明が悪かったのか?
だってさぁ、雷なんて一瞬だよ?
っていうかそれよりあんたたちがいたことの方が印象に残りすぎてしっかり覚えてる暇なかったっつの。
「大佐、その『雷』って……」
エドが意味ありげな表情を大佐に向けた。
「……そうかどうかは分からんが、その可能性がいちばん高いだろうな」
「え?何?」
何話してんの?分かるように言ってよ。
「錬成反応、だよ。錬金術の」
アルが、疑問符浮かべてる私に向けて言った。
私が脳内で混乱引き起こしてるのを察してくれたのだろう。
優しいなぁ……。
って、をい。
「じゃあ あなた達はその錬金術であの場所に来ちゃった訳?」
「恐らくな」
いやぁ、有りがちっていうか何ていうか……。
何だかなぁ。
でも実際に起こってみると大変だということに 今更ながら気付いた。
「ところでここはどこら辺なんだ?見たこともないような物が色々あるみたいだけど」
テレビやらエアコンやらに目を向ける金髪少年。
「どこら辺って言われてもなぁ……」
別の世界です、なんて言ったら 何でそれが分かるのか聞かれそうだし。
どう答えようかと考えあぐねていると、ふと目に付いたものが一つ。
私のカバン。
「そーだ!」
私は立ち上がってカバンに近付く。
中を漁って一冊の本を取出し、ぽふんと音を立てて再びイスに座った。
「金髪少年と鎧君、こっちおいで」
ソファは少し離れたところにあったので、エドや 一緒にいるアルにはこの本は見えない。
手招きをして呼んだ。
「エドワード・エルリックだ」
「さっき弟君から聞いた。あ、じゃあエドって呼んでいい?」
「好きにしろ」
「弟君の方はアルって呼んでいい?」
「どうぞ」
「あ、大佐は大佐で。」
「・・・・・・・・・」
何ですかその福引きで10円分の買物券1枚当てちゃったような微妙な表情は。
ゆっくりと立ち上がり、テーブルの方に歩いていくエド。
エドを気遣いつつ後を歩くアル。
あぁ、アルエド万歳!!!(パート2)
………ぢゃなくて。
イスはテーブルを挟んで丁度2つずつ。
私の正面に大佐が座っているということは……………
どっちかが大佐の隣、どっちかが私の隣に!!!(それもあんまり関係ない)
さて、どっちが来るかな?
どっちでも萌えるから良し!!!
「兄さん、どっちに座る?」
「大佐の隣だけは絶対やだ。」
………即答でした。(凄い嫌われようだなぁ……)
そんな訳で、私の隣にはエドがv
もう萌えてもいいですか?
萌えてもいいですかぁー!!!?(恐)
「で、何?」
……………狽ヘっ。
ようやくここに呼んだ目的を思い出しました。(をい)
「これなんだけど……」
私は、さっきカバンから取り出した薄い本を テーブルの上で広げてみせた。
実はその本、地図帳だったりする。
「ここが今私達のいるところ」
地図のある一点を指で示す。
それを3人が覗き込む。
「………何だこれ」
「見たことない地形だよね」
「地名が読めないぞ」
あ、ハガレンの中で使ってた文字って英語だったっけ?
彼らはぱらぱらと地図帳のページをめくり、やがてぱたんと閉じた。
エドが私の方に顔を向けて、口を開く。
「……おい、」
「だってば」
「じゃ、。」
「何?」
「………この本に載ってるので地図は全部か?」
「世界地図まで見といて何言ってるのよ」
「………………。」
ようやく事態が把握できたのか、一斉に黙り込む3人。
私も、これを自分に納得させるのに苦労した。
「ねえ、もしかして僕ら、大変なことになってる?」
「……だな。」
呆けたような表情で会話を交わす2人。
「君、この国の名は?」
恐る恐る尋ねる大佐。
「日本です。」
「……………。」
あー、トドメ刺しちゃった。
現状に苦しんでるよ。
十数秒後、やっと解凍したのはエルリック兄弟だった。
「……兄さん、異次元って本当に存在したんだね」
「あぁ……」
うーん、そんなもんかね。
異世界とか言ってほしかったんだけど。(たいして変わんねぇよ)
「……君、どうやら我々はこことは違う世界から来てしまったようなのだが」
そんな 半分疑問系で言われても。
相当混乱してますな、大佐。
「誰の錬成でここに来ちゃったんだろう、僕達……」
そういえばそうだ。
錬成反応が起こったなら 誰かが錬金術を使ったはず。
「………もしかして、?」
エドの一言で一斉に視線を向けられる私。
待テ。
「ちょっと、私は錬金術なんか使えないわよ?それにあなたたちがこの世界に来た時と同じ『雷』が少し離れてもう一回落ちたのアルも見たでしょ。その時私何かしてた?」
「あ……」
思い出した、というような声を出すアル。
「もう一回……?」
ロイが首を傾げた。
「あぁ、大佐とエドは知らないんでしたね。実はアルが起きた直後に二度目の『雷』が落ちたんです」
「それで少し後にあの人達が追ってきたんですよ」
あの人達?
あの、いきなし銃ぶっ放してきた変質者達のことか?
「あいつらが追ってきたのか!?」
身を乗り出して言うエド。
そんなにヤバい奴らなのか?
「うまく撒いたけどね」
アルがやんわりと返す。
「…奴らが我々をこの世界に送り込んだというわけではなさそうだな」
「何でですか?」
大佐が真面目なのってあんまし見たことなかったのになぁ。(ちゃんと見てるのか)
やっぱり大佐なだけはあるってか?
マジな顔がよく続く。
「わざわざこの世界に送る必要がないからな。自分から物事を複雑にしても仕方がないだろう」
「あぁ、なるほど……」
………って、その肝心の『物事』の内容を聞いてないんですけど。
何かよからぬことだっていうのは分かるんだけどさ。
「あの、一体どんな事件が絡んでいるんですか?」
思い切って聞いてみた。
さて、答えてくれるか……?
「君は聞かない方がいい。部外者をこれ以上巻き込めないからな」
ほらきた。
やっぱしそう来ると思ってたよ。
「そんなこと言っていいんですか?」
「何?」
大佐が訝しげに私を見る。
「もう私、部外者じゃなくなってますもん」
「何でだよ」
「だって みんなここを拠点として動かなきゃなんなくなってるし」
「えぇ?」
「まず こっちの通貨を持ってないんじゃないの?それだとホテルに泊まるのも無理だし、食べ物にも困るよねぇ。」
「うっ……」
「それから、金髪金目に赤コートなんてこっちの世界じゃどう見てもコスプレにしか見えないし(エドの)、」
「なっ!?」
「この国に軍人はいないのよね(自衛隊ならいるけどさ)。昔はいたらしいけど。黒髪黒目はこの国全体の人がそうだから目立たないけど軍服は目立つし、」
「!!」
「鎧に至ってはこの世界じゃ博物館モノなのよね。マニアでも着てないわ」
「えぇ!!?」
「そんな3人組が歩いてなんかいたら変質者扱いどころかまず警察に捕まって尋問されるわね」
「「「………………。」」」
なんか皆さん灰になっちゃいました。
言い過ぎたかな?
でも実際そうだしなぁ。
「じゃあなんでお前はそんな俺達をここまで連れてきたんだ?」
「何言ってんの?学校からの帰り道に偶然見付けちゃった上に
あなたたちが気絶してたもんだから近付いたら
その直後に背後から銃ぶっぱなされて挙げ句には警察まで集まってきてたから逃げ込んだだけじゃないの。
殆どノリよ、ノリ」
「ノリって………。」
いや、30%事実だったりする。(後の70%は私の萌え心。)
「そんな訳だから、帰る方法がみつかるまでここにいていいよ」
むしろ帰れなくてOK!!
「え!?でもそんな悪いよ……」
「うふふ、お気遣いは嬉しいけど大丈夫なのよ。食いぶちなんてあと100人くらい増えたって痛くも痒くもないんだから」
(か……金持ち………!!!)by.エド&アル&ロイ
「部屋もかなり余ってるし、1人で暇だったのよね」
「………1人?」
エドが聞き返す。
「うん。一人暮らし」
「そういえばメイドさんとかにも会わなかったかも……」
「メイドさんとか雇うのもなんか嫌なのよね。偉そうっていうかさ。
メイドさんもこんな子供1人に色々尽くすの嫌だろうし。掃除は面倒だけどね。他の家事は得意なんだけど」
「親とかは?」
「もとは皆いたんだけどね。…爺ちゃんは私が生まれて間もなく死んじゃったし、
婆ちゃんもその後を追うようにしてぽっくり。
お父さんは5年前に事故で死んじゃってお母さんは…2年前に、病気で。
あとはお兄ちゃんが1人いるんだけど、何代か前から続いてる企業の社長を受け継いでて、今は会社に近い別の所に家を建てて住んでるわ。
ここから結構遠いから、帰ってくるのは1年に2、3度あればいい方かも」
「兄が社長…?10代で勤まるものなのか?」
「10代な訳ないじゃないですか、大佐。兄は31です。」
「なっ、何!?」
「さんって今いくつ?」
「14。」
「17歳差!!?」
あ、驚いてる。
あっちの世界じゃ考えらんないだろうからなぁ。
こっちの世界くらいに医療が発達してないと17歳差はちょっと無理だろうから。
「すげぇ……。大佐より年上なのに兄………。」
大佐って確か三十路手前の29歳だったよね。
「仕事熱心でまだ結婚どころか付き合ってすらいないのよ。一生独身でいるつもりなのかしら。ま、そんな訳でここにいても大丈夫だから。オッケ?」
「………分かったよ…。」
「よろしくお願いします」
「世話になるな」
「こっちこそこれからよろしく」
よっしゃ、決まり!!
これでよし。
………って、
「話がズレたけど、どんな事件に巻き込まれてる訳?ここに拠点を置く以上あいつらがここにこないとも限らないわけでしょ?なら教えておいてもらうくらいしないと 理由も分からずに襲撃されるのは嫌よ」
「……仕方がない、話す他なさそうだな」
大佐が、静かに話し始めた。
あれから10分余りの説明が続いた。
それによるとどうやらこういうことらしい。
まず エドがいつものごとく宿で遅くまで起きていたところ、喉が乾いたので水を飲もうと部屋を出た。
すると 向かいの部屋から話し声が聞こえてきた。
で、別にどーでもいいからそのまま通り過ぎようとしたところ、とんでもない言葉が耳に入った。
それが 今現在あっちの世界で起こってる大規模な犯罪組織の作戦会議だった。
まぁ、それは組織のほんの一部だったからそんなとこで会議なんかしてたらしいけど、その時にエドはその組織のボスの名前と、組織の最大の目的を聞いてしまった。
大佐にそのことを報告しに行ったのだが、大佐が聞いた後に外から呼び出しがかかって3人が出た所、組織を知ったことがばれてしまっていたらしく、そのまま乱闘になったとか。
騒ぎを聞きつけた軍の人たちがかなり集まったにも関わらず 騒ぎのもとである 組織の者4人はびくともしなかったらしい。
で、苦戦していたところ いきなり辺りが真っ白にホワイトアウトして気が付いたらここにいた、と。
何とも不運な。
っていうかエドってなんでこういっつも事件に巻き込まれてるかな。
コ○ンじゃあるまいし。
でも本当に誰がこの3人をここに送り込んだんだろう。
………。
あ。
「そろそろご飯作り始めないと」
時計の針が示す時刻は、既に5時半を回っていた。
「おい…お前には緊張感ってもんがないのか……?」
「そんなこと言ったってお腹は減るでしょ?」
「つったってなぁ……。」
「手伝いましょうか?」
「頼む!あ、メニューは何がいい?大抵作れるから」
「じゃあねぇ、」
和やかに会話を交わしながらキッチンに向かう私とアル。
思わずため息をつく大佐とエド。
「本当に話してよかったのか…?」
「…………。」
黙ってしまう大佐。
色々と心配をせずにはいられない2人だった。
〜To be continued〜
<アトガキ。>
第2話、ようやく完成……。
説明の部分が多かった。
こっからやっと話が動き始める。
色々設定作るの大変だったけどその分後から楽だし。
虹の根元に辿り着いて ある意味願いの叶ったドリ主さん。
これから一体どうなるんでしょうね?
次回をお楽しみに。
2003.11.23